サン・ミラージュ王国
ヴァルデン共和国首都シュタインランド
イフヤ共和国首都カリーム・アーバ
カスティリオ王国首都アクアリス
サンパウリーナ王国サン・ミラージュ、セラ・ダ・ルナ
この五つが、最初の固定転移先として登録された。
いずれも国の最高府である国家元首の居室付近の部屋の中に、繋ぎ先をセットした。
形式美なのか、部屋の中に扉がポツンと置かれている。
開けると繋ぎ先が現れる仕様となっているところも、各国同じだった。
私の迎賓館の玄関ホールには、扉のところに繋ぎ先が記載されている。
エドゥアルドさんの部下の兵士さん達も常駐していて、扉から入って来た人の身分を確認する運用が、その日のうちから始まったようだ。
シュタインランドとの固定転移先が作られた同日に、ゲオがやってきた。
大きな荷物を二つも抱えて、やってきた。
私達はニコラスさんから、ゲオの到着の知らせを聞いて、全員で迎えに行った。
私達を見て、ゲオは立派な挨拶をした。
もちろん、その後ろに育ての父であるヴィルヘルム・フォン・ハンブルク特別部隊隊長がいたこともあるだろう。
父に背中を押されたゲオは、一歩前に出て、私の前に跪いた。
「ララ王女殿下並びにアストリッド様、そして皆様。ゲオルク・フォン・ハンブルク、ただいま参上いたしました。この命、尽きるまで、皆様と共に……」
そう言って、大粒の涙をこぼした。
「土の子、ゲオ、久しぶり。堅いんだよ。いつも通り話す」
私がそう言うと、チャールズとレオンが笑いながら、彼の肩を叩き、立ち上がらせた。
すぐにハグを交わすと、ワンワンと土の子ゲオは泣き出した。
堅いし、泣き虫なんだよ。
「ゲオルク。冒険者パーティ、エッジ・シーカーへようこそ。明日、冒険者登録しにいきましょうね。貴方は、わたし達の仲間よ。いや、ずっと仲間だったけど、ここから先はずっと一緒よ」
姉にそう言われて、さらに大声で泣きだした。
後ろを見ると、ゲオパパまで泣いていた。
「ゲオもゲオパパも大袈裟なんだよ。さあ、チャックとレオンに迎賓館を案内してもらいな」
そう言って、送り出した。
リラクゼーションエリアに戻って来た時には、満面の笑みで、マントとワークブーツを装備していたので、まあ大丈夫だろう。
ジョヴィがゲオの装備もラ・フロールで追加注文してくれるそうだ。
※
レオの葬儀は三日後になった。
そのため、三日間、私達は、と言っても、アス姉やフローレンスは葬儀の準備のため忙しそうだったけど、それ以外の私達はフリーとなった。
サンテール王国首都リュミエール
カスティリオ王国オリベイラ、ラ・フロール
イフヤ共和国首都ナヴァラトナ
この四つの都市と固定転移先を結んだ。
また、カスティリオ王国の北の森と、サンパウリーナ王国のコンティスヨの森とも繋いだ。
北の森は、ドラゴンさん達が棲む湖の麓に転移先を作らせてもらった。
『神の子、いつでも来い。この入口は我らが死守する』
黒いボスドラゴンさんに挨拶に行った際に、彼はそう言ってくれた。
探している薬草の生息地まで教えてくれたので、本当に良い人たちだと思う。
ボスドラゴンの寝床の近くに、固定転移先を作らせてもらった。
コンティスヨの森は地下施設内に転移先を設けた。
地下施設の入口は偽装した上に、レオンが大岩で通路を塞いでいるそうなので、まあ安心だとは思う。
チャールズとレオンは、ゲオを連れてコンティスヨの森に訓練に向かっている。
彼らの目標は、魔力強化だ。
魔法を長時間使い続けられるようにすることらしい。
帰って来たゲオが死にそうな顔をしていて、ゲオパパに叱咤激励されていたのが笑えた。
エドゥアルドさんも、是非部下を同行させて欲しいと言ってきたので、近衛隊を引き連れて戦ってきたそうだ。
負傷者だらけになって帰って来たことで、フローレンスの怒りが直撃して、チャールズが死にそうな顔になっていたのが、また笑えた。
エドゥアルド配下の近衛隊百名は、この日をきっかけに歩哨役の人たち以外は、地下施設でトレーニングすることが日課になった。
あの塔の麓の広い場所である。
チャールズ達がいない時は流石にコンティスヨの森には行かないそうだが、まだ成人前の彼らと模擬戦で戦って負けたことが悔しかったそうで、近衛隊の意地をかけて強くなると言っていた。
そうこう過ごしているうちに、葬儀の日となった。
※
「ララちゃんや、今日、着る服はこれさな。ジョヴィよ、ララちゃんの着替えは任せたぞえ」
「ジョヴィ、首のネックレスはこれにしてあげて」
私がノコノコと普段着でダイニングルームに朝ごはんを食べに下りていくと、母と祖母に早速捕まった。
葬儀だから指定の衣装を着ないとダメらしかった。
エプロン姿で動き回っているジョヴィが、お母様から洋服一式を受け取り、私の手を取って部屋に引っぱっていく。
「ジョヴィ、マリーは?」
「マリーはもう着替えていますよ。アストリッドお姉様もです。フローレンスはまだ起きていないけど、何を着るべきかは昨夜説明を受けていますから大丈夫よ」
「ララだけが知らんかったのか」
「男子三人もよ」
そりゃそうか。
昨日も私達は森に遊びに、もとい訓練しに行っていたのだ。
情報が多少足りないのは止むを得ない。
「お母様達は黒いドレスだったね。ララも?」
「そうよ。今日は皆、喪服よ」
部屋に入るなり、私はジョヴィに服を毟り取られた。
コルセットみたいな下着を着せられて、その上に何枚も服を重ね着される。
まあ真冬ではあるけど、どうせ鎧魔法を纏うのだ。
そんなに着る必要もないと言ったのだが、これもマナーなのだそうだ。
見えないところにマナーもへったくれもあるものかと強く主張したい。
「髪の毛も今日はアップにしますね」
「えー。ララの短い髪じゃ無理だよ」
「大丈夫。ちゃんと結わきますから」
ニコラスさんに鍛えられているのか、ジョヴィは完璧侍女兼秘書になりつつある。
人数も増えたので、ジョヴィの下に何名かの侍女を付けることも検討しているそうだ。
ジョヴィの部屋の正面の部屋が四人部屋になっているのは、それを見越していたからだとか。
フローレンスが親のいない孤児を優先的に採用してほしいと言っていると、テキパキ作業をこなしながら、ジョヴィが言っていた。
「ふーん。まあ、大所帯になったもんね」
「ララは王女なのですから、キチンと振る舞う練習をしないとですよ。まあ、マリーもだけどね」
ジョヴィに一通りチェックされた後、鏡の前に立たされて、その姿を眺める。
私は思わず呟いてしまった。
「ゴスロリ……」
「ララ? 何か言いました?」
「いえ、何も言っておりませぬ」
色合いは完全に黒。
私の銀髪だけが、光を発している。
パニエでふんわりと膨らんだスカート。
コルセット風のウェストマーク。
頭にはヘッドドレス。
おまけにレースの手袋付きだ。
「うう……。微妙に似合っているのが、また何とも言い難い」
「微妙にじゃないですよ。凄く可愛いわ」
そのまま、口にフルーツを入れられた。
この後は、食事もロクに許されないという。
「はい。完成ね」
「悔しいから、フローレンスを叩き起こしにいこう」
部屋から出たら、丁度着替え終わったらしいマリーと会った。
どうやら姉がセットしていたみたいだ。
マリーは東洋風のドレスというか、着物に近い。
私と同じ様に凄く微妙な顔をしているのが笑えた。
「マリー、可愛い!」
「そう? 凄く動きづらいのよ……」
「アス姉は普通の黒のドレスなんだね」
「そうよ。大人だからね。フローレンスとお揃いよ」
「うぇ。なんだよ。フローレンスもララと同じ様な恰好かと思ったのに」
「ふふ。フローレンスも体形は大人だからね。その可愛い格好は合わないわ」
フローレンスの部屋に突撃して、叩き起こそうと思っていたら、既に着替えている最中だった。
こう言ったらムカつくから言わないけど、アス姉もフローレンスも凄く綺麗だ。
「ちっ」
「何よ。朝から、ララ、可愛いわ。マリー、お人形さんみたいよ」
「ちっ」
マリーからも同じ様な声が聞こえて、フローレンスは思わず吹き出して笑った。
「何なの、二人とも。可愛いじゃない。良く似合うわよ」
私はマリーと手を繋ぎ、頬を同じように含まらせてフローレンスに背を向けた。
※
サンパウリーナ王国サン・ミラージュ(San Mirage)。
『幻の聖地』と呼ばれる街だ。
サンパウリーナ王国の人たちにとって、ここが故郷の街。
真冬でも温暖な気候。
おそらく南の火山から流れる温かい温泉によるものだと思う。
適度な降水量に支えられた土壌は豊かで、食べ物は美味しい。
南の方にいけば、果樹園が多く、フルーツの種類も多い。
建物はレンガ造りの二階か三階建てが多く、石畳みまでもレンガ色をしていた。
街の男性はウンク(Uncu)と呼ばれる膝丈のチュニックのような形状の衣服を上半身に纏っている。
女性はアナク(Anaku)と呼ばれるウール製の長いドレスだ。
冬だからか、ウール製のポンチョを着ている人も多い。
私達は馬車に乗って、『サン・ミラージュの丘』と呼ばれる霊園に向かっていた。
先頭は司令官たちが先導し、続いてレオの棺が運ばれている。
街の人たちは街道沿いに並んで、レオに向けて頭を垂れて礼を表していた。
大きな声でレオの名を呼ぶ人たちが多い。
『サン・ミラージュの丘』には多くの英霊たちが眠っているそうだが、レオが生前に準備した墓は最奥の高台にあった。
丘に作られた丘。
最後は馬車を降りて、皆で丘を登った。
「わあ」
丘を登ると、つい声が出てしまう。
東の海が一望出来た。
眼下にはサン・ミラージュの街並みも見える。
なるほど、レオは死してなお、この街を眺めていたかったのだろう。
私達が丘に登ると、程なくして葬儀が始まった。
ラッパの音が響き渡り、葬儀の開始を告げた。
丘の下の兵隊さん達は、一斉に剣を掲げて、踵を鳴らした。
教会の大司教でもあったナスルのオジちゃんが、司祭服を着て、葬儀を進行させるらしい。
どこかの都市でも使われた拡声器が用意されていた。
『この世界から、また一つ、大きな星が堕ちました』
ナスルのオジちゃんは、そう言って、レオの生前の業績を語り始めた。
棺の向こう側にいる四人の司令官は軍隊の礼服を身にまとい、きつく目を閉じていた。
私の横の方から、すすり泣く声が聞こえる。
右手にいるのは、サンテール王国の国王フィリップ・ド・フランス。マリーのパパだ。
若かりし日に出会ってから、親友としての関係を築いていた。
先日、マリーパパに『ガブリエル・サントス』に会わせて欲しいと言われた。
キモ男参謀はセラ・ダ・ルナの牢獄に捕らえられている。
私の収納部屋には既にいないのだ。
それでも会いたいと言うので、エリザさんに頼み込んで、セラ・ダ・ルナまで連れて行った。
もちろん、絶対に殺さない。そう約束させた。
私は牢までついて行かずに、セラ・ダ・ルナの固定転移場所の設置作業をついでにこなしたのだが、帰って来たマリーパパは、表情が抜け落ちており、一言も話さなかった。
エリザさん曰く、キモ男の前でも何も言わなかったそうだ。
ただ、キモ男の前に立ち、ジッと睨みつけているだけだったと言う。
キモ男の方が、怖がって、色々言い訳を始めたが、そのうち、失禁してブルブル震え始めたらしい。
『私にもフィリップ陛下が何をしたかったのかは分かりません。ただ、見ていて、ただただ悲しくなりました。悲しみとは、こういうものなのかと心底感じました』
マリーパパとキモ男の面談に同席したエリザさんは私にそう教えてくれた。
ナスルのオジちゃんが、祈りを捧げましょうと皆に言った。
オジちゃんは胸の前に手を合わせて頭を少し垂れた。
私は目を瞑り黙祷する。
棺が丘に造られた墓の中に沈められていった。
「うぉー! レオー!」
マリーパパの叫び声が、拡声器に拾われ、晴れ渡った空に響き渡った。
『カスティリオ王国女王のナタリア・デ・サラゴサじゃ。サンパウリーナ王国の民よ。この度は残念であった。同じ歳の使徒、同じ志を持った兄妹を亡くして、わらわもサンテールのフィリップ国王も辛い。じゃが、サンパウリーナ王国の民は、もっと辛いじゃろう』
拡声器の前に、女王のお母様が立った。
凛とした声で話し始める。
この人が話し始めると不思議と誰もが聞き入るのだ。
歌姫の力、なのかもしれない。
心地よい高さの声。声量、リズム。
この場を完全に支配した上で、この街に民に呼び掛けていた。
『サンパウリーナ王国の司令官たちと話し合った。わらわの国、カスティリオ王国と手を取り合い、新たな国を共に創ろうと決めたのじゃ。レオナルドはいなくなってしまったが、あやつの遺志を共に抱いて、新たな国を創ろうではないか』
流石に歓声は響き渡らなかったが、大きな拍手が至るところから響いた。
街の方からも少し遅れて、歓迎の拍手が聴こえる。
『ただし、その後はサンテール王国、ヴァルデン共和国、中東の新生国であるイフヤ共和国とも契りを結ぶつもりじゃ。しばし時間を貰うぞ。ただ、必ずや幸せな国を創ると約束しよう』
「『サン・ミラージュ王国』。サンパウリーナ王国ではなく、今日から『サン・ミラージュ王国』って呼ぼう。カスティリオと合併する時は、また考えればいい」
つい口から、そんな言葉が出てしまった。
お母様が少し驚いた様に目を開き、そして優しく笑った。
『レオが後を託した王女から、新しい国の名前を授かったぞ。サン・ミラージュ王国。今日からサンパウリーナ王国ではなく、サン・ミラージュ王国と名乗るが良い。名付け親はララ・スティエルナ王女じゃ』
「「「「おーーーー!」」」」
今度は歓声が上がった。
歓声は主に周囲にいた兵隊さんたちからだけど、この街を大事にしていたレオも喜んでくれると思う。
「まったく……。思いつきで言っちゃって、もう……」
後ろから、フローレンスにツンツンされたけど、それで良いと思う。
そのうち、サン・ミラージュ共和国とかにすれば良いのだ。
※
葬儀が終わった後、エリザさんに呼び止められた。
隣には可愛い少女。
少し後ろに旦那さんのマテウス司令官もいる。
「ララ王女殿下。我が娘を紹介させてください」
「あ! 風の子!」
「はは、そうです。レオナルド陛下の最後のお願いでしたよね?」
「うん。そうなんだ。レオからお願いされていた。『友達になってくれ』って。風の子、友達になってくれる?」
「は! いや、王女殿下……」
サンパウリーナ王国人っぽく、陽に焼けた様な浅黒い肌。
スラリと伸びた手足は細い。
黒い喪服を着ているけど、びっちりと筋肉がついているような体躯だ。
顔も凄く可愛い。
可愛いというよりも、カッコいい感じだ。
すぐに私の仲間たちが集まって来た。
フローレンス、マリー、ジョヴィと女の子たちがワイワイ話しかける。
アリシア・ロペス(Alicia Lopes)。
コード番号012。
風の魔法を操る選ばれし使徒だ。
「ヨット! ワタシもやりたいわ! アリシア、教えて!」
「山猿、いい加減にしろ。アリシア、僕の高速船に興味ない?」
「ナンパよ! フローレンス、チャックがいやらしいわ!」
ワイワイ話す様子を見て、エリザさんもマテウス司令官も微笑ましい表情をして見守っていた。
「エリザさん、アリシアを連れて行ってもいい?」
「もちろんです。お好きに鍛えてあげてください」
「鍛えるって……」
混沌とした感じになってしまったが、アス姉がパンパンと手を叩き、一旦、帰りましょうと声をかけることで、この場は収まった。
※
その後、サン・ミラージュで十日ほど過ごした。
いや、私の迎賓館を拠点に、行き来出来るのだから、サン・ミラージュで過ごしたという表現が最早正しいのかは分からない。
サンパウリーナ王国首都ポルト・ド・ソル
旧セレニカーナ王国セレニティア、フィオレンティア
カスティリオ王国カリブリ市
サンテール王国アヴェリーヌ、クレールモン
ヴァルデン共和国ベルクシュタット
この辺も固定転移先として設定された。
サンテール王国軍、ヴァルデン共和国軍、カスティリオ王国軍は、兵隊さんと船を収納した上で転移魔法で連れて帰ってあげた。
そのついでに各地での固定転移先の設置もした。
そのためか、各国の偉い人たちが、いつも出入りしている気がする。
仕事は自分の国でやっているのだろうけど、しょっちゅう、迎賓館の会議室で話し合っていたり、ダイニングルームで食事をしていたりするのを見かけるのだ。
その分、ニコラスさんとジョヴィが大変なので、侍女を四名、執事を一名採用した。
採用したというよりも、各国から送られてきた。
フローレンスの要望通り、親の無い孤児の子達だ。
いずれも十歳なので、私よりも三歳下なのだが、全員私よりも大きい。
一番小さい子でも、マリーと同じ身長だった。
解せぬ。
ヴィルマ・グリムソン(Vilma Grimsson)
サンテールの孤児。金髪碧眼の美少女だ。
王宮で既に働いていたそうで、侍女としては即戦力。
レイラ・モレノ(Leila Moreno)
カスティリオ王国のカリブリ市に住んでいた子。
例の自動機械による襲撃で親を亡くしてしまったそうだ。
この子がどうして紹介されたかと言うと、音楽に並々ならぬ才能があったのだ。
すぐに王家に紹介され、こちらに回って来たという。
侍女としてはどうなの?
とは私も勿論言わない。
アナ・カタリーナ (Ana Catarina)
サンパウリーナの孤児。アリシアが連れて来た。
凄く大きい子で、ゲオと同じくらいの身長が既にある。
船の操舵も護衛も出来ると言う。
侍女としてどうなの?
とは当然、言わない。
イザベラ・ハンブルク (Isabella Hamburg)
ヘルガ首相が連れて来てくれたのは、このヴァルデンの孤児。
私よりも少しだけ大きな身長は高感度高し。
黒髪眼鏡。頭脳明晰で超絶賢い。
その所為か、すぐにフローレンス専属みたいになってしまった。
解せぬ。
執事の男の子は冒険者組合から推薦されて採用した。
ロバート・マーチ (Robert March)
無口な男の子だけど、凄く優秀だった。
侍女が四人もいるのに、実質的に私のケアをしてくれるのは、このボブと呼ばれるこの子と、ジョヴィだ。
でも、男の子たちに直ぐに好かれて、色々引っ張り回されている。
解せぬ。
なお、風の子アリシアだが、私達のパーティメンバーとなった。
風魔法と槍の名手で、戦力的にも計算できる。
運動能力が男の子並みなので、実際に強いのだ。
ゲオがやられちゃったくらいだからね。
また、船乗りとしても知見があるので、チャールズにとっても助かる存在である。
アリシアはコンティスヨの森にチャールズ達に連れられて行って、パーティメンバーになることを即決した。
世界中の冒険がしたい。
それが彼女の望みであり、私達パーティは、それを体現していることを感じたからだそうだ。
ただ。
一つだけ、気になることがある。
風の子アリシアは、私には凄くよそよそしいのだ。
『ララ殿下』
そう言って、いつもへりくだる。
マリーだって、王女だよと言っても、マリーの事は呼び捨てである。
解せぬ。
その理由は、しばらくして分かった。
犯人はレオだったのだ。
レオに託された手紙に書かれてあったそうだ。
『アリシア。本物の女神を見つけた。お前が生涯をかけてついていくには最適な女神だ』
何たることを。
この馬鹿野郎。脳筋野郎。お前は人の心が分からない粗忽者じゃ!
そう、サン・ミラージュの空に向かって思わず吠えてしまったのだ。




