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メルクリリス率いる魔砲傭兵隊の砦を訪れたあたし達は彼女に案内されて砦の司令部らしき小屋へと入り、最初に入った部屋の中央に置かれた大きめのテーブルを囲んで腰を降ろした。

あたし達が座ると女エルフの兵士達があたしの前に桜桃の果汁を水で割った飲物が入った木製のコップを置き、その作業が終了した事を確認したメルクリリスは彼女達を下がらせた後に碧眼であたしを見据えながら口を開いた。

「さてと、それじゃあ聞かせて貰おうかしら、来るべき戦いとそれに向けてアンタが編成を目指しているって言う部隊の話とやらを……」

メルクリリスはそう言うとあたしの言葉を促す様にあたしを見詰め、あたしは小さく頷いた後に話を始めた。

オストラント帝国の第三次対ガリア大同盟への参加と神聖ドイッチュラント連邦帝国南部への侵攻とあたしがそれに対抗する為に編成を目指す後方攪乱部隊の事、あたしがそれらについて説明を続ける間メルクリリスは黙ってあたしの説明に耳を傾け、あたしが説明を終えるとあたしを見据えながら口を開いた。

「アンタ、正気なの?アンタの話が正しいとしたら侵攻してくるオストラント帝国軍はどう考えても5万は超える大軍よ、アンタが編成を目指している部隊はあたし達が加わったとしても騎兵2個中隊に騎乗砲兵1個中隊、つまり増強された騎兵1個大隊程度の戦力しか無いのよ、アンタが味方しようとしているガリア帝国軍は現在主力がブローニュに展開しててドイッチュラント方面の戦力は手薄、おまけにこの辺は中小諸侯で神聖ドイッチュラント連邦帝国の宗主国でもあるオストラント帝国軍の侵攻に日和見するのはほぼ確実、それだけの戦力でオストラントの侵攻を食い止められると本気で思ってるの?」

「勿論食い止められる筈がありません、先程も説明した様に大陸軍グラン・ダルメが反撃を開始するまでオストラント帝国軍の後方で輜重隊や伝令を襲撃し続けてオストラント帝国軍の後方を攪乱し続ける、それがこの部隊の目的です」

メルクリリスの言葉を受けたあたしはその視線をしっかりと受け止めながら返答し、それを受けたメルクリリスは腕組みをしながら言葉を続けた。

「……確かにその作戦ならこの小規模な部隊でも実施は可能よ、問題はガリア帝国軍がいつ頃本格的な反攻に出られるのかよ、本格的な反攻が始まるまでに時間がかかればかかる程オストラント軍の後背地で活動を続ける部隊の危険性が増してくるのよ」

メルクリリスはそう言うと値踏みする様にあたしを見詰め、あたしはその視線を受け止めながらその問いかけに応じた。

「心配はありません、大陸軍の反撃は葉月の内に開始されます、後方攪乱の期間は長くて1ヶ月半程度だと思います」

あたしは堂々とした口調でそう告げ、あたしの断定的な口調を受けたメルクリリスは一瞬気圧された様に身体を固くし、その後に訝しげな眼差しであたしを見詰めながら言葉を続けた。

「随分自信満々なのね」

メルクリリスの言葉を受けたあたしは大きくゆっくりと頷く事で自信の程を示し、それを目にしたメルクリリスは暫く思案にくれた後に勝ち気な笑みを浮かべながら口を開いた。

「……良いわ、その妙に自信満々な態度が気に入ったわ、アンタが編成を目指している部隊に加わってあげる、あたしの部隊を乗馬魔砲兵隊にするって話についてだけど、こっちでも馬匹の半分位は用意するから残りはそっちで用意しなさいよ」

メルクリリスの言葉を受けたあたしは隣のマリーカに視線を向け、彼女が穏やかな笑みと共に頷いてくれたのを確認した後に視線をメルクリリスに戻しながら言葉を返した。

「分かりました、馬匹についてはこちらで用意しておきます、ありがとうございます。メルクリリスさん」

あたしはそう言うと深々と頭を下げ、その様子を目にしたメルクリリスはそれを制する様に軽く右手を掲げながら言葉を続けた。

「メルクリリスで構わないわ、その代わりあたしも裕香って呼ばせて貰うわ、あたし達の隊長として相応しいかどうか、しっかりと拝見させて貰うわよ」

「お、お手柔らかにお願いします」

メルクリリスの言葉を受けたあたしはそれに若干気圧されながらも返答し、その様子を見ていたスコルは優しく笑いながらあたしに声をかけてくれた。

「大丈夫だよ、裕香、裕香なら絶対上手く出来るよ、だってあたしやカミラの主なんだから」

「……うん、ありがとね、スコル、スコルやカミラの主として恥ずかしく無いよう頑張るね」

スコルの優しい笑顔と激励を受けたあたしが笑顔と共に応じるとスコルは大きく頷き、それによってスコルの豊かに隆起した2つの膨らみがユサリッと音がしたかと思える程大きく揺れた。

「……フンッ」

スコルの胸が大きく揺れたのを目にしたメルクリリスは少し不機嫌そうな様子で桜桃味の水を飲み始め、それを目にしたマリーカは穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。

「そう言えばメルクリリスさん、裕香さんって着痩せするタイプですのよ、ですから裕香さんの胸って実は私よりも大きいんですのよ」

「へっ?」

「……ブッ!!ゴホッ!!ゴホッ!!」

唐突なマリーカの発言にあたしが戸惑いの声をあげていると、メルクリリスはいきなりむせ込んでしまい、暫く咳き込んだ後にあたしを据わった目で見据えながら口を開いた。

「それ、ホントなの?」

「えっ?……いや、まあ……その……ホント……かな?」

メルクリリスの据わった目と妙に平坦な響きの声を受けたあたしは暫く口ごもった後に恐る恐る言葉を返し、それを聞いたメルクリリスは気持ちを落ち着ける様に暫く深呼吸をした後に微かに震える声で呟き始めた。

「べ……別に悔しくなんか無いし……お……大きさなんて……た……対した意味無いし」

(……うっわ……この話題、思いっきり地雷なんだけど)

震える声で呟くメルクリリス(彼女の名誉の為に言うと彼女はそんなに小さい訳では無い、Cはあるしとっても形も良い、ただし、あたしのデッキの中では……これ以上はあたしの口からは言えない)の姿を目にしたあたしが若干気圧されながら桜桃水を飲んでいるマリーカに視線を向けると、それに気付いたマリーカは意味深な笑みを浮かべ、それを目にしたあたしはマリーカに耳元に顔を寄せて小声で囁きかけた。

「……マリーカさん、どうして火薬庫に砲弾撃ち込むんです?」

「……当然、面白いからですわ」

あたしの言葉を受けたマリーカは穏やかな口調で言葉を返し、あたしは大きく溜め息をつきながら震える声で呟き続けるメルクリリスに視線を戻した。

「……そ、そうよ……あ、あたしだって……そ、そんなに小さい訳じゃ無いし……ほ、他の連中がデカイだけじゃないの……そ……それに……大きさよりも……か……形が重要なの、形が」

「でも裕香って形も綺麗だよ、大きくて形も綺麗だから凄いよね」

「……グヌゥッ!!」

メルクリリスの呟きを聞いていたスコルが告げた悪意なき追い撃ちの言葉を受けたメルクリリスは奇妙なうめき声をあげながらテーブルに突っ伏してしまい、あたしは恐る恐る突っ伏してしまったメルクリリスに声をかけた。

「……あ……あのー……だ……大丈夫?……メルクリリス?」

あたしが恐る恐るかけた声を受けたメルクリリスは顔を上げると目尻に涙を溜めながらあたしを睨み付け、あたしが思わず身体を硬直させていると涙目であたしを睨み続けながら口を開いた。

「……か……勝ったと思わないでよっ!!……お……大きくて形も綺麗……そ、それが何の役に立つってのよぉぉっ!!」

「……そ、そんな事言われても」

メルクリリスは涙目であたしを睨み付けながら魂の叫びをあげ、その切実ながらも相当に理不尽な糾弾を受けたあたしは途方にくれた声をあげた。


砦での会談の結果、翠の魔砲兵が率いる魔砲傭兵隊はあたしが編成を目指す部隊に参加してくれる事となった。

少しづつ形を成して行く部隊、出撃の刻は刻一刻と迫って来ていた。


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