西瓜と青いシャツ スティーブ・バルマー
西瓜と青いシャツ
胸の奥がぎゅっと縮こまるような重苦しさが広がり、スティーブ・バルマーは肘をついていた木製テーブルの端を指先で強く引っ掻いた。居間の畳の上には、首回りが黄ばんで伸びきった半袖の丸首シャツと、裾のほつれた綿の短パンが脱ぎ捨てられたまま転がっており、朝から回しっぱなしの扇風機がぬるい風をその上に送り続けている。この蒸し暑い部屋の中でいつまでもじっとしていても仕方がないと頭では分かっているのに、足の親指で畳のささくれをいじる癖ばかりが出てしまう。
「もう二時半を回っているじゃないか」
喉がひりつくような渇きを覚え、スティーブはよれよれの青いポロシャツの襟元を右手で何度もパタパタとあおぎながら立ち上がった。台所の小さな流し台には、昼に食べた素麺のつゆが入ったままの茶碗と、先が少し欠けた割り箸が水につけてあり、水道の蛇口からはぽたぽたと一定の間隔で雫が落ちてステンレスを濡らしている。昨日の夜に冷蔵庫の野菜室へ押し込んでおいた西瓜の切れ端がまだ残っているはずだと記憶をたどり、彼は重い足取りで冷蔵庫の取っ手に手をかけた。
「冷たいものを一口食べれば、少しは頭も冷えるだろう」
期待で少しだけ胸が弾み、スティーブは銀色のアルミホイルに包まれた大きな西瓜を両手で慎重に引っ張り出した。薄暗い台所の隅には、三日前に買ってきたきり放置されている玉ねぎのネットがぶら下がっていて、外側の茶色い皮が床に二枚ほど落ちている。この西瓜は駅前の八百屋で店主が手押し車から下ろすのを手伝った時に、おまけとして安く譲ってもらったものだったなと思い返しながら、彼はまな板の上に包丁を斜めに当てた。
「あの店の親父、お釣りの計算を間違えて五十円多く渡そうとしてきたっけ」
口いっぱいに広がる甘みと冷たさにわずかな安堵が満ちて、スティーブは赤い果肉に勢いよくかぶりつき、黒い種を指先で器用に摘まんで空の皿の上へ飛ばした。窓の外では入道雲がぐんぐんと高くなり、近所の子どもたちが自転車のベルを派手に鳴らしながら路地を駆け抜けていく音が網戸越しに響いている。食べ終えた後の皮を三角コーナーの生ゴミ入れに押し込みながら、夕方になったらあの洗濯物を取り込んで畳まなければならないなとぼんやり考え、彼は濡れた手を青いポロシャツの裾で無造作に拭いた。
「さて、日が暮れる前にもうひと仕事片付けるとするか」




