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  作者: もこもこハダカデバネズミ


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5/9

電車という密室での危機

 一時期、何故か電車内で危険とのエンカウント率上昇キャンペーンが発生していた。殺しますおばさんとヒップホップ兄さんと死ぬんですよ姉さんだ。最悪の字面。


 殺しますおばさんは京王多摩センター(みんなが大好きサンリオのお膝元)の電車で、音楽を聴きながら電車に揺られてたら同じ車両の人が次々と左右の車両に移動していった。

 本当に、左右にすーーーっと次々に静かにはけていったので、不思議に思ってイヤホンを外したら隣に座ってた女の人がずっと「殺しますよォ! 死ぬんですよ! 殺すんですよ!」と、真っ直ぐ前を見ながら声を上げてた。正面の窓には私とその人しか映っていない。

 車両には私とその人しかいなくなってたので、私は全てを諦めてもう一度イヤホンをつけた。音漏れはしていなかったと思う。ちょっと寝ていたからイヤホンを貫通して聞こえる声を、単語として聞き取れていなかった。

 その時聞いていたのはヴィバルディの怒りの日だったのと、空が青くて美しく、入道雲が綺麗だったので夏だったことを覚えている。



 ヒップホップ兄さんとのエンカウント場所は忘れたが、確かどこかに遠出した時のことだったと思う。

 私の遠出は新宿あたりがMAXなので、当時の最寄り駅から新宿までのどこかの駅だったのではないかと推理ができる。私は座席に座っていて、立っている人はほとんど居なかった。

 誰も喋らず沈黙に満ち、ポツポツと空間の空いている車両の左側から、堂々登場ヒップホップ兄さん。BGMは無く、ヘイヨーイエイとノリノリでなにか歌いながら観客席になんかこう……人差し指と小指だけ立てたやつ……あの手でビシッとポーズを決めてはズンズン( ง*`꒳´*)ว と近付いてくる。

 その場の全員が下を向いた。夢だと思ったんだと思う。少なくとも私はそう思った。しかしヒップホップ兄さんは現実だったらしく、一本道である車両をズンズン( ง*`꒳´*)ว 近付いてくる。そして私の前で止まった。もうおしまいです。


「とにかくもう、北海道の野菜とか信じられないイエア」


 危ないところだった。隣に座っていたお兄さんの抱えていた、白菜の入ったビニール袋が標的だったらしい。私ではなかった。

 隣のお兄さんは決して顔をあげず、ヒップホップ兄さんは特に気にした様子もなくまた歌いながら進んで行った。

 誰も傷つけることなく、害意も見られなかったので良い怪人だったと思う。それはそうとして、北海道の野菜が信じられなかったらあとはどこの野菜を信じるのだろうか。



 死ぬんですよ姉さんはシンプルに満員電車で真横の姉さんがずっと「死ぬんですよ……ふふ、死ぬんです、死ぬ……ふふっ」と呟いていただけなのでこちらも平和な方。

 少なくとも殺しますおばさんと違って他害の意思は示してない。問題は電車が急行で結構長い間、真横で囁かれていたことだ。

 殺しますおばさんは各駅だったからすぐ逃げられたけど、死ぬんですよ姉さんとは長い時間を過ごさざるを得なかった。



 これが一年位の間で連続して起こったので、多分この年の私はそういう星の下にいたんだと思う。

 あと、いま思い出したけどレオタードおじさんがいたわ。いるわ。たまに町田でオマルに跨ってるおじさん。私が高校生の頃からつい数年前まで居たから、もしかしたら二代目レオタードオマル跨りおじさんが誕生しているのかもしれない。

 それか全国各地に色違いレオタードで複数存在しているのかもしれない。こっちの怪人も他害の意思は示してないので、安全な方かなと思う。


 安全かな……まあ、刃物とか持ち込めない服装だし、安全か……。

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