敵はジャングルにあり
「セラ・ダ・ルナのキモ男はどうするの?」
皆がテーブルに寄りそうように話している最中、私は考えていたことを、つい口にしてしまった。
海軍のマテウス司令官がキョトンとした顔で私に問うた。
「ララ様、キモ男……とは?」
「はは。すまぬ。司令官の方々、我が国の女王陛下と宰相閣下が言った悪口を末娘が覚えてしまったのだ。キモ男とは、ガブリエル・サントス参謀のことだ」
中将のオジちゃんが、わざわざ補足していたけど、分かっていないのは海軍の司令官さんだけだったよ。
他の人たちは皆、理解しているようだった。
司令官以外の隊長さん達も笑いを堪えるようにしているから。
「なるほど……。いや、今後は『キモ男』で良いです。我らもそう言います」
日焼けしたダンディな司令官からも公認してもらえた。
ここまで言われるってことは、本当に相当気持ち悪い男なのだろう。
女王のお母様は、キモ男の話をするときには、肩を抱き締めてブルっと震えていたし。
そこまでして嫌われるキャラなら、一度見てみたいと思う。
「放っておきましょう。まずは防壁を構築することが優先です。何か言ってきたら、私どもで相手しますので、お気遣いなく」
「うん。分かった。機会があればララも会って見たいけど、壁を建てたら、ララ達は西側のケアを担当することになると思うしね。戦争は任せた」
ララの発言の意図を、私の仲間たちは直ぐに察したみたいだった。
皆、嫌そうな顔で首を振っている。
フローレンスが小声でマリーに、「空間部屋に閉じ籠れば良いのよ」って悪いことを教えていた。
「ララ、カスティリオ王国軍の兵士を支援に付けよう」
「ううん。中将のオジちゃん、ジャングルに入ることになったらララ達だけで行くよ。兵士さん達は西部と南部の間の壁を建ててもらった方が良いと思う。それは、この先のことを考えてのことだけど」
「ララ様、西部からカサ・デ・アグアが侵攻してくるとお考えでしょうか?」
「ペレイラ司令官、カサ・デ・アグアの兵士というよりも、伝説の魔獣が人里に下りて来ることを警戒しているの。偽女神が何か仕出かすとしたら、間違いなくそれだと思うから」
「いやいや、そんなことは……」
「コンティスヨの森の魔獣が外に出て来ることは、そこまで多くはありません。環境が異なりますからな」
司令官たちから反対意見があがる。
だが、中将のオジちゃんや、姉とチャールズが、カスティリオ王国の北の森の出来事を話すことで、徐々にだが、一定の理解は得られた様だ。
それと同時に皆の顔が歪んでいく。
おそらく、今回は戦争編じゃないだろう。
魔獣討伐編、もしくはジャングル踏破編だと思うのだ。
「あ、最後にもう一つだけ。サンパウリーナ王国に敵になりそうな使徒はいる? 偽女神からヤバイ神託を受けている可能性を検討しておきたい」
私がそう聞くと、司令官たちの三人は互いの目を合わせた。
誰が話すべきかと目線で語り合っている。
何かあるのか。しかも、あまり良い話ではないのは、様子を見て感じ取れた。
「えっと……」
口火を切ったのは、ペレイラ司令官だ。
他の二人の顔を見ながら、私の問いに答えた。
「その……。先ほどの話に繋がってしまう結論になってしまうのですが……。いるのです。二人、軍に使徒がいます」
アントニオ・デ・ソウザ (Antonio de Souza)。
カミラ・デ・ソウザ (Camila de Souza)。
ペレイラ司令官の話によると、二十代後半の兄と、二十代前半の妹の兄妹使徒がいるそうだ。
そして、彼らは変わった経歴を持っている。
コンティスヨの森、北西にあるジャングルに降下して、そこに棲む辺境の民族に育てられたと言う。
成人してから、首都ポルト・ド・ソルに出てきて、軍に入隊した。
「理解した。司令官のオジちゃん達が言いにくそうにしていたのも分かった。女神がジャングルで悪さしようとするのなら、それに適任の、ジャングルに詳しい使徒がいるってことだね?」
私の問いの答えは、苦々しい表情を浮かべた三人の顔を見れば分かった。
中将のオジちゃんが、私の後に質問を重ねた。
「すぐにこちらで抑えた方が良いだろう。どの軍に所属しているのだ。セラ・ダ・ルナの軍か?」
「いや……、その……、参謀の護衛隊です……」
あぁ、と仲間たちから溜息が漏れた。
なるほど。
彼らを抑えたのは、女神の指示か、はたまた偶然か。
いずれにしても、これは明らかに敵側の使徒だと判断して良いのだろう。
「まあよい。セラ・ダ・ルナに行って、参謀を捕らえるついでに何とかしよう。まずは壁の対処が先だ。セラ・ダ・ルナにいる限りは何も出来ないだろう」
中将のオジちゃんが、そう言ったことで、全員の気持ちが防衛線の敷設に戻った。
※
正確な距離と材料計算、壁の製作手順と必要な日数がクリアになったので、作戦は非常にシンプルかつ分かりやすくなった。
カスティリオ王国軍、サンパウリーナ王国軍と兵士の数は潤沢だ。
それぞれ、自分が敷設する壁の材料を持って、私が作った専用の空間部屋に籠る。
製作日数は分かっているので、食糧などの準備もしやすい。
私は各地で壁を設置する溝を掘った後、その場所に部隊単位で空間部屋から出して、設置を任せる。
私達は足を止めることなく、ひたすらに東に向けて溝を掘り進めるだけの旅路である。
兵士達からしても、いたずらに長く隔離される訳ではない。
空間部屋で壁を作り終ったタイミングで、適切な場所に呼び出されて設置作業に赴くだけである。
エドゥアルド近衛隊長は、海軍のマテウス司令官を伴って、南の島のサン・ミラージュに向かってもらった。
そこにはマリーパパが率いるサンテール王国軍とヴァルデン共和国軍が来ている筈だ。
彼らを首都ポルト・ド・ソルに招き入れる方が良いだろう。
その辺の調整と協議をお願いした。
私達に同行するのは、中将のオジちゃんとペレイラ司令官だ。
二人とも壁設置の軍の責任者である。
兵隊さん達は壁製作専用の空間部屋で働いてもらっているが、彼ら二人は私の空間部屋での移動となる。
私達はソル大河を高速船で上った。
マラニョン川、ソリモンイス川の合流地点まで、高速船ならすぐだ。
ソル大河は緩やかに流れる大きな幅を持つ大河だ。
首都ポルト・ド・ソルを出ると、統一街道沿いに壮大な大河が流れている。
統一街道ならびにソル大河の周囲は既に森だ。
統一街道より南は豊かな畑だと聞いていたけど、実際はもう少し南に下らないと農地にはならないらしい。
森に囲まれた大河だからだろうか。
川の水も深い緑色をしているように見えた。
「凄い緑が濃いね」
この国の森は、これまで見たどの国の森とも少し違う気がする。
色も濃いし、あまり見たことのない木々だと思った。
「はい。ララ様。おっしゃる通りです。この統一街道付近はまだしも、北西のコンティスヨの森に入るとさらに色合い深くなります」
「もう森の中だと思うけど、コンティスヨの森って、こことは違いがあるの? 区別付くくらい?」
私は高速船の屋根部分作られた開放的なデッキスペースの上で、周囲の風景を眺めていた。
海風や太陽を直接感じられて気持ちが良い。
フローレンス以外は空間部屋から出てきて、同じようにデッキスペースで楽しんでいる。
マリーなんて、デッキチェアで日焼けしているくらいだ。
私は姉と一緒に、この国の森について、ペレイラ司令官から教えてもらっていた。
「まず、ご質問の返答ですがイエスです。そこが他の森と全く異なることは、森に入れば分かります。コンティスヨの森は危険な魔獣も多く、調査は進んでおりません。未だ謎に包まれた人類未踏の地であります。それでも、分かっていることがあります」
ペレイラ司令官曰く、コンティスヨの森の縁に住む民族、例の兄妹使徒が育てられたところだが、その民族の案内で、国はコンティスヨの森の調査活動を進めているそうだ。
冒険者の中には、コンティスヨの森専用の案内人もいるくらいだと言う。
長い年月を重ねることで、多少なりとも分かって来たこともあると言っていた。
「多くの種類の樹木がコンティスヨの森には生息していますが、その約半数をわずか二百種類の『超優占種』が占めているのが特徴です」
「『超優占種』って何ですか?」
姉がペレイラ司令官に質問しているが、これは私の方が良く知っている概念だろう。
植物学では非常に人気のジャンルなのだ。
「アス姉、『超優占種』ってね、ある生態系において圧倒的に数が多い特定の生物種のことを指すんだ。凄く面白いよね。要はあのジャングルは、他にはない少数の樹木が支配しているってことだね」
「はい。ララ様の仰る通りです。わずか1%の種類の樹木が半分を占めているくらいですから」
「隔絶した環境だからから……かしら?」
「うん。それもあるだろうね。でも、きっと特定の環境に適応する能力が高いんだよ。コンティスヨの森って、高温多湿でカビや害虫が非常に多い環境って言っていたよね。それに対する抵抗力を持っていたんだろうね。つまり、コンティスヨの森のスペシャリストってことだ」
ペレイラ司令官曰く、持ち帰れば高額で売れる木も多いそうだ。
一番有名なのは、マホガニー(Mogno)だろう。
世界最高級の家具材として知られる木で、美しい赤褐色と高い耐久性を持つ。
これはコンティスヨの森の周辺にあるので、比較的手に入りやすい。
滅多にお目にかかれないのは、コンティスヨの女王と呼ばれるサマウマ (Samaúma)。
幹の根元が巨大な板根になる特大の樹木だ。
現地の民族からは神樹として崇められているそうだ。
他にもアンヘリム・ヴェルメホ(Dinizia excelsa)と呼ばれる三十フィートを超える高木や、ピンクトランペット(Ipê Roxo)と呼ばれる、春になると鮮やかなピンク色の花を咲かせる、非常に硬く耐久性のある木材も有名だと言う。
「ララ様のために、ポルト・ド・ソルで本をプレゼントするべきでした。コンティスヨの森の植物や環境、動物や魔獣に関して書かれた本が軍にあるのです」
「うぇ。それは見たかったな……。セラ・ダ・ルナには無いのかな?」
「ああ、そうですな。コンティスヨの森はセラ・ダ・ルナの第四軍の担当範囲ですからな。きっとあるでしょう。私が取り寄せましょう」
「うん。あの森に入るとしても、先に壁を敷いてからだろうしね。きっとセラ・ダ・ルナに立ち寄ることはあるよ。キモ男が邪魔しなければ、だけどね」
「やはり……、入られるのですかな?」
ペレイラ司令官の質問を私は返答せずに、姉の方を見た。
姉の直感がどう言っているのかを知りたかったこともある。
「はい……。ララの言う通り、おそらく決戦はコンティスヨの森で行われる様な気がするのです……」
「アス姉が言っているのならば間違いないね。ペレイラ司令官、ララ達は多分、戦争の手伝いが今回は出来ない。だから、そこは頑張って持ちこたえてね」
「はい。強固な壁を敷設していただけるのであれば、間違いなく勝てるでしょう。北部を譲り渡したところで、多くの人が住める地区はほぼ無いのです。食料を得ることも困難でしょうから、時間をかければかけるほど、我が方が有利です」
ソル大河は統一街道から離れて北上していった。
統一街道は東へと山間を進んでいくが、ソル大河は北西のコンティスヨの森の方に向かう。
もう少しすると、コンティスヨの森を走るマラニョン川と、北部から流れて来るソリモンイス川が合流する地点に着く筈だ。
そこが壁の開始地点となる。
※
大きな大きな川幅を持つソル大河の東側の岸に高速船を寄せて降りた。
少し先では、二つの川が合流している景色が見られる。
ここから見て西側、マラニョン川の奥はコンティスヨの森だ。
遠目から見るだけで、森の深さの違いが確かに分かった。
木々は高く、緑は深く、少し霞みがかった感じもした。
「さて、ララちゃん、まずは高速船を収納しちゃって。ジョディも空間部屋に行った方が良いよ。ここからは、ただひたすら走り続けるだけになるから」
チャールズが言う通り、高速船を収納魔法でしまった。
手を振るジョディもフローレンスが待つ空間部屋へと送り届ける。
ここにいるのは、私、アス姉、チャールズ、レオン、マリー、中将のオジちゃんにペレイラ司令官だ。
この七人で東にまっすぐと道なき道を走り続けることになるのだ。
「チャック、東側は森だけどどうするの?」
「うん……。壁の周囲二十フィートくらいは除去しておこうか。壁の敷設にも邪魔になるだろうしね」
「了解。じゃあ、ソル大河ギリギリのところから始めるよ」
チャールズが地図を見ながら、少し北の方に向かって歩いた。
しばらくするとコンパスを片手に、長い木の棒を地面に置いた。
あの方向に向かって溝を掘れということなのだろう。
私は指示通りの幅、深さで真っすぐ地面を掘り起こした。
周囲の木々も除去しておく。
木は後に肥料となる。
土は壁を敷設した後、固めるのに必要だろうから、近くにドンと山にして積み上げておいた。
「こんな感じ?」
一番最初なので、私は皆に確認を入れた。
これでオッケーなら、後は走りながらでも出来ると思う。
オジちゃん達とチャールズで大きさを測りながら、確認し始めた。
「敵襲! ララ! 結界!」
姉から唐突に声が上がった。
私は何も考えずに反射的に仲間全員を結界で囲う。
全員が剣を抜いて、周囲に視線を巡らせた。
キョロキョロと見回すが特に何もない。
姉の勘違いかと思った瞬間に、結界がカンカンと音を立て始めた。
「いやー! アイツよ! あの飛ぶヤツよ!」
マリーが私にしがみついてきた。
サンテール王国のマリーの部屋を襲撃した時のことを思い出したのだろう。
四つ足に扇風機を付けた自動機械。
機関銃をぶっ放してくる自動機械だ
「ヤツか! 飛行の自動機械か!」
中将のオジちゃんも叫んだ。
ペレイラ司令官は初めて見るのだろう。
驚愕の表情を浮かべていた。
数台の自動機械が結界に向けて、元気いっぱいにカンカンと鉄の石をぶつけている。
「アス姉、良く気付いたね」
「うん。あの嫌な音がしたのよ……」
「うーん。どうして、ここにいるんだろう……」
「チャック、どういう意味だ?」
「はい。オスカー中将。このタイプは、大型の通信の自動機械の近くでないと活動出来ないはずなのです。カスティリオ王国のカリブリ市でも旗艦が出航して離れたら撤退しましたから」
「ああ。カリーム・アーバでも通信の自動機械を除去したら格納庫に戻ったな……。つまり……、どういうことだ?」
「海はないから旗艦船ではないでしょう。ポルト・ド・ソルの自動機械は除去しました。つまり……、大型の自動機械を馬車に乗せて、統一街道を走っているとかですかね?」
「チャック、近くの町に大型の自動機械がないとも限らない」
「うん……、まあ、ララちゃんの言う通りだね」
「こいつらを連れて、動いてみれば良いのではないか?」
レオンが案を出したが、イマイチ意味が理解しかねた。
私が首をかしげていると、早々に理解したチャールズが補足してくれた。
「うん。レオン、良い案だ。こいつらは距離に限界がある。ある程度離れたら撤退するはずだ。つまり、離れた方向の反対側に通信の自動機械があるということだね」
「なるほど。まずは統一街道を離れて北に向かってみようか。馬車に積んでいるとしたらきっと統一街道だろうから」
「いや、ララ、東に向かいましょう」
「ん? アス姉? どして東?」
「わたし……、あっちに大型の通信の自動機械がある気がするのよ……」
姉が指さした方向を全員が見た。
コンティスヨの森。
西に向かって、姉は指さしていた。
「うぇ……。それ、最悪のケースじゃん……」
「これでジャングルに入るのは確定したな」
私達がボソボソと呟いていると、中将のオジちゃんがそれを制した。
「待て待て、まだ確定しておらんだろう。アストリッドの直感に過ぎない」
いや、こう言った時の姉のカンは当たるのですよ。
もう私も姉と同じことを考えている。
きっとコンティスヨの森だ。
あそこには何かがある。
森に入る理由が増えた。
いや、これで確定したのだ。
「空間ボール、転がすよ。オジちゃん達も頑張ってハムスター移動してね」
「ん?」
「は?」
説明はチャールズとレオンに任せて、皆を包む空間ボールを生成した。
分かりやすくするために、少しだけ曇りガラスにする。
私の背後にしがみついているマリーごと、姉が包み込んだ。
「じゃあ行くよ!」
レオンとチャールズが前方で押す役で、オジちゃん達は戸惑いながらも左右に立った。
私は空間ボールを浮かべて、掘り起こした溝の中に空間ボールを沈めた。
若い二人の力で空間ボールが転がり始めた。
飛行の自動機械の攻撃が空間ボールにカンカンと当たる。
マリーが抱き締める力が強くなった。
私が彫り進めた溝の中を空間ボールが真っすぐコロコロと転がっていった。
「あ、戻っていくわ。レオン、チャールズ、止めて。アイツら撤退して行ったわ」
少しだけ、本当に数十フィート転がしたところで、姉から声が上がった。
私は空間ボールを宙に浮かせて動きを止めた。
後ろを振り向くと自動機械が飛んでいくのが見える。
西、いや西北西の方向だろうか。
「つまり……、あっちに通信の自動機械があるってことだよね?」
「そう言うことになるね……」
「コンティスヨの森の中に配置されているってことか……」
皆が飛んでいく自動機械の様子を見ながらつぶやいた。
これで確定だ。
私達は、ジャングルに入る必要がある。
空間ボールを地面に下ろし、この位置からソル大河まで真っすぐに四角い結界を張った。
ここからソル大河までは、自動機械の活動範囲だ。
兵士達が壁を敷く間、守ってあげる必要がある。
壁敷設の最初の部隊を空間部屋から呼び出した。
皆が空間部屋で製作した壁の部材を運び出して出て来る。
少し狭いけど、結界の中で組み立て作業が始まった。
「すごいわ! 思っていたよりも壁が大きいのね!」
マリーがドンドン組みあがっていく壁を見ながら言った。
高さもそうだが、壁の上で兵士が戦えるように、厚みもある。
北側の方が壁が高く、南側の方には階段のような部分も作られるようだ。
結界の中で、組みあがっていく壁を私達はただ眺めた。
「通信の自動機械だから、地面の近くに設置していないと思うんだよね……」
「ん? チャック? どういうこと?」
「電波を使った通信じゃん? つまり、高いところから飛ばす必要があると思うんだ」
「うん。これまでも教会や城の尖塔の上だったもんね」
「だから、コンティスヨの森に塔があり、そこに自動機械が配置されているんだと思う」
「ああ、つまり森の中に入ったら塔を探せばよいのか」
チャールズと私の話を聞いていたマリーが、西北西の方角を見ながら言った。
「チャック。でも、見えないわよ! 塔なんて、ここから全然見えないわ!」
「分かっているよ、山猿。そんな簡単には見つからないんだよ」
「うん。ジャングルにはアンヘリム・ヴェルメホ(Dinizia excelsa)って言う三十フィートを超える高木があるって聞いた。きっと、その高木に隠されているんだよ」
「じゃあ、ジャングルに入ったら、高い木々のところを探せばよいってことね! 分かりやすくて良いわ!」
その通りなのだが、そんな簡単に行くのだろうかと思う。
ただでさえ、広大なジャングルだ。
魔獣と戦い、魔獣から隠れながらの捜索だ。
これ、すごい時間がかかるヤツではないかと、私は少しウンザリした。
チャールズが地図とコンパスを使って、自動機械が飛んで行った方角を記載していた。
あの方向に自動機械がある。
それが分かるだけでも、確かに意味ある情報だとは思う。
問題はジャングルの中で現在地が分かるかどうかだけど。




