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建国とワイバーンと黒龍


千三百五十九年七月某日。

全世界に『サウスウェスト連邦国』の設立が宣言された。

北西に位置するサンテール国、大陸南部にあるヴァルデン共和国、カスティリオ王国、イフヤ共和国、サン・ミラージュ王国が連邦国に属する国々である。

旧ラージャスティ王国は、先代国王の死後、それを引き継いだメーガン・ナイアール女王陛下により、イフヤ共和国との合併が宣言された。

メーガンちゃんは、サウスウェスト連邦国の王家の一つとして、一代限りの存続が認められた。

とはいえ、メーガンちゃんは連邦国の事務次官の一人として、既に各国に認められている。

貧困対策担当事務次官だ。

連邦国内から、貧困を無くすために、最低限人として生きていけるための施策を立案し、遂行することを自らのミッションとして活動している。


連邦国の事務総長として、カスティリオ王国宰相のカタリナ・デ・ラ・クルスお祖母様が任命された。

とはいえ、実態としての仕事は、その配下の事務次官であるアス姉が担当している。

姉はお祖母様から、その全てを受け継ぐべく、ずっとお母様達と一緒に活動していた。


連邦国の軍はマリーパパが率いている。

実質的には各国の司令官や隊長陣が運営するのだが、その取りまとめ役として国王と兼務することになった。

それ以外にも、経済や通商関連をヴァルデン共和国から、文化や各国間の交流、イベント関連をカスティリオ王国から派遣された人たちが中心となって活動している。


サウスウェスト連邦国の中央機関は、旧セレニカーナ王国のフィオレンティアに設けられた。

あのアリーチェさんが住んでいたフィオレンティナの城である。

一応、私の居城という扱いでもあるので、連邦国の大きなイベントの時には、当然私も行くことになるし、実際、最初の日は行って玉座に座ったりもした。

まあ、実際はフィオレンティナ城の一室が転移部屋になっているので、そこから出入りしているのだけど。

ちなみに、その建国祭は凄く退屈だった。

一日中、ずっと玉座に座って挨拶を受けるのだ。

アス姉が横に立ち、反対側にはお祖母様が横に座ってサポートしてくれるので、ほぼ操り人形だったけど。

私の出番は初日だけだったけど、建国祭は一週間続いたそうだ。

歴史に残る大イベントだった、らしい。


私の身分だが、サウスウェスト連邦国の王族として憲法に定義されている。

未成年なので当面王女呼びで良いそうなのだが、公式には既に女王だ。

あと一年半して成人したら、呼び名も女王陛下になるそうだ。


『サウスウェスト連邦国』の設立をきっかけにして、ミナセ共和国ならびにバリカン共和国と軍事同盟を締結した。

相互不可侵、外敵との戦争時の協力が明文化された。

ミナセ共和国とは、細かい通商条約も締結されたので、基本無税で輸出入する関係となった。


旧サンパウリーナ王国に侵攻していたカサ・デ・アグア王国だが、サウスウェスト連邦国の設立により、停戦となった。

こちらとしては、北部を割譲しても良いと考えていたのだが、結局開戦前の国境線まで撤退することになったようだ。

アス姉たちの強気の交渉の結果らしいが、私としてはそのままでも良かった。


北部までもがサン・ミラージュ王国の領土となったけど、建てた外壁はそのままにするそうだ。

また侵攻されたら、そこを最終防衛線に出来るし、あの壁が突破されることが無いのは今回で証明済みだ。

あれがあることで戦争の抑止力にもなるだろうとマリーパパが言っていた。


サウスウェスト連邦国に対する世界各国の反応だが、同盟締結から敵認定まで様々だった。

まず最も友好的な関係を築けたのは、前述のとおり、ミナセ共和国だ。

その兄弟国であるバリカン共和国も追随したので、完全なる味方。

大陸の南は完全に平和になったと考えて良いと思う。


明確に敵に回ったのは、残念ながら私とアス姉の故郷であるカウニア連邦である。

私達の動きをしっかりと監視していたのだろう。

建国した当日に外交声明を発表した。


・サウスウェスト連邦国は女神様より神敵と御神託を受けた一部の裏切り者による国家

・各国の女神教信徒に対する弾圧も報告されている

・女神様の教えに反する活動を推進する勢力でもある

・そのため女神様より鉄槌を受けた地域も多い

・これを許すことは人類存亡の危機である

・女神教の信者ならびに良心的な国が惑わされないことを強く要請する


女神教の現教皇イングリッド・アフ・ハルドソンからの声明であったそうだ。

サウスウェスト連邦国にも多くの女神教の信者がいる。

かなりのインパクトがあるのではないかと私は心配したのだが、ナスルのオジちゃんがそれを否定した。


「すぐに各国の教会に大司教名義で声明を出しておいたわ。イングリッドがやりそうなことだからな。予め準備しておいて良かったぞ」


ナスルのオジちゃんは、イフヤ共和国の国家元首であると同時に、女神教の大司教でもある。

サウスウェスト連邦国の女神教は所謂「ナスル派」として、カウニア連邦の女神教とは考え方も異なっており、今回のことで完全に決別する宣言を出したと言う。

『真女神教』という言い回しが気になったが、完全に別の宗派となったようだ。


イフヤ共和国はさておき、問題は有効国であるバリカン共和国である。

今、ナスルのオジちゃんや、メーガンちゃん、アス姉たちは集中してバリカン共和国と協議している。

この話は続きがあるので、また別途することにする。


完全な敵対姿勢を出したカウニア連邦に対して、サウスウェスト連邦国は関係性を断った。

サンテール王国との国境線は厳重に管理され、サンテール王国首都リュミエールと、カウニア連邦国境の街タウリスを繋ぐ統一街道には大門が建設され、サンテール王国軍が往来を禁じた。

カウニア連邦は、サンテールから輸送される物資で成り立っている国である。

事実上の兵糧攻めをマリーパパは始めたということだ。


そうなるとカウニア連邦は関係性の薄かった東側の隣国セヴェルスカに頼るしかない。

実際、教皇イングリッドはセヴェルスカ帝国を訪問するなどの動きもあるそうだ。

セヴェルスカ(Severska)帝国。

十王ボリス・イワノヴィチ・ロマノフ(Boris Ivanovich Romanov)

知性の十使徒フョードル・ヴァシリエヴィチ・ドミトリエフ (Fyodor Vasilyevich Dmitriev)

この二人が未だに堅牢な管理体制を敷く独裁国家である。

同じ国王、十使徒コンビのお母様達達とも殆ど繋がりがない。

「独裁者たち」

そうお母様達は言っているくらいだ。


北の独裁国家三国。

セヴェルスカ帝国、ウルグル帝国、バイシン帝国。

この三つから外交使者が送られてくることはなかった。

黙殺、ということだろう。


最たる敵対的反応を見せたのがカウニア連邦だが、次に敵対関係になっているのは、この三国だと判断して良いとアス姉は言っている。


残りの国の中で、大陸中央部のユニオン・リパブリック、ミナセ共和国の北の隣国ミョンジュ共和国は外交官を送り込んで挨拶してきたそうだ。

彼らとしては友好的関係を築き、可能ならば同盟を結びたいと言っている。

現時点では、慎重に協議を重ねているそうだ。


決して彼らが悪いわけでもないのだが、彼らはそれぞれ危険な立場に置かれている。

共に隣国と緊張関係にあるのだ。

ユニオン・リパブリックは北のセヴェルスカといつ戦争が起きるか分からないし、ミョンジュもそうだ。

バイシン帝国は必ず独立したミョンジュに攻め入り、かつての領土を取り戻すだろうと言われている。

ミナセ共和国が、ミョンジュと友好国でありながらも、軍事同盟を締結していないのは、同じ理由である。

もし同盟を締結するときは、世界が一丸となって、北の帝国と戦争することを覚悟する時だとマリーパパは言っていた。


※


文系派の人たちが、多忙を極めていた七月。

私は武芸派の人たちに付き合って、未だにミナセ共和国の東の山脈の向こう側で戦っていた。


既に三カ月を越え、かなり魔獣は間引き出来てきたと思う。

もう十分だと思える量の魔獣を倒し、もう十分だと思える素材売却報酬を手にした。


また、チャールズ達の強化という側面でも成果が得られた。

おまけにララ近衛隊まで随分と強くなったと思う。

ミナセ近衛隊は最初の百名だけでなく、参加する隊員たちをローテーションして、延べ五百人もの隊員たちが討伐作戦に参加している。

そして、全員が魔獣素材の日本刀を携えていた。

隊員たちの中には日本刀からハルバードに乗り換えた人までいるみたいだ。


作戦を終えないのは、未だに黒狼が住む洞窟やオークの集落が見つかり続けているのと、今回のターゲットのあいつ等の存在だ。


「さて……、上手くいくかは私達次第」


「大丈夫ですよ。殿下、あれだけ練習したではないですか」


「うん……、アリシアはそういうけどね……、本番とはまた違うものだと思うし。あいつらだって、黙っていないよ」


そう言って、私達は空を見上げた。

今回ターゲットとなる魔獣が、縦横無尽に飛び交っている。

大型の飛行型魔獣。

トカゲの身体に大きな翼。

ワイバーンだ。


正式にはワイバーンではなく、リンドヴルム(Lindwurm)と呼ぶそうだ。

でも、私達がワイバーンと何度も連呼するものだから、もう皆、ワイバーンと呼ぶようになってしまった。


見た目は北黒の森のドラゴンさん達を小さくした感じに見えるかもしれない。

ドラゴンさん達は四つ足だ。

でも、ワイバーンは二本足で、大きく太い足と、小さいけど器用な手を持っている。


ワイバーンは東の山脈の上の方に住んでいる。

そこから自由自在に飛び回って、山に住む獣を捕食している。

厄介なのは、山の向こう側にも行って、人間を捕まえたりすることだ。

ワイバーンが襲来すると、その町や村は大きな鐘を鳴らして、皆を家の中に非難させることにしているそうだ。

沢山の兵隊さんたちで対応しても、相手は巨大な空飛ぶ魔獣である。

剣は届かないし、矢は効かない。

精々、地面に降下した時に倒すしかない。


そのワイバーンの間引きをしないと、この討伐作戦は終わらない。終われないのだ。


じゃあ、始めるか。

そう言って、私は収納から今回のワイバーン対策で作ったおもちゃを取り出した。

アリシアの言う通り、サン・ミラージュの海の上で、何度かテストもしている。

素材は、鍛冶師が打ってくれた魔獣素材混じりの鉄。

それを繋げて形作っている。

その形は、翼の生えたサーフィンボード。

いや、翼の生えた帆のないヨットかな。


私達六人が乗れる程度の大きさ。

細長く船首が細くなっている。

そこに物凄く大きな翼が取り付けられているのだ。


要はチャールズが飛行機を作ったということだ。

その飛行機を空間結界で包み、私が宙に浮かべて飛ばす。

アリシアは風魔法で翼に推力を当てて、速度を上げる。

空間魔法と風魔法の併せ技によって飛ぶということだ。


チャールズとアリシアは、もう全身から喜び光線を醸し出しているが、私とゲオはゲンナリしている。

レオンは苦笑を浮かべてるし、ナナちゃんはお澄まし顔だ。


「じゃあ、ワイバーンを落とした後は、皆で頼むよ」


「「「おー!」」」

「「「任せてくださいませ!」」」


元オークの集落があった場所に、約二百名の近衛隊を待機させる。

私達は、この集落の上空でワイバーンと交戦し、その翼を奪い、この集落の上に墜落させる。

翼を失ったワイバーンは近衛隊員が数に物を言わせて討伐する。

そんな作戦である。


飛行機はフワッと浮かび上がった。

今回は飛び回らない。

攻撃してくるワイバーンを、集落の上空で撃ち落とすのだ。

ワイバーンは翼に穴を開けても、飛行機の様に墜落しない。

どう言う仕組みかは分からないけど、葉っぱみたいにフワフワとゆっくりと降下するのだ。

そのため、地上部隊が重要になる。

私達が集落の上空から動かないのもそのためだ。


ギュンっと飛行船が加速した。

下からアリシアが風魔法をぶつけたのだろう。

私はバランスを取るのに集中する。

形状的に凄くバランスを取るのが難しいのだ。

翼というのは、前進する時の風を受けるからこそ役立つものだ。

こんな風に浮かぶだけならば、かえって邪魔だと思う。


真下にいる近衛隊がアリンコみたいに小さくなる。

山脈の高さは遥か上だ。

それでも、自分たちのテリトリーである空に、侵略してきた私達が許せないのだろう。

山の上から、結構な数が向かってくるのが見えた。


「二十体は来るよ!」


レオンが声を上げた。

東の山脈には、何百を超えるワイバーンが住んでいる。

流石に全滅は無理でも、せめて半数は倒したい。


「風の盾だすよ!」


アリシアがワイバーンの行く手を塞ぐ風の膜を生成する。

足を止めた、という表現は不適切だけど、ホバリング状態になったワイバーンを狙うのが、私達の作戦である。


「今!」


ゲオが指弾を放つ。

アリシアが風の刃、チャールズとレオンにはアサルトライフルを持たせている。


ターン! ターン! ターン!

アサルトライフルの音が響く。


「六体! 堕ちたよ!」


チラッと下方を見ると、ヒラヒラと花びらの様に堕ちるワイバーンが見える。


「ララ様、右に移動。上昇しながらです」


私は飛行機の操縦に集中だ。

ナナちゃんの指示に従って動かす。

アリシアが下から風を吹かせた。

同時にワイバーンが飛行機の下を通過していく。


「ドンドン来るよ! アリシア! 足を止めてくれ!」


「右です」「左下へ」「上です」

私はナナちゃんの声だけに意識を集める。


ターン! ターン!

アサルトライフルの音は絶えず聞こえるが、チャールズ達が色々叫んでる声の方がうるさい。


「ナナちゃん、どんな感じ?」


「ワイバーンの足が止まらないので、攻撃が当たらないのです。アリシアも突撃してくるワイバーンを防ぐのに精一杯です。あ、右に逃げてください」


ナナちゃんの指示で、飛行機を右にスライドさせる。

グラッと傾いたので、バランスを調整した。


うう、気持ち悪くなってきちゃったよ。

こんな大きな山のそばだ、山から海に吹き下ろされる強風に煽られて、飛行機はグラグラ揺れる。

バランスを保持するのも大変だ。


「あ、マズイですね、四方からアタックされます」


「え、どうする?」


「アリシアがどれくらい防御し切れるか……。念のため、墜落対策を」


「うん、それはもう出来てる」


「来ます!」

「衝撃来るよ!」


落下防止のため、私達は飛行機の手摺りに革製ベルトで結びつけてる。

そのベルトをギュッと掴んで踏ん張った。


ガンッ!

大きな音がして、右の翼が傾いた。

横倒しになった飛行機を回転させて、元に戻す。


「また来ます!」


今度は真下つからの衝撃が来る。

身体が浮いて胃がせり上がった。

浮いたタイミングで何処かに衝撃を受ける。

グルッと機体がひっくり返った。

腰につけたベルトがピンと伸びて、飛行機からぶら下がった。


「ララちゃん!」

「わかってる、戻すよ!」


飛行機をまた一回転させようとするが、再びワイバーンに体当たりされたのだろう。

錐揉み状態になってしまった。


「もうダメだ! 逃げるよ!」


視界がぐるぐるする。

もう天地がどっちかわからない。

予め準備していた通り、飛行機ごと転移魔法をかけた。


ドブンっと、海に落下した。

海の中に沈んでいくのが分かる。

急ぎ飛行機の上下を修正してから、もう一度転移した。


最初に出発した集落の真ん中に戻った。

皆、飛行機の床にしゃがみ込んで、ベルトを掴んで息を整えている。


ワイバーンは墜落する時にフワリと堕ちることが出来るけど、私達は失敗したらガチもんの墜落だ。

墜落対策として、サン・ミラージュの海面に転移する準備をしていた。

集落に直接転移すると飛行機に潰されてしまう。

海の中に落下したあと、体勢を整えてから戻る方が良いだろうと決めていたのだ。


落下の恐怖で心臓がドキドキ言っている。

深呼吸して気持ちを落ち着かせると、ようやく周囲の喧騒が聞こえてきた。

落下したワイバーンと近衛隊がまだ戦っているのだろう。

仲間達も膝に手をついて、起き上がった。

革製ベルトのロックを外す。


「結局、何体堕としたの?」


私の問いにチャールズが答えた。

出発前の様に浮かれていた様子はもうない。

少しションボリした感じだ。


「いや……、結局、最初の六体だけだったよ」


「同じ高さでも、全く当たらないな。戦闘機の空中戦って、大分高度な技術がいるんだなと分かったよ」


レオンが笑いながら言っていた。


それから頑張って何度か挑戦したが、三体墜落させるので精一杯だ。

ワイバーンもこちらの対応策を覚えたのか、最後は良い様に、やつらに遊ばれてしまった。

頭がクラクラするよ。


九体のワイバーンを倒し切って満足した様子の近衛隊員達が嬉しそうに死骸を引きずって戻ってくる。


「ララ様、また展示しましょう。九体の討伐など歴史的快挙ですよ!」


美和さんが満面の笑みで言ってきた。


「そ、そうだね……」


私は飛行機から降りて、九体のワイバーンから魔石を抜いた。

死骸も収納しておく。

本当ならば数十は討伐するつもりだったのだ。

敗色感満載である。


※


次の日の朝、私はナナちゃんと、ドラゴンさんのところを訪れた。

同じ飛行する魔獣であるドラゴンさんならば、ワイバーンの倒し方を知っているのではないかと思ったのだ。


『ふむ。リンドヴルムか。神の子であれば、あの様な下等生物には負けぬだろう』


黒いボスドラゴンさんは、多頭の首を地面に下げて、私と目を合わせて話してくれた。


「いや、負けちゃうんだよ。アイツら飛ぶからさ」


『神の子も飛べるであろう?』


あれ、一番右の頭の子から話しかけられた気がする。

これまで、会話は、五つある頭の中でも、真ん中の子だけがしているのだと思っていた。

みんなが話せるのかとビックリした。


「うん、飛べるけど、あんなに自由自在には飛べないんだよ。ぶつかって堕とされちゃう」


『堕とされる……』


真ん中の子がそう呟いた。

左から二番目の子が、見せてみよと言うので、私はフワッと自身を纏う結界ごと浮かせた。


右に左に動かした後、元の場所に戻る。

ボスドラゴンさんは暫し黙考した。

五つの頭同士で相談している様にも感じた。


『ふむ。我らがどうやって飛んでいるかを知っておるか?』


「えっと、勢いつけて翼で風を下方に流して浮力を……」


『ふむ。違うのだ。確かに風の力も使うが、それだけでは、この巨体は浮かばぬ』


そりゃそうか。

飛行機だって、飛ぶには相当な速度が必要か。

そうなると何か魔法的な力が必要なのかな。


『重力に干渉しておるのだ。重力子と言うべきかな。星に重力を与えている物質を操作することで飛ぶのだ』


『神の子よ。其方も別の空間を作り出し、その空間は重力の干渉を制限させることで浮かんでおる。リンドヴルムも同じだ。だが、其方は完全に感じ取れていないのだろう。だから、自由自在に動かせないし、堕とされるなど変なことになるのだ』


「キーーー!」


ボスドラゴンさんが鳴くと、遠くから小さな子供ドラゴンが飛んできた。

私の横にフワッと降りる。

目の前で叫ばれたからか、私の耳はキンキンしちゃっているよ。


『我の一番下の子だ。まだ百歳程度なので、小さい。これを連れてゆけ。リンドヴルム程度には負けん。これと共に飛べば、感覚を掴めるだろう』


「え、仲間にしてくれるの?」


『互いの成長に繋がるであろう。乗らぬときは、この地に戻せ。必要な時に呼べば良い』


「わかった! ありがとう」


私は横にいる子を眺めた。

ボスドラゴンさんに比べれば大分小さいけど、ワイバーンよりは全然大きい。

二つ首の黒いドラゴンだった。

長い首を私のところまで下ろして、つぶらな瞳で見てくる。


「名前は何んて言うの?」


『人には発音出来ん。好きに付けるが良い』


「コクリュウ(黒龍)。日本語で黒いドラゴンって意味だよ。よろしくね」


「キーーーー!」


とコクリュウが鳴いた。

私はその首を撫でながら、大きな声を出すと、耳が壊れちゃうよと伝える。

目の前で背を屈めてくれた。

これは乗れってことなのかな。

ナナちゃんが先に登ってくれた。

その手を掴んで、引き上げてもらう。


「ボスドラゴンさん、ありがとう。コクリュウはちょっと借りていくね」


私達が首にしがみつくと、コクリュウはフワッと上昇した。

あ、これ、物理的な力は使ってないな。

翼の上下でエネルギー操作、魔法的な現象を起こしているんだ。

ボスドラゴンさんの言う通り、一緒に飛ぶと感覚的に掴めることがありそうだ。


私は転移魔法で、コクリュウごと東の山脈まで転移した。






世界地図

挿絵(By みてみん)


東側立体地図

挿絵(By みてみん)

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