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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第2章 要衝都市の光と影

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第5話・礼拝堂に舞い降りた~幼き天使と魔女の申し子~

第2章 要衝都市の光と影



      第5話・礼拝堂に舞い降りた~幼き天使と魔女の申し子~



 神官としての修行を積んでいるかどうかは、その祈りの所作を見れば一目でわかる。



 一般の信者がごく簡単に行う動作の一つ一つにきちんとした意味があり、作法があり、込める祈りがあると知っているから。



 ブルンの神殿の礼拝堂は、夕方に近いこともあって、夕拝を行う神官らや、敬虔な信者たちも訪れていた。



 その一団に紛れるようにそっと、目立たない後方隅でアインや、クロードとリオンもきちんとした祈りを捧げる。



 神官としての修行も積んでいる呪師見習いのアインは正式なものを。


 そして、神殿孤児院で育ったクロードとリオンも……敬虔な信者が行う程度にはきちんとした作法でもって祈りを捧げる。



 胸の前で、大きく一度。


 その上に、小さくもう一度。


 大陸の守護神である女神・ディエルの十字を描き、右手の拳を、左手で包むようにして祈る。



 今日一日の感謝を。


 また明日も無事で過ごせるようにと願って。


 日々を、己に恥じないように懸命に生きることを誓う。



 楽な方へと流されないように。


 たとえ、困難であっても、まっすぐに。



 その、神の教えに沿うとすれば、()()()()は正しく女神の巫女と言えるだろう。



 己の決めた正しき道を一心不乱に突き進む。


 それがどれほど困難な道のりだとしても、成し遂げる、と決めたことは迷わない。



(……そのおかげで、まあ、こうして今、こんなところに居るわけだが……)



 薄く目を開けて、チラッとアインの様子を確認しつつも、リオンの思考はとっくに祈りからは逸れている。



 所作だけは敬虔な信者と同じでも、そこに本当に敬虔な気持ちがなければ……まあ、当然。



 神殿孤児院で、物心つく前から教え込まれる祈りの所作は、息をするように出る()()でしかなくて、そこにどんな意味がある、とか、どんな気持ちで向き合う、とかいうのは個人による。



 多くの子供たちはただなんとなく、大人に言われるがままに真似してやっているだけなので、当然敬虔な信者に育つ者ばかりではない。



 実際、食前食後の祈りなど、どれだけ言って聞かせられてもおざなりになってしまうのがいい証拠だ。

 所作だけは美しいと言えば貴族の祈りの作法などもそれに近い。


 もっとも、流石に皇族は年中行事などで神殿での祭事の際は所作だけとはいかないので、ジャンヌでさえもきちんとした祈りをすることはある。



 ただ、それが外に出る事もないので、リオンも、もちろんクロードも知らないし、ファンも正確には把握していない。



 わがまま放題で、色々足りていないように見られてはいてもジャンヌもきちんと皇族だということ。



 そして、人前で所作を見られるのは当然神官が一番多くなる。



 だからか、アインの祈りの姿に先ほどからチラチラと……横合いから視線が投げかけられていた。



 まあ、気持ちは分かる。


 リオンも礼拝堂で正式な祈りを捧げる姿を見るのは初めてだが、正直、驚いている。



(……アイン(こいつ)……本当に人間か……?)



 そう思うほどに、現実離れした雰囲気を纏って、真摯に祈りを捧げるアインの姿は、存在しないはずの羽の幻が見えてきそうなほど。



 多くの信者は礼拝堂に並べられた長椅子に座って祈るのに、神官たちがするように床に膝を着き、額づくような体勢をしているのも目を引く理由だろう。



 アインのような、どう見ても幼児でしかない子供が、神官の所作を息をするように行っているのだ。


 その容姿の美しさとも相まって、「もしや天使様がご降臨くださっているのでは?」と言った思考が居合わせた者らの中で育っていた。



 暫くそうして祈りを捧げていたアインが、ふっと目を開き、ゆっくりと身を起こす。



 時間にして十数分。



 神官でなければかからない、絶妙な時間をかけての礼拝を終え、けぶるような深い紫色が緩やかに祭壇の奥に設置されている複十字(ディエルじゅうじ)を見上げた。



「「……………」」



 見守るリオンとクロードが、居合わせた者たちが、思わずじっと見つめていると、その視線に気づいたのか、ぱちりと一度瞬きしたアインの目に困惑と恐れが浮かぶ。



「……ぇ……?」


「……………」



 オロオロと周囲を伺う様子に、クロードが無言でそっとアインの頭を撫でた。



「……もうよさそうか?」


「ぁ……はい……。ごめんなさい……お待たせしてしまって……」



 溜め息を一つ、リオンが問いかければ、怯えた様子でそう答えてきて、その返答にまた溜め息を吐く。



「何で謝るんだよ? どうせインスたちの方が終わるまで待たなきゃいけないんだ。お前が時間かけてようが何だろうが、問題ないだろ?」


「……ぇ……っと……? ……はい……?」



 少し呆れたように言うリオンに、なら、どうしてみんな自分を見ているのか? と困惑しながらアインは頷く。



 そんな、やり取りを見せられて……



(((((……天使様が魔女の申し子と一緒にいる……????)))))



 居合わせた神官らや信者たちが混乱に陥っていることに、三人とも全く気づいてはいなかった。

第5話をお読みいただきありがとうございます。


礼拝堂でアインが捧げる、主神殿直伝のあまりにも真摯で美しい礼拝。


その現実離れした「天使」のような祈りの姿に、見惚れて言葉を失う周囲の神官や信者たち。


一方、形式的な祈りを終え、アインのあまりの規格外さに驚きつつも、どこか複雑な思考を巡らせるリオン。


礼拝を終えて周囲の視線に怯えるアインを、無言で、あるいは呆れた口調で、それぞれのやり方で安心させるクロードとリオンですが……?


幼児が放つ神聖な美しさと、孤児院育ちの「魔女の申し子」の異質な存在感。


まったく無自覚な三人の背後で、神殿を包み込んでいく「とんでもない大誤解」の行方とは?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「所作だけは敬虔WW」「天使なアインWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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