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西園寺家のナナちゃん


普通に暮らしていたのなら、今頃、私は高等学校の二年生になったところだと思う。

十四歳になる年だ。

あと二年弱でついに成人である。


フローレンスのホルモン魔法が効いたのかは分からない。

でも、私にもついに二次性徴がやってきた。

ギリギリ、本当に最遅だったと思う。


乳房が少し膨らみ始め、乳頭が突出する乳頭期に入った時には、全身で喜びを表現した。

お風呂場で皆に呆れられたけど、それだけ待ちわびたのだ。

そして、昨年末に初経が訪れた。

初経の訪れは身長のピークに近いという説もあるので、これは少し微妙な感じがした。

私の成長も残りあと二インチ、数センチ程度ということだ。


今の私の身長は四フィート十インチ。百五十センチ無い。

つまり一番伸びたとしても、百五十ちょいということになる。

凄くチビ助だ。


マリーは今まさに、ぐんぐんと伸びているところで、五フィート三インチ、百六十センチ近くになっている。

フローレンスはアス姉の身長に並んだ。

五フィート七インチ。

百七十センチ。

ジョヴィはフローレンスと比べてちょっとだけ小さいくらいだ。

侍女の中ではアナが図抜けて大きい。

三つも下なのに、五フィート八インチくらいはあるだろう。

アリシアと同じくらいの高さがある。


チャールズとレオンは百八十センチを超えている。

二人とも同じくらいの大きさだけど、チャールズの方が少しだけ高いかもしれない。

ゲオはアリシアと同じくらい。

フローレンスとチャールズの中間くらいの大きさだ。


まあ、自分がチビということは、もう逃れようのないことだろうが、それでも大人の女性になれるのだ。

私は十分に満足している。

いや、満足はしていない。

本当はグラマラスボディになりたかった。

アリシアみたいに背の高いカッコよい女性も良かった。

それでも、母親になれる大人の女性になれるのだ。

最低限の成長を果たせる、それは間違いないと、もう言っても良いと思っている。



ランチ会が終わってすぐに、真理伯母さんが一度、ミナセに戻り、男の子を連れてやってきた。

男の子は大きな荷物を三つ抱えており、そのうちの一つは真理伯母さんが担いでいた。


黒髪黒目の可愛い男の子だった。

綺麗に切り揃えた前髪とクリクリのお目目が目立つ。

きっとクラスにいたら、色々な女子から『可愛いー!』って言われる子だと思う。

実際に、私の斜め後ろくらいから、『可愛いわ! チャック見て! 女の子みたいよ!』って声が聞こえたくらいだから。


身長は今のマリーと同程度。

つまり百六十センチ程度だと言うことだ。

顔も大人になっていない少年の顔立ちを残している。

まだ成長期なのだろう。

チャールズやレオンみたいに、もう大人の身体をしている人ばかりを見ているから、少しだけ私は驚いた。


私達が玄関ホールに出迎えると、持っていた荷物を全て下ろして、私の目の前で跪いた。

片膝を立て、片手を地面に付けて、頭を垂れる。

ミナセ式ではない礼の表し方だった。

真理伯母さんもギョっとしたくらいだから、ミナセでは滅多に見せない作法なのだろう。


「お会いできることを十年待ちわびておりました。ララ王女殿下、命が尽きる、その日までお傍で仕えさせて頂きます。ナナ・サイオンジと申します」


「う、うん。ナナ? ナナちゃん?」


「ちょっと、ララ、ナナ君でしょ。男の子よ」


「いえ、ララ様、ナナちゃんで結構です。そのようにお呼びくださいませ」


とりあえず、立たせてからリラクゼーションエリアに案内した。

真理伯母さんは気を利かせてか、ソファには座らずに書庫の方に行ってしまった。

確かに自分の息子が、ここまで従者風に振る舞っているのを見るのは、少し気恥しいのだと思う。


「ナナちゃん、ソファに座って」


私が言うことで、ようやく座ってくれた。

チャールズやレオンが座れと言っても、全然聞いてくれる様子が無かったのだ。


「ナナちゃん、従者って執事だよね……? それで良いの? パーティメンバーとか……」


「はい、ララ様、手続き的にパーティ登録はしておこうと思っております。その方が良い時もあるでしょうから。ただし、自分の役割はララ様だけに仕える従者です。いつ何時も離れることなく、お傍にいるつもりです」


「ははは……」

「マジか……、ガチもんじゃん」

「凄いわ! 本当に従者よ!」


「ナナ君、わたしはアストリッドです。ララの姉です。ナナ君の希望は分かりました。その様にしましょう。つまり家の中だけでなく、外でも共に活動するサポートメンバーということですね。家の中の事は、ニコラスさんやボブ、四人の侍女とも役割分担を話して欲しいのと、今日はお母様やお祖母様、サンテール国王陛下とも挨拶に付き合ってもらいますよ」


「かしこまりました。アストリッド様」


「なあ、ナナ、僕らと一緒に訓練とかはしないのか? ナナは強いって隆叔父さんが言っていたぞ」


「訓練? ああ、僕には不要だ。そのうち、君たちには抜かれるだろうが、僕は僕の上限にまで既に達している。現時点では君らよりも強い」


「え?」

「あ?」

「ほお」

「言うね」


チャールズ、ゲオ、レオン、アリシアと戦う系の仲間たちが反応した。

言葉使いも、その……、私やアス姉には丁寧だが、彼らには凄くぞんざいだ。

この中では最も小さく子供の様な男の子に、自分の方が強いと明言されて、皆、顔がピクピクしている。


「君らの相手は優先度が低い。まずはララ様の身の回りのことを学ぶためにオスカルさんやロバートと急ぎ話さないといけない。その後はアストリッド様の指示に従い挨拶周りだ。その後は書庫の内容をざっと確認したりする必要もある。君らの相手はその後だな」


「おお……」

「こいつ……」

「すごいな」

「面白いじゃないか」


やばし。

最初からピリピリしてきてしまったよ。

助け舟を出した訳ではないが、フローレンスが話を割って入って来た。


「ナナ、貴方は頭も良いと聞いたわ。書庫の文献も一緒に学んでくれるのかしら?」


「フローレンス様、ララ様のご命令であれば、勿論協力させていただきます。また、後ほど確認しますが、おそらく、ある程度、既に書庫の文献の内容は網羅していると推測しています」


「え?」

「は?」


書庫の本の内容を網羅しているって……。

でも、私達も五歳で転生した割には、色々な知識が頭に残った状態だった。

ナナちゃんは、相当な知識を持ったまま転生したってことなのかな。

そうだとしたら、かなり凄い子だ。


「ねえ! ナナ! 音楽は? 何か楽器出来るの?」


「はい、マリー様、歌を歌うことは出来ません。ただ、楽器であれば扱える物の方が多いと思います。後ほど、迎賓館にある楽器を確認させてください」


「凄いわ! この子、本当に凄いわよ!」


「無加護の使徒って、実は最強では……」


アス姉がボソっと呟いた。

確かに飛びぬけた特性を与えられてなくても、ジェネラルに全てをこなせる能力って、凄いことだと思う。


「とりあえず、女性陣には丁寧だってことが分かったよ。僕らには凄く雑な対応だけどね……」


「チャック、私は女性だけど、敬われていないわ」


チャールズが苦笑を浮かべながら言ったことに、女性であるアリシアが反論した。

確かにアリシアは『君ら』呼ばわりだった。

私とアス姉、フローレンス、マリー、少なくとも、その四人には丁寧な対応を見せた。

賢いナナちゃんの事だ。

きっと明確な線引き理由があるのだとは思う。


「うん。とりあえず、わかったよ。ナナちゃん、ララは歓迎する。まずは部屋に荷物を置いてきなよ。ボブ、ナナちゃんを部屋に案内して」


「「かしこまりました」」


ナナちゃんとボブの返事が全く同じタイミングで重なった。

ナナちゃんが立ち上がり、ボブについて男子エリアの方向に向かった。

私は聞こうと思っていたことを忘れたと思い、その背中に聞いた。


「ナナちゃん、ナナちゃんの名前って数字の七だよね? 七人目の子供とかじゃないよね? どして、その名前なの?」


「自分は転生した時から、自分の名前が『ナナ』であることを知っていました。ですので、父上と母上に、そう告げたのです」


「え、そうなんだ……。凄いね、色々なことを覚えたまま転生したんだね」


はい、と笑顔を向けて返事した後、失礼しますと言って荷物を抱えて行った。


「ねえ、ララちゃん、やべー奴が来ちゃったよ」


「あら、チャック、良い子じゃない。私の研究や調べ物にも役立ちそうだわ」


「でも、凄いララファーストだったな……」


「ちょっと引くくらいの、ララ好きだったわね。初めて会ったとは思えないくらいの傾倒ぶりだったわ。まあ、姉としては安心だけどね」



その後、ニコラスさんやボブたちと一緒に、ナナちゃんは迎賓館内を動いていた様だ。

しばらくしてから、自室に三人がやってきた。

ララはベッドで横になったまま、どうぞーと言って入室を許可する。


「王女殿下。専属の執事にお部屋のことを教育したく」


「うん。ニコラスさん、任せるよ」


「侍女ではありませんが、御召し物を触る許可を頂いても宜しいですか?」


「いいよ。下着も色気がない物しかないからね。好きにしていいよ」


「かしこまりました」


ニコラスさんから問われたので、そう返答しておいた。

今まではジョヴィがやってくれていたことをナナちゃんがやるのかな。

流石に下着姿のまま、お着換えとか出来ないだろうな。

しばらくすると、ジョヴィもやってきて、化粧道具とかの説明まで始めた。


「ナナちゃんって、お化粧とか髪のセットとかも出来るの?」


「勿論です。御髪のケアも含めて、全てお任せください」


えっ、とジョヴィが驚いたような視線を私に向けて来た。

私はジョヴィに向けて一つ頷いた。やらせてみればいい。

最初はジョヴィが一緒になってやってくれるだろう。

でも、ナナちゃんがカバーできるのであれば、ジョヴィの負担が減るのも確かだ。


「あの……。王女殿下……、自分も……」


珍しくボブが小さい声で発言した。

ナナちゃんが許されるのであれば、自分もやりたいということなのだろう。

私は、いいよ、と返事をしようとしたところで、ナナちゃんから遮られた。


「ロバート、まずは学ぶのだ。私と一緒にやれることを増やしなさい」


「はい。ナナ様」


ジョヴィは、そんなナナちゃんを見て唖然としているが、ニコラスさんは苦笑を浮かべて頷いていた。

僕、私、自分とナナちゃんは一人称を使い分ける子だ。

口調すらも状況や相手によって瞬時に切り替える。

やろうと思っても中々出来ることではないと思う。


「それでは大浴場と乾燥室に行きましょう。本来であれば男性エリアの方で説明するのですが……」


「ニコラス様、私が男性エリアで働くことはありませぬ」


「はい。そう仰ると思いました。それでは男性エリアの大浴場、乾燥室での掃除、洗濯は引き続き私めとロバートで担当しましょう」


「ニコラスさん、他の女性の服とかは、さすがに……」


「ジョヴィ、僕がララ様以外の御召し物を触ることはないよ」


「え、あ、そういう感じなのね……」


そんな話をしながら、四人は出て行く。

大丈夫かな。

何だか、ナナちゃんが来たことで、帰って面倒くさくなることもあるような気がしてきた。


夕方近くなって、ナナちゃんは戻って来た。

コンコンと部屋をノックする音がして、入室してきた。


「終わったの?」


「はい。フィリップ国王陛下との挨拶も先ほど終わりました。迎賓館内の確認も終了です。これより、ララ様だけの従者としての活動を始めます」


「ふふ。凄いね。じゃあ、チャック達の相手をしに行こうか」


「宜しいので?」


「うん。ナナちゃんの戦闘力も確認しておきたいからね。最初が魔獣戦なのは良くない」


「かしこまりました」


「ナナちゃん、武器は何を使うの?」


「日本刀、槍術、弓、短剣、柔術、合気道、一通り修めております」


「うえ。凄いな。でも、今は無手だよね?」


「はい。日本刀は持ち運ぶには長すぎるので」


「じゃあ、ララが何かプレゼントするよ。着任祝いで。全部買いそろえても良いよ」


「本当ですか! それは……、有難き幸せ」


「うん。ララも棒を造ろうと思っていたんだ。ミナセって、良い鍛冶師さんがいるんだよね?」


「はい。凄腕の鍛冶師に依頼しましょう。素材はヤクママの鱗を使いませんか? あれは素材としても最強です。敵の魔法攻撃を切り裂くことができます」


「ん? それは良いことを聞いた。じゃあ、それで作ろう。アリシアとゲオにも作ってあげよう。ナナちゃん、装備服もだね。普段はどうする? 執事服とかも作る?」


「はい。可能ならば、装備服と執事服を」


「オッケー。明日、買いに行こう」


チャールズ達は既にトレーニングエリアで模擬戦をしていた。

今はゲオとアリシアが戦っている。

ゲオは地面が土でなくても、土魔法が出せるようになったが、大掛かりな物は未だに難しいみたいだ。

アリシアの突風を抑えられなくて、倒されている。


「うん。みんな、ナナちゃんと模擬戦やって」


「お、まじ? じゃあ順番にやろう。僕からだね」


チャールズはトレーニングエリアに配備されている模擬戦用の剣を渡したが、ナナちゃんは棒が良いと言った。

私はナナちゃんに自分が使っている棒を渡す。

ブンブンと上下に振ってから、中心部分を持ってクルクル回し始めた。

それを見るだけで分かる。

この子、相当な技量持ちだと。


チャールズは初手から全力だった。

目で追えないほどの速度で動き、剣を振るう。

それをナナちゃんは棒で受け流していった。

カン! キン! カン!

高音の剣戟音が響く。

ナナちゃんは同じ場所から殆ど動いていない。

チャールズは縦横無尽に動いて攻撃するが、どの角度からの攻撃にも最小限の動きで反応している。

しばらくしてから、ナナちゃんが反撃し始めた。

といってもカウンターを繰り出すようになっただけだ。

受け流した後にカウンターを入れる。

それだけで形勢は完全に逆転する。

カン! キン! カン!

という剣戟の合間に、ボスとかガンとか棒で打たれる音がしたのちに、チャールズが降参した。


「ダメだ。全然当たらないし、勝てる気がしないよ」


その通りだと思う。

そもそも、ナナちゃんは一歩も動いていないし。


レオン、ゲオ、アリシアと続いたが、ナナちゃんの全勝だった。


レオン戦は棒を置き、無手で臨んだ。

レオンは組み敷くことを考えたみたいだが、力を入れたところを合気道で固められて投げられていた。


ゲオは全ての攻撃を避けられて接近戦で撃沈。

アリシアは風で近づけないようにするも、接近戦に持ち込まれて、槍術対棒術の戦いになり、間合いを詰められて敗北。


四人とも素直に降参していたよ。


「ナナちゃん、ララともやろうか」


「はい。光栄であります」


ナナちゃんはチャールズが使っていた模擬剣を取り、私に棒を返してきた。

私はナナちゃんが扱う棒術を見て、何となく自分も同じことを出来るのではないかと感じたのだ。

それを確かめたく、ナナちゃんと向き合った。


身体の力を抜いて、棒を中段に構える。

ナナちゃんは少し笑みを浮かべた後、剣を振って攻めて来た。

棒で受け流す。

慣れてきたところで、受け流した後のカウンターを入れる。

少し脚運びが気に入らない。


「ちょっと待って」


そう言って、模擬戦を止めて、足の動きを何度か確認した後に再開した。

うん、こんな感じだ。

棒を振っているうちに、身体の細胞が活性化してきた。

フローレンスが言った通りだ。

記憶は全細胞が保有している。

脳はそれを補完するだけなのかもしれない。

動かせば動かすほど、色々なことを思い出して行く。

ダンスと同じような感じで身体を動かした。


そのうち、閃いたことがあるので、実践してみる。

瞬間移動を動きの中に混ぜ始めた。

最初は瞬間移動の生成速度が遅いので、あまり意味をなさなかったが、そのうち、身体を動かす感覚で移動できるようになってきた。


カン!

「流石でございます。ララ様、参りました」

剣を弾かれたナナちゃんが、腰を折って礼をする。


でも、接待模擬戦じゃないけど、ナナちゃんは私のために剣を振っていたのが感じ取れた。

私の訓練に、私が色々思い出すのを手伝ってくれた感じがする。

私はナナちゃんに素直に御礼を言った。


私達の模擬戦が終わるのを待っていたらしく、皆がナナちゃんに色々な質問をし始めた。

模擬戦の感想戦が始まった。

質問の一つ一つを、キチンとナナちゃんは説明、解説していく。


「うん。やっぱ技量だね。技量面の向上を図ろう」


この中で一番小さいナナちゃんが強いのは、単純に技量面が優れているからだ。

速度やパワーと言った身体能力面では圧倒的に劣っている。

それを知っているからこそ、ナナちゃんも「今なら自分の方が上」と言っているのだ。

彼らの技量が高まれば、到底自分が敵う相手ではないと分かっている。


「チャールズとレオンは剣。そして無手での武芸の強化。それは指南役に日々鍛えてもらうのが良い。アリシアとゲオは魔力の質と量の強化。そして接近戦。アリシアは槍術で良いと思うけど、ゲオも何か一つ修めた方が良い。接近されたらボコられる魔法使いなんて時代遅れだ」


「時代遅れって、ララ、魔法使いは俺らの時代から始まっているんだぞ」


「うるさい。ゲオ、黙る。何か選べ」


「分かった。一応、スタンダードに剣術を磨くよ」


「うん。アリシアとゲオは武器も新調してあげる。明日、ララと一緒に買い物に行くよ」


「え、ララちゃん、僕も行くよ。僕とレオンの剣も新しくしようと思っているんだ」


「あら、オジちゃんの剣はどうするの?」


「あれは形見だからね。折る前に大事に取っておくよ」


「よし。じゃあ、皆で買いに行くぞ」


「殿下、魔法の強化とはどの様なものでしょうか?」


「うん、アリシア。まずは二人とも指弾を覚えよう。土の指弾と風の指弾だね」


私は空間指弾を実演した。

分かりにくいので、色を付けた矢を指先から放つ。

シュンっと飛んで、トレーニングエリアに置いてあった人形の形をしたサンドバック的な何かを切り裂いた。

えっ、とチャールズが呟いていたけど、これ切っちゃいけないやつだったのかな。


「ゲオは銃の弾丸みたいなものが良いと思うけど、アリシアはブーメランみたいに横になって切り裂く風の刃とかも良いと思うよ」


なるほど、アリシアが呟く。


「何発も何発も出せるように。より速く、より硬く、より遠くに放てるように、一年間頑張ること」


「かしこまりました」


アリシアは頭を下げて了承し、ゲオは「おう」と言って頷いた。



後日談だが、ヤクママとオウルベアの素材を使って、私達は武器を新調した。

チャールズ、レオン、ゲオは日本刀。

レオンは少し長めの日本刀だった。

三人とも短剣も併せて装備している。


アリシアは長槍と短剣。

マリーも武器が欲しいというので、薙刀の様な物を購入した。


私は硬質な、ただの棒だ。

武器屋で色々触ってみたが、結局棒が一番手になじんだ。

両刃の槍や薙刀も振って見たが、イマイチしっくりこなかった。


ナナちゃんは、両刃の槍、棒、日本刀、短剣、弓と一通り購入した。

短剣というよりはナイフに近いもので、これは腰の後ろに常に装備している。

それ以外の武器は私の収納部屋行きだ。

私と一緒に行動するのだから、状況に応じて、私が適切な武器を渡せば良いのだ。


いずれも伝説の魔獣の素材で作った武器なので、売りに出したら、ひと財産になるだろうと鍛冶師のオジちゃんに言われた。

切れ味も良いし、何よりも壊れないのが良い。

その分、メンテナンスが大変だけど、私達には転移魔法がある。

いつでも、ミナセの鍛冶師のオジちゃんのところに立ち寄れば良いのだ。

機械兵士の鉄鋼をちゃんと切り裂けることも確認した。

スクラップ素材をザクザク切り込んでテストしたのだ。


もう一つの後日談としては、ナナちゃんの頭の良さが判明するというイベントもあった。

書庫の蔵書もあっという間に理解して、どんな書籍がどこに置いてあるのかを教えてくれる。

フローレンスだけでなく、真理伯母さんや隆叔父さんにも重宝されており、フローレンスなど、こんなことを言っているくらいだ。


「私専用の執事にしたいわ。ナナ、私の方が良い女よ。こっちに来なさい」


大変、ムカつくガリ勉女だと思う。


「フローレンス様、大変光栄ですが、自分の命、自分の時間の全てはララ様に捧げるための物です。十年ほど無駄に過ごしたので、その分を取り戻す必要もあるのです」


そんな歯の浮きそうなセリフを、表情を動かさずに返していた。

育ての親である隆叔父さんどころか、真理伯母さんに対しても、


「父上、母上、息子であるナナ・サイオンジは死んだ者として扱ってください」


と、ちょっとした依頼事項すら無碍に断るくらいである。

二人が寂しそうな顔をして私の事を見るので、そんな時は、私からナナちゃんにお願いすることにしている。


「ララ、どうすんのよ。あれが背後霊の様に一生ついてまわったら、あんた、結婚すら出来ないわよ」


フローレンスに呆れられて、背後霊呼ばわりされるナナちゃんだった。


「あら、良い結婚相手が出来て良かったじゃない。ララ、可愛い男の子が良いって言っていたものね。ナナ君は見た目だけでなくて、性格も可愛いわ」


姉は、こんな感じだ。

妹の嫁ぎ先にしても良いくらい、ナナちゃんは姉の信頼を勝ち得たということだろう。

まあ、確かに姉の好みの様に、筋肉ムキムキの大男と、私は結婚したくない。

ナナちゃんの方が遥かに良いと思うのだが、旦那様が従者みたいに振る舞うってどうなんだろうと、私は微妙な顔を見せた。


ふと見たナナちゃんは、おそらく、この先、一生見せることのないだろう満面の笑みで、姉に頷いていたけど。


世界地図

挿絵(By みてみん)

東側立体地図

挿絵(By みてみん)

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