王女殿下と連邦国家
リラクゼーションエリアに行くと、案の定、お母様達はマリーと一緒にピアノを弾いて遊んでいた。
「エリザさんもペレイラのオジちゃんも来たから、サン・ミラージュに向けて出発するね」
「おう、そうさね。東の海岸沿いの村からは船かえ?」
「そう。そこからは行ったことのない場所だからね。転移魔法は使えない。チャックが運転するよ」
一応報告だけは入れた。
ダイニングルームでレオンと話していたチャールズに声をかけて、私は東海岸沿いの村に転移する。
チャールズに適切な場所を探してもらいながら、海上に私達の高速船を浮かべた。
そこに空間ボールを浮かせながら乗り込む。
「じゃあ、チャック、宜しく頼むね。また、出入りできる裂け目を出しっぱなしにしておくからね」
「了解。多分、明日には着くと思うよ」
チャールズは幾つかの機器をセットした後、海図をテーブルに広げた。
空を眺めてから、『出発進行!』とわざとらしく言って船を動かした。
「晴れだね」
「快晴だね! 波も高くないし、前途洋々だね!」
高速船はギュイーンと速度を上げて、海岸線に沿って南に下って行った。
このまま南に下ると、出ベソのように東にせり出した半島があり、そこにサン・マリーナという都市がある。
今回は立ち寄らないけど、凄く美しい都市だと聞いている。
半島を越えると南の島が見えて来るそうだ。
周辺の自動機械は全て除去済みだし、大型の戦艦でもやってこない限りは航路は安全なはずだ。
念のために大きめの空間ボールを上空に幾つか浮かべて、高速船に追従するようにしておいた。
私はチャールズの横で、高速船が波を切り裂いて走るのを見ていた。
すると、中将のオジちゃんに連れられて、エリザさんもやってきた。
その後ろには、ペレイラ司令官もいる。
「二人とも案内は終わったの?」
「はい。ララ様、素敵なお部屋まで与えて頂きました。ありがとうございます」
「ううん。お客様用のお部屋も沢山あるからね。大丈夫だよ。部屋で休んでいてもらって良いのに」
「いえいえ、私は元海軍の人間です。高速船と聞いて、飛んできましたよ」
後ろのオジちゃん二人が苦笑していた。
この二人は付き添い役か。
チャールズが凄く嬉しそうな顔で、エリザさんに船の説明をし始めた。
早々にエリザさんに舵を渡して、操舵してもらっている。
私は、オジちゃん達とラウンジスペースに移動して、ソファに座った。
「そう言えば、キモ男の聴取はどうだったの?」
「全てを話しましたぞ。陛下の弑逆も他国の侵攻も女神の指示通りだったそうですわ」
「まあそうだろうね。でも、長く共にしていたレオを殺すことに何の躊躇も無かったんだね」
「はい……。悔しくて剣を抜きそうになりました。ただ、元々嫌っていたようですな。全ては女神の指示通りに動いただけの『ただの人形』なのに、偉そうにしているのが許せなかったと言っておりましたわ」
「そうなんだ。兄妹の方は?」
「あの二人も、計画の全てを知った上で協力していたようですからな。死罪は逃れません。陛下の葬儀が終わり、新しい国に移行する際に民に公開して斬首することになるでしょう」
まだ若いのに可哀相だなとは思う。
あの二人も『正しさ』を信じて活動していたのだ。
自分たちが悪いことをしているつもりは毛頭なかったのだと思う。
でも、正義というのはそう言うものだ。
百人いたら百通りの正義がある。
そもそも、戦争とは正義のぶつかり合いなのだ。
それでもだ。何が正しいのか、自分はどう動くべきなのか、それを決めるのは自分だ。
その責任は自分で取るしかない。
「ララ、レオナルド陛下の葬儀が終わり次第、カスティリオ王国軍は首都アクアリスに戻ることになる」
「え、ああ、そうだよね。うん、ララが送るよ」
「助かる。そこでだ、アクアリスの王宮に堅牢な部屋を準備しようと考えている。転移用の部屋だな。そこは兵士に守らせるだけでなく、鍵がないと開かない様にするつもりだ」
「ああ、その部屋にララの迎賓館と繋がる裂け目を常時開けておきたいってことだよね」
「そうだ。王国の主要都市は順次、同様の部屋を作る予定だ」
サンパウリーナ王国の主要都市とは、六つだ。
王都アクアリス
山の町セラーノ
ワインと果実の街オリベイラ
西の港町ラ・フロール
南の農地の入口の港町、カリブリ市
そのいずれにも繋がれば、国の運営はかなりスムーズになるだろう。
「大丈夫だよ。準備出来たら、ララが一度行かないといけないから声かけてね」
「ララ様、そう言うことであれば、サンパウリーナ王国の都市にも」
「うんうん。そうだよね。大丈夫。セキュリティ対策だけは、皆で協議してルールを決めてね」
「勿論です」
「中将のオジちゃん、ちなみにお母様とお祖母様も知っている話なんだよね?」
「勿論だ。むしろ、あの二人が玄関ホールに沢山の扉を作って繋げれば良いと言ったのだ」
「ははは、そうだよね。そうだと思ったよ」
私は収納から、カスティリオ王国オリベイラで貰ったワインを取り出した。
ペレイラのオジちゃんが、棚からワイングラスを三つ取り出す。
ワインはオジちゃん達に渡して、私はジュースを注いで乾杯した。
※
司令官の二人は書籍には余り興味が無かったみたいだった。
ペレイラのオジちゃんは、トレーニングルームでチャールズとレオンと剣を交えるのを好み、エリザさんは高速船から離れなかった。
翌日の夕方、私達は南の島に辿り着いた。
南の島の南端の方には、高い山々が雪化粧をして広がっていた。
北側は緑豊かな農地が広がっているようだ。
東の方にグルっと回って、サン・ミラージュに向かう。
ポルト・ド・ソルやアクアリスほど大きくない、ラ・フロールに近い大きさの港町だ。
小型のヨットが何隻か海上に漂っているのが見える。
ヴァルデン共和国とサンテール王国の大型船が停泊していた。
ヴァルデンとサンテールの船の隙間にチャールズは船を止めた。
私とエリザさん、チャールズが船から降りてから、皆を呼んだ。
高速船は収納しておく。
近くにいる兵隊さんに、エリザさんが声をかけていた。
「サンテール王は離宮に滞在なされているようです。まずは第二軍の駐屯地に向かいましょう」
「駐屯地は遠い? お母様達に馬車が必要?」
「駐屯地は、あの建物です」
エリザさんが示したのは、すぐそばにあるレンガ造りの三階建ての建物だった。
あそこなら歩いてすぐだろう。
同じような建物が数棟並んでいる。
ヴァルデン共和国とサンテール王国の国旗が掲げられている棟が、それぞれの兵隊さんが詰めている建物なのだと思う。
桟橋を渡り、階段を上ると駐屯地の敷地になっているようだった。
そのまま一番近い建物に近づき、歩哨の兵士にエリザさんが声をかけると、サッと敬礼して、中に入っていった。
迎えを待つことなく、エリザさんが中に入り二階に上がった。
「女王陛下、宰相閣下、王女殿下、少し武骨な応接室ですが、一旦、ここで司令官二人から合併の了承を得たいと考えております」
エリザさんが応接室にお母様達を案内して、そう言った。
「そうさな。エリザ、それで良いさな」
応接室にお母様達が座る。
私とマリーは、その横に座らされた。
「女王陛下、宰相閣下、お久しぶりでございます。この度の来訪、恐悦至極でございます」
廊下を走る音が聞こえたと思ったら、応接室に二人の司令官が飛び込んできた。
すぐに跪いて口上を述べた。
エドゥアルド・ダ・シルバ近衛隊隊長とマテウス・ロペス海軍司令官だ。
「エドゥアルド、元気そうで何よりだ。そちらが、エリザの夫君さね?」
「は! 海軍司令官マテウス・ロペスと申します」
「まあ、そのソファに座ってくださいな。少し話をしたいの」
お祖母様が二人に声をかけて、ソファに座らせた。
すぐに話が始まる。
そして、すぐに終わった。
「女王陛下ならびに宰相閣下、我が国へ差し伸べて頂いた好意、我らは忘れませぬ。ララ王女殿下には生涯の忠誠を誓いますぞ!」
エドゥアルド近衛隊隊長が些かオーバーに返事した。
イケオジのマテウス司令官も追随して、合併に同意した。
同意する前にエリザさんの顔を伺ったのを私は見逃さなかったが。
「それではヴァルデンの首相とサンテール王に会おうぞ。案内せよ」
「「「は!」」」
建物の前には、既に馬車が用意されていた。
近衛隊だろう。
百人近い兵隊さん達が、その周囲を囲んだ。
剣を腰に立てて整列した。
「離宮に向かうぞ!」
エドゥアルド近衛隊隊長が大きな声で指示をすると、馬車が動き出す。
私はお母様達とマリーと同乗しているが、姉達は後ろの馬車だ。
念のために振り返って確認した。
※
「あ! マリー、パパがいるよ!」
「ホントだ!」
離宮の入り口には、マリーパパとテオドール隊長、それを護衛する兵士達が出迎えてくれていた。
奥から、慌てて出てくる共和国の首相やゲオパパの姿も見える。
「全く、応接室で待っておれば良いものを」
「でも、私達じゃないのでしょうね。娘達に会いたくて仕方がないのでしょうね。巻き込まれたヘルガ首相が気の毒だわ」
お母様達が話しているのを聞いて、首相やゲオパパの慌てぶりが理解できた。
きっと、マリーパパが、唐突に迎えに行くぞとか言ったのだろう。
馬車を降りる際に、『マリーや、先に行くがよい』とお母様が言ったので、エスコートも無しにマリーはジャンプして馬車から飛び降りた。
そういうところだぞ、マリーよ。
私はちゃんと、兵隊さんの手を借りて、馬車から降りた。
「待っていたぞ! 二人とも!」
マリーパパに抱き着いたマリーを横目に、私はテオ隊長や、ヘルガ首相、ゲオパパに挨拶をする。
すぐにお母様とお祖母様がやってきた。
「フィリップよ。大人になりなされ」
「そうよ。それじゃ、周りが良い迷惑だわ」
「ナタリアもカタリナもどうして、ここにいるのだ。どうやって来たのだ」
「その話は後さね。さあ、一旦、座れる場所に行くのじゃ」
離宮の中をアテンドされて、豪華な外交使節用会議場に案内された。
でもすぐに、お母様とお祖母様が移動するぞと言う。
「移動? どこに行くのだ」
「ララちゃんの迎賓館さね」
「迎賓館? ああ、空間部屋か」
「ヘルガよ。信頼できる大臣も連れて来るが良い。重要な話をするさね。護衛は隊長が一人いれば問題ない」
「あ、はい。かしこまりました。大臣は帰国させましたので、一旦、私とヴィルヘルム隊長で行きます。でも、どちらにですか?」
私はお母様に目配せされたので、空間に裂け目を生じさせた。
少し大きめのドアの様な四角い出入り口だ。
アス姉が最初に入り、チリンと玄関ホールのベルを鳴らした。
「ここの方が立派な会議場かもしれないのにね」
私がそう呟くと中将のオジちゃんが、苦笑を浮かべながら言った。
「ララの能力をヴァルデン共和国にも教えておきたいのだろう。それが議論のキーとなるからな」
ふーんと私は良く分からない返事をした。
ニコラスさんが優雅にやってきて、各国の偉い人達を一番大きな会議室に案内した。
「ここは……?」
キョロキョロと周りを見渡すヘルガ首相にゲオパパが耳打ちして教えていた。
「ゲオパパは知っているんだね」
「はい。愚息に教えてもらいましたからな」
「あ! ゲオも呼んできても良い? 会いたい!」
「呼んでくる……とは?」
「ララ、後にせよ。すぐに会える」
中将のオジちゃんに言われて、私は黙った。
今日にでもヴァルデン共和国のシュタインランドに繋げよう。
そして、ゲオも呼ぶのだ。
チラっと後ろを振り向いたら、チャールズとレオンが私にガッツポーズをしてくれていた。
会議室に向かうと、お母様にナスルのオジちゃんも連れてきて欲しいと言われた。
レオンとチャールズが同行してくれるらしい。
会議は大人たちに任せて、私はナヴァラトナに向かった。
ナヴァラトナに行くとメーガンちゃんが先に捕まったので、ナスルのオジちゃんの居場所も聞いて、二人とも連れて戻って来た。
「これが新しい空間部屋か……。本当に迎賓館みたいになったんだな」
「そうなんだよ。セキュリティがちゃんとした場所を確保してくれるのなら、カリーム・アーバでもナヴァラトナでも繋ぎっぱなしに出来るよ。この壁のドアで繋ぎ先を識別できるようにするみたい」
「そうか! それは早速作らねばな」
「オジちゃんの部屋もメーガンちゃんの部屋もあるよ。部屋、沢山作ったから」
「私、早速引っ越すわ。ナヴァラトナの繋ぎ先は絶対今日作る!」
うんうんと可愛いメーガンちゃんの笑顔を見て頷いた。
「ララ、会議が終わったら、カリーム・アーバに連れて行ってもらえるか?」
「うん、いいよ。憲兵さん達も連れて帰れるよ」
「そうか。そうだよな。じゃあ、その差配をしてからにしよう。助かる」
会議室に向かってトコトコと歩いていると、ニコラスさんが向こうからやってきた。
やべ、またやっちまった。
そう感じた私は自分から、ニコラスさんに謝る。
「ごめんなさい。ニコラスさん、またベル鳴らすの忘れちった」
「構いませぬ。王女殿下。私めは少しでも王女殿下のご負担を軽くしたいだけですから」
彼はそう言って、優雅にナスルのオジちゃんとメーガンちゃんをアテンドする。
メーガンちゃんが、『王女殿下?』と聞いてきたけど、それは話せば長いストーリーがあるのだよ。
私達が会議室に入ると、すぐに挨拶が始まった。
ヘルガ首相も、転移魔法については理解が得られたのだろう。
何の違和感もなく、ナヴァラトナからやってきた二人を迎え入れていた。
「ナスルよ。この間、話した内容で概ね合意した。ヴァルデン共和国は議会承認が必要な案件だからの。しばらく時間がかかるであろうが、方針は変わらぬ」
「そうですか。それは良かった。皆様、今後ともよろしく頼みます」
お母様が、私達がいない間に会議の重要議案が合意したことを告げた。
ナスルのオジちゃんは内容を知っていたようだ。
特に問題はないということだろう。
「覚書は後で、アストリッドにまとめさせる。まずは正式合意までの間の仮運用について決めておきたい」
「ナタリア、それはどの都市に繋げるか決めるということか?」
「合意したら、国の全都市に繋げられるように扉の数は用意しておる。ただ、順番やセキュリティ対策の合意じゃな。ここを狙われたら大ピンチじゃ。各国で同じルールにした方が良いさな」
転移魔法の繋ぎ先と、そのルールが議題の様だ。
私は言われたままに作業するだけだ。
大人しくお母様の隣に座って、皆の話を聞いていた。
「後ろから失礼します。ララ王女殿下の護衛は、我が隊を指名頂きたく」
エドゥアルド近衛隊長が挙手をして発言した。
この人もニコラスさんと一緒で、『王女殿下』呼びを決して変えない人の一人だ。
「そうさな。レオナルドの御守を長年務めてきたのだ。ララちゃんを預けるには最適さな。エドゥアルド、玄関ホールに五名常駐させよ。普段はここサン・ミラージュを拠点にするのが良いさな」
「俺もナタリア達も、ここにいることが多くなるだろう? そうなると書簡のやり取りのルールも必要だな」
「ここから繋がった先は兵士を配置し、鍵を保有した重臣を国や都市に任命しておくとかが良いかもしれませんな」
色々なことが話されていく中、私は自分のための繋ぎ先をボンヤリと考え始めた。
ドラゴンさんの森、コンティスヨの森、その二つは薬草を集めるために暫く繋げておきたい。
ドラゴンさんのところは、全然探索していないしな。
一度、挨拶がてら立ち寄って、薬草を探すけど、宜しくね、くらいは言っておきたい。
薬草が充実したら、ただ販売するだけでなく、薬の製作もやってみたいな。
ポーション開発とか魅力的だ。
「ララちゃんや。ララちゃんや」
「あ、ごめん、お母様、ボンヤリ考え事していた」
「良いさな、良いさな。今後、ヘルガとヴィルヘルムも頻繁に来ることになる。部屋を二つ渡すぞえ」
「うん。いいよ。ゲオパパ、ゲオも呼んできても良い?」
「はい。勿論です。ララ王女殿下。王女殿下専属の護衛としてアサインしますので、こき使ってください」
「えー、そんなのいいよ。友達として付き合って欲しいし」
「ヴィルヘルム・フォン・ハンブルク隊長。ご子息は特別部隊員として教育なされていたと聞きました」
「アストリッド様。皆様と出会う前はそのつもりでした。しかし、皆様と出会ってからは、大海の広さを知ったようです。出来れば、御供させて頂けると親としてもありがたいです」
「そうですか。大変ありがたいです。それではエッジ・シーカーのパーティメンバーとして、同行を依頼してみます」
「じゃあ、まずはヴァルデンのシュタインランドに繋ごうか。その次はカリーム・アーバかな。マリーパパはまだ大丈夫だよね?」
「おー、俺は葬儀終わってからで良いぞ」
私は立ち上がって、ヘルガ首相とゲオパパと一緒に玄関ホールへ向かった。
ニコラスさんがちゃんと案内してくれている。
「シュタインランドの何処に繋げばよいかな?」
「ララ王女殿下、共和国の迎賓館を覚えていらっしゃいますか?」
「うん。大きな部屋。大丈夫、覚えている」
「まずは私達をそこに送り出してくださいませ。その後、夕方の十七時にもう一度、繋げて頂けますでしょうか。それまでには場所を準備しておきます。もちろん、ゲオルクの引っ越しの準備も終わらせておきますので」
「分かった。あ、じゃあ、別に玄関ホールじゃなくても良いのか。今から送り出すね」
私は立ち止まって、その辺の壁にシュタインランドの迎賓館へ繋ぐ裂け目を生成した。
中の様子を伺うと、間違いなく繋がっている。
二人を送り出した後、裂け目を一度閉じた。
「ニコラスさん、ナスルのオジちゃんを送り出そう」
「かしこまりました」
再び会議室に戻り、ナスルのオジちゃんをカリーム・アーバに送り出した。
ニコラスさんと中将のオジちゃんにも頼まれたので、カスティリオ王国の首都アクアリスにも送ってあげた。
二人とも首都に置きっぱなしにしてある荷物や、残した人への指示をしてきたいそうだ。
サンパウリーナ王国の四人の司令官も、サン・ミラージュ、ポルト・ド・ソル、セラ・ダ・ルナの繋ぎ先を準備したいと言って、それぞれの都市に向かった。
一通り、皆を送り出すと、暇になった。
私はフローレンスとアス姉、メーガンちゃんに声を掛けられて、小さめの会議室に案内された。
ジョヴィが温かい紅茶を出してくれる。
「ララ、今の内に各国が合意した内容を教えておくわ。言っとくけど、拒否権はないわよ」
「あれ? フローレンス、いなかったのに知っているの?」
「もちろんよ。その合意の雛形を作ったチームには参加していたからね」
はて?
私が首を傾げていると、姉が簡単な図を描いて、説明してくれた。
「簡単に言うとね。同盟関係をさらに強化することにしたのよ。緩やかな統一国家の方向にね」
「え? 全部の国が? 合併?」
「連邦制ね。厳密に言うと立憲君主の連邦制」
フローレンスがまた難しいことを言いただした。
アス姉が図の一番上に、『王』と記載した。
そこに五つの箱を記載する。
それぞれ『サンテール王国』『ヴァルデン共和国』『イフヤ共和国』『カスティリオ王国』『サンパウリーナ王国』と記載した。
「それぞれの国の主権は保持したままなの。連邦に権限を委ねるのは、連邦軍の指揮権と外交権のみ」
「この王様が他国との戦争権を持つってこと?」
「外交権もあるからね……。その判断は出来るわ。ただ、承認を得る必要はないけど、説明義務を負うのと、あとは連邦軍の予算は各国からの拠出金だからね。実態としては好きには出来ないわ」
「え……、まさか、ララがこの役をやるの?」
私は一番上に記載された『王』というところを指差した。
姉は優しい笑顔で頷いた。
「ララしかないのよ。フローレンスが言った通り、各国が合意するにはララの存在が不可欠なの」
「えー、ララ、出来ないよ」
「ララ、平和のためよ。実際はお姉様が差配してくれるわ」
フローレンスがキッとした顔で私に言う。
「ララちゃん、私も手伝うわ。ラージャスティが落ち着いたら、私も各国の人たちに恩を返さないといけないから」
メーガンちゃんからも後押しされる。
なんか、嫌って言いにくい流れだなと感じた。
「みんな仲良くやろうねって言うだけの役?」
「そうね。各国が協力して色々な政策を進めるための役ね。農業、貧困、経済、軍事強化等々ね」
「あれ? なんか重くなったよ?」
「ははは。ごめんごめん。基本は、わたし達がこれまでやってきたことの延長よ。農業はララが専門でしょ。今ではジョヴィだってやれる。貧困、経済はラージャスティの各町でやってきたことの延長。軍事もそうよ」
「軍事は船を自動機械にする必要があるね。そこはチャックの力が必要だ」
「そうそう。そう言うことよ。つまり、わたし達がやってきたことなのよ。それを各国と連携しながら、進めていきましょうってことね」
「うう。まあ、理解したけど、サンテールとかカスティリオ王国ってどうなるの? 王政はやめるの?」
「お母様は共和国制に緩やかに移行するって仰っていたわ。まずはサンパウリーナ王国との合併。そして、各エリアで共和国制へと移行させるそうよ。数十年かけてね。サンテールも同じみたい。そこはマリー次第ね。現国王陛下の後継はマリーだから」
「マリーはすぐに共和国制を選びそう。立憲共和制ってことだね」
「そうね。ララ、一旦、ここまでは理解できた?」
「うーん。わかったよ。もうやるしかない……、よね。皆を巻き込んだのはララだし」
姉はニコっと笑顔を見せた。
フローレンスがウンウンと頷いている。
メーガンちゃんはホッとした表情を浮かべた。




