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ボス黒狼と人を食べる鬼退治


翌朝、陽が昇って直ぐに私達は行動を開始した。

今日は一日中、森で討伐をする予定である。

黒狼の洞窟の入口に転移して全員を収納から出す。

ミナセ近衛隊の人たちは意気揚々としており、ララ近衛隊の人たちは憮然としていた。


「みんな、そんなに分かりやすく顔に出しちゃだめだよ。ジャンケンに負けっちゃったのだから、しょうがないでしょ」


「しかし……」

「王女殿下、自分たちも……」


この人たちはサンパウリーナ王国人だけあって、血の気が多い。

血の気が多いというよりも、戦好きって言うのかな、喧嘩上等、祭りだ、わっしょい的な感じが強い。


「分かったよ。じゃあ、ミナセの人たちが洞窟に突撃したら、この結界は解除する。森にいる黒狼はやっつけておいで。死骸は全部持ち帰ってきてね」


「「「おー!」」」

「「流石ララ王女殿下だ!」」


洞窟の入口の結界を解除すると、すぐに沢山の黒狼が飛び出してきた。

ミナセ近衛隊の人達が、斬り合いながらも洞窟に侵入していく。

十人一組、順番に中に入っていった。

それを見て、私も外の結界を解除して、ララ近衛隊に出撃を許可する。

おー! っとオーバーな声を出して、隊員たちは散っていった。

私の近くには、仲間たちと、ボス戦に臨む人たちだけが残った。


「あら、美和さんもボス戦にアサインされたんだね。隊員さんは中だよね」


「はい。こんな機会は滅多にないですからね、志願させて頂きました。隊員達は悔しがっていましたけど、今では洞窟内で暴れまわっていると思いますよ」


「ララ様、実際、ここにいる二人が、近衛隊のトップ2ですよ。まあ信さんを除けば、ですがね」


橘総統が笑顔でそう言った。

もう一人の隊員は若い男の人だ。

寡黙な剣士という感じの人だけど、チャールズとレオンとは一緒に訓練をしているのだろう、仲良さそうな感じがした。


一方のララ親衛隊の方は大柄の男性たちだ。

筋肉量で選んだと思えるようなムキムキマンたち。

そのうちの一人とアリシアは仲が良いようで、随分と親し気に話していた。

ふーん。アリシアの好みはこんなタイプかと私は目を細めて眺めていた。


洞窟はかなり広いのか、中に入ったミナセ近衛隊は、四時間経っても戻ってこなかった。

流石に心配になったので、私達も中に入るかと思ったタイミングで、ぞろぞろと黒狼の死骸を沢山抱えて、ミナセの隊員さん達が戻って来た。

皆、ちょっと疲れた顔をしている。


黒狼の死骸を平地の端に積み上げてもらって、私は素材剥ぎと焼却処理をした。

隊長格の人たちが橘総統に報告をしている。

後でサマリーを聞けば良い。


平地に座り込んで休んでいる隊員さん達の鎧結界を解除して、トイレを促しておいた。

ついでに負傷者にはポーションを配っていく。

結構、傷んでいる人たちが多いな。

黒狼の数もかなり多かったし、大きな個体も結構な数いた。

激戦だったのかな。


エドゥアルド隊長が笛を吹いて、森に散ったララ近衛隊の人たちも戻した。

死骸を預かり、鎧結界を解除して、トイレ休憩に行かせる。

少し早いけど、お弁当と水筒も配って、お昼にした。


私とナナちゃんで、せっせと働いていたら、ナナちゃんがアナ事を滅茶苦茶怒りだした。

ご主人様が働いているのに、何故自分はお喋りしているのかと。

本日付けで解雇すると言われて、青くなってアナは働きだした。


「アナ、ナナちゃんが言う通りだと思うよ。ご主人様云々じゃなくて、働いている人がいるのに自分だけが楽しんでいる様な人は、立派な大人にはならないと思う」


私がそう言うと、ヤバイと思ったのか、アリシアもお弁当配りを手伝い始めた。

結果、私達全員で近衛隊の人たちに弁当を配ることになる。

ララ近衛隊の人たちも手伝おうとしたけど、流石にそれは止めたよ。



ランチを食べてから、私達は十二人で洞窟の中に足を踏み入れた。

ミナセ近衛隊は洞窟前で護衛。

ララ近衛隊は元気よく森に飛び出していった。


午前中に侵攻したミナセ親衛隊からの情報を元に地図を起こし、レオンと橘総統が、それを見ながら先行している。


洞窟の中は思ったよりも広く、入り組んでいる。

光源もなく、一人一人が懐中電灯を持って戦ったそうだ。

そりゃ、苦しいだろうな、と思う。

私達は光魔道具を持っているから、少なくとも暗さに悩まされることはない。

洞窟の奥の方が見えない程度だ。


道が複雑に分かれて、それぞれの道に黒狼が寝床にしている小さな洞窟が沢山あると言う。

数千の黒狼が住んでいるのだ。

これくらいの規模の棲み処が必要なのだと思う。


既に黒狼は討伐されているので、私達の行く手を遮るものは何もない。

複雑な岐路を地図を頼りに進んだ。

報告通り、暫く進むと、かなり大きな広場、いわゆるボス部屋に辿り着いた。


ボス部屋にいる黒狼は話に聞いていた通り、すごく巨大だった。

洞窟の通路を歩くのもギリギリなのではないか。

馬車並みと表現されていたけど、馬車以上のサイズに思えた。


「ミナセ近衛隊は左! ララ近衛隊は右!」


チャールズが部屋全体を明るく灯す魔道具を中央に投げ込んだ。

ボスの周りには沢山の獣の骨が散らかっている。

随分とお年を召した黒狼なのか、私達が部屋に入ってからノソっと面倒くさそうに立ち上がった。

ゆっくりと首を回して、散開した私達を見ている。


「いけー!」

ゲオが特段の土指弾を放つ。

弾丸と同じ形をしたアーモンド型の土くれが真っすぐ飛び、額に当たって弾けた。


「ぐっ! 硬いのか!」


「行きまーす!」

アリシアが風の刃を放つ。一発、二発、三発。

ボスが右前脚で叩くように刃を消した。


「ウゥゥゥ……」


ボス黒狼が唸った。

一歩だけ前に出て、頭を下げて口を開けた。

バケツを引っくり返したような涎が口からボタボタと零れ落ちた。


「後ろ足を狙え!」


両近衛隊が一斉に飛び掛かり、後ろ足に切りかかる。

ミナセの剣は弾かれ、ハルバードの戦斧は皮膚を切り裂いた。

でも、浅い。斧が刺さることはなく、怪力のエドゥアルド隊長ですらノックバックを受ける。


「硬い!」


ボス黒狼は傷つけられたのを怒って、左後ろ足、向かって右側にいたララ近衛隊の方を向いて、右手を大きく薙いだ。


「「うぁー」」

「大盾で受けろ!」


エドゥアルド隊長は左肩の大盾で受けたので、ギリギリ踏ん張ったが、他の二人は背中を打ちつけられて壁まで吹っ飛んだ。

その隙にミナセの人たちが剣を何度か斬りつけるが刃が弾かれる。

ゲオとアリシアが支援の指弾を何発が放つが効果がない。


「ゲオ! アリシア! 目と口を狙ってくれ!」


先陣を近衛隊に譲っていたチャールズとレオンが動き出す。

チャールズは跳び上がって、黒狼の首を狙った。

嫌がった黒狼が顔を振り、チャールズを吹き飛ばす。

それでも、右耳の付近から大きな血しぶきが上がった。

レオンが前腹を切り裂く。

同じ様なダメージが入った。


「武器性能の差かな?」


「はい。魔獣素材の剣。鍛冶師の腕もあるのかもしれません」


私の問いにナナちゃんが答えた。

橘総統の剣もそれなりに高名な鍛冶師が打った剣だろう。

やはり魔獣素材の混合有無が違いな気がする。


「橘総統、ハルバードがまだあるよ。使う?」


大きな声で呼びかけると、三人のミナセ近衛隊が走って戻ってきた。


「かたじけない! お借りする!」


三人にハルバードを渡すと、物凄い勢いで走って行く。

ブンブンとハルバードを振り回す橘総統は、めちゃくちゃ強そうに見えるよ。


「うりゃーーー!」

ハルバードと共に身体をグルグルと回して、遠心力を最大限に使って、橘総統はボス黒狼の後ろ足首にハルバードを叩き込んだ。


バシュ!

大きな音と共に、後ろ足のアキレス腱のあたりにハルバードがめり込んだ。


「ウォーーーー!」

めちゃくちゃ痛かったのだろう。

ボス黒狼が怒り狂って橘総統を狙う。

ガブガブと噛みつきまくっているよ。超こわ。

他の二人がハルバードで牽制して橘総統を守る。

ゲオが三人の前に土壁を出すが、猫パンチならぬ黒狼パンチ一撃で破壊される。


エドゥアルド隊長が背後から黒狼の足にハルバードを叩き込んだ。

チャールズが、レオンが何度も剣を差し込む。

ゲオとアリシアも接近戦に参加しはじめた。

誰かが狙われると、周囲の人たちがカバーし、残りの人たちは背後からダメージを与える。

向こうの攻撃を受けて振り飛ばされることは何度もあるけど、その分、相手にもダメージを重ねることが出来ている。


「ハルバードが有効ですね」


私の横にいるナナちゃんが、戦場を眺めたまま、私にそう言った。

反対側に立つアナは槍を持って、ウズウズとしている。


「そうだね。これだけ広いし、相手も大きいからね」


「ただ、長期戦になるかもしれませんね」


「うん。こそっと空間指弾撃っちゃおうか」


「いや、ララ様、あの者どもに任せましょう。ララ様の近くに置くには些か弱すぎるのです。強くなってもらわないと困ります」


「ふふ。ナナちゃん、厳しいよね」


「いえ、期待しているのです。特にチャックとレオンは潜在能力の二割程度も引き出していないでしょう」


お、思ったよりも評価しているのか。

特にチャールズに対しての普段の扱いを思うと、少し驚いた。

ナナちゃんは、レオンに対しては一定の敬意を払っているようだが、チャールズに対しては扱いがぞんざいなのだ。


皆の息が上がり、動きが悪くなってきた。

そんな中、チャールズとレオンが暴れまわる黒狼の背に乗り、二人して頭の方に移動している。

頭の上から脳を刺すのか。そこまで深く刺さるだろうか。


黒狼が頭の上に乗るチャールズとレオンを嫌がって、大きく顔を振った。

二人とも振り落とされないように黒狼の毛を掴み耐えている。

その隙に全員がハルバードを突き立てた。

何度も何度も突き刺している。


「やーーーーー!」

全速力で加速した美和さんが、ハルバードの槍穂を、胸の中心部に刺しこんだ。

おお、これは相当な深手を与えたのではないだろうか。


「やれーーー!」

右後ろ脚をエドゥアルド隊長率いるララ近衛隊の三人が、戦斧を振って大木を倒すようにハルバードを叩き込んだ。

反対側の後ろ脚は、橘総統とアリシアが同じようなことをしている。


「ウギャーーー!」

顔を天井に上げて、ボス黒狼は大きく叫んだ。

両方の後ろ足首が斬り落とされた。

ズン! 巨大なお尻が地面に着く。

大きく叫んだ黒狼の口内に、ゲオが土の指弾を叩き込む。

チャールズとレオンが、ボス黒狼の両目に剣を深く深く差し込んだ。

「ウギャーーー!」

だが、剣が抜けない。

やむなく、二人ともそのまま飛び降りた。


二人がトンっと地面に着地すると同時に、ボス黒狼は右半身を下に倒れた。

両目に剣が刺さったまま、口を大きく開いたまま、ボス黒狼は絶命した。


アリシアがゲオが、近衛隊の六人も床に座り込んだ。

皆、はぁはぁと大きく息を整えている。

チャールズとレオンだけが、全然平気そうだった。

何なら、もう一戦やれますよ。

そんな感じの余裕さだ。

鍛え方が違う。そういうことなのだろう。


「凄い。みんな、凄く頑張った!」


私は手を叩いて、称賛した。

凄い戦いだったと思う。

二人の近衛隊が肋骨と手首を折っていたので、整形してあげた。

アナとナナちゃんが皆にポーションを配っていく。

骨折した二人には、追加のポーションも渡しておいた。


「ララ様、この黒狼は売却する前に、民に公開しましょう。近衛隊の威厳を知らしめるにも良い機会になるかと」


「うん。そうしようか。黒狼って、牙と魔石しか売れないんだよね? ボスもかな」


「いや、この毛皮は相当な防御力でした。これも高く売れるでしょう。魔石は持っておくのが宜しいかと」


私とナナちゃんで、そう話していると、橘総統が御礼を言いつつ、ハルバードを譲ってもらいたいと言ってきた。


「ララ様、我らの剣は黒狼に届きませんでした。ハルバードを譲っていただく訳にはいきませんでしょうか。もちろん、高額で買い取らせて頂きます」


「うん。もちろん、いいよ。でも、新しく打ったらどう? ハルバードでもいいし、日本刀でも良いと思うよ。素材は教えるよ」


「ララ様、ヤクママの素材がもうありません」


「あ、そうか。じゃあ、明日、素材を獲りに行こう。午前中はコンティスヨの森で、午後から、今日の続きだね」


ミナセ近衛隊の三人は、驚愕の顔を浮かべていたが、チャールズとレオンは、すぐに百人分の素材なんて確保できますよと声をかけていた。



ボス黒狼の死骸は、首都ミナセの冒険者組合本部前の広場に陳列された。

結界を組み合わせて、何とか立っているように見せている。

これだけ大きな魔獣を生で見られることなんて中々ない。

多くの人が列をなして見に来ていた。


ボス黒狼の周りは、数人の近衛隊が護衛のために立っているのだが、彼らには橘総統たちが使っていたハルバードを持たせている。

これで近衛隊が倒しました。見ていた人も、きっとそう思うだろう。


佐藤総理大臣も、真理伯母さんや隆叔父さんも見に来ていたよ。

なんと、こういうのが嫌いなはずの、カスティリオ王国の女王のお母様達までもが見に来た。


佐藤総理大臣と話したのだが、近衛隊の今回の活動は確かに公務ではあるが、討伐任務を受注しているのは私達であり、近衛隊はあくまで手伝っているだけである。

そういう意味では、副業的な扱いになるので、素材売却の報酬を渡すのは構わないとのことだった。


最初の数日で、黒狼の一つの群れを討伐できた。

その素材売却益は、人数で割っても、一人二万Gにはなる。

ボス黒狼の素材はオークションになるようなので別扱いだが、私はボーナスとして、隊員たちに配布した。

まだ、この先も作戦は続くのだ。

モチベーション高く頑張ってもらいたい。

なお、ヤクママの素材でハルバードと日本刀の発注もしておいた。

これも私の奢りだ。

出来上がるのは来月になるが、ミナセ近衛隊の人たちも凄く喜んでくれたよ。



そこからさらに数日間進み、別の黒狼の群れの討伐も出来た。

私達が現在狙っているのは、オークの群れというより、集落の討伐である。


オーク(Orc)。

体長二メートルを超える人型の魔獣だ。

人類と違い、その体表は硬く分厚い。

筋骨隆々であり、巨大な棍棒を振り回す。

ミナセでは『鬼』と呼ばれていたのだが、それもこの姿を見れば納得できる。

赤ら顔の額には、小さな角が付いているのだ。

下顎には二本の牙が上に向けて突き出している。

まさに赤鬼だ。

そんな赤鬼達には知性もあり、それなりの集落をつくって生活していた。


山の下の方、海岸沿いの崖に集落を形成していることが多いそうで、今回の集落もそうだった。

黒狼や魔獣対策なのだろうか、木で出来た柵が集落の周りを覆っている。

空間ボールに乗ったレオンが、上空から偵察する限り、集落には約三千体はいるとのことだ。

土で出来た鎌倉の様な家の中にいる個体もいるだろうから、正確なところは不明だ。


オークの厄介なところは、その凶暴性と食性だ。

彼らは人間の肉を好み、人間を誘拐し家畜の様に飼育する傾向がある。

上空から見る限り、囚われた人間はいないようだが、集落に人間を産み育てる飼育場の様なものを設けている場合もあるのだ。

オークの子供を殺すのは不憫だが、生かしておくと将来、人間の誰かが犠牲になる。

心を鬼にして、鬼退治をせねばならぬ。


「どうする? 二百人で突入する?」


「ララちゃんがいれば、問題ないっしょ」


「分かった。じゃあ、侵攻する方角だけ決めよう。ララの近くには誰もいない方がいい」


「落とし穴?」


私は頷いた。

落とし穴で歩き回れば勝手に落ちてくれるだろう。

橘総統率いるミナセ近衛隊、エドゥアルド隊長とララ親衛隊、チャールズと仲間たち、そして私で東西南北を割り振ることにした。


私が担当するのは正門だ。

近衛隊の隊員たちは左右に分かれ、遠回りして集落に近づく。

最も遠い海岸線から進行するのはチャールズ達だ。

アナが速度についていけるか心配だが、おそらく相当な速度で走って裏側に回るのだろう。


「ララ様、そろそろ作戦開始時刻です」


ナナちゃんから声をかけられた。

私は落とし穴魔法で歩くつもりだったので、ナナちゃんはチャールズ達と一緒に行動するかと思っていた。

でも、「自分は如何なる時でもララ様のお傍を離れません」とナナちゃんは主張した。

正直不要だし、邪魔なんだけど、まあ、そう言うのだろうなと思っていたところもある。

チャールズ達は、そんなナナちゃんに半ば呆れていた。


「よし、行こうか。ララの手を離さないでね」


ナナちゃんと手を繋ぎ集落の正面入り口に向かって歩き出す。

風船の様に空間ボールを周囲に何個も浮かべる。

私達の周囲数十フィートには落とし穴だ。

暗い闇が地面に広がっている。


見張りのオークが大声で何かを叫んだ。

木製の門扉が開いて、バカでかいオークたちが棍棒を持って出てくる。

「ゴギャー」とか「ギーギャ」とか叫んでいるけど、何を言っているかは分からない。

格好の獲物が向こうからやってきたとばかりに、興奮して近づいてきた。


ノコノコ近づいてきた数体のオークが、落とし穴に消えていく。

そのうち、何かがおかしいと思ったのか、石を投げつけてきたりするけど、空間ボールに弾かれて、私達の元までは届かない。

そのまま、ギャーギャー騒ぐオークを無視して、集落の中に入った。


集落の真ん中に大きな水場があるらしく、その周りに土で作った家々が建てられている。

私は真っすぐ進む。

多くのオークが集まってきたけど、そのうちに右手の方で戦闘が始まったらしく、そちらに走って行くオークが増えてきた。

左手からも大きな声が聞こえ始めた。

近衛隊は無事に突入出来たようだ。


オークは知性ある魔獣ではある。

武器を持ち、火を扱うこともできる。

それでも、洋服を着るという風習はないようだ。

全員が岩肌の様な赤い体表を晒していた。

男性も女性も局部を隠すことはない。

人間を遥かに凌ぐ体躯に相当する局部を、恥ずかしげもなく晒しながら動き回っている。

これが何気にキモい。


水場まで進み、家々ごと落とし穴に入れる。

ぐるっとそのまま水場周辺を回った。

もう私達の周りにオークはいない。

多数の兵士が攻めてきたのだ。

皆、そちらへ向かったのだろう。

こんな小さな子供二人、さほど驚異には感じないのだと思う。

さくさくと落とし穴に招待してまわった。


ララ近衛隊は大量のオーク達と乱戦になっていたが、上手に戦えているようだった。

振り回される棍棒は大盾で受け、長いハルバードを突いてダメージを重ねている。

エドゥアルド隊長はハルバードを振り回して戦っていた。

オークと全く同じ戦い方をしていたよ。


チャールズ達は問題なさそうだ。

アナだけがやられていたけど、近くにいる誰かが彼女をフォローするようにしている。

ゲオとアリシアは中距離で戦う練習にしているみたいで、バンバン指弾を投げまくっていた。

チャールズとレオンは、オーク程度の相手じゃ、近づかせもしない余裕の戦いだ。


ミナセ近衛隊も乱戦の中、一人一人が優勢に戦っている。

本当ならば棍棒を一撃喰らえば、手足どころか内臓含めて砕かれてしまうのだろう。

でも、今は鎧魔法のおかげで、彼らは恐れることなく懐に入りこめている。

懐に入りこめれば、技量に勝る近衛隊が負けることはない。

ザクザクと斬り飛ばしていていた。


私は少し離れた位置にいるオークに指弾をぶつけ倒していった。

近づいたオークは勝手に落ちていく。

もはや一方的な虐殺劇だった。


夕方近くになって、戦闘は終了した。

大きく深い穴を掘り、死骸はまとめて入れる。

オークは魔石以外に売れるところがない。

三千個近くの魔石だけを収納して、残りは穴に入れて燃やした。


「生きている数百体のオークが、ララの収納にはいるけど、これって売れるのかな?」


私の問いに答えたのは、ナナちゃんではなく、橘総統だった。


「ララ様、冒険者組合に売却してください。数百体ですか。これはちょっとしたお祭りが開催されるかもしれませんな」


「祭り?」


「はい。オークの肉は美味しいのです。冒険者組合は、おそらく直ぐに街に卸すでしょう。腐らせたら勿体ないですからな。お祭りをして、皆で食べるのですよ」


「うぇ。あれを食べるのか……」


ミナセ近衛隊の人たちは、オークの祭りだと喜んでいるけど、ララの仲間たちも、ララ近衛隊の人たちも微妙な顔をしている。

実際に目の前で見てしまうと、あれを食べる食欲は湧かないよ。


オークは人を食べ、人はオークを食べる。

どっちもどっちだな、と私は改めて思った。



世界地図

挿絵(By みてみん)

東側立体地図

挿絵(By みてみん)

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