転移魔法
「ロボットにライフル銃。明らかにオーバーテクノロジーよね。あまり見せない方が良いわ。見るとそれを作りたくなる。一つ作れば歯止めは効かない。世界が悪い方に進んじゃうわ」
私達は地下施設を出て、セラ・ダ・ルナに向けて帰路に着いた。
夕方まで走り、森が暗くなってきたところで空間部屋に戻った。
おそらく、森を抜けるまでに三週間ほど要するだろう。
マリーの言う通り、一部の森を収納したりしていれば一か月はかかる。
まあ、セラ・ダ・ルナに戻っても、未だ戦争は終わっていないだろうから、急ぐ必要もないのだ。
空間部屋で食事を取りつつ、フローレンスやジョヴィにも地下施設でのことを共有した。
ジョヴィは私達の無事をただただ喜んでくれたが、フローレンスは持ち帰った機械兵士の残骸や大量のライフル銃を見て言ったのが先ほどの言葉である。
「うん……。ララもそう思う」
「わたしもよ。散々ライフルでの狙撃を練習しておいて、今更言うのもあれだけど、もう余り使いたくないわ。本当に緊急時だけにしましょう。あとはボウガンでいいわ」
「えー! せっかくワタシにも武器が出来たのに!」
姉は銃を秘匿する方向で賛成したが、マリーは使い続けたいようだ。
普段、マリーだけが攻撃手段を持たない。
見ているだけなのもイヤという気持ちも分かる。
「山猿もボウガン習えよ」
「えー!」
「マリー、わたしの予備をあげるわ。一緒に練習しましょう」
「はーい……、アス姉さんが言うのなら……」
わがまま王女のマリーもアス姉の言うことは素直に聞く。
それに努力家で根は真面目なのだ。
きっと本当にボウガンをマスターすると思う。
「でも! フローレンス! ララの棒の技は凄かったのよ!」
マリーは自分の攻撃手段の話から、私の話に転換して話し出した。
フローレンスは興味深げに聞いている。
戦闘中だったので、話に上がらなかったが、チャールズとレオンも実際に見て驚いたらしい。
明らかに熟練の技だったと言ってくれていた。
「ララが前世で練習していたってことかな」
「うーん。それしか説明できない。何となく持った瞬間に出来ることが理解できた」
私の返答にフローレンスは頷いて考えだした。
チャールズが自分もずっと不思議だったとコメントした。
「僕ら、全員、古い言葉を記憶していたりしているけど、前世で学んだことって、どうやって記憶しているんだろうね。脳細胞は生まれ変わっている訳だからね」
「馬鹿チャック! 魂に決まっているじゃないの!」
何を非科学的なことを言っているんだと、チャールズがマリーをバカにして、いつもの通り、言い争いが始まった。
「思考や認識といった知性の能力は細胞そのものに宿っており、脳はそれを強化しているだけって言われているわ。部屋の書籍にそう書かれている」
ガリ勉フローレンスが、ボソっと呟いた。
マリーとチャールズも下らない言い争いをやめて、フローレンスの方を向いた。
「植物でさえ、脳がなくても世界を認識し記憶する能力を持っているのよ」
「フローレンス、でも、それって前世の記憶の説明にはならないよね?」
「そうね。書庫にあった生物学研究には、親が後天的に得た経験や記憶が子孫に遺伝するって内容もあったわ。エピジェネティクスってのが鍵なんだけど、例えば、親マウスにサクラの匂いと一緒に電流を流すと、生まれた子供もサクラの香りに怯えたそうよ」
「え?DNAに記憶されているってこと?」
「記憶子の設計図であるDNAにコピーすることも可能ってことね。つまり……、私達は生まれ変わりではなく、前世のDNAをそのまま持って生まれて来ちゃったってことになるのだけどね」
「まあ、アス姉とフローレンスを見れば、転生じゃなくて、前世と同じDNAを持っての生まれ変わりだって納得できるけどね」
「クローン……」
チャールズがボソっと呟いた。
フローレンスはその言葉を聞いて、チラっとチャールズを見てから、食事を再開した。
※
結果的にセラ・ダ・ルナに帰るまでに二か月要した。
しかし、この二か月は私達にとって、大きなブレークスルーを果たした期間だった。
そう言って良い二か月だったと思う。
私達は、地下施設を出てから走った。
日々走り続けた。
特に、チャールズ、レオンの走りは鬼気迫ったものがあり、移動という目的だけでなく、時間があれば、走りながらトレーニングを重ねていた。
マリーは姉からボウガンを習い、獲物を見つけては狩っていた。
マリーらしく、弱い獣には矢を向けずに、強い魔獣相手に練習することを選んだ。
野兎や鹿を狩ることは、「嫌よ! 動物さんは殺さないわ!」と大きな声で宣言した。
姉は苦笑を浮かべて、食材である彼らを狩っていたが。
ちなみに、夜、彼らの肉が出た時には、マリーは美味しそうに食べていたが、まあ、私も気持ちは理解できるので、何にも言わなかった。
マリーと姉の訓練には当然、私が付き合った。
万が一にでも何かがあっては困るので、彼らの近くに防御役として残った。
チャールズとレオンは、そんな時でも走ってトレーニングに出かけて行った。
合流地点を決めて、彼らは森の中に消えていったのだ。
どうも、マピングアリとの戦闘で、自身の魔力が切れたのが、レオンにとって本当に悔しかったようで、魔力を纏いながら、長時間戦えるようになるための訓練がメインだったようだ。
彼らの願いを受けて、一日だけ、私は彼らの訓練に付き合ったこともある。
チャールズとレオンの案内で向かったのは、ヤクママの生息域だった。
小さな沼で数体しかいないみたいだったけど、彼らはヤクママと戦いたいと言い出したのだ。
「いやいや、剣も魔法も効かない相手だよ。無理だよ」
「いや、レオンが弱点を見つけたんだよ。遠くから彼らの身体を良く見ると、関節部分には例の鱗がついていない。あそこなら剣が通ると思うんだ」
「実は硬いってこともある」
「そしたらやめるからさ。ね、お願い。一回だけ一緒にやろうよ」
「うー、わかったけど、ララは何をすれば良いの?」
「オトリ。結界で囲って、注意を引き付けてくれればいいよ」
「うげっ。酷い兄たちだ」
そう言いつつも、私は応じた。
関節部分ってことは、あのデカいワニ蛇を裏返しにする必要がある。
攻撃されつつ、隙を付いてひっくり返すのは難しいと判断したのだろう。
多分、私が、私の結界が攻められている間に、不意打ちでひっくり返すつもりなのだろう。
沼地に近づいて、私は大きな声を出してアピールした。
「おーい! ワニさーーん! こっちに可愛くて美味しそうなピチピチギャルがいますよー!」
そのアピールにまんまと乗っかって来た愚か者のワニは、おそらくオスなのだろう。
短い足で、どうやって速度を出しているのか不明だが、凄い勢いで捕食しにきた。
ガーン!
と激しい音がして、私の周りに張り巡らされた結界に噛みつく。
あれ?
そんな顔をして、ヤクママは目の前で大きな口を閉じた。
私を食べたはずなのに、固い壁に防がれたのだ。
戸惑うのも無理はない。
再び、ガブっと私を食べようと、私の目の前で大口が開いた。
ドン!
横から出てきたレオンが体当たりをしつつ、ワニをひっくり返した。
右手に持った剣で、顎、ワニに顎があるか分からないが、胴体と口の間のラインに剣を刺し込んだ。
弱点部分があるのは、本当みたいだ。
剣は綺麗に身体に差し込まれた。
目に見えない速度でチャールズがやってきて、真上から尻尾を斬り落とした。
「ギィィィ!」
変な声でヤクママは叫ぶ。
レオンが差し込んだ剣を横にずらして、頭部を斬り落とすまで、その変な声は続いた。
「レオン! チャック! もう一体来たよ!」
叫び声に反応したのだろう。
沼地から、もう一体、凄い速度で這って来た。
レオンとチャールズは、死骸をそのままにして森に逃走する。
もう一体の方は、逃げた二人よりも残された私に全ての憎しみをぶつけて体当たりをしてきた。
ガン!
大きな音がして、結界が後ろに飛ばされた。
「こんにゃろ!」
結界の中で転がった私は起き上がって、仕返しを考える。
倒し方は分かった。
ならば、私にも倒せる。やり方は幾つかある。
向かってくるヤクママの左半身。
その下に結界を生成して、ひっくり返した。
無様に仰向けになるヤクママ。
その上に大量の矢を生成して落下させる。
弱点の隙間がどこか、イマイチ分からないけど、物量で勝負した。
数本の断裂魔法製の矢が刺さったので、それをさらに差し込んでから、横に動かして切断した。
「ギャャャャァ!」
変な声を絞りだして、もう一体のヤクママも事切れた。
ふぅ。
沼地から援軍が出てこないことを確認してから、結界を解除した。
「ララちゃん! さすが!」
チャールズとレオンが駆け寄ってきて、互いにハイタッチを交わした。
多分、この素材は凄く高く売れると思う。
死骸から魔石を取り出して残りを収納しておいた。
※
そんなイベントはありつつも、他の日はマリーと姉のボウガン練習に付き合った。
彼女たちから余り離れないところで、『コンティスヨの森の神秘』の本を手に、貴重な薬草を採取して回った。
この森には、この森でしか取れない薬草も多いそうで、冒険者が命を賭けて森に挑むのは、マピングアリやヤクママを討伐するためではなくて、薬草のためだそうだ。
当然だが、高級薬草である。
それを採取して、私の畑に植えるのだ。
大きなブレークスルーは、ふとしたことから生まれるものだ。
結果的に、この貴重な薬草を、私の畑に植えることがブレークスルーのキッカケになった。
まず、ジョヴィが私の畑で働きたいと言い出した。
野菜や果物だけでなく、自分も薬草も育てたいと言い出したのだ。
これは、フローレンスと一緒に空間部屋に残されている間に、薬草の勉強をしていたことも影響したらしい。
「よし! 薬草仲間ゲットだぜ!」
私もそう言って、快く引き受けた。
空間部屋から、畑の部屋へと繋がる空間の裂け目を常時出しっぱなしにして、いつでもジョヴィが出入りできるようにしたのだ。
私は薬草採取の仕方もジョヴィに丁寧に教え込んだ。
新しい薬草も一緒に植えて、時を進めて一緒に収穫したりもした。
『コンティスヨの森の神秘』の本を一緒に見ながら、次に採取する薬草を選んだりもした。
そんな様子を見ていたフローレンスが私に言ったのだ。
「ねえ、ララ。ちょっと聞いても良い?」
「ん? フロ、どした?」
フローレンスは、ソファに広げられていたノートをめくって、新しいページを開いた。
そこに絵を描きながら聞いてきたのだ。
「ララの空間魔法は、空間を創造する力。そして空間を繋げる力」
「う、うん。そうだね。この部屋や畑の部屋は創造した空間。そして、そこに繋げることが出来る」
「空間同士は、いつでも繋げられる。ララがいる場所から、ララが望む空間に」
「うんうん。その通り。んで?」
「この部屋に入る時、ララはいつもリビングルームに繋げるよね? でも、この間はダイニングルームに繋げて入って来た」
この間?
そう一瞬考えたけど理解できた。
沼地に落ちてしまった時のことだ。
塔の周りを囲んでいた沼。
ヤクママが沢山徘徊していた沼だ。
空間ボールで飛び越えようとしたけど、塔から光魔石のスポットライト攻撃されて、空間ボールも結界も壊された。
その結果、沼地に落下したのだ。
私達はヘドロだらけになって、空間部屋に緊急退避した。
そう。あの時は、確かにダイニングルームに繋げたのだ。
何故ならば、リビングルームには絨毯が敷かれており、それを汚しちゃうと考えたからだ。
フローリングの床であるダイニングルームの方が良いと思ったのだ。
「うん。イメージした場所にララは繋げられる」
「そうよね。そうだと私も思うの。じゃあ、この部屋から出て行く時、どうして、入って来た場所に戻る制限がかかるの?」
「え?」
「別にイメージ出来る場所ならば、ここからそこに繋げれば良いじゃない。どうして、この部屋から出る時だけ、制限がかかるの?」
「つまり……?」
「そうね。例えば、お母様やお祖母様がいるラ・フロールの中央塔の迎賓館。あの部屋に繋げられるんじゃないの?」
「いやぁ、フローレンス君よ、何を言っているのかね」
「何よ、その言い方。理屈に合わないのよ。出る時だけ制限がかかるのは」
フローレンスはノートに、色々な空間に繋がる線を描きながら、そう私に言った。
でも、そう言われてみると確かにそうだ。
どうして、入った場所にしか出られないって思っているのだろう。
あれ?
その理由すら、思い出せない。
「ララ、やってみなさいよ。ここから、カスティリオ王国ラ・フロールの中央塔の迎賓館に繋げてみなさいよ。あの、いつも空間部屋の裂け目を繋げていた、あの場所に」
私はイメージしてみた。
ソファの横に空間を繋ぐ裂け目を作る。
その先は、あの場所だ。
大好きなお母様やお祖母様がいる、あの部屋。
指先でピッと空間に裂け目を引っ張った。
そして、その裂け目を広げて、顔だけ出してみる。
部屋に入った場所にしか繋がらないという制限があるのならば、この先は夜の暗闇に閉ざされたコンティスヨの森のはずだ。
でも、違う。
裂け目を広げただけで分かった。
裂け目から入り込む暖かな光。
その向こうからは、ピアノの音と懐かしい歌声が聴こえた。
「お母様! お祖母様!」
私は裂け目を飛び出して、二人の元に駆け寄った。
ここは、カスティリオ王国ラ・フロールの中央塔の迎賓館。
いつも泊っていた最上階の部屋のリビングルームだ。
カスティリオ王国女王ナタリア・デ・サラゴサ、宰相カタリナ・デ・ラ・クルス。
そこにいるのは、私達の保護者の二人だ。
リビングルームに設置してあるピアノにお祖母様である宰相カタリナが座っており、そのピアノに寄り掛かるようにして、女王ナタリアのお母様が歌っている。
「ララちゃんかえ?」
「あらあら、まあまあ」
女王のお母様の胸に私は飛び込んだ。
すぐに背中から、お祖母様が抱き締めてくれる感触がした。
「ララちゃん、ちょっと大きくなったかえ?」
「そうねえ。子供が大きくなるのは早いわ」
フローレンスが皆に声をかけたのだろう。
後ろから、姉やチャールズ達の声も聞こえた。
「お母様、お祖母様、お久しぶりです。再びお会い出来て嬉しいです」
「うわっ。本当にラ・フロールに繋がっちゃっているよ」
「お母様! お祖母様! ワタシもぎゅーして!」
皆が二人の保護者の周りに集まって来た。
ワチャワチャとしている中、二人が私達一人一人に声をかける。
「食事はすんだのかえ?」
「デザートでも食べましょう。ニコラス、何か美味しいものの準備を」
食事はジョヴィが作っていた最中だったハズだが、宰相のお祖母様が、壁際で控えていた執事のニコラスさんに声をかけた。
ニコラスさんは暖かい目で、見守ってくれていた。
「うん、ニコラスさん、お久しぶり」
「はい。ララ様、お元気そうで何よりです」
「食事は私が作りました! よかったら、お母様とお祖母様も如何ですか?」
「あら、ジョヴィが作ってくれたのかえ。じゃあ頂こうかしらね」
「ニコラス、デザートが用意できたら、裂け目から入って来なされ」
お母様とお祖母様は、空間部屋の裂け目を通って、部屋に入っていった。
そのままダイニングルームに行き、いつも使っていた席に座る。
すぐに私達から色々な話を聞きだした。
聞き上手の二人だ。
食事、デザートとコーヒー、それらを取りながら、別れてからの凡その流れは理解したようだ。
「まずはそうさね。フローレンス、ようやった。素晴らしい働きさね」
「そうね。大きくやれることが増えたわ。私も誇らしいわ」
意外にも全く貢献していないフローレンスが最初に褒められた。
私とマリーが不満をぶつける。
「フロは一番役立っていない。ずっと勉強しているガリ勉さん」
「そうよ! 一日一時間しか走らないのよ! お母様とお祖母様も注意して!」
「あらあら、みんな頑張ったさね。ララちゃんもマリーも頑張ったわ。でも、フローレンスがララちゃんの空間魔法を一段階上げてくれた。これは凄いことさね」
「そうねぇ。戦うだけが仕事じゃないわ。この空間魔法のおかげで、色々なことが出来るようになったわ」
二人に褒められて、フローレンスは得意気である。
「アストリッド、これからは、わらわ達もいつでも共に出来るかえ。其方の負担は大きく減るだろう。これまで頑張ったの」
「そうね。まずはセラ・ダ・ルナからかしらね。ナヴァラトナのサミールにも会いに行かないとね。自由に動けるようになったわ」
「はい。ありがとうございます。ララの転移魔法のおかげで、随分と楽になりました。これまでも相談したいと思ったことが沢山あったのです」
姉が転移魔法と名前を付けた。
確かに知っている場所ならば、何処にでも行ける魔法だ。
転移の魔法と呼んでも良い魔法だと思う。
「お母様、お祖母様、僕とレオンはもう少し森で訓練したいです」
セラ・ダ・ルナにはすぐにでも帰れる。
それこそ明日にでも帰れるのだ。
チャールズとレオンが、森でもう少しやりたいことがあると主張した。
そう言う意味では私も、もう少し薬草を採取したい。
見つけたい薬草があと数種類あるのだ。
女王のお母様は、別に急がないから、構わないと言った。
自分たちだけで、ナヴァラトナのサミールとメーガンちゃんのところに会いに行くから送り迎えだけせよと私に言う。
姉とマリー、ジョヴィとフローレンスも、それに同行するそうだ。
「そう言えば、ユニオン・リパブリックのことを話していなかったかえ」
女王のお母様から、新たな情報を教えてもらった。
カサ・デ・アグアが三十万人の兵士をサンパウリーナ王国に侵攻させた隙をついて、隣国のユニオン・リパブリックがカサ・デ・アグアに侵攻したと言う。
カサ・デ・アグアの現領土は、元々ユニオン・リパブリックの前身の国であるアメリカーナ王国の領土だ。
取り戻すチャンスだと思ったのだろう。
「つまり、戦争状態ということでしょうか?」
「いや、カサ・デ・アグアの選ばれし使徒が一人で撃退したそうさな」
「え?一人で、ですか?」
「そう聞いておる。ただ、流石にマズいと思ったのじゃろう。国王はサンパウリーナ王国に侵攻させた兵士のうち、十万を首都に戻したそうじゃ」
「お母様、お祖母様、そのカサ・デ・アグアの選ばれし使徒って、どんな手で撃退したのかって聞いている?」
「いや、詳しい話は分からんのじゃ。一応、情報を集めるように指示しておる」
一人で軍隊を撃退するって、凄い能力の持ち主なのかな。
敵になるか味方になるか分からないけど、敵国の使徒なのは間違いない。
チャールズとレオンの表情がさらに引き締まったのが分かった。
「ララ! まずはリュミエールのワタシの部屋に繋げて! モジャ君たちを連れて来たいわ!」
「まあ、いいよ。でも、本を汚さないようにしないとだよ」
「分かったわ!」
私はダイニングルームの端っこに、マリーの部屋へと繋がる裂け目を作り出した。
マリーが裂け目から顔を出して、大きな声で叫ぶのが聴こえる。
ワンワンと泣き声も聴こえた。
「マリー、ドッグフードとかも必要ですから、私が取って来るわ」
ジョヴィに言われて、マリーは裂け目を大きく広げた。
ジョヴィが出て行った代わりに、ワンちゃん達が沢山出てきた。
一気に部屋の中が騒がしくなった。
女王のお母様やお祖母様も凄く喜んでいる。
フローリングに座り込んで、犬たちを愛で始めた。
「こりゃ、世界の中心がこの部屋になるのは確定したな。また、リフォームしたらどうだ?」
レオンの発言を聞いて、宰相のお祖母様がリフォームとは何かと聞いてきた。
「お祖母様、この部屋はララが創った空間なので、自由に作り変えられるのです。家具や壁は後から業者を入れる必要があるので、この機会に迎賓館みたいにしてはどうかと」
「そうじゃったな。レオン、良い案じゃ。ララちゃんや、わらわとカタリナで設計しよう。アストリッド、少し手伝え」
「はい、お母様、かしこまりました」
お母様達が手を入れたら、きっと、館みたいになるのだろう。
まあ、好きにしてくれればいい。
どこにでも行けるハブの様な場所なのだ。
きっと、世界の関係者がここに集まるのだと思う。
でも、もう空間部屋とは言えない感じになるのだろうなと私は遠い目をした。




