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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第2章 要衝都市の光と影

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第2話・神殿ですれ違う~二手に分かれて~

第2章 要衝都市の光と影



        第2話・神殿ですれ違う~二手に分かれて~



 神殿自体は、すべての集落に存在している。


 だが、呪師の絶対数が少ないため、神官呪師が常駐している神殿となると限られる。



 皇都から西方に向かうならブルンや、次の大きな都市であるオルデン。


 その後は、東の魔の森と呼ばれるゾーナの森を抜けた先にあるポルツォ。



 正規の神官呪師が常駐する神殿があるのはこの辺りまでで、そこから先は辺境。



 西の魔の森である、ヴェスラの森に入る前に寄れる都市はタクティオだが、そこの神殿にも、そして森を抜けた先にある、西部辺境伯が直轄する大都市・ベランチェスカにさえも正規の呪師の常駐はない。



 もっとも、タクティオやベランチェスカには()()()()()()呪師が、それなりの人数いるので、彼らに補充させればよい、と言ったところか……



(……気が重いですね……本当に、明日には皇都に戻る方を選んで下さればいいのに……)



 目的地であるバルバ島へのルートを思い出して、インスはそっと溜め息を吐く。



「? インス様……?」


「ああ……何でもありません……アイン君は、お祈りもしていきますか?」



 インスに左手を引かれて歩くアインが不思議そうに声をかければ、ほわりと微笑みかけたインスはそう言って、神殿での過ごし方を問いかける。



「……え、と……でも、お時間……」


「大丈夫ですよ。神殿の方に適温袋の魔力を補充して頂く時間が必要ですから……アイン君は、クロードさんと礼拝堂でお祈りしていて下さい……それとも、私に預けて補充して頂くのは不安ですか?」



 少し迷うように瞳を揺らすアインにそう問いかければ、アインは軽く目を見張った。



「そ、そんなこと……! でも、僕のご用事なのに……」



 思ってもみなかったことを言われて驚いたアインは、そうではなく、適温袋の魔力補充が自分の都合なのに、と言葉を濁す。



「私もいっぱい、お世話になっていますからね……アイン君が、私に預けることに忌避感がないなら、手分けをした方がいいでしょう?」


「……はい……」



 クスクスと笑うインスに、ちょっと困ったように視線を彷徨わせたアインは、けれど結局、素直に頷く。



 そうして、神殿に到着した後、アインはクロードに連れられて礼拝堂へと向かい、インスはステールと連れだって外殿の専用窓口へと向かう。



 ちなみに、リオンはクロードと一緒にアインの方に付いて行った。


 クロードとアインを二人きりにしたくないらしい。



 出入り口で業者らしい薄い紫色の髪の青年と鉢合わせて、人当たりのよさそうなその青年が道を譲ってくれたのに軽く会釈をしてすれ違う。



 その後ろ姿を、青年の濃いめの緑色の瞳が興味深そうに暫く見ていた。



「……魔力の補充、ですか……?」


「ええ……少々事情がありまして……」



 そんな、業者らしい青年の視線を特に気にすることもなく、窓口に歩み寄ったインスが適温袋への魔力補充を申し出る。



 すると受付の神官呪師はインスとステールを交互に見て、少し不思議そうに確認した。



 インスが着ているのが皇宮呪師の制服である黒いローブで、ステールが着ているのが皇宮護衛官の制服である黒い隊服であること。



 何より……



(……え? この辺りでは見たこともないくらいの魔力量を感じるのに、適温袋への魔力補充を、わざわざ神殿で……???)



 インスから感じ取れる魔力量の多さに疑問を覚えたから。



「ああ……それと、もし、予備があれば、ですが……」



 その様子に、ふと思い至ったインスが追加の注文を伝えると、受付の神官呪師は軽く目を見張った後、すぐに準備を始める。



「お待たせいたしました……現在、当神殿で取り扱っている護符の類は、こちらになりますが……」


「ありがとうございます。……拝見させて頂きますね」



 一旦、応接室へと通されたインスとステールが待っていると、別の神官を連れて受付の神官呪師が戻って来た。



 神官は両手で抱えることのできる大きさの箱を持っていて、テーブルの上にそれを置いて蓋を開ける。



 中にはぎっしりと複十字(ディエルじゅうじ)の護符が詰まっていて、思わぬ数にステールが軽く目を見張った。



 え? 何でこんなに?



 と内心で驚くが、インスは当然の表情で一つ一つを取り出し、何かを確認して選り分けていく。



 何をしているのかと、困惑気味な視線を向けるが、一切応えない。



 一見すると、箱の中にあった護符はどれも全く同じ、極シンプルな造りのディエル十字。



 けれど、何が違うのか、インスはいくつかのグループに分けて行き、その作業を黙って見つめる()()()()が目を丸くして絶句していた。



「……この辺りは、流石に販売には向かないと思います……気休めにもなりませんね……」



 ややあって、いくつかに分かれたグループのうちの一つを示して告げたインスに、神官呪師はそっと息を吐く。



「……分かりました。そちらは差し戻しましょう……」


「それがよいかと……最悪、信仰に翳りを生みかねません……」


「「……は……?」」



 すんなりと頷いた神官呪師に頷き返したインスの言葉に、ステールと箱を持ってきた()()が驚く。



「次に、こちらは()()()()()()で問題ないでしょう……まあ、できるだけ、敬虔な方にお譲りした方がいいでしょうが……」


「なるほど……。では、こちらは一般向けですか?」



 続いて、最初より少し数が多いグループをインスが示し、頷いた神官呪師がその隣のグループを指す。



「そうですね……そちらは安定しているようですから、一般向けでしょう……」



 頷き返したインスは最後に、残るグループのうちの二つを示す。



「この二つは、()()()に残しておくことをお勧めします……万が一の時には、役に立ってくれるでしょうから……」


「……万が一……?」



 インスのその言いに、流石に黙っていられなくなってステールが口を挟んだ。



「……お前……何してるんだ……?」



 ……と。

第2話をお読みいただきありがとうございます。


神殿に到着し、二手に分かれてそれぞれの目的へと向かう一同。


アインとクロードを二人きりにしたくないという、どこか複雑な対抗心を覗かせて礼拝堂へと付いていくリオン。


一方、大量の護符を前に、一切の妥協なくプロの審美眼で仕分けを始めるインス。


そんなインスのあまりに徹底した「ダメだし」の様子に、ただただ困惑するステール。


適温袋への魔力の補充のはずが、静かな神殿にじわじわと波紋が広がっていきます。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「リオンがリオンしてるWW」「業者の青年(意味深)WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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