接触
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大陸軍仕官の為、ブローニュを訪れたあたし達、現在あたし達は接触を図る為に演習中の擲弾兵部隊の所へと駒を進めていた。
演習中の部隊は擲弾兵部隊と驃騎兵部隊がいたけど驃騎兵と言う兵種は婦女子の人気が高い為に手の早い人間も多く、仕官が決まった訳でも無いのにそう言う手合いの前にスコルやアイギスを晒すのが何と無く嫌だったのがこの選択の理由だったりする。
あたし達が擲弾兵部隊に近付いていると向こうもそれに気付みたいで指揮官とおぼしき人物がこちらへと近付き始め、それを確認したあたしはスコルとアイギスに頷きかけながら駒を止めて地面に降り立った。
「……見たところ、傭兵と見受けるが、何か用だろうか?」
詰問しようとして近付いてきたらしい指揮官らしき人はあたし達の容姿(スコルやアイギスは言わずもがなだし、スコルやアイギス程じゃ無いけどあたしだってキャバ嬢してたんだからそれなりに容姿には自信があったりする)に気付くと表情を穏やかにさせながら口を開き、その言葉を受けたあたしは成るべく余裕が見える様に努めながら口を開いた。
「ガリア帝国への仕官を望んで来ました、失礼ですが貴官は?」
「これは失礼、私はジョゼフ・スルス大尉、演習中の擲弾兵中隊の中隊長をしている」
あたしの言葉を受けた指揮官スルス大尉は穏やかな笑みを浮かべながら応じていたけど、突然怪訝そうな面持ちになってあたしの後方に控えているスコルを見ながら言葉を続けた。
「すまない、貴官の後ろにいるのは、もしや銀狼スコルでは無いのか?」
「へえ、あたしの事、知ってんだね」
スルスの言葉を聞いたスコルは不敵な笑みを浮かべながら返答し、スルスは大きく頷きながら言葉を重ねた。
「銀髪を靡かせながら戦場を駆け巡る狼、銀狼スコル、サリッサを巧みに操る紅の槍騎兵カミラと共に特定の主に仕えず活動する傭兵としてして名高く、大陸軍内でもその名は轟いている」
「へえ、そうなんだでも主がいないってのは過去の話だよ、今のあたしはカミラと一緒にこの女に忠節を尽くしてるの」
「スコルとカミラを、従えたと言うのか!?」
スコルの言葉を受けたスルスは驚きの表情であたしを見詰めながら声をあげ、あたしが面映ゆさを感じながら頷いているとアイギスが口を開いた。
「現在カミラさんはこの方の指揮下にあるヴァイスラント槍騎兵中隊の長としてドイッチュラント南部の集結地におります、その地にはマリーカ・ヴァイセンヴェルガーさんが率いる猟兵隊を基幹に臨時編成した猟騎兵中隊やメルクリリスさんが率いるエルフ魔砲兵隊を騎乗させた騎乗魔砲兵中隊が集結しております」
「ヴァイスラント槍騎兵に猟騎兵、更には騎乗魔砲兵まで、しかも指揮するのは名だたる傭兵隊の指揮達」
アイギスの説明を聞いたスルスは驚きの表情を浮かべたまま呟いた後にあたしに視線を戻すと改まった口調で言葉を続けてきた。
「これまでの話からすると貴女は最低でも騎兵大隊規模の傭兵隊を指揮している様ですね」
「……スコルとカミラが尽力してくれた結果編成出来た部隊なのが少々面映ゆく感じていますが、それでもあたしが指揮官であるのは間違いありません、あたしは宝積寺裕香、ガリア帝国への仕官を願いここブローニュを訪問しました、上官への取り次ぎを願います」
「……了解しました、取り次がせて頂きます」
スルスの言葉を受けたあたしがそれに応じつつ上官への取り次ぎを願うとスルスはゆっくりと頷きながら応じ、その後に微笑を浮かべながら言葉を重ねてきた。
「実は今回の演習で大隊本部に師団長が視察に訪れています、ですのでこの事を報告すれば恐らく師団長との面談も可能と思われます」
「それは幸運ですね、助かります」
スルスから伝えられた言葉は願っても無い内容であたしが頷きながら応じると、スルスは微笑して頷くとあたし達にこの地で待つよう伝えた後にこの事を報告する為に陣営の方へと向かって行き、あたしがそれを見送っているとスコルが嬉しそうに笑いながら声をかけてきた。
「良かったね、裕香」
「うん、スコルやアイギスのおかげだね」
あたしが笑顔でスコルとアイギスに声をかけると、スコルは嬉しそうに狼の尻尾を振りながら頷き、一方のアイギスは少しはにかみながら口を開いた。
「私はただ裕香隊長に従っている皆さんの事を伝えただけですよ」
「もう、アイギスは恥ずかしがりやさんだね、本当は嬉しいくせに」
アイギスの言葉を聞いたスコルは笑いながら声をあげ、それを受けたアイギスは頬を赤らめさながらあたふたと言葉を続けた。
「……そ、それは、その、う、嬉しいのは間違いな、あ、いや、違っ……違う訳では無くて、で、出来れば、わ、私自身の力で、喜んで……あっ……いや、その」
真っ赤な顔であたふたと呟くアイギスの姿は何時もの凛々しい姿からは想像できないくらい可愛らしくて、あたしはその姿とあたふたと出てくる言葉に頬が火照るのを自覚しながらアイギスに向けて口を開いた。
「アイギス、スコルの存在と貴女の説明のおかげであたしは高官との接触が果たせそうなんだよ、だからありがとねアイギス、そして今度は貴女の力をあたしに貸して頂戴ね」
「……裕香隊長、は、はい、任せて下さいっ!!私の力存分にお使い下さいっ!!」
あたしの言葉を受けたアイギスは力強く頷きながら返答し、あたしは笑顔で頷く事でそれに応じた。
それからあたしがスコルやアイギスと暫く談笑していると陣営の方から騎乗した士官らしき人が此方に向けて駒を進めてくるのが確認され、それを確認したあたし達は姿勢を正してその到着を待ち構えた。
「貴女方が我が軍への仕官を求めている方々ですね、私は師団幕僚のアンリ・アルフォンス中佐です、貴女方の事を報告された師団長が直々に面談を希望しております、案内しますので御同行願います」
「ありがとうございますアルフォンス中佐、それでは同行させて頂きます」
士官、アルフォンス中佐の声を受けたあたしは頷きながら応じ、それを確認して馬首を翻したアルフォンスに続いてあたし達も駒を進め始めた。
(師団長……一体誰だろう、この時期なら元帥まで登り詰めた人物も何人かいるはずだけど)
そんな事を考えながら駒を進めている間にあたし達は陣営に到着し、約2年にのぼる駐留期間の為に堅牢さより快適さを重視した造りとなってしまっている陣営を進んでしっかりとした造りの建物の所に到着した。
「到着しました、ここが擲弾兵大隊の本部になります、師団長はここで貴女方の到着を待っております」
到着したあたし達がアルフォンスの説明を聞きながら馬から降りていると、報告を終えたらしいスルスが建物から姿を現し、あたし達に気付いたスルスは微笑と共に一礼してから歩み去って行った。
「案内します、こちらにどうぞ」
あたし達がスルスを見送っているとアルフォンスから声がかけられ、それを受けたあたし達が頷く事で応じた後にその案内で建物の中へと入った。
建物に入ったアルフォンスは奥の部屋へとあたし達を案内し、ドアの前で一度立ち止まるとあたし達に視線を向けながら口を開いた。
「師団長は此方でお待ちです、準備は宜しいですか?」
アルフォンスの言葉を受けたあたしは手早く自分の身嗜みを確認した後にスコルとアイギスに視線を向け、二人が頷いたのを確認してからアルフォンスに視線を向けてゆっくりと頷いた。
「閣下、仕官希望者が到着しました」
「……分かった、入って貰いたまえ」
あたしの頷きを確認したアルフォンスが小さく頷いた後にドアをノックしながら告げるとドアの向こうからあたし達の入室を許可する声が聞こえ、それを聞いたアルフォンスがドアを開けるのを確認したあたしは少し緊張を覚えながらスコルとアイギスを従えて入室した。
「失礼致します」
入室したあたしは応接用のテーブルの近くに高級士官の装いに身を包んだ壮年の男性が立っているのをを確認すると、足を止めて一礼しながら口を開き、あたしの言葉を受けた壮年の男性は穏やかな笑みを浮かべて頷きながら口を開いた。
「……君達が我が軍への仕官を希望している者達だね、此方に来て座ってくれたまえ」
男性の穏やかな言葉を受けたあたし達はそれに従ってテーブルに近付き、それを確認した男性が椅子に座るのを確認してから男性と向かい合う形で着席した。
「御面談頂きありがとうございます閣下、あたしは宝積寺裕香、そして部下のスコルとアイギス・アウステルリッツです」
着席したあたしが小さく一礼した後にそう告げるとスコルとアイギスもゆっくりと一礼し、それを確認した男性はゆっくりと頷いた後に口を開いた。
「私は師団長のルイ・ガブリエル・スーシェ中将だ、君達の仕官希望をありがたく思っているよ」
(やっぱりあたしは運が良いみたいだね……初めて会えた高官が皇帝が認めた元帥なんだから)
男性、スーシェ中将の言葉を受けたあたしはそんな事を考えながらスーシェ中将を見詰め、後にアルブフェラ公爵となる未来の帝国元帥は穏やかな表情であたしの視線を受け止めていた。
目的の地に到着したあたしはスコルやアイギスと共に仕官の為に大陸軍との接触を開始し、初めて高官と接触する事が出来た。
あたし達が初めて接触出来た高官、その人物は後に皇帝自らが最優秀と認めた未来の帝国元帥……




