コンティスヨの森の探検
昨日辿り着いたコンティスヨの森の縁から、私達は探検を始めた。
朝早く出てきたからか、木々の隙間から斜めに日差しが差し込んで、より幻想的な雰囲気だった。
今日はマリーも黒の帽子にマントを着ている。
フローレンスの物を奪ってきていた。
黒髪黒目の小顔と黒のつば広帽子がよく似合う。
本人も気に入っている様で、何度も帽子を被り直していた。
「一度、巨木の上まで上がるよ」
私がそう言うと、すぐに組体操布陣になる。
わずか三秒で、空間ボールは浮かび上がった。
グングンと巨木の横を上がっていく。
「見て! インコちゃん!」
マリーが興奮して指差すところに、沢山のカラフルな小さな鳥が止まっていた。
「マメルリハ(Celestial Parrotlet)だね……。緑が代表色らしいけど、青と黄色も沢山いるね」
「可愛いわ!」
「すごく人に懐くらしいよ」
「え! ほんと! ララ、連れて帰りましょ!」
「そだね……、でも、環境を先に準備してあげないと可哀想だよ。今度、動物さん達が住める森の空間部屋を作るから、そしたら移住させよう」
マリーは目を輝かせて、ウンウン言っている。
やりたい事は沢山出来たけど、女神討伐が先だ。
道は未だ遠い。
森を一望できる高さまで上がって、西北西の方向に空間ボールを回転させた。
所々に高木が飛び出しているのが見える。
「塔は見えないね……」
「うん。とりあえず、方向だけ頼りに進むしかないか」
そうね、と姉が肯定することで方針と方向は決まりだ。
地面に降りてから、私達はいつもの並びで、ゆっくりと走り出した。
※
ジャングルと言っても、ずっと平地な訳ではない。
ちょっとした山や谷もあり、マラニョン川の支流と思われる川が何本も走っていた。
奥に行くほど、独特な木々、昆虫、小動物が多く目に付いた。
途中で何度か森の上まで上がり、高い木々を確認しながら進んだ。
森の中を進んでいるからか、自動機械に襲われる事もなく、三日程、ジャングルをただ走るだけの日を過ごした。
きっと油断していたのだろう。
私も考え事をしながら走っていたのだと思う。
何にも警戒していなかったし、何も見てもいなかった。
三日というのは、張り詰めた緊張を解くには充分な期間だ。
ドン!
大きな音と共に、私の前を走る二人が吹き飛んだ。
横から、物凄く大きな何かがイキナリ現れて、そして、通り過ぎた。
「敵襲!」
背後からチャールズの声がすると同時に、私の左手の方向に走っていった。
姉が続き、私も追う。
少し先に吹き飛ばされたレオンが見えた。
木に身体を激しくぶつけたのだろう。
レオンは普通に起き上がっているが、木は真っ二つに折れて、向こう側に倒れていた。
「マリーが捕まった!」
レオンから言われた事で、チャールズが何を追って走って行ったのか、私もようやく気づいた。
先頭を走っていたのはレオンで、私の前はマリーがいたはずだ。
それがどこにも見当たらない。
チャールズが走って行った跡をレオンもた追う。
私と姉も続いた。
二人の後を走る事で、私にも分かった。
地面に何かが這った跡があることを。
二人がイキナリ消えた時の事を思い出す。
何かが通り過ぎた。
そいつが這った跡なのだろう。
少し行った先で、チャールズが戦っていた。
巨大な蛇だ。
あれは、オオアナコンダ(Green Anaconda)だ。
この世界最大級のヘビで、体長百フィート、約十五メートルはあるバケモノ。
大型の動物すらも一飲みで食うヤバいやつだ。
「レオン! 尻尾を! 腹にマリーがいる! 腹は刺すな!」
自分よりも大きな蛇の口を相手に戦っているチャールズがレオンに叫んだ。
オオアナコンダは片目をチャールズに刺されたのか、ボタボタ血を流していた。
レオンが振り回される蛇の尻尾をガシッと身体全体で受け止めた。
その後、片手でホールドしながら、剣を差し込む。
多分、凄い力で逃げ回ろうとしているのだけど、レオンの方がパワーは上だ。
レオンは差し込んだ剣を横に滑らせて、尻尾を両断した。
オオアナコンダは標的をチャールズからレオンに変えて、牙を剥き出しにして大きな口を向けた。
チャールズが背中に飛び乗り、頭に向けて走り跳躍する。
ズンっと、頭の真上から剣を突き刺して、オオアナコンダの脳を切り裂いた。
そのまま落下する頭から飛び降りて、地面に着地する。
「ララ、収納魔法でマリーを取り出して」
「う、うん。わかった」
オオアナコンダの体内に魔力を浸透させる。
喉なのか胃なのか判別はつかないけど、マリーはすぐに見つかった。
両腕を胸の前に交差させて祈る様にジッとしている。
一度、収納してから、目の前の地面に横たえた。
「マリー!」
胃液が唾液が分からないけど、ベトベトしているみたいだったので、マリーを纏う結界を一度解除して再生成する。
マリーは目をパチクリさせた後、大笑いして立ち上がった。
「食べられたわ! スゴイ体験よ! 丸呑みされたのよ!」
心配する私達をよそに、マリーは食べられ体験を楽しそうに語った。
「懐中電灯を持ってなかったのが大失敗よ!」
そう言いながら、リュックからノートを取り出して、オオアナコンダをスケッチし始めた。
流石の姉も苦笑を浮かべている。
チャールズとレオンは、そんなマリーを見て笑い合い、互いの肩を叩いて健闘を称えていた。
※
それから三週間ほどのジャングル探検で、ヤバそうな獣に何度か出くわせた。
オオアナコンダの群れを見つけた時には、流石に見つからない様に回避した。
でも、ブラックカイマン(Black Caiman)というマラニョン川に生息する最大の捕食者の一つで、大型のワニの群れと大戦闘になってしまったこともあった。
ヤバかったのは、沼地に足を踏み入れた際に、沼から湧き出てきたヤクママ(Yacumama)という魔獣だ。
オオアナコンダを三回りほど大きくして、ワニの様な手足を付けた蛇。
トカゲに近いのかも知れない。
コイツの何がヤバかったかと言うと、剣もボウガンも刺さらないのだ。
完全なる物理防御。
レオン曰く、「触った感触は鉄」だそうである。
私の指弾の空間断裂すらも弾いていたので、魔法防御も持っているのかも知れない。
私達は全力で逃げた。
最後はマリーが時間停止魔法を使って、チャールズとレオンを引き摺って、ヤクママから逃がしてくれたのだ。
沼から離れたくないのか、一定の距離を開けると追って来ないので、それが唯一の救いだったと思う。
コンティスヨの森、ヤバしである。
※
自動機械が配置されていると思われる塔は、コンティスヨの森に入った三週間後に見つかった。
視界が開けた沼地。
ヘドロの様な沼だ。
でも、完全に視界が開けている訳ではない。
所々に沼地から高木が生えている。
その高い木々と同じ様な色合いで、沼地の中央に、細長い塔が屹立していた。
教会や城の様に見晴台も設置されていないのだろう。
塔には窓一つ付いていない。
黒い金属で真っ直ぐに伸びた塔。
その硬そうな鋼の塔を蔦が覆っていた。
「この沼は、ダメなヤツだよね」
チャールズの呟きに返答はない。
声も出さず、誰もが小さく頷いていた。
沼の中に魔力を通すと、やはりアイツらが泳いでいた。
「ララちゃん、飛ぶ?」
「うん……、そうだね……。レオン、塔の下に入り口は見える?」
レオンは魔力を目に集めて、視力強化した。
目を細めて、塔をジッと見ている。
「いや……、それらしいものは見当たらないな。塔の真ん中に大きな魔石が埋め込まれている。あれが何かの仕掛けかもしれないが……」
チャールズが魔石の具体的な場所を教えてもらっているが、私達からは遠すぎ、暗すぎで見えない。
それでも、塔が沼の中央にあるのは分かる。
グルッと回っても橋などかかっていないだろう。
「飛ぼう。塔の高さで飛ぶ。塔の先端に着いたら、魔力を浸透させて、自動機械を取り除けばいい。別に中に入らなくても、あの細さなら出来ると思う」
了解という声と共に、皆が私の周りに集まってきた。
右手をマリーが、左手を姉が握る。
私は空間ボールで囲って、宙に浮かせた。
空間ボールを前方斜め上に向けて、飛ばす。
スッとボールが動き出した。
沼地の上に差し掛かったところで、塔の真ん中の高さから、眩い光が生じた。
スポットライトの様に空間ボールが照らし出される。
「ララ! 撤退!」
姉の声で慌てて空間ボールを後方斜め下に加速させる。
慌てた所為か、ボールが傾いた。
イヤっと、右隣から声が上がる。
後ろから、私の身体を支える手が伸びた。
ヤバっ。
パリン!
硬質な音と共に空間ボールが割れて、沼地に落下した。
ぬるい。
ベトベトする。
手足に絡みつく様なヘドロの感触を感じた。
暑い。物凄い湿度だ。
私の腕が凄い力で持ち上げられて、沼地の外に引き上げられた。
投げ出させる様に、地面に転がる。
カン!
キン!
沼地から顔を出したデカいトカゲをレオンとチャールズが剣で牽制していた。
「ララ! 空間部屋! 撤退!」
姉の声に反応して、私は仲間達を魔力で包み、空間部屋に転移した。
「うぇっ! ちょっと! どうしたの! ジョヴィ、こっち来て!」
空間部屋のダイニングルームにいきなり現れた私達を見て、フローレンスが大声を上げた。
パタパタとジョヴィが駆け寄ってくる。
私は右半身がベチョベチョだ。
横を見るとマリーは全身がヘドロまみれになっていた。
空間ボールは右側に傾いていた。
右側を下に沼地に落ちたのだろう。
そっち側にいたマリーは酷い有様だ。
姉、チャールズ、レオンは下半身だけがひどく汚れている。
「ごめん、マリー、大丈夫?」
「平気よ! ぺっ……、うえ」
全然平気そうじゃない感じで声が上がった。
顔をジョヴィが布で拭いてあげていた。
口の中にヘドロが入ったのだろう。
一生懸命に吐き出している。
ジョディと姉に抱えられる様に風呂場へと連れて行かれた。
「ブーツと靴下とズボンはここで脱げ!」
背後にフローレンスが男の子二人に指示している声が聞こえた。
※
お風呂から上がった後、私とマリーは部屋着でリビングのソファで休ませてもらった。
ジョヴィは、私達三人の服とワークブーツをゴシゴシ洗った後、男子達の風呂場に向かった。
おそらく、彼らの分も洗ってあげてくれているのだろう。
その分、姉がキッチンでご飯の準備を引き受けていた。
フローレンスは、当然、私達と一緒だ。
「塔の光魔石って、何個あったの?」
「うーむ。ララにはわからぬ」
マリーが沼地と塔の絵を上手に描いて、フローレンスに説明してくれていた。
あのスポットライト魔石は、その絵によると八方向に描かれている。
「多分、八個よ! 私達を照らしていたのは一つ! でも、他にも二つ光ってるのが見えたわ!」
「わざわざ、私達様に作ったのかしら。でも、蔦がビッシリ巻き付いているものね。古くからある塔なのに……」
「あの沼地にどうやって建てたんだろ?」
「そうよね。それも含めると、かなり前に塔は建てられており、後から沼地が出来た。光魔石は、たまたまか、調整し直した。これが一番考えられるわね」
「うぬー」
「また絶界で対応するしかないんじゃないかな」
「フロ、絶界にしたら、ララも見えなくなる。空間ボールを飛ばせない」
「そうよね……」
「他に入口があるのよ! 絶対そうよ!」
マリーが拳を握りしめて力説している。
そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
塔は相当細長かった。
キモ男たちの拠点にしては、小さすぎる。
「魔石って、どれくらいの大きさだった? うちのエネルギー鉱石くらい?」
「うーん、レオン君に聞いた方が良いかも! 私じゃよく見えなかったわ!」
「ん? 俺か? どした?」
ちょうどレオンが男子エリアから、やってきたみたいだ。
自分の名前が会話に出てたのが聞こえたのだろう。
レオンから声をかけてくれていた。
マリーが私の代わりに説明してくれている。
「大きさな……。少なくとも、この部屋に置いてあるエネルギー鉱石ほど大きくないな。浴槽の魔道具の魔石くらいだと思うぞ」
「なるほど。じゃ、割るか」
「割るって……、あ、ララちゃん、あれか!」
チャールズは気づいたみたいだ。
私はニコッと笑みで返した。
※
「さあ、アス姉、練習の成果を活かす時が来たのだ」
私はアス姉に空間収納にしまっておいたライフル銃を渡した。
暗殺の使徒が使っていたマクミランTAC-50だ。
暇を見つけて、道中に姉に練習させていたのだ。
姉ならば十分、止まった魔石くらいは破壊できるはず。
「はぁ。プレッシャーが重いわ」
「大丈夫ですよ。ちゃんと当たりますよ。気軽に行こう」
レオンがアス姉に優し気に声をかける。
姉は溜息をつきつつも、沼地の手前の地面に腹ばいになった。
一番狙撃の成功率が高いのが腹ばいでの姿勢らしい。
スコープを調整しつつ、姉が狙いを定める。
「まずは正面の光魔石。ズドンってやってしまって」
サプレッサーを装着していないマクミランは、小気味よい音を出して射出した。
ターン!
発射音が森に鳴り響いた。
チャールズが念のために剣を抜いて、周囲を警戒する。
レオンは目を細めて着眼点を確認していた。
「凄いですよ。アス姉。当たってます。魔石の端に当たっているので、七インチ程右を狙いましょう」
姉はスコープを調整してから、二射目を放った。
ターン!
「よしっ!」
レオンの声で光魔石が割れたのが伺えた。
姉も大きく息を吐きだしている。
「アス姉、左右の魔石も狙える? 狙えるようならば破壊しておきたい」
「やってみるわ」
マリー曰く、昨日私達を照射したのは正面の魔石だけだったらしい。
左右の魔石は光っているのが分かったが、そのスポットライトは私達を照らしていなかったと。
ということは、照射角度に限界があると思うのだ。
強いスポットライトを当てるには、照準を絞る必要がある。
塔の表面にグルっと配置された八つの魔石は、その八つで三百六十度をカバーしているのだと思う。
念のために、左右の二つを壊しておけば、安心だろう。
その後、合計四発の狙撃で左右の光魔石も姉は破壊した。
立ち上がって、服に着いた土をパンパンと払っている。
レオンは姉からライフル銃を受け取り、私に差し出してきた。
姉がマリーとハイタッチを交わす。
「アス姉、ありがとう。じゃあ、みんな行こうかね」
アス姉は綺麗な笑顔で頷いた。
皆が組体操フォーメーションになったところで、私は空間ボールを生成して、塔の先端に向けて飛ばした。
「うん。スポットライトはあたらない」
「そうね。飛行の自動機械の音もしないわ」
「このまま行っちゃおう」
空間ボールは斜め上に向かって進んでいく。
ドンドン高度が上がっていき、沼地が遥か下に見える。
暗いコンティスヨの森も、ここまで上空に上がると強い太陽が感じられる。
塔の先端に近づき、空間ボールを止めた。
私は魔力を広げ、細長い塔の上部を囲う。
中に魔力を浸透させるべく、集中して魔力を操作した。
「ん……。あれ?」
目を瞑って意識を集中させる。
塔は感じられる。
でも、魔力が中に浸透しない。
「ララちゃん、どうした?」
「うん、チャック、これ、魔法防御だと思う」
「塔の素材が?」
「そう。魔力が浸透しない。だから塔の中身が全く分からない」
「ララ、空間結界も作れない? 塔の上を結界で切断するとか?」
「うん、難しいみたい……」
「ララ! 中に入るのよ! 降りて入口を探しましょう!」
マリーの提案通りが良いだろう。
私は空間ボールを塔に沿って、下に下ろした。
塔の真下にはわずかばかりの地面がある。
沼地に触れぬように慎重に下ろした。
「ちょっと、僕が見て来るね。みんなは動かないように」
チャールズが加速しながら、塔を一周するべく走っていった。
この細長い塔は、先端部だけでなく、地上部も細い。
直径すら三十フィート程度だろう。
チャールズなら秒で帰って来ると思う。
「うーん……。何もないね。入口も仕掛けらしいものも何もないよ」
「まさか、沼地の中に入口があるとか……」
「うん、ちょっと調べてみよう」
私は沼の中に魔力を浸透させる。
奥に深く。
塔の周りの地面の境に沿って、入念に調べた。
沼地はあのヤクママ達が自由に泳げ廻れるほどの深さがある。
塔の地面も同じような深さで沈んでいた。
「うん。分かった。沼地の下は広く鋼鉄で出来た何かが広がっている。この塔と同じ素材だ」
姉が小首を傾げて聞いてきた。
少し言い方がフワッとし過ぎたか。
「ララ、どういうこと?」
「つまり、ここではない、どこかに入口があり、地下施設になっているってことだよ。その地下から塔に登れるようになっているのだと思う」
今度はチャールズから質問が上がる。
「ララちゃん、沼の中に入口みたいのはないんだよね?」
「多分、ない。この地面と沼地の境も確認したけど、沼の底の鉄に触れるまで何も無かった」
「ララ! つまりはどういうことよ?」
「マリー、結論だけ言うと、沼地の周りを探索するってことだね。地下施設がどれくらいの広さか分からないけど」
もう一度、空間ボールで向こう岸まで戻った。
そこで再度同じように地面の中に魔力を広げて調べる。
「やっぱ、すごい下の方に鋼鉄で出来た建物があるよ。こうやって調べていけば施設の大きさも分かる」
塔から反対の方角の方向に向けて私達は歩いた。
しばらく歩いて、また地下の状況を探る。
地下施設は相当な大きさの物だと言うことが分かった。
地下施設の切れ目までたどり着いたところで、今度は塔の周囲を回るように探っていく。
おそらく、どこかに入口があるはずだ。
しばらく歩いている時に、レオンが少し先に開けた場所があるのを見つけた。
「高い木が生えていない草っぱらがある。あの辺じゃないか?」
「そうだね。地面が深くないから高い木が育たないんだよ。根っこが伸びないからね。きっとあの辺だ」
チャールズがそう言って、駆け足で向かっていった。
レオンがそれに続いて、開けた草原に走る。
私も魔力を薄く広げながら草原に向けて歩いた。
確かに、草原の下の地面は浅い。
直ぐ下に地下施設の鋼鉄があるようだった。
「これだよ! 地下に繋がる扉がある!」
チャールズが手を振って叫んでいるところまで、皆で走った。
草原に金属の取っ手が飛び出ており、それが扉になっているようだった。
私達が集まるのを待って、チャールズが取っ手を引っ張った。
「いや……、これ、重いよ……」
「チャック、俺も手伝おう」
レオンも取っ手に手をかけた。
レオンが引っ張ることで、扉が徐々に空いていく。
地面の中から明るい光が広がった。
ドン!
扉を引き上げて、反対側に倒した。
扉を開けると地下に続く階段が現れた。
全員が横並びで歩ける程の大きな幅。
三階分は下るだろうと思える長い階段。
階段を下った先は、明るく照らされていた。
「この下って、光魔石がある通路なんじゃね?」
チャールズが軽い感じで言った事に、マリーが反応した。
「危険よ! 危ないわ!」
「俺が行こう。鎧結界が割れても、俺ならば耐えられる。様子を見て、戻って来る」
「僕も行くよ。走って逃げるから大丈夫」
男子二人がそう言って階段を下って行った。
相当急な階段なのだろう。
二人の下り方を見るとそう思えた。
階段を下りたところで、二人が奥の様子をジッと見ていた。
特に危険な物はないのだろう。
慌てることなく、二人で奥を眺めている姿が見えた。
しばらくすると、二人で階段を走って登って来始めた。
猛ダッシュで走ってきている。
「ララちゃん! 飛行自動機械が出て来るよ! 結界準備しておいて!」
走りながら叫ぶチャールズの声が聞こえる。
良く見ると、二人の背後から何台かの飛行の自動機械が追ってきているのが分かった。
カンカンと機関銃が結界に弾かれている音がする。
小さめの空間ボールを何個か浮かべて、チャールズとレオンの頭上を通るように落下させる。
二人が地上に上がって来たタイミングで、階段を塞ぐ結界を張った。
カンカンと音が鳴っているが、奴らが外に出て来ることはない。
猛ダッシュで駆けあがってきた二人が、ハァハァと息を整えていた。
「一番下まで降りると、同じくらいの幅と高さの廊下が奥に続いている。ただ、左右に光魔石が埋め込まれていて、歩いたら結界が割られそうだ」
「そんで、奥の方にはコイツ等が待ち受けてやがる」
二人が少し息を切らせながら説明してくれた。
「廊下の奥には扉があるの?」
「曲がり角だと思う。扉は見えなかった」
「行き止まりってことは?」
「わかんない……、ないとは言い切れない」
「でも行くしかないね。銃を三丁使おう。チャックとレオンも持って」
私はアス姉にライフル、レオンに機関銃、チャックにリボルバーを渡した。
三台で割るしかないだろう。
あとは、念のために飛行の自動機械を奥の方に押し込めておこう。
「結界で自動機械を奥の方に押し込める。アス姉は遠目の光魔石を。それ以外は近い方から割って行こう。行くよ」
入口を蓋していた結界を少し小さくして、階段がある通路と同じくらいのサイズにした。
そのまま先行して下に下ろしていく。
私も結界に続いて、階段に足を降ろした。




