ララ迎賓館
女王のお母様と宰相のお祖母様は、当然の様に空間部屋のお風呂に入って泊まった。
その間、ずっと部屋の改装案を相談している。
フローレンスや姉が、その話をノートを手に纏めていた。
お風呂も大浴場に拡張すると言っていた。
トイレの魔道具も全部使う形で増やすらしい。
私は特に希望はない。
皆が喜んで使ってくれるのであれば、何でも良いのだ。
執事のニコラスさんが、私めの部屋もどうかお願いしますと、姉に頭を下げていた。
翌日からは、リビングルームの裂け目が三つになった。
コンティスヨの森に繋がる裂け目、畑の部屋へ繋がる裂け目、ラ・フロールの迎賓館に繋がる裂け目だ。
女性陣は全員、ラ・フロールに向かったが、私はチャールズとレオンに同行した。
この場所を見失わないために、色付きの塔を高く空間結界で作った。
森の高木を越える高い塔だ。
その麓に裂け目を出しっ放しにしておく。
迷子になったら、この塔を目指して戻れば良い。
そう二人と話し合ってから、別れた。
私は薬草探し、彼らは走りながらのトレーニングである。
夕方になって三人で空間部屋に戻ると、もう改築案は纏まっていた。
業者への発注も済んだという。
流石である。
フローレンスが設計図を見せてくれた。
「迎賓館……」
レオンが思わず呟いた通りである。
今の空間部屋の数倍の広さだ。
まず玄関ホールがある。
もちろん玄関はないので、ここが色々なところに繋がる出入口という事だろう。
ただし、玄関ホールの壁にはドアが沢山設置されており、このドアを開けた先の壁に空間の裂け目を作っておくようにするそうだ。
まあ、今後、幾つか繋ぎっぱなしにする場所も出るだろうから、間違えないようにするには良い案だと思う。
今のリビングルームとダイニングルームを足して、さらに倍にした様な広さの玄関ホールの奥には、ちょっとしたパーティホールが広がっている。
女王陛下の謁見会場としても使えるし、ピアノが設置されてることからも、音楽コンサートも開催できそうだ。
そのホールに隣接する応接室や会議室。
大中小と複数あった。
きっと、中将のオジちゃんが作戦司令室にするんだろうな、と思える部屋もある。
チャールズ達が希望したのだろう。
剣を振り回せるトレーニングスペースが続いていた。
手前が仕事用のスペースで、奥がプライベートエリアなのだろう。
奥に進むと生活感があるエリアとなる。
大きなキッチンエリア、二十人は座れるダイニングルーム、ソファセットが複数配置されたリラクゼーションエリアが続いた。
男子部屋が右手、女子部屋が左手なのは変わらない。
ただ、部屋数が増えていた。
階段が付いて、二階部分が出来た。
各階に十部屋ある。
部屋も、かなり大きくなっているみたいだ。
もちろん、お風呂場は大浴場である。
書庫は一番奥に設置されている。
つまり、今の空間部屋の手前部分を拡張するという事だ。
書庫にはチャールズ用の作業スペースだけでなく、多分、フローレンスが使うのだろう、勉強部屋も複数あった。
「すごいね……。ララ、ちゃんと大きさ間違えない様に作らないと」
「そうさな。間違えると業者が困るの」
「何度でもやり直せば良いのよ」
翌日から早速内装工事が始まった。
姉に指示されて迎賓館の入り口に扉と同じ大きさの入り口を設置した。
業者は迎賓館の中の工事だと勘違いするのだろう。
扉の前には兵士が立っていた。
※
結局、内装工事が完了するまで、一ヶ月半かかった。
いや、一ヶ月半で終わらせたのだ。
沢山の人手を惜しげもなく投入したのだろう。
最後の一週間は、空間部屋を使えずに迎賓館で寝泊まりした。
その間に、メーガンちゃんやナスルのオジちゃんにも会いに行った。
ポルト・ド・ソルの冒険者組合にも行って、魔獣と薬草の売却もした。
当然、売却益はマリーとジョヴィとも分け合う。
ジョヴィは金額を聞いて固まっていたけど、マリーはニンマリする顔を頑張って押し殺していた。
「お姉様! ワタシ、この金で同じ装備を揃えたいわ!」
「あ、そうね。マリーとジョヴィの装備服もオーダーしちゃいましょう。それはパーティ資金で良いわよ」
そんなこんなで、ラ・フロールでパーティ装備の補強もした。
私達も冒険者風の装備だけでなく、お揃いの正装の様な服もオーダーされたのは、お母様とお祖母様の指示である。
新しい空間部屋の完成と共に、ニコラスさんも引っ越してきた。
女王のお母様とお祖母様の荷物も大量に運び込まれた。
玄関スペースから手前側は内装も豪華で、まさに迎賓館である。
実際に各国の身分の高いお客様を迎えることもあるだろう。
ニコラスさんがいてくれると心強いのは確かだ。
「ニコラスよ。この館の主人はララちゃんさな。しかと心得よ」
「そうよ。身分相応に接しなさいね」
「は。心得ております。ララ王女殿下、私めのことは、どうか『ニコラス』と呼び捨てにくだいませ」
「え? 王女殿下? え?」
姉達が一斉に私から目を逸らした。
これはきっと、この間の話を誰かが言いやがったに違いない。
一番シレっとした顔をしているのは、マリーとフローレンスだ。
犯人は間違いないコイツらだ。
「ララちゃん、絨毯のカラーがライムグリーンだね。これって、どこの国の色でもないね」
「あ、本当だ。チャック、良く気が付いたね。凄く可愛い色だ。良いセンスだね」
「ララちゃんをイメージして、わらわ達で決めたさな」
「そうさね。オリーブもカーキもシャルトルーズグリーンも合わないからね。新しい色にしたのよぉ」
「全部を足したのよ!」
「マリー、それを言っちゃダメよ」
女王のお母様、宰相のお祖母様に続き、マリーが変なことを言って、フローレンスが窘めた。
何か意味があるのだろうが、『全部足した』の意味がイマイチ分からない。
首をかしげていると、チャールズが私の背中を押して、玄関ホールから奥へと誘った。
パーティホールもライムグリーンをアクセントカラーにして、可愛く彩られていた。
ベースは落ち着きのある若草色で、アクセントカラーがライムグリーンの様だ。
元々この空間部屋は二階から三階の高さがある。
パーティホールのような大きな部屋には、この天井の高さが合っていた。
奥には謁見のための王座が少し高いところに置いてある。
お母様とお祖母様が座るのだろう。
オリーブ色とライムグリーン色の玉座が二つ並んでいた。
ピアノは倉庫に置いてあったものを移動したのだろう。
立派なグランドピアノだ。
ピアノだけでなく、バイオリン、ギター、ドラムセット等、倉庫に置いたあった楽器類だけでなく、トランペットやトロンボーンと言った各種楽器までガラス棚に仕舞われていた。
個性的かつセンスある色合いの会議室、応接室、執務室を眺めながら奥へ進む。
流石にトレーニングルームは武骨だったが、キッチン、ダイニングルーム、リラクセーションエリアは素敵に仕上がっていた。
「ソファも全員が座れるんだね」
「そうよ。このソファはかなり悩んで決めたわ。わたしのお気に入りよ」
姉が凄く嬉しそうに座り心地を確かめていた。
その後、みんなで部屋割りを決めた。
大浴場と洗濯乾燥室に近い部屋をジョヴィが希望した。
私はその次の部屋、私の前をお母様が、その隣をお祖母様が選んだ。
私の部屋の横はフローレンスで、マリー、姉と続く。
男子エリアは、ナスルのオジちゃんや、中将のオジちゃん、マリーパパやテオ隊長のことを考慮して、チャールズとレオンは奥の方を選んだ様だ。
大浴場と洗濯乾燥室の近くはニコラスさんが選んだらしい。
「うん。凄く素敵な迎賓館になったね。空間部屋とは呼べないや」
一通り見て回った後、私はリラクセーションエリアのソファにドカっと腰を掛けた。
すぐ隣をマリーとフローレンスが座る。
お母様とお祖母様の座る位置は決まっているようで、壁際の長ソファに二人で当たり前の様に座った。
そのすぐ横にも、アップライトピアノが置いてある。
どこでも音楽に触れることが出来る環境である。
「ララ迎賓館(Lara Palace)で良いさね」
「そうね。そう呼びましょうかね」
「えー。空間の二文字が入っていないと世界のどこかの都市にあると勘違いされそう」
「ララ、空間迎賓館(Spatial Palace)じゃ変よ」
「次元迎賓館(Dimensional Palace)は?」
「アス姉、長いよ。言いにくいし」
「じゃあ、ララ迎賓館よ。通常は迎賓館って呼べば良いのよ」
フローレンスの言葉に全員が頷いた。
まあ、他に良い呼び名が思い浮かばないし、一旦それでいいか。
私も渋々頷いた。
「さあ、ララちゃんや、いよいよセラ・ダ・ルナに向かうとしよう」
「そろそろ血生臭い戦いも落ち着いていることを願うわ」
二人とも中将のオジちゃんのところに行くことを凄く嫌がった。
私としては一刻も早く行ってあげたいと思っていたのだが、戦争中の都市に行くのは二人とも凄く嫌なのだと言う。
確かにもう七月なので、セラ・ダ・ルナは雪が積もったころだろう。
流石にカサ・デ・アグア軍も壁の向こう側で野宿し続ける訳にもいかない。
拠点となる町に戻る時期だとは思うのだ。
「分かった。じゃあ、これから行こうか」
時刻は昼過ぎだ。
向こうに行って、司令官の人たちに会談の調整をお願いするにはちょうど良い時刻だろう。
夕ご飯を、ここで皆で食べても良い。
皆が立ち上がったので、私は城塞都市セラ・ダ・ルナの統一街道をイメージした。
城塞都市の入口に面した統一街道だ。
そして、一本の線を空中に描く。
レオンが裂け目を広げて、外を確認した。
異常なし。
レオン、チャールズと順番に出て行った。
ジョヴィ、フローレンス、ニコラスさんはお留守番である。
お母様とお祖母様が出て行った後、最後に私が出て、裂け目を消す。
収納から一番豪華な馬車と馬を数頭出した。
「随分立派な壁と大門を建てたものさな」
「ララちゃん達立派よ」
「うん。ありがと。でも大門は完成したのをララも始めて見た。凄く大きいね」
私達が立てた壁よりも遥かに大きい門が統一街道を塞いでいた。
大きな鉄製の門が閉じられている。
戦争中のため完全封鎖ということだろう。
大門の上には兵士たちが小隊で監視任務に就いているようだった。
お母様とお祖母様、私とマリーが馬車の中に入り、他の三人は馬に乗った。
レオンが門の兵士に何かを伝えると、その兵士は一足先に馬で坂を登って行った。
ゆっくりとセラ・ダ・ルナの丘を登る。
内壁を越えるあたりで、私達が立てた壁を振り返って眺めた。
壁の向こう側も見渡せるが、カサ・デ・アグア軍は見当たらない。
その代わりに北の方には一面の雪景色が広がっていた。
内壁を越えて、都市の中に入る。
先日訪れた時にエリザ・ロペス司令官と話した軍の建物ではなく、さらに奥の離宮の様なところに馬車は案内された。
きっと、カスティリオ王国の女王と宰相がいるからだろう。
離宮までの道をサンパウリーナ王国軍の兵士さん達がズラッと並んで敬礼してくれていた。
離宮の入口には、エリザ司令官、ペレイラ司令官に中将のオジちゃんまで出迎えに出てくれていた。
カスティリオ王国軍の兵隊さん達も集まってくれているみたいだ。
馬車のドアを中将のオジちゃんが開けてくれた。
「オスカー、ご苦労であった」
馬車から降りるのにエスコートしていたオジちゃんに、お母様は声をかけた。
他の隊長格の人たちが、お祖母様をエスコートして降ろしている。
「は! 光栄です。それにしても、陛下、驚きましたぞ」
「その話は後でじゃ。まずはサンパウリーナ王国軍の司令官を紹介するさな」
私とマリーが馬車を降りた時には、お母様とお祖母様の近くにエリザ司令官、ペレイラ司令官が駆け寄って、跪いて挨拶していた。
「良い良い。ララちゃんから二人の事は聞いておる。私の娘が世話になったそうさな。礼を言うぞ」
「は! は? 娘さま?」
「わらわの娘。カタリナ・デ・ラ・クルス宰相の孫娘。ララちゃん達はそうなのじゃ」
「そうよぉ。でも、二人とも立ってくださいな。リラックスして話せるところに行きましょ」
「「は!」」
二人とも、立ち上がって、お母様とお祖母様をアテンドし始めた。
チラっと私達の方を見たけど、笑顔で返しておいた。
もうすっかりとお母様とお祖母様のペースだ。
早く慣れた方が良いよっと心の中でも返しておいた。
王様、つまりレオが使っていた部屋なのだろう。
他国の王族と会談するのに相応しい豪華な部屋に通された。
お母様の正面の席は、空席にして、その両脇に二人の司令官が並んだ。
私とマリーは座ったが、姉達は私達の背後に立った。
「いきなり訪ねてきて済まぬの。まずはアストリッドから報告さな」
姉がコンティスヨの森に入ってからの話をした。
参謀と百人の兵士を捉えていることも、地下施設の話も説明した。
エリザ司令官から何個か質問があがり、やり取りした。
後で、参謀も兵士も受け渡すことになった。
次はペレイラ司令官がカサ・デ・アグア軍との戦闘の話を報告した。
三十万と言われたカサ・デ・アグア軍も結局、十万の兵士達だけだったそうだ。
数日壁を挟んだ攻防があったが、すぐに撤退し、北部での拠点作りに向かったそうだ。
十万の兵士を点在させたとしても、現行の北部では受け入れは厳しいだろうとのことだった。
「つまり、春まで戦争は無いってことだね?」
「はい。ララ様、仰る通りです。全ては皆様が壁を構築してくださったお陰です。お陰でこちらの被害もなく、安心して冬を越せます。本当にありがとうございました」
「ううん。良かったよ。じゃあ、エリザさんもペレイラのオジちゃんも、サン・ミラージュに行こうよ。レオのお葬式をしてあげないと」
「そうさな。全員を連れて行きたいが、セラ・ダ・ルナを守る兵力は必要さな。司令官たちよ、誰を連れていくかを決めるが良い」
「「は!」」
「もう一つ。わらわから、其方らに聞きたいことがある。サンパウリーナ王国の行く末じゃ」
「はい……」
女王のお母様が切り出した重い議題に、二人の司令官は目を伏せて返事した。
本来であれば、既に後継者を決めていないといけない頃合いだ。
でも、この国は良くも悪くもレオの完全独裁国家である。
後継者は候補すらいない。
強いて言うならば、軍の司令官の四人である。
でも、四人とも生粋の軍人さんだ。
国王という感じは全くしない。
「カスティリオ王国と合併するという提案を、わらわはしようと考えておる。誰と合意すれば良いのかの」
「が、合併ですか? 併合ではなく?」
「合併じゃ。中東地区はアル・ナジール王国とラージャスティ王国が合併して、イフヤ共和国となりそうじゃ。カスティリオ王国もサンパウリーナ王国も、中東の二国とはカルチャーが大分違うの。だが、カスティリオ王国とサンパウリーナ王国は同じ農業国家じゃ。この二国なら手を取り合うことは可能さな」
「は、はぁ……」
ペレイラ司令官は首を傾けながら、はぁと返事をした。
エリザさんの方は毅然とした顔を浮かべて、先ほどと同じ質問を繰り返した。
「女王陛下。有難き提案ありがとうございます。サンパウリーナ王国は軍政国家です。我ら四人の司令官が従えば合意したとみなして問題ございません。そして、おそらく四人とも異存ないでしょう。ただ、今一度お聞かせください。カスティリオ王国に飲み込まれるのではなく、合併を選択する意図を」
「エリザと言ったかのぉ。素晴らしい面差しじゃ。気に入ったさな。答えは、ララちゃんの存在じゃ。我がカスティリオ王国も、ララちゃんに預けようと考えておる。つまり、ララちゃんを旗頭として互いに新しい国を興さんかねという提案じゃ」
「え? お母様、ララ、女王なんて嫌だよ」
「ふふふ。ララちゃんは何もせんで良いさな。全て、わらわとカタリナとアストリッド達に任せておくのじゃ。ララちゃんは自由に生きてさえいれば良いのさ」
「そうよぉ。別に王国にする必要もないのよ。旗として存在していれば良いの」
それでも嫌だと言おうとしたところで、私の肩に姉の手が乗った。
そのまま、姉が横から失礼しますと発言する。
「新しい国を興すにも色々検討する必要があります。手順としては、今今はサンパウリーナ王国とカスティリオ王国は合併すると宣言するだけで良いかもしれません。まずは、その意思があるかだけ、確認させていただけませんか。レオナルド陛下の葬儀の扱いも多少調整が必要となります」
エリザさんはペレイラ司令官の顔をチラっと見てから、毅然と答えた。
「是非。是非、宜しくお願いします」
その後は、細かいやり取りをした。
キモ男参謀は、今日中に尋問するそうだ。
離宮前の大きな道に、キモ男の配下百名の兵隊さん達を取り出して、エリザさんの配下に受け渡した。
キモ男と兄妹使徒は尋問のため、特別扱いである。
三人とも私のことを親の仇の様に睨んでいたが、隣にいるのが二人の司令官だと気づくとギョッとした顔をして、周囲を見渡した。
「ここはセラ・ダ・ルナの離宮だ。其方ら三人には、国家反逆罪の容疑がかかっておる。身柄は拘束の上、全てを詳らかにしてもらうぞ」
ペレイラ司令官が三人に告げた。
キモ男参謀は少し俯き気味に睨み上げたが、兄妹の二人は明らかに動揺を表情に浮かべた。
「国家反逆罪でありますか?」
「カミラ・デ・ソウザ一等兵士。その通りだ。国王陛下の弑逆、他国との不適切な侵攻作戦の遂行、自国へ誤った情報を流布した上に騒乱を引き起こした罪だ」
「そんな! 私達は女神様の指示で!」
「その女神様の罪が、先ほどの反逆罪に当たるのだ。当たり前であろう。女神様の指示とはいえ、陛下を弑逆し、嘘偽りを流布し、他国と戦争する行為が正しい訳がないだろう!」
ペレイラ司令官の大きな一喝で、妹は言葉を飲み込んだが、兄が顔を上げて反論しようとした。
それをエリザさんが制する。
「尋問でそう主張しなさい。ただ、私達はその女神様と敵対する覚悟をとうに決めているの。だから、女神様の指示という言い訳は成立すると思わない方がいいわ。全てを正直に話すことが残された唯一の道よ」
私はキモ男の頭の中からも自動機械を除去しておく。
もちろん気持ち悪いので、一度、地面に転がしてから、収納した。
コロンっと音を立てて石畳みを転がる自動機械をキモ男と兄妹は不思議そうに眺めていた。
※
翌日、第四軍の兵士達を残して、第二軍やカスティリオ王国軍の兵士達はサン・ミラージュへ同行するべく、離宮で整列した。
私の収納魔法による移動には、彼らも慣れたものである。
百名単位で敬礼をしながら、収納されていった。
第四軍は北部方面担当なので、残念ながらセラ・ダ・ルナの防衛線を維持しなければならない。
エリザ・ロペス司令官だけが、サン・ミラージュでの葬儀へ参列することになる。
迎賓館こと新空間部屋に、エリザさんとペレイラ司令官を案内した。
中将のオジちゃんは昨晩から、こっちに移動している。
案の定というか、玄関ホールに程近い大きめの会議室を自室として占拠した。
作戦指令室にあった全ての物だけでなく、ベッドまで持ち込んだ。
もはや会議室ではなく、オジちゃんの自室である。
「うん。ここがララ達のお家。色々な人が泊まるから、迎賓館とも呼ばれている」
玄関ホールに転移して、彼ら二人を案内した。
パーティホールを見せて、中将のオジちゃんの執務室も訪れる。
「オジちゃん、連れて来たよ」
ノックして扉を開けると、ソファに寝転んで本を読んでいた。
顔を上げて、おお、よう来たと返答する。
「ララじゃ、不安だな。俺が案内しよう」
そう言って、部屋から出てきた。
「えっと……、ありがとうございます。ちなみにここはカスティリオ王国に当たるのでしょうか?」
「はあ? なんだ、そこからか。ララ、全然説明していないじゃないか。ここは神域、神界だ。ララが創りだした世界だ。国どころか、どの惑星にも属していない」
オジちゃんが説明しているが、ちょっと表現がオーバーなんだよな。
魔法で作り出した空間、それだけ説明すれば良いと思う。
物理的な場所と切り離されているという概念を理解するのが難しいかもしれないけど、乗り越えないといけないのはそれだけだ。
しばらく歩いていると、ニコラスさんがやってきた。
本来であると、玄関ホールで鈴を鳴らし、ニコラスさんが来るのを待たないといけないのだが、今日はつい忘れてしまった。
「ニコラスさん、ごめんね。鈴鳴らすの忘れてしもうた」
「王女殿下。何の問題もございません。それを察知して動くのは執事の仕事でございます。出迎え遅くなりまして申し訳ございませんでした。エリザ・ロペス様、ジョアン・ペレイラ様、ララ迎賓館へようこそ。私がご案内させて頂きます」
ニコラスさんは何度言っても、『王女殿下』呼びを止めてくれない。
本物の王女様であるマリーのことは、『マリー様』なのに。
もう私も好きに呼ばせてあげることにした。
こうやって、外堀から埋まっていく感じがするのは非常に嫌なのだが。
ニコラスさんと中将のオジちゃんが、彼らを案内するのを見て、私はリラクセーションエリアに向かった。




