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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第3章 要衝都市に隠された

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第1話・バイファの夜~行商人と女と男~

第3章 要衝都市に隠された



         第1話・バイファの夜~行商人と女と男~



 宿屋兼食堂・バイファ。



 ここは、行商を主にする商人らがよく利用する宿屋であり、地元の人間が昼夜問わず訪れる食堂であり、当然夜には酒も出される店でもある。



「きゃ……っ!」


「あはは……おねぇちゃん。美人だねぇ~。どう? 一杯?」



 桃色髪の女性店員にちょっかいをかけているのはひげもじゃの客。



 行商人のようで、ダボっとした上下の服と少しくたびれた斜め掛けの大きなカバン。


 目深にかぶった中折れ帽子がずり落ちそうなほど前に来ていて、目の色も年齢も判然としない。


 焦げ茶色の髪は帽子の下であちこちに跳ね、同じ色のひげが顔の殆どを覆い隠してしまっていた。



「やめて下さい……そういうお店じゃありませんから!」


「あはは! 硬いこと言うなよ~。折角……ヒック……気持ちよく呑んれんだ……さぁ~」


「もう! 飲み過ぎですよ! お客さん!!」



 軽く窘めて、するりとその客の手から抜け出た店員、リリーは苦笑しながら客のテーブルに水を置く。



「これでも飲んで、ちょっと酔いを覚ましてください……明日に響きますよ」


「あ~。ははは~。いい娘らねぇ~」



 どこまでも楽し気に笑って、その客は置かれた水をぐびぐびと飲みほした。



「「「「「…………………」」」」」



 その様子を、地元の人間らしい五人組の若者がこっそりと睨みつけていることにリリーは気づかない。



 けれど……



「……………」



 リリーにちょっかいをかけていたひげもじゃの客が、チラッと顔を向けて、にやりと唇を歪めたのが分かった。



「「「「「…………っ!!」」」」」



 若者たちからすればバカにされているようなもの。


 ギリギリと密かに歯ぎしりしている様子を、ハハ……と声を出して嗤われて、ますます腹を立てる。



「ん~……ちょっと呑み過ぎたかねぇ~。どれ、酔い覚ましに少し外の空気でも吸ってから、部屋に戻るか……」



 わざわざそう言って「どっこらせ……。」と立ち上がった客に「気を付けて下さいよ!」とリリーが声をかける。



「はいはい~。ありがとねぇ~」



 ひらひらと、軽く手を振って、千鳥足で店を出ていくその行商の客を……



「リリーちゃん。俺らも今日は帰るわ!」


「は~い。気をつけて帰ってくださいね!」


「「「「「……おぅ……」」」」」



 先ほど睨みつけていた若者たちも後を追うように店を出て行った。




「ららん、ら~……ら~ら、らん。とこりゃ……ははは~」



 ご機嫌に鼻歌を口遊みながら、フラフラと歩く行商の客を。



「……おい……」


「……んぁ?」



 後を追って来た五人の若者が呼び止めた。



「……なんらい、にぃさんたちぃ~」


「ちょっと顔貸せや」


「……ん~? ふふふ……」



 足を止め、振り返った行商の客を囲んで路地裏へと連れ込む。



「あんた。リリーちゃんが優しいからって、手ぇ出してんじゃねぇよ」


「ん~? リリちゃん~? 何の話だい?」


「ふざけんなよ!!」



 一人が凄んで言うのに、へらへらと笑う行商の客に、別の一人がドスを効かせた声を浴びせる。



「はっ! つるんでないとろくに声もかけれねぇ、肝っ玉のちぃさい男どもが、えらっそうに……いっそ、かっ攫って押し倒すくらいの気概みせてみろや? あ゛?」


「「「「「……っ!!??」」」」」



 心底バカにした声で言われ、カッと頭に血が上る。



「このっ!!」



 一人が、ついに行商の客に殴りかかった。



「…………」



 ニヤリと笑った行商の客はあっさりとその拳を躱し……そこからは五人の若者と、行商の客との殴り合い。



 いや……



「……が……っ!?」


「ぐ……っ!?」


「……なん……!?」


「ぐへ……っ!?」


「ひ、ひぃぃぃ~っ!!??」



 行商の客による一方的な蹂躙だった。



「……弱いねぇ~……もうちっと、骨があるかと思ったのに……」


「「「「「……ぁ……??」」」」」



 若者たちを地面に沈めて、鼻で笑った行商の客の声が……



「「「「「……ぇ……?」」」」」


「……さて、と……あんたらにちょっと聞きたいことがあるんだが……」



 先ほどまでの、少し高めの男の声から、低い女の声に変わっていた。

第1話をお読みいただきありがとうございます。


宿屋兼食堂バイファで、店員のリリーにちょっかいを出す怪しげなひげもじゃの行商人。


彼を苦々しく見つめ、店外へ追った地元の若者たちは路地裏で凄みますが、事態は思わぬ方向へ!?


へらへらとした態度から一転。


圧倒的な強さで若者たちを一方的に蹂躙した行商人の口から漏れ出たのは、不気味に響く低い「女」の声……。


ブルンの夜に蠢く、この奇妙な行商人の目的とは一体!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「謎の行商人現るWW」「リリー、案外人気者WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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