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第二章 乙姫

 竜宮城の中に通された浦島太郎は長い廊下を歩いていた。

踏みしめる床は緑色の石でできており、壁や天井も同様の石造りであった。

平衡感覚を失いそうになる曲がりくねった廊下を亀はずんずんと迷わず進んでいく。

ここまでで三回ほど人間(?)とすれ違っていたが、

いずれも「半魚人」という言葉がもっともな容貌をしていた。

亀の言うところによれば、あれが「深き者」だそうだ。

先程亀が自分は深き者の血をひいているとかなんとか言っていたが、

自分の中にあんな得体の知れない生き物の血が混じっているのかと思うと不快で堪らなかった。

しかし、太郎の首筋にできたヒレは、否応もなく事実を告げていた。

亀は一際大きな扉の前で止まり、振り向いて言った。

「これから乙姫様の謁見を受ける。くれぐれも粗相のないように」

 初めて見た亀の真顔に、太郎の咽がゴクリと鳴る。

亀が頷くと、扉の両端に控えていた深き者が恭しく扉を開いた。

扉をくぐると、そこは石造りの神殿を思わせるような部屋だった。

最奥には数段の階段が設けられ、周囲より高くなった壇の上には、

さらに石造りの祭壇があり、その上に一人の女が座っていた。

椅子などはなく、祭壇の上に直に腰を下ろしていた。

 階段の下まで進むと亀は頭を垂れ平身低頭の姿勢を取った。

その後ろで太郎がキョトンと立ち尽くしているのに気付き、

「これ、頭が高い。わきまえんか」

と叱責すると、檀上から声がかかった。

「よい。オーベット、御苦労であった。」

「は、ありがたき幸せ!」

「褒美は後ほど届けさせよう。下がれ。」

「はは!」

オーベットと呼ばれた亀は改めて平身低頭すると退室していった。

太郎はその姿を見ながら立ち尽くすしかない。

 「あなた、名前はなんておっしゃるの?」

呆然と亀を見送っていた太郎は突然自分が話かけられて狼狽した。

しかも、先程の威厳に満ちた声とは違い、少女のような可愛らしい声だ。

キョロキョロと周囲を見回すが人影はなく、どうやら檀上の女が発したらしい。

改めて檀上の女を見ると、年の頃は17歳位だろうか。

まだあどけなさの残る面立ちは、女と言うより少女と言った方がよいだろう。

ゆったりとした単衣の赤い衣装が周囲の石の緑色に映えて鮮烈な印象を放っていた。

少女は気怠げに立ち上がると壇から降り、ゆっくりと階段を下りてきた。

立ち尽くす太郎の前に立つと、再び名前を聞いてきた。

「名前を聞いてるんだけど」

「あ、えーと、浦島太郎」

少女はブスっとむくれた顔になる。

「そうゆう冗談は嫌いなんだけど」

「いや、冗談じゃなくて、本名だから、浦島太郎。いや、マジで」

「本当に?」

疑わしげな表情で太郎の顔を覗き込んでくる少女。

よく見ればなかなか可愛いじゃないか、こいつ。

なんて考えが頭によぎり、油断するとニヤけそうな顔を引き締める。

「本当だ。そういう君は乙姫様…でいいのかな?」

「ええ。私が乙姫よ。でも、乙姫というのは役職名みたいなものだから、

二人だけの時はキミって呼んで。そっちが本名。岩崎キミ」

「岩崎キミ?君は日本人なのか?」

「私への二人称が君って紛らわしいというか、どっちでもいいというか…。

質問に答えると、私は日本人よ。あなたと同じように連れて来られたの。

まあ、その辺の経緯はおいおい話すわ」

「ここの連中はしょっちゅうそんな拉致事件を起こしてるのか」

「そんなに頻繁でもないと思うけど。私、こんな偉そうに担ぎ上げられてるけど、

これまでは私がここで一番の新参者だったし」

「これまではって?」

「これからはあなたが新人君」

「で、その新人君に雑用を押しつけるためにわざわざ誘拐してきたと」

「違うわ。あなたには私とセックスしてもらいます」

「は?」


つづく


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