表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

街の名はウルム

500ユニークアクセス突破致しました。これからも宜しくお願い致します。

マリーカと出逢ったあたし達は彼女も加えて昼食を摂る事となり、あたし達は出逢った場所に程近い所にあったレストランに入店して四人でテーブルを囲んだ。

あたしはマリーカと向かい合わせになる形で座り、あたしの隣の椅子に座っていたスコルは嬉しそうに笑いながらあたしに抱き着いて来た。

「えへへ、裕香の隣だ」

「……す、スコル、こ、ここお店の中だから、あんまり騒いじゃ駄目だよ」

あたしは抱き着いてくるスコルの温もりと瑞々しい肢体の感触に頬を火照らせながらスコルをたしなめ、その様子を見ていたマリーカは穏やかな笑みを浮かべて隣に座っているカミラに話しかけた。

「あらあら、スコルさんがあんなに懐くなんて、凄いわね」

「私も初めて目にした時は随分驚いたよ」

マリーカの言葉を受けたカミラが笑いながら答えていると給仕係が注文を摂る為にあたし達のテーブルへと近付き、あたし達は料理とゼクト(シャンパンと同じ製法で作られたドイツのスパークリングワイン)のボトルを1本注文した。

注文を終えたあたし達が雑談を交わしていると給仕係がフルート型のワイングラスを4つとゼクトのボトルをあたし達のテーブルへと運び、あたし達はボトルの栓を抜いて各々の前に置いたグラスにゼクトを注いだ後にそのグラスを手に持った。

「我等の主とマリーカの出逢いを祝し、乾杯」

「「乾杯」」

カミラの音頭を受けたあたし達は声を揃えながら掲げたグラスを重ね合わせ、グラスが重なり合う澄んだ音色がテーブルの周囲を舞った。

あたし達は乾杯を終えた後にグラスを傾けてそこに満たされたゼクトを喉に流し込み、あたしは爽やか甘口のゼクトの味に大きく頷きながら口を開いた。

「……うん、とっても美味しい」

あたしはそう呟きながら再びゼクトを喉へと流し込み、その様子を見ていたマリーカはグラスを手にしたまま穏やかな笑みと共にあたしに話しかけて来た。

「……ふふふ、良い飲みっぷりね」

「……夜の裕香の飲み方はまだ良いぞ」

「そうだよ、夜の裕香は凄いんだよ〜」

「……ちょ、ちょっと、カミラ、スコル」

マリーカが呟いているとカミラとスコルがゼクトを飲みながらマリーカに話しかけ、それを聞いたあたしが慌てて声をあげると三人から楽しげな笑い声があがった。

そんな風にあたし達がゼクトのグラスを傾けながら談笑していると給仕係があたし達のテーブルに注文した料理を並べて行き、あたし達はゼクトのグラスを傾けながら並べられた料理に舌鼓を打った。

マリーカはその面立ちに相応しく穏やかなで柔らかな物腰をしていていたけど、あたしはスコルやカミラとは違った雰囲気のマリーカとの会話を楽しみ(勿論、スコルやカミラとの会話も)ながらゆったりとした雰囲気での食事を楽しんでいた。

「そう言えば、宝積寺さんは大聖堂を御覧になりましたの?」

「大聖堂?」

マリーカの言葉を聞いたあたしは首を傾げながら呟き、マリーカは微笑と共に頷いた後に言葉を続けた。

「この街には大聖堂がありますのよ、と言ってももう300年位は建造途中のままなのですけれどね」

「建造途中、ですか」

マリーカの説明を聞いたあたしはどう言うべきか戸惑いを覚えながらも言葉を返し、あたしの戸惑いを含んだ言葉を受けたマリーカは微苦笑を浮かべながら更に言葉を続けた。

「建造途中と言っても基本的な部分は概ね完成しているので大聖堂としては使用可能ですわ、鐘塔は未完成ですけれどもそれでも充分立派な大聖堂ですわ」

「へえ、カミラやスコルも見た事あるの?」

マリーカの更なる説明を聞いたあたしは興味を掻き立てられるのを覚えながらカミラとスコルに問いかけ、カミラとスコルがゆっくりと頷いたのを確認するとマリーカを見詰めながら言葉を続けた。

「それじゃあ、その大聖堂に案内して貰って構わない、マリーカさん?」

「ええ、勿論構いませんわ、宝積寺さん」

あたしの言葉を受けたマリーカは穏やかな笑みと共に頷きながらあたしの言葉に応じ、あたしは笑顔で頷きながらグラスを傾けて喉にゼクトを流し込んだ。

そうしてあたし達はゆったりとした素敵なランチを満喫した後に店を後にし、それからマリーカに案内されてこの街の大聖堂へと案内して貰った。

案内して貰った大聖堂は確かに鐘塔こそ未完成だったけど中々立派な建物であたしはその大きさに宗教勢力の持つ力の一端を感じながら、その建物を感嘆の眼差しで見詰めていた。

「へえ、本当に見事な大聖堂ですね」

あたしの言葉を聞いたマリーカは穏やかな笑みを浮かべ、あたしはその笑顔に見とれながらあの大聖堂を見た時に脳裏に浮かんだ事を考えていた。

(マリーカさんはこの大聖堂が300年位は建造が停止していると言ってた、黒いシャワルツワルトの近くにあり、河に面した街、そして長期に渡り建造が停止された大聖堂、もしかして、この街って……)

あたしはマリーカが説明してくれたこの大聖堂の説明と目にした街の様子からこの街の名前を予想し、その予想が正しいかどうかを確認する為にカミラに向けて問いかけた。

「ねえ、カミラ、この街の名前なんだけど」

「ん?ああ、そう言えばまだ言って無かったな、この街はウルム、神聖ドイッチュラント連邦帝国南部に位置する特権都市だ」

(やっぱり)

カミラの口から出たこの街の名はあたしの予想した通りの名前で、それを聞いたあたしは胸中で呟き、それからカミラを見詰めながら言葉を続けた。

「ねえ、カミラ、今から変な質問をするね、今日って何日かな」

「……確か、海月の四日だった筈だ」

あたしの問いかけを受けたカミラは首を傾げながらそれに答えてくれて、それを聞いたあたしは「キュイラシェ」で使われていた暦を思い出しつつ現在の日付を胸中で確認した。

(海月四日って事は七月四日、そしてあたしの予想が正しいとしたら残された時間は1ヶ月少々)

「マリーカさん、今のガリア帝国の状況って分かります?」

あたしは胸中で呟いた後にマリーカに質問し、マリーカはあたしの突然の質問にカミラと同じ様に首を傾げながら答えてくれた。

「そうですわね、確か、ガリア帝国は現在ブリタニカ王国と睨み合ってい筈ですわ、ガリア帝国のブリタニカ遠征軍はブローニュに展開しているのですが、護衛するガリア海軍の艦隊がカディスで釘付けになっていてブローニュに展開したままになっているとの事ですわ」

マリーカが告げてくれた内容はあたしが想像していた通りの内容で、それを聞いたあたしはウルム大聖堂を見詰めながらマリーカの伝えてくれた情報を確認した。

(今はウルムの戦いの直前、後1ヶ月と少ししたらオストラント軍が侵攻してくる。問題はそれまでに部隊の編成が間に合うかどうかだけど)

「……宝積寺さん?どうかなさいましたの?」

あたしが考え込んでいるとマリーカが怪訝そうな面持ちであたしに問いかけ、それを受けたあたしはマリーカに視線を向けながら口を開いた。

「……マリーカさん、カミラとスコルを率いる主として、貴女とお話をしたいのですが」

あたしはマリーカのエメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐに見詰めながら言葉を告げ、それを受けたマリーカは暫く沈黙した後に真剣な表情で頷きながら口を開いた。

「……そのお言葉確かに承りましたわ、ここではなんですから、今夜、カミラさんのお宅にてお話を窺わせて頂きたいのですが?」

「……カミラ、大丈夫、かな?」

マリーカの返答を受けたあたしはカミラに視線を向けながら問いかけ、カミラは穏やかな笑みを浮かべて頷きながら言葉を続けた。

「愚問だな裕香、お前は私達の主だ、遠慮など無用だ」

「ありがとう、カミラ」

「……いよいよ、何かするんだね、裕香?頑張ってね、あたしもカミラも裕香に従うからね」

あたしがカミラの言葉に御礼を言っているとスコルが嬉しそうに尻尾を振りながらあたしに声をかけ、あたしが笑顔で頷いているとカミラが踵を返しながら言葉を続けて来た。

「それじゃあ、食料や日用品を購入して直ぐに帰るとしよう」

「そうだね」

あたしは相槌を打ちながら歩き始めたカミラの後に続き、スコルとマリーカも直ぐにあたし達を追って歩き始めた。

それからあたし達は食料や日用品等を購入(マリーカは準備の為に一度自宅に戻った)した後にヴィルヴェルヴィントの繋がれている公共の厩へと移動してマリーカと合流し、ヴィルヴェルヴィントの背中に購入した品々をくくりつけて帰宅の準備を整えた。

「さてと、それじゃあ、帰るね、裕香」

「えっ?……ッキャアッ」

準備が終わるとスコルが嬉しそうに笑ってそう言いながらあたしに近付き、あたしは戸惑いの声をあげかけたがその最中にスコルに軽々とお姫様抱っこをされてしまって思わず悲鳴をあげてしまった。

「あらあら」

「……す、スコ……ル」

一連の光景を目の当たりにしたマリーカはおっとりとした笑みを浮かべながら声をあげ、あたしは自分の頬がこれ以上に無い程熱を帯びてしまうのを感じながらスコルに声をかけたが、スコルは嬉しそうに笑いながらあたしに話しかけてきた。

「家まであたしがしっかり抱えてってあげるからね、裕香」

「……う、うん」

あたしはスコルの表裏の無い笑顔とあたしの身体を包み込むスコルの瑞々しい肢体の感触に押されて思わず頷いてしまい、その様子を見ていたカミラは穏やかな笑みを浮かべるとヴィルヴェルヴィントの手綱を引きながらあたし達を促して歩き始めた。

そうしてあたし達はウルムの街を後にしたが、行き交う人々はスコルにお姫様抱っこされてしまっているあたしの姿に好奇の視線を向け、あたしは異世界に来て最大の羞恥プレイの経験とあたしを抱えてくれているスコルの感触に頬が物凄い熱を帯びているのを感じながらスコルに運んで貰い、マリーカは穏やかな笑みを浮かべたままその傍らを進んでいた。


異世界に来て始めて訪れた街、その街は静かに戦雲が迫りつつある街、あたしは異世界で出逢った凛々しきひと達と共にその渦中に身を投じる事を決めた。

あたしが異世界で初めて訪れた戦雲迫る街、その街の名は、ウルム……

作品内における暦について


この世界の時間の経過単位はこちらの世界と同一の1日24時間、1年12ヶ月365日となりますが各月の名前は数字でなく固有名詞で呼称されております。


雪月(1月)


梅月(2月)


桃月(3月)


桜月(4月)


若葉月(5月)


霧月(6月)


海月(7月)


葉月(8月)


栗月(9月)


紅葉月(10月)


葡萄月(11月)


牡丹月(12月)


地域名対比表(追加)


地域名・現実の地域名


ヴァイスラント・ポーランド

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ