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皇宮呪師は護りたい!⑪聖皇国列伝秘聞~盤上《たびじ》で踏割《おど》る薄氷の檻枷《えにし》~  作者: norito&mikoto
第2章 要衝都市の光と影

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第1話・午後の都市を散策す~先を見越した補充のために~

第2章 要衝都市の光と影



      第1話・午後の都市を散策す~先を見越した補充のために~



 ブルンに到着し、宿が決まったのが夕方早く。


 まだ夕食の時間までには余裕があるので、インスはアインを連れて少し出かけることにした。



「ステールさん、クロードさん。申し訳ないですが、神殿に行こうと思います」


「は? いきなりだな……」



 荷物を運びこんで一息ついたところで言われて、ステールが軽く眉を顰める。



「……魔力の補充をお願いしておかないと……次に大きな都市というとオルデンですからね……そこまで持てばいいですが、難しかと思います」


「……あ~。……なるほど……?」



 軽く肩を竦めたインスの言葉に、ステールは頭の後ろを掻きながら、曖昧に頷く。



 確かに、呪いのせいでろくに魔法が使えない今のインスとアインでは、魔法の道具に魔力を補充することもままならない。


 途中の村や町にも神殿は存在するが、規模は小さいので、よそから来た者のために道具への魔力補充を頼んでも……まあ、正直難しいだろう。



 何しろ、魔法を使える『神官呪師しんかんじゅし』がいる筈もないのだから。



 そうなると、今のうちに使用した分の魔力を補充し、万が一にも魔力切れで使えない、という状態を避けるのは当然の判断。



「……ついでだ、リオンも連れて行って、少し物資の補充もしておくか……」


「……………変なものは買い込まないで下さいよ……?」



 腕を組み、少し上に視線を向けて考え込んでいたステールが、よし、と一つ頷くと、華が咲くような笑顔をしつつ胡乱げな眼差しで睨む、という器用な真似をしたインスが釘を刺す。



「分かってるよ! いつもの茶葉と菓子くらいにしておくから、安心しろ」


「……まあ、あとで一応、確認しましょう……」


「ほんとに信用ないな!!」


「「「………………」」」



 何を買うかを伝えたステールに、仕方ないとインスが溜め息を吐く。


 思わず言い返したステールを、クロードも、インスも、アインさえもが無言で見つめ……



「…………ステール。お前……何したんだよ……?」



 同行者として飛び火したリオンが顔を引きつらせたのも、まあ、致し方のないこと。



「……リオン。前から言ってるだろ? 自分の知らないものは使うな……知っているものでも加工された奴には注意しろ……特に、茶葉とか香辛料とか乾物とかは……見分けが付かない分、危険だ……」


「はぁ? ……いや、わけわかんねぇぞ……?」



 真顔で言ってのけたステールに、ますます困惑したリオンは首を傾げるが、とりあえず出かけることは決まり、ジャンヌの泊まる部屋の前で仁王立ちしているファンに、クロードが伝えに行く。



 そうして、まず先にブルンの神殿へと向かう。



 インスとアインは外套に一体化したフードを浅く被り、インスはその上から、温かな薄手の大判ストールを重ねて肩までしっかり、アインの方は首元にかわいらしく結ばれたマフラーを巻いて防寒している。



 ちなみに、クロードとステール、そしてリオンはネックウォーマーと帽子で、動き回っても邪魔にならず、風に飛ばされることがないような仕様になっていた。


 帽子をかぶっているためか、リオンの髪色もあまり目立たなくて済んでいるので、あからさまに嫌がる者も少ない。



 日が傾きかけたブルンの街を、ステールを先頭にして、インスとアインが手を繋いで歩き、その後ろをクロードとリオンが並んで続く。



 魔女の髪色とされる夕日の赤が、古ぼけた街並みを鈍く朱色に染め上げ、家路を急ぐ人々が足早に行き来する。



 街路を行きかうのは徒歩の者だけではなく、緩やかに馬を歩かせる者も、馬車が行き交うことも、中には荷車を引いている者もいて……



(……少し、危ないですね……)



 人通りの多さに、微かにインスは眉を顰める。



 皇都ほどの広さも、馬車や荷車、騎馬と徒歩の者との棲み分けもされていないので、人通りの多い今の時間は少し危険だった。



 かといって日が暮れてからでは、流石にアインのような幼い子供を連れて出かけるのには適さない。


 何より、ステールが言ったような買い出しもできなくなってしまうだろう。



 アインは建物側を歩かせて、左手をインスが優しく、けれどもしっかりと繋いで、そのぎこちなくも一生懸命な歩みに合わせて歩く。



 吐く息は白く濁り、大勢が行きかうおかげか、街路の雪は殆ど溶けて、薄く積もっているだけ。



 ステールもインスの意図やアインの隻眼の不便(じじょう)を理解しているので、その巨体で二人を完全に隠すようにして障害物を避けていた。



 もちろん、インスとアインの後ろを歩くクロードも承知の上。


 リオンは少し、あまりの遅さに困惑気味ではあるが、雪路は滑りやすいので、まあ、仕方ないか……と、気にせずにいる。



 そのリオンも建物側を歩いていて、密かにクロードの巨体で守られているのだが、本人は全く気づいていない。


 何しろ、クロードと並んで歩く時はいつも()()なので、一切の疑問を抱くことがなかった。



 今回、皇帝執務室……というよりは、恐らくバリー帝本人による采配なのだろう。



 極秘討伐隊の面々には、新しく装備品が支給されていて、特に雪深い季節であることを考慮してか、防寒具の類や靴などは……よくもまあ、出発までに間に合わせたものだ……と言えるほどの性能を兼ね備えている。



 特に靴は雪や氷、ぬかるみなどで滑ることも、沈むことも殆どなくなり、しっかりと水を弾いてしみ込ませない、水上牛の革が使われている。



 更には、インスとアインの靴には中敷きとして兎の毛皮が使われており、アインの小さな手をすっぽりと包む手袋も兎の毛皮を内側に貼った特別製。


 なお、この兎の毛皮は、出発前に行われたアインの野営訓練の際にステールが仕留めた雪中兎だった。



 フード付きの外套や手袋、靴。


 マフラーやストール、ネックウォーマー。


 帽子や耳当て以外にも、アインが餞別で受け取った適温袋や吹雪の際に目元を保護する魔法の道具など、様々なものが用意されている。



 それは、この先にある大山脈の間に広がる、二つの魔の森や西方の、街道の整備も不十分な地域に赴くための最上の品。


 むしろ、そういった装備品の完成を待て、と言ってギリギリまでジャンヌを足止めしたようだった。

第1話をお読みいただきありがとうございます。


先を見越して神殿への魔力補充に向かうインスとアイン。


その前後をがっちりと固めるお世話係たちの、言葉にしない「不器用な過保護」。


皇帝が時間稼ぎを兼ねて準備させた装備品の本気度と、そこにこっそり紛れ込んでいる、かつてステールが仕留めた雪中兎の毛皮。


朱く染まり始めたブルンの街で、この先、過酷さを増していく西方への旅路を思いながらの、ひと時の散策です。


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「ジャンヌを置いて散策WW」「皇帝からの支給品(意味深)WWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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