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作戦会議

600ユニークアクセス、並びに1800PVアクセスを突破させて頂きました。これからも本作を宜しくお願い致します。

ウルムを後にしたあたし達はカミラとスコルの家へと戻り、カミラが背負わせていた荷物を降ろした後にヴィルヴェルヴィントに林檎を与えるとヴィルヴェルヴィントはあっという間にそれを食べ終えてあたし達に見送られて森の奥へと去って行った。

ヴィルヴェルヴィントを見送ったあたし達は荷物を室内へと運び、それを一纏めに置いた後にテーブルを囲んだ。

テーブルについたマリーカは紅茶の茶葉が入った缶を取り出してカミラにそれを渡し、カミラはそれを受け取ると火を起こしてお湯を沸かして紅茶を淹れた後に林檎と干し葡萄をお茶請けとして用意した。

「それでは、お話を聞かせて頂きますわね、宝積寺さん」

準備が整った事を確認したマリーカは真剣な眼差しであたしを見詰めながら問いかけ、それを受けたあたしは頷きながら口を開いた。

「最初に確認させて下さい、マリーカさんは傭兵をしているそうですが、雇い主はオストラント帝国ですか?」

「場合によりますわね、オストラント帝国が雇い主の場合もあればそうでない場合もある、最近は大規模な戦闘が無いので中小諸侯領の警戒等が主な収入源になっていますわ」

あたしの言葉を受けたマリーカはそう答えながら紅茶が満たされた木のコップを手に取り、芳醇な薫りを楽しみながら紅茶を一口飲むと、穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。

「ですので、以前雇い主であったオストラント帝国とも問題無く戦えますわ、私は傭兵ですもの、戦う相手に選り好みはございませんわ、あくまで話次第ですわ」

マリーカはその穏やかな笑顔からは真逆の凄味すら感じられる口調で答え、あたしは頷くと皆を見詰めながら言葉を告げた。

「間も無くオストラント帝国軍が神聖ドイッチュラント帝国南部に侵攻してきます」

「……目的は対ガリア帝国ですわね」

あたしの告げた言葉を受けたマリーカは表情を引き締めながら呟き、あたしが頷いているとカミラがマリーカと同じ様に鋭い表情を浮かべながら声をかけてきた。

「……間も無くと言ったが、どれくらいか分かるのか?」

「……オストラント帝国は現在、ブリタニカから第三次対ガリア大同盟参加を打診されている様なの、現状から考えて葉月にはオストラント帝国が大同盟に参加するわ、オストラント帝国軍は大同盟参加後に神聖ドイッチュラント連邦帝国南部と北イタリカに侵攻してくる筈だから残された期間は1ヶ月と少しくらいだと思う」

カミラの問いかけを受けたあたしは少しぼかした言い方でそれに応じ、それを聞いていたスコルが驚いた様なの表情を浮かべながら声をかけてきた。

「凄いね裕香、そんな事まで分かるんだ」

「う、うん、まあちょっとね」

スコルの言葉を受けたあたしは言葉を濁しながら応じた、「キュイラシェ」はナポレオン戦争の頃がモチーフとなっていてストーリーの流れも実際の歴史の流れにそっている、だから今いる位置と日付さえ分かれば大体の流れは把握出来るんだけどまさかそれをそのまま言う訳にはいかないから言葉を濁すしか無かったけどスコルは感心した様に頷きながら口を開いた。

「ふうん、やっぱり凄いね裕香は」

「あ、ありがとね、スコル」

「……先程のお話に加えて今のお話話、それから察するに貴女の意図はオストラント帝国軍への敵対と言う訳かしら?」

あたしが苦笑しながらスコルの言葉に応じているとマリーカが真剣な眼差しであたしを見詰めながら言葉をかけ、あたしは表情を引き締めると大きく頷きながら言葉を返した。

「あたしの目的は侵攻してくるオストラント帝国軍を迎撃して戦果をあげ、その戦果を利用してガリア帝国軍に加わる事です、でも、カミラやスコルがオストラントに恩義があって反対するなら、それは諦めます」

あたしはマリーカの言葉に応じながらカミラとスコルに視線を向け、カミラとスコルは笑顔で頷きながら口を開いた。

「愚問だな裕香、私達はお前を主として仕えているんだ、お前の判断に従うから、安心してくれ」

「カミラの言う通りだよ裕香、あたし達の主は裕香だよ、だから裕香の決めた事にあたし達は従うよ」

「ありがとう、カミラ、スコル」

カミラとスコルは迷い無い口調であたしに従う事を告げてくれ、あたしが頷きながらカミラとスコルに御礼を言っているとマリーカが真剣な表情のまま更に声をかけてきた。

「……宝積寺さん、私も貴女の目的に協力する事に吝かではありませんわ、ですが、勇気と無謀は同一ではございません、侵攻してくるオストラント帝国軍は相当な大軍の筈、私が貴女に協力したとしても準備出来る兵力は大してありません、その寡兵で侵攻してくるその大軍をどう迎撃するのですか?」

「もちろん馬鹿正直に正面から迎撃なんかしません、ところでマリーカさん、マリーカさんの指揮する傭兵隊は猟兵ですか?」

マリーカの言葉を受けたあたしは即座に返答と問いかけを返し、あたしの言葉を受けたマリーカは表情を緩めながら言葉を返した。

「周辺の地形から推察したみたいね、確かに貴女が予測した通り私が率いる傭兵隊は猟兵ですわ、規模は中隊くらいになりますわね」

マリーカの答えは彼女があたしの予想通り猟兵(銃の扱いに手馴れた猟師や森林保安局員を主体とした歩兵部隊で部隊の前衛を務める歩兵部隊)の指揮官であった事を示し、それを受けたあたしは頷いた後に更に言葉を続けた。

「まずあたしが考えているのはマリーカさんの猟兵隊を騎乗させ臨時編成の猟騎兵シャスール隊にする事です」

「猟騎兵?」

「騎乗猟兵隊を基にガリア帝国が編成した軽騎兵の兵種の一つですわ、元々はガリア帝国独自の兵種ですけどオストラントやオストドイッチュラントでもそれに対抗して部隊が編成されていますわ」

スコルが戸惑いの表情を浮かべてあたしの説明の中にあった一語を反芻すると、マリーカは静かな口調でそれに関する説明を行い、その後に穏やかな笑みを浮かべながらあたしに話しかけてきた。

「中々、興味深いお話ですわね、続きを聞かせて頂けるかしら?」

「はい、マリーカさんの傭兵隊を猟騎兵隊に編成しなおす一方で信頼できる隊長が率いる騎兵の傭兵隊を味方に誘います、出来れば龍騎兵ドラゴーン槍騎兵ランシェの隊を」

「だったら私に任せてくれ裕香、心当たりがある、ヴァイスラント槍騎兵隊で能力が折り紙つきな上に連中はオストラントには良い感情を抱いていないから協力してくれると思う」

あたしが説明しているとカミラが微笑しながら口を開き、願ってもない話を聞いたあたしは大きく頷きながら言葉を重ねた。

「お願いねカミラ、ヴァイスラント騎兵が加わってくれるなら願ってもない話だよ、オストラント帝国だけじゃ無くロジーナ帝国も相手になる可能性があると伝えてちょうだい」

「きまりだな、オストラントだけで無くロジーナも叩けるとなれば連中は間違いなく参戦してくるだろう、規模はこちらも中隊規模になるな」

あたしの重ねた言葉を受けたカミラはゆっくりと頷きながら見通しと参加予定の部隊規模を告げ、それを受けたあたしは頷いた後に更に説明を続けた。

「マリーカさんの猟騎兵隊とヴァイスラント槍騎兵隊、それに加えて出来るならば砲兵隊も加えたいと思っています」

「砲兵隊?騎兵部隊に砲兵隊を加えと言うのですか!?」

あたしの説明を聞いたマリーカは戸惑いの表情と共に声をあげ、あたしは頷きながら更なる説明を続けた。

「最も軽い4ポンド砲を使用し、馬を集めて砲兵を含めた全員を騎乗させた騎乗砲兵部隊です、通常の砲兵部隊よりも遥かに機動性が高く、騎兵隊に強力な火力支援を実施出来ます。6門、1個中隊程でもあればかなり自在な戦闘が可能になる筈です」

「鈍重な歩兵や砲兵部隊からは機動性を利して素早く逃げられ、機動性に優れる騎兵が単独で追い付いてきたら砲兵の一撃をお見舞いする、と言う訳ですわね」

あたしの説明を聞いていたマリーカは何度か頷きながら呟き、スコルは表情を輝かせながらあたしに声をかけてきた。

「凄いね裕香、砲兵を騎乗させるなんてよく考えついたね」

「実はあたしの専売特許って訳じゃ無いんだ、ガリア帝国軍はもう既に同種の砲兵隊を編成してて「空飛ぶ砲兵隊」と呼んでるんだ、だからあたしの案はそれの受け売りなんだけどね」

スコルの称賛の言葉を受けたあたしは苦笑しながら言葉を返し、その会話を聞いていたマリーカが穏やかな笑みと共に声をかけてきた。

「既に既出の物であったとしてもそれを既存の物と組合せられると言うのは柔軟性が高い事の証で、誇れる事ですわ、それで、編成した部隊で宝積寺さんは何を狙う気ですの?」

マリーカはそう言うと穏やかな表情であたしを見詰めな、あたしはその視線を受け止めながら言葉を続けた。

「この部隊はオストラント軍の警戒線を突破して展開したオストラント軍の後背地へと進出、そしてそこを通る輜重隊(しちょうたい・輸送隊の事)や伝令を襲い展開したオストラント軍と後方を結ぶ補給と連絡の為のルート、連絡線フェルビンドゥングスリニエンを脅かしてオストラント軍を攪乱します」

「展開したオストラント軍の後方を引っ掻き回してやると言う訳か」

あたしの説明を聞いていたカミラは大きく頷くと不敵な笑みを浮かべながら呟き、それを聞いたマリーカは頷いたが直ぐに表情を曇らせながらあたしに向けて口を開いた。

「確かに興味深い話ですわね、ただ、問題もありますわ、私の部隊を臨時の猟騎兵部隊にすると言うお話ですけど、残された期間を考えると訓練しても騎乗しての移動までが精一杯で乗馬戦闘までは手が回りませんわ」

「問題ありません、猟騎兵とは言いますが運用としては乗馬猟兵部隊と同様で馬は移動のみに使用して戦闘は下馬して通常の猟兵部隊として戦ってもらいます」

マリーカの懸念を聞いたあたしは即座にそれに対する答えを返し、それを受けたマリーカは暫く無言で思案にくれた後に大きく頷きながら口を開いた。

「お話は分かりましたわ宝積寺さん、貴女に協力させて頂きますわ、騎乗砲兵隊については私に心当たりが有りますのでお任せ下さい、ただ、宝積寺さんが編成を考えている部隊は有力な部隊であると思いますわ、ただし、その分維持費等も相当にかかります、現在の状況ですと編成して維持出来るのは2ヶ月が限界ですわ、それでも構わないのでしたら協力させて頂きますわ」

「ありがとうございます、マリーカさん、勿論構いません、例え予想が外れたとしてもマリーカさんを恨んだりしません」

マリーカの言葉を受けたあたしは大きく頷きながら答え、それを受けたマリーカは穏やかな笑みを浮かべてあたしに手を伸ばしながら言葉を続けた。

「貴女の事、裕香さん、とお呼びしても宜しいかしら?」

「勿論です、ありがとうございます。マリーカさん」

マリーカの言葉を受けたあたしは笑顔で応じながらマリーカの手を握り、重なり合った手からマリーカの存在を感じて頬が熱を帯びるのを感じながらその手を握り締めた。

固く握手を交わすあたしとマリーカ、カミラとスコルはその光景を穏やかな笑顔と共に見詰めていた。


カミラの家で行われた作戦会議、その席で麗しの傭兵はあたしと轡を並べて征く事を了承してくれた。

あたしは征く、凛々しく麗しきひと達と共に……

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