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会議

本当に久しぶりの更新となりますが宜しくお願い致します。


葉月二日・集結地


来るべきオストラント軍の進行に備えてあたしを指揮官として編成された騎兵部隊、集結した部隊は訓練を開始し、集結地は馬蹄の響きと号令で満たされていた。

カミラ率いるヴァイスラント槍騎兵中隊は軽やかな駒音を響かせながら駆け、マリーカ率いるドイッチュラント猟騎兵中隊の下馬した猟騎兵達はそれを支援する為に射撃態勢を取っていた。

少し離れた所ではメルクリリス率いる機動魔砲兵中隊が4ポンド魔砲を操作し、その周辺では本部中隊に所属する槍騎兵と猟騎兵がアイギスとスコルに率いられて砲兵援護アーチェリー・エスコートの任についていた。

部隊はそれらの行動をスムーズな動作で行い、あたしはその動きを満足げに見詰めながら傍らに駒を進めて来たアイギスに声をかけた。

「訓練を始めて間もないけどだいぶ動きがスムーズになって来たわね」

「ええ、確かに連携が円滑に進む様になりましたね、ですが実戦に出るなら更に習熟させる必要がありますね」

あたしの言葉を受けたアイギスは頷きながら返答し、それを受けたあたしは頷きながら訓練を続ける部隊を見詰めた。

その後も訓練は黄昏時を迎えるまで実施され、周囲が茜色に染まる中、訓練を終えた隊員達は簡易式の兵舎周辺で寛ぎ始めていた。

今日の訓練を終えたあたしは隊長用の兵舎へと移動し、メルクリリスがつけてくれたエルフの従兵が用意してくれたお湯とタオルで軽く身体を拭いた後に夕食を摂る為に士官用の兵舎へと移動した。

あたしが士官用の兵舎に入ると既にカミラとスコルがテーブルについていて、あたしに気付いたスコルは狼の尻尾を嬉しそうに振りながら口を開いた。

「あっ、裕香、お疲れ様」

「ありがと、スコル、スコルもお疲れ様」

「裕香、お疲れ様、だいぶ指揮官らしくなってきたぞ」

あたしがスコルに言葉を返しながら席につくとカミラも穏やかな笑みと共に声をかけてくれ、あたしが頷く事でそれに応じていると穏やかな笑みを浮かべたマリーカがあたしの前に温かな湯気を漂わせているスープが満たされたスープ皿をおいてくれた。

そうしているとメルクリリスとアイギスもテーブルにつき、あたし達はスープにベーコンとジャガイモ、キャベツの炒め物に黒パンと言う夕食を摂り始めた。

「先程ウルムに物資調達に出ていた部下が戻りましたわ、その報告によるとオストラントとガリアの関係がかなり悪化していてオストラントの対ガリア大同盟へ参加するのでは無いかとの噂が出ているとの事ですわ」

あたしが黒パンを食べているとマリーカがウルムで仕入れた情報を報せてくれて、それを聞いたあたしが頷いていると炒め物をつつきいていたメルクリリスが口を開いた。

「ガリアに散々煮え湯を飲まされてきたオストラントにとっては待ち兼ねていた復讐の時来たりってとこね」

「ロジーナ帝国も既に参加していますし、大同盟の作戦はかなり大規模になりそうですね」

メルクリリスの言葉を聞いていたアイギスは少し顔をしかめさせながら呟き、あたしは頷く事でそれに同意してから口を開いた。

「オストラント軍の主力は北イタリカに向かう筈だよ、こっちに進攻してくる部隊の目的は親ガリア帝国派のバイエルン選帝候への恫喝と進撃してくるロジーナ帝国主力部隊と合流してのラインラント進攻、両者が合流したらその兵力は十五万を軽く超える」

「……あんたも物好きよね、そこまで分かってるのにあえてガリア側に立つ気なんだから、まっそんなあんたに従うあたし達も同じ位物好きだけどね」

あたしの言葉を聞いていたメルクリリスは勝ち気な笑みと共に呟き、それを聞いたスコル達が笑顔と共に頷き、それを目にしたあたしはついて来てくる皆の存在に感謝しながら言葉を続けた。

「確かに厳しい状況かも知れないけど成算が無い訳じゃ無いよ、大同盟の作戦には幾つか弱点があるしね」

「……弱点?興味深い話ですわね、お聞きしても宜しいかしら?」

あたしの言葉を聞いたマリーカは面白そうな顔つきになりながらあたしに向けて問いかけ、あたしは頷いてから言葉を続けた。

「最初の弱点はオストラント帝国の方針だよ、イタリカ戦役で何度も手痛い目にあっているオストラント帝国は今回もイタリカ方面に主力部隊を向けた、ガリア帝国軍の主力部隊がブローニュに集結していてドイッチュラント方面での反撃が容易に行える状況になっているにも関わらずね、もう1つの弱点は暦だよ」

「暦?」

あたしが告げた2つ目の弱点を聞いたカミラは怪訝そうな面持ちになりながら呟き、あたしは頷きながら言葉を重ねた。

「ロジーナ帝国はユリナ暦を使用していてオストラント帝国はグレウス暦を使用している、グレウス暦はユリナ暦より10日早いんだけどオストラント側は作戦を立てる際にそれを計算に入れて無かったの、だからユリナ暦に従って行動するロジーナ帝国軍の認識とグレウス暦に従って行動するオストラント軍の認識に大きなズレが生じてるの」

「……確かにロジーナはユリナ暦を使用しています、10日と言うのはかなり大きなズレになりますね、場合によっては致命的とさえ言える」

あたしの説明を聞いていたアイギスがゆっくりと頷きながら呟いた。あたしの説明の中にあったユリナ暦とグレウス暦はこの世界で使われている暦でユリナ暦がユリウス暦、グレウス暦がグレゴリウス暦に相当している。

大同盟側の弱点は他にもあってウルムに進出してきたオストラント軍の司令官フェルディナント大公と参謀長マック元帥との間に生じている曖昧な指揮権問題(オストラント皇帝フランツ1世がマック元帥を信頼した結果司令官である筈のフェルディナント大公に部下である筈のマック元帥の指示に従う様に命じた為)なんかもあるけどそれを言うと流石に不思議がられるから黙っておいた。

「オストラントの大同盟参加がほぼ確実な状況から考えてオストラント軍のドイッチュラント南部進攻は葉月の後半から栗月初旬にかけて行われる可能性が濃厚、どうやら間に合いそうだな裕香」

会議を聞いていたカミラは鋭い微笑わらいと共にあたしに声をかけ、あたしは頷いた後に皆を見渡しながら言葉を続けた。

「あたしはもう数日部隊と一緒に訓練してから帝国総司令部が置かれているブローニュに向かうよ、そこでガリア帝国軍と接触して来るべき戦いの際にガリア側に強力する事を伝えるつもりだよ」

あたしの告げた言葉を受けたカミラ達は表情を引き締めながらゆっくりと頷いてくれて、あたしは従ってくれる彼女達の存在を噛み締めた後に軽く肩を竦めながら言葉を続けた。

「まあ、何の後ろ楯も伝手も無い一介の傭兵隊長の訪問だから大した高官とは接触出来ないとは思うけど、取り敢えずは接触してあたし達が敵で無い事を伝えとかないといけないからね」

「あら、そう悲観する必要は無いかもしれませんわよ」

あたしの告げた言葉を聞いたマリーカが涼しげな微笑と共に告げ、続いてメルクリリスも少し呆れた様な顔つきで口を開いた。

「あんたねえ、カミラやスコルは傭兵として相当有名なのよ、マリーカの猟兵隊やもちろんあたしの魔砲兵隊もね、そんなあたし達を配下にしているあんたへの応対がおざなりな訳無いでしょ」

「そ、そうなんだ」

マリーカとメルクリリスの告げてくれた事はあたしが感じていた懸念を払拭してしまう物で、あたしが彼女たちが高レアリティだったのを改めて感じながら応じているとカミラが笑顔で口を開いた。

「私達だけでは無いぞ裕香、アイギスにもしっかりとした後ろ楯があるからな」

「後ろ楯?」

カミラの言葉を受けたあたしは思わせ振りな台詞の中にあった一句を反芻しながら首を傾げ、それを見ていたアイギスは恥ずかしそうに俯きながら口を開いた。

「……他の皆様の戦功や名声に比べれば、私のそれは些細な物です」

「そんな事は無いぞ、貴女が持つ後ろ楯の存在はガリアに仕官を望む我が主にとっては大きな意味を持っているからな」

アイギスの呟きに対してかぶりを振りながら応じるカミラ、二人の会話を聞いているあたしの脳裏に「キュイラシェ」の設定が浮かんで来た。

ナポレオン戦争が下敷きになっている「キュイラシェ」そこに登場するガリアや相手国の将星達も当時のフランスや相手国の将星と同じだったりする。

不敗のダヴーと呼ばれた名将ルイ・ニコラ・ダヴーや勇者の中の勇者と呼ばれたミシェル・ネイ、それらの将星が登場しているんだけど21世紀の日本で作られたゲームらしく何名かの将星は女性として登場していたりする。

アイギスがいたヴァイスラントに由来のある将もその何名かの中の一人であたしは脳裏に浮かんだその名が正しいのか確かめる為にアイギスに話しかけた。

「ねえ、アイギス、アイギスの後ろ楯ってもしかしてヴァイスラント王女のポニャトフスキー様?」

「……っ!?は、はい、仰る通りです裕香隊長」

あたしの問いかけを受けたアイギスは驚きの表情と共に答えてあたしの予想を裏付け、あたしとアイギスの会話を聞いていたカミラは微笑みながら口を開いた。

「流石だな裕香、ポニャトフスキー王女の事を知ってたのか」

「うん、一応ね」

カミラに声をかけられたあたしは曖昧に笑いながら頷き(以前も言ったけどゲームのおかげで知っていると言う訳にはいかないから)その後にアイギスに向けて口を開いた。

「そっか、アイギスはポニャトフスキー様に仕えているんだね」

「はい、姫様の護衛としてお仕えさせて頂いております、今回裕香隊長の部隊に参加する傭兵隊は元をただせばヴァイスラント軍の正規兵であり、カミラさんと接触した彼等から裕香隊長の事を知らされた姫様が私に私個人としての傭兵隊への参加を命じたのです」

あたしの言葉を受けたアイギスは頷きながらあたし達の部隊への参加を決めてくれた理由を語ってくれた。

あたしがさっきアイギスに質問した言葉の中にあったポニャトフスキー様と言うのは「キュイラシェ」に登場しているヴァイスラント王女でもある女性将軍ジュリア・アントーニャ・ポニャトフスキー将軍の事で元ネタの将軍はポーランド王子でもあったジョゼフ・アントン・ポニャトフスキー元帥だ。

かつては強国として名を轟かせたものの現在では首都ワルシャワ周辺を領するのみとなってしまったヴァイスラント(実際のポーランドは消滅してるけどこの世界では辛うじて存続している)の王女でもある彼女は、自国再興の為にガリア帝国に協力していてプレイヤーとも轡を並べて戦う事になるんだけれどもアイギスと関係があるとは思っていなかったから少し驚きだった。

ヴァイスラントは騎兵の産地として勇名で更にオストドイッチュラント、オストラント、ロジーナに領土を奪われていると言う歴史背景からそれらの国への敵意が根深い為ガリアにとっては得難い味方になるし、ヴァイスラントにとっても現状を打破する良い機会になる。

だから、ポニャトフスキー王女はオストラント軍に敵対を決意したあたしの所にアイギスを派遣してこの行動にヴァイスラントも興味を持っている事を示したいんだと思う。

「……アイギス、ブローニュに行く時は貴女も同行して頂戴、何とか高官と接触してみるから、アイギスもその人と接触したら良いよ」

「……裕香隊長」

あたしの言葉を受けたアイギスは申し訳無さそうな表情を浮かべながら口を開きかけ、あたしは笑顔でかぶりを振ってそれを制してから更に言葉を重ねた。

「気にする必要は無いよ、アイギス、ヴァイスラントの現状についてはそれなりに把握してるつもりだし、カミラもその事を分かった上で貴女の事をあたしに紹介してくれた筈だよ、だから貴女はあたしの事を最大限に利用して思う通りに行動してくれていいよ」

「……裕香隊長、ありがとうございます」

あたしの重ねた言葉を受けたアイギスは安堵の笑みと共に答え、その様子を見ていたカミラが嬉しそうに笑いながらあたしに声をかけてきた。

「……裕香ならそう言うと思っていたよ、それでこそ我が主だ」

「あ、あんまり誉めないでよカミラ」

カミラの笑顔と言葉を受けたあたしは自分の頬が火照るのを感じながら言葉を返し、カミラがあたしの言葉に頷いているとスコルが嬉しそうに笑いながらあたしに抱き着いてきた。

「よく分かんないけどやっぱり裕香は凄いんだね、それでこそあたしの主様だよ」

「あっ……ちょっと、スコルったら」

抱き着いてきたスコルの美巨乳とあたしの胸が触れ合って柔らかく弾み、あたしはその感触に少しどぎまぎしながらスコルに声をかけていると脇から刺々しい視線が感じられた。

あたしがその刺々しさに若干頬をひきつらせながらその視線をその方向に向けるとメルクリリスが妙に据わった目でスコルに抱き着かれたあたし(主に重なりあったあたしとスコルの一部)を見ており、あたしがその刺々しさに思わず身体を硬直させているとマリーカが朗らかな(朗らかすぎて逆に若干黒く感じられる)笑みと共に声をかけてきた。

「……メルクリリスさんも裕香さんに抱き着いてみたら如何ですか?」

「……っはあっ!?ななななな何であたしがそんな事しなきゃなんないのよっ!!」

マリーカに声をかけられたメルクリリスは頬を赤らめさせながら慌てた声をあげ、そのあわてふためいた声を受けたマリーカはニコニコと笑いながら言葉を続けた。

「だって頑張って裕香さんとの距離を詰めないとスコルさんやカミラさんに遅れを取ってしまいますわよ」

「おおおお遅れって何よ、ああああいつはあたし達の隊長ってだけで、かかカミラやスコルみたいにしゅ主従関係になってる訳じゃ無いのよ、あ、あたしもアイギスみたいにあ、あいつの存在を利用してるのよっ」

マリーカの言葉を受けたメルクリリスは真っ赤な顔で大きくかぶりを振りながらしどろもどろな口調で答え、その後に真っ赤な顔であたしを睨みながら言葉を続けてきた。

「べ、別にあ、あんたの事が嫌いだとか、信用してないとか、そう言う訳じゃないんのよった、ただあたしにとってあんたはし、指揮官であるだけって話なのよ、か、勘違いしないでよねっ」

「……えっ?……あの……えーと……ハイ」

メルクリリスの言葉を受けたあたしはどうリアクションすればいいのか暫く戸惑った後に取りあえず返事をし、メルクリリスは頷いた後に真っ赤な顔で食事を再開し、あたしが反応に困っているとカミラが苦笑しながら声をかけてきた。

「まあ、取りあえず今後の方針が決定されたという事だな、裕香」

「……ま、まあ、そう言う事だね」

「……じゃあ、ご飯の続きだね、はい、裕香、あーん」

「……あ、あーん」

あたしがカミラの言葉に応じていると狼の尻尾を嬉しそうに大きく振ったスコルが満面の笑顔と共に言いながらあたしの口に黒パンを運んでくれて、あたしは羞恥プレーな状況に頬に帯びた熱が更に高まるのを感じながらもその笑顔に圧される様に口を開けてスコルに黒パンを食べさせて貰った。



対オストラント戦に備えて編成されたあたしの率いる騎兵集団、あたしは従ってくれている麗しきひと達と語り合い、今後の方針を策定した。


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