第6話・買い出し部隊とお留守番~二人に絡む大勢の~
第2章 要衝都市の光と影
第6話・買い出し部隊とお留守番~二人に絡む大勢の~
それぞれの用事を済ませ、神殿の門前で合流した後、商店が軒を連ねる街の一角へと移動する。
「じゃあ、ちょっと買いに行ってくるから、お前たちはここから動くなよ?」
少し歩き疲れてしまったインスとアインは商店街の中ほどで休憩していることになり、他の三人が手分けして店を探し、買い出しをしてくることになった。
本当は、誰か一人ぐらいは傍に残しておきたかったのだが、思ったよりも店の数が多くて、どこが何を取り扱っているのかよく分からない。
最低限の自衛くらいはインスもできるし、魔法に関しては呪いがあるため使うはずもないので、二人をおいて手早く済ませることにした結果だった。
「分かっています。それより、暗くなる前に宿に戻りたいですから、さっさと済ませて来てください」
念を押してくるステールに、子供ではないのだからと呆れつつもインスが促せば、気にしながらも三人は別方向へと駆けていく。
「……さて、アイン君。寒くないですか?」
「はい。大丈夫です……インス様は……?」
見送って、手を繋いだアインと二人、通行の邪魔にならないようにと道の端で小声でやり取りをする。
行きよりも気温が下がって、吐く息の白も濃くなっている。
建物の影には雪かきされた結果、小山を作る雪が薄く凍り付いて残っていた。
「私も平気ですよ……そうだ、先ほど神殿で、護符を譲っていただいたので、あとで見て下さい」
「……え? ……えっと、はい……?」
にっこりと微笑むインスに、アインはちょっと戸惑いながらも素直に頷く。
「よう。暇なら俺たちとイイことしない?」
「「……………」」
そうして、話をしている二人を、街の住人と思しき男たちが囲んだ。
一人が声をかけ、他に数人の男たちがニヤニヤと……何がおかしいのか分からないが妙な笑いを浮かべてインスとアインをじろじろと遠慮なく見てくる。
ここまでの道のりで何度もあった、現地の住人からの妙な声掛けが、ここブルンでも起きただけ。
「…………っ」
「……申し訳ありませんが。連れと待ち合わせていますので……」
ギュッとアインがインスに抱き着き、インスもアインをそっと抱き寄せて、貼りつけたような笑みで断りを伝える。
「待たせるような奴はほっといてさ、俺たちと楽しもうぜ?」
「……いえ、ですから……」
いつもより、少し人数が多くて面倒そうだな……と思いながらも様子を窺うインスに、男たちはどんどん距離を詰めてきた。
「遠慮すんなよ? すぐによくしてやるからさ?」
「そうだぜ? 最高の時間をくれてやるよ」
「「…………っ」」
どこか、卑下たような笑いを浮かべて、寄ってくる男たちから距離を取ろうと後ろに下がれば、とうとう道の端から路地裏に押し込められてしまう。
人通りも殆どない、建物と建物の間にある路地には表通りと違い、まだ白い雪が厚く積もっている。
一歩下がるごとにギュッと小さく音を立てて踏み固められ、その音をかき消すように男たちがギシギシと踏み荒らす。
「……待ち合わせている。と言っているでしょう? どいてください……」
アインを建物側に寄せて、庇うような位置に立ったインスが道を開けるように告げる。
「遠慮すんなって!」
「……っ」
そして、最初に声をかけてきた男が無遠慮に手を伸ばしてきたのを目にし、アインが身を強張らせた。
「っ!? イデデデデデっ!!??」
「……触らないでいただけますか?」
直後、男が伸ばしてきた手を、逆に掴んだインスが遠慮なく捻り上げる。
愛想笑いすら消え去って、冷ややかに見るインスにギョッとして、他の男たちが一瞬怯んだ。
「……こ……っ、の……っ!!」
曲げてはダメな方向へと手首を捻られ、悲鳴を上げた男は慌てて乱暴にインスの手を振り払い、数歩後ろに下がる。
ぎろりと鋭い視線で睨みつけ、捻られた手首を押さえて痛みを堪えた。
「舐めやがって! 後悔するぞ!!」
「……………」
吠える男を冷ややかに見ながら、インスは冷静に立ち位置を確認する。
建物と建物の間、という路地裏は表の通りと比べて狭く、道の前後を男たちに塞がれてしまっている。
更に、今回絡んできた男たちは十人近い大所帯。
さすがに、この人数を殺さずに制圧するのは少し、難しい。
(……何人かを落として、それで逃げてくれればいいですが……)
立ち回りを失敗すると逆にこちらが落とされかねない。
なんにせよ、最優先はアインの安全確保だ。
(……まったく! どうして、どこででもこうやって妙な声をかけてくる輩が多いのでしょう!!)
正直、皇都を出発して、初日は流石に体調が悪すぎたせいで現地の住人とほぼ接触することもなかったので別とし、二日目以降、立ち寄る先、立ち寄る先でこうして絡んでくる男たちが鬱陶しくて仕方がない。
クロードやステールが傍にいる時は別として、どういう訳かアインと二人きりになった隙に妙な笑いを浮かべながら寄ってくるのも意味が分からない。
(何なんですか!? 私とアイン君だけなら、何か要求が通るとでも思っているのでしょうか?)
これまでの苛立ちもだいぶん溜まっていて、インスの方もこの理不尽さに怒りが湧いてきていた。
第6話をお読みいただきありがとうございます。
買い出しに向かったステールたちを待ちながら、二人でお留守番をすることになったインスとアイン。
しかし、そんな二人の前に、ニヤニヤと妙な笑みを浮かべた街の男たちが立ち塞がります。
次々と距離を詰め、無遠慮に手を伸ばしてくる男たち。
アインを守るため、愛想笑いを消し去ったインスは、容赦なくその手首を捻り上げます。
なぜか二人きりになると、行く先々で執拗に絡んでくる鬱陶しい男たち。
路地裏に追い詰められた状況で、インスが下す冷徹な決断とは?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




