大陸軍(グランド・アルメ)
作者が趣味と欲望のおもむくままに書き散らかしている作品ですが、これからも宜しくお願い致します。
葉月六日・ガリア帝国ストラスブール
あたしは訓練後の夕食の際に行った方針確認から二日が経過した葉月四日にスコルとアイギスと共に宿営地を出立し、その二日後の葉月六日の夕刻に国境を越えてガリア帝国に入国して同国のライン方面有数の都市ストラスブールに到着した。
ストラスブールに到着したあたし達は厩に乗ってきた馬を預けた後にそこに隣接する宿へと入り、三人用の部屋の鍵を受け取って2階にある部屋に移動して旅装を解いた。
「裕香、お疲れ様」
「お疲れ様です、裕香隊長」
あたしがベッドに腰かけて一息ついているとスコルとアイギスから労いの言葉がかけられ、あたしは笑顔を浮かべながら言葉を返した。
「ありがと、二人もお疲れ様、取りあえず今日はゆっくり休もう」
あたしの言葉を受けたスコルとアイギスは穏やかな表情を浮かべながら頷き、あたしが同じ様に頷き返しながら小さく伸びをしているとスコルがドアに向かいながら口を開いた。
「裕香、あたし下で身体を拭く為のお湯貰ってくるね」
「うん、ありがとねスコル」
スコルの言葉を受けたあたしはその背中に声をかけ、スコルは狼の尻尾と手を振りながら部屋から出ていった。
「裕香隊長、隣、宜しいでしょうか」
スコルが部屋から出ていくの見送ったあたしが軍服の上着のボタンを外しているとアイギスから少し遠慮がちな声がかけられ、それを受けたあたしは上着の第二ボタンを外した後にベッドの上をポンポンと叩きながら言葉を返した。
「勿論だよ、座って、アイギス」
「ありがとうございます裕香隊長、それでは失礼します」
あたしの返答を聞いたアイギスはそう言いながら近づくとあたしの隣に腰を降ろし、座ったアイギスの重みにベッドが微かな軋みをもらした。
「……いよいよガリアに入りましたね、裕香隊長」
「うん、帝国総司令部があるブローニュまであと少しだね」
あたしの隣に座ったアイギスは視線を向けつつたしに話しかけ、あたしは頷きながら応じた後に更に言葉を続けた。
「……アイギスとスコルのおかげで無事にストラスブールまで移動出来たよ、護衛御苦労様、そしてありがとねアイギス」
あたしはそう言うとアイギスに向けて笑いかけアイギスは小さく頷いた後に穏やかな表情を浮かべながらにポツリと呟いた。
「……やっぱり、想像通りの方です」
「……えっ?」
アイギスの小さな呟きを耳にしたあたしは小さく首を傾げながら声をあげ、あたしの反応を目にしたアイギスは驚きの表情を浮かべながら手で口元を押さえながら言葉を発した。
「す、すみません、裕香隊長」
手で口元を覆いつつ謝罪するアイギスの頬は仄かに赤らんでいて、その様子を目にしたあたしは少しどぎまぎしながらアイギスに声をかけた。
「お、落ち着いてアイギス、それより想像通りの方ってどういう意味なの?」
「……そ、それは……その」
あたしの言葉を受けたアイギスは頬を赤らめさせたまま暫く口ごもっていたけど、暫くすると恥ずかし気に俯きながら言葉を続けた。
「ポニャトフスキー様の御命令を受けて裕香隊長の率いる部隊への参加を決意してカミラさんと一緒に裕香隊長の所に向かう間にカミラさんから裕香隊長の事を事を窺いました、カミラさんは裕香隊長の事を穏やかで包み込んでくれる様な雰囲気の中に鋭い芯が通った方、と言っていました。日は浅いですが裕香隊長と共に過ごして行く中で私もカミラさんと同じ感想を得ました」
「か、カミラもアイギスも買い被り過ぎだよ、あたしの事を」
アイギスの告げてくれた言葉を受けたあたしはその内容に面映ゆさを感じながら言葉を返し、それを受けたアイギスは真剣な表情で頭を振った後にあたしの軍刀を示しながら言葉を重ねた。
「裕香隊長が御持ちのその軍刀はカミラさんとスコルさんの主として相応しくある為に購入されたと聞いています。あの御二人を配下に出来たと言う幸運に舞い上がる事無く、御二人の主として相応しくあろうとする姿勢、裕香隊長、貴女は私が想像していた通りの方です」
「……ありがとね、アイギス」
真っ直ぐにあたしを見詰めつつ言葉を紡ぐアイギス、彼女の紡いでくれた言葉と真っ直ぐな視線を受けたあたしは頬が熱くなるのを感じながら御礼を言うと、更に言葉を続けた。
「か、カミラもアイギス買い被り過ぎだよ、あたしの事を」
アイギスの告げてくれた言葉を受けたあたしはその内容に面映ゆさを感じながら言葉を返し、それを受けたアイギスは真剣な表情で頭を振った後にあたしの軍刀を示しながら言葉を重ねた。
「裕香隊長が御持ちのその軍刀はカミラさんとスコルさんの主として相応しくある為に購入されたと聞いています。あの御二人を配下に出来たと言う幸運に舞い上がる事無く、御二人の主として相応しくあろうとする姿勢、裕香隊長、貴女は私が想像していた通りの方です」
「……ありがとね、アイギス」
真っ直ぐにあたしを見詰めつつ言葉を紡ぐアイギス、彼女の紡いでくれた言葉と真っ直ぐな視線を受けたあたしは頬が熱くなるのを感じながら御礼を言い、更に言葉を続けた。
「でもねアイギス、1つ訂正する所があるよ」
「……訂正、ですか?」
あたしの続けた言葉を受けたアイギスは戸惑いの表情を浮かべながらあたしの言葉の中にあった一句を反芻し、あたしは頷きながら言葉を重ねた。
「今のあたしはカミラとスコルの主であると同時にマリーカやメルクリリスの指揮官でもあるんだよ」
あたしはそう言いながら右手を掲げ、頬の熱に煽られる様に指先をアイギスの鼻先に軽く押し当てながら言葉を続けた。
「……勿論、アイギスの指揮官でもあるんだよ」
「……は、はい、裕香隊長」
あたしの続けた言葉を受けたアイギスは頬を仄かに赤らめさせながら少し掠れ気味の声をあげ、あたしがその声と押し当てた指先から感じるアイギスの温もりに心臓の鼓動が早鐘の様になるのを感じながら頷いているとドア越しにスコルの明るく弾んだ声が届けられた。
「裕香、お湯貰って来たよ、ドア開けてくれる?」
「……っわ、私ドアを開けますね」
「……えっ?……う、うん、お願いねアイギス」
スコルの言葉を耳にしたアイギスは弾かれた様に声をあげ、それを聞いたあたしが慌ててアイギスの鼻先から指を離しながら応じるとアイギスは頬を赤らめさせたまま小さく一礼した後に立ち上がってドアの所へ移動してお湯が満たされた大きな盥を手にしたスコルを迎え入れた。
「お待たせ裕香」
「うん、ありがとね、スコル」
あたしが盥を置きながら声をかけてくれたスコルに労いの言葉をかけるとスコルは狼の尻尾を嬉しそうに大きく振り、それを目にしたあたしが微笑いながら頷いているとドアに鍵をかけたアイギスが戻ってきて声をかけてきた。
「鍵をかけましたので身体を拭きましょう裕香隊長」
「うん、そうだね」
アイギスの言葉を受けたあたしは頷きながら同意し、あたしとアイギスの会話を聞いたスコルは嬉しそうに笑いながらあたしの隣に座って口を開いた。
「それじゃあ、服脱がせたげるね、裕香」
「……はい?」
スコルの口からサラッと出てきた衝撃発言にあたしは思わず間の抜けた声をあげてしまったけど、スコルはニコニコと笑いながら平然と言葉を続けて来た。
「だって身体を拭くんでしょ、だから、裕香の服脱がせたげるね」
スコルの告げられた衝撃的な言葉を受けたあたしは思わず絶句してしまい、あたしの無言を肯定と解釈してしまったスコルは笑顔であたしの背後に回り込むとあたしの背中に身体を密着させながらあたしの上着の第三ボタンへと手を伸ばしかけたけど、その手を途中で止めると真っ赤な顔で一連の状況を見詰めていたアイギスに向けて笑顔で口を開いた。
アイギスの言葉を受けたあたしは頷きながら同意し、あたしとアイギスの会話を聞いたスコルは嬉しそうに笑いながらあたしの隣に座って口を開いた。
「それじゃあ、服脱がせたげるね、裕香」
「……はい?」
スコルの口からサラッと出てきた衝撃発言にあたしは思わず間の抜けた声をあげてしまったけど、スコルはニコニコと笑いながら平然と言葉を続けて来た。
「だって身体を拭くんでしょ、だから、裕香の服脱がせたげるね」
スコルの告げられた衝撃的な言葉を受けたあたしは思わず絶句してしまい、あたしの無言を肯定と解釈してしまったスコルは笑顔であたしの背後に回り込むとあたしの背中に身体を密着させながらあたしの上着の第三ボタンへと手を伸ばしかけたけどその手を途中で止めると真っ赤な顔で一連の状況を見詰めていたアイギスに向けて笑顔で口を開いた。
「……ねえ、アイギスも手伝ってくれる?」
「……わ、私が、ですか!?」
スコルの言葉を受けたアイギスはその内容に真っ赤な顔のまま上擦った声をあげ、スコルは笑顔で頷く事で応じながらあたしに声をかけてきた。
「ねえ、裕香、いいでしょ?」
あたしの鼓膜を心地好く揺さぶるスコルの問いかけと背中に押し当てられた柔らかな膨らみの感触に真っ赤な顔ので見詰めてくるアイギスの視線、それらによってあたしの心臓は早鐘の様に五月蝿くさせられてしまい、あたしは頬が熱く火照らされてしまっているのを自覚しながら口を開いた。
「……そ、それじゃあお願いね、スコル、アイギス」
「うん、任せて、裕香」
「わ、分かりました、裕香、隊長」
あたしの言葉を受けたスコルが笑顔で返事をしたのに続き真っ赤な顔のアイギスが少し掠れ気味の声をあたしの前に近付き、それを確認したスコルはゆっくりとあたしの上着のボタンを外し始めた。
全てのボタンを外したスコルがゆっくりと上着を左右に開いてあたしのフロントホック式のブラに包まれた胸を露にさせると、近付いてきたアイギスは真っ赤な顔でブラを外す為にあたしの胸元に手を伸ばし、あたしは心臓が五月蝿く騒ぎ頬が熱く火照るのを感じながらスコルとアイギスに服を脱がせて貰った。
葉月九日・ブローニュ
ストラスブールで一夜を過ごしたあたし達は翌日以降も馬を走らせ続け、三日後にドーヴァー海峡に面した都市ブローニュに到着した。
あたし達はブローニュ近郊にある小高い丘の頂上に駒を進め、そこから降り注ぐ夏の陽射しに包まれる都市を望遠した。
本来はドーヴァー海峡に面した一地方都市であるブローニュ、現在のその周辺には多数の陣営が設営されていた。
設営されている陣営の周辺では演習中とおぼしき集団の姿があり、あたしは小物入れから小型の望遠鏡(部隊の物資購入の為ウルムを訪れた際に購入した)を取り出してその集団を確認してみた。
基本的には21世紀に比べて劣る工作精度で作られている望遠鏡の視界は少し歪んでしまっているけど活動中の場が開けた場所だったおかげで馬に騎乗した鮮やかな青の軍服姿の一団の姿が確認でき、それを確認したあたしは望遠鏡をしまいながら傍らのアイギスに向けて話しかけた。
「演習している部隊は驃騎兵だよ、ヴァイスラントゆかりの兵種だね」
「そうですね、我がヴァイスラント槍騎兵と同じくヴァイスラント驃騎兵の系譜を受け継ぐ兵種です」
あたしの言葉を受けたアイギスはゆっくりと頷きながら応じてくれた。
驃騎兵は猟騎兵と同じ軽騎兵にカテゴライズされる兵種で軽騎兵と呼ばれる事もある兵種だけど、偵察、警戒等という本来の軽騎兵が行う任務の他に敵陣に対する強襲突撃という重騎兵的な任務も度々こなしていたりする。
軽騎兵でありながら重騎兵的な任務もこなす驃騎兵、そのルーツはアイギスの言葉の中にあったヴァイスラント驃騎兵にまで遡る事が出来る。
ヴァイスラント驃騎兵は軽騎兵では無く純然たる重騎兵で人だけでなく馬までも鎧で覆い、使い捨て式の多数の投げ槍を主武装とした兵種でその突撃の衝動力は凄まじくヴァイスラント騎兵の代名詞として無敵の名を欲しいままにしてきた兵種だ。
無敵の名を欲しままにしていたヴァイスラント驃騎兵は徐々に姿を消していく事になるけどそれは銃火器が登場したからと言う訳では無く(銃兵を擁する敵に対してさえこの兵種は凄まじい威力を発揮した)ただでさえ維持コストのかかる騎兵を重装甲化させた上に更に使い捨て式の多数の投げ槍を用意すると言うコスト面での弱点によってヴァイスラント驃騎兵隊を構成していた中小諸侯(彼等の練度の高さもこの兵種の強さの要因だったけど)が衰退してしまったのが大きな要因だったりする。
そうして消滅したヴァイスラント驃騎兵だったけどその存在は強烈な印象を残し、やがてこの兵種をルーツとした新たな2つの兵種が姿を現す事となった。
その内の1つが現在あたし達の部隊に加わってくれているヴァイスラント槍騎兵、槍を主武装としたヴァイスラント驃騎兵の形態を継承しつつ鎧を省略する事で維持コストの減少を目指した部隊でヴァイスラント騎兵の連度の高さと相まって有力な騎兵だけどその優秀さへの渇望と畏怖が現在のヴァイスラント王国の窮状の一因ともなっている。
そしてもう1つの兵種が前述の驃騎兵、この兵種は西エウロペ諸国に広く普及した兵種で華麗な軍装から非常に婦女子の人気が高く花形騎兵兵種として各国の騎兵部隊に君臨している。
「ねえ、裕香、あっちで演習してるのは歩兵部隊だよ、けっこう大柄な兵士が多いから擲弾兵だと思うよ」
アイギスと言葉を交わしたあたしが演習中の驃騎兵隊を見ていると別の部隊を裸眼で見ていたスコルが兵種を教えてくれて、あたしはスコルの凄まじい視力に感嘆しながらスコルの指差す先に存在する擲弾兵とおぼしき一団(当たり前話だけどあたしには判別不能だけど)へと視線を向けた。
擲弾兵と言うのは歩兵の兵種の1つで擲弾と言う原始的な手榴弾を使用してる兵種の事だ。
そんな物を使用すると言うことは当然ながら敵軍に接近しなければならない為、この兵種は歩兵の中でも選りすぐられたエリート部隊で更に各国の擲弾兵部隊の兵士は大柄な兵士によって構成されていて重要な局面での突撃等に使用される事が多い兵種だ。
驃騎兵と擲弾兵、騎兵と歩兵の花形兵種とも言うべき集団は陣営の周辺で演習を続けていて、演習を続ける部隊と陣営を見詰めるあたしは思わず呟きをもらしていた。
「……大陸軍」
「……ええ、遂に到着しましたね、裕香隊長」
「……いよいよ、始まるんだね、裕香」
あたしの呟きを聞いたアイギスとスコルからあたしに声がかけられ、あたしは頷く事でそれに応じながら演習を続ける部隊、ガリア帝国の主力部隊、大陸軍の姿を見詰めた。
信頼する女達と共に集結地を出発してガリア帝国への入国を果たしたあたし、目的の地ブローニュにてあたしは遂に目指す仕官先と邂逅を果す、ブローニュに展開するガリア帝国主力部隊、それがあたしが仕官を目指す部隊、大陸軍……




