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太陽の都ポルト・ド・ソル


サンパウリーナ(San Paulina)王国首都ポルト・ド・ソル(Porto do Sol)。

その名の通り、「太陽の港」を意味し、明るい日差しと美しい海が特徴の大きな港町だ。

真夏に来たからか、より一層に太陽の都は輝いていた。


ナヴァラトナ大河を高速船で一気に下り、私達はポルト・ド・ソルの近くの海に出た。

ポルト・ド・ソルは女神へとつながる大型の通信自動機械が設置されている本物の女神像がある都市である。

空襲を警戒しつつ、高速船の上空に多数の空間ボールを浮かべて、港に向かった。


「軍艦が沢山いるね」


眩いばかりの太陽に照らされて、ポルト・ド・ソルの左側の軍用エリアには沢山の軍用艦船が停泊していた。

これが、第二軍、海軍の船というやつだろう。

私の呟きに中将のオジちゃんが返答してきた。


「お、カリーム・アーバに停泊していた旗艦船もあるな。どうやらエドゥアルド近衛隊隊長もいるようだ。そのまま軍の拠点を訪ねることにしよう」


エドゥアルド近衛隊隊長とは、六か国同盟を締結した際に、サンパウリーナ王国レオナルド・ダ・コスタ(Leonardo da Costa)国王の護衛隊を率いていた隊長さん。

私達とも懇意にしてくれている人だ。

ラージャスティ王国第二都市ウマラセドリで知り合った第三軍のジョアン・ペレイラ(João Pereira)司令官を訪ねようと思っていたのだが、エドゥアルドさんもいるのなら話が早い。

参謀と呼ばれている知性の十使徒ガブリエル・サントス (Gabriel Santos)の所在が気になるが、そこはエドゥアルド近衛隊隊長とペレイラ司令官を信じることにしよう。


私達は戦艦の方向に舵を切り、空いているスペースに停泊させた。

すぐにサンパウリーナ王国軍の兵士達が走ってやってきたが、中将のオジちゃんが身分証を提示して、近衛隊長か第三軍司令官の元への案内を求める。

高速船を収納する時にギョっとした顔をされたが、その様子を見て私達が誰なのかを察したのだろう。

警戒度が一気に下がった。

客人待遇として、港に併設されていた軍の建物に案内してもらえたよ。


「オスカー・フェルナンデス中将! それに終末の使徒のパーティの皆様! よういらした!」


案内された応接室で、エドゥアルド・ダ・シルバ近衛隊長が私達を迎え入れてくれた。

きっと先ぶれがあったのだろう。

私達を待ってくれていた様だったし、そこにはペレイラ司令官もいた。

それに、他にも知らない同年代のオジさんが一人。

これが海軍の司令官さんだろうか。

窓際には見覚えのある隊長さん達の姿も見えた。


近衛隊長とペレイラ司令官に皆が挨拶をしていると、エドゥアルド近衛隊長がもう一人の司令官さんを紹介してくれた。


マテウス・ロペス (Matheus Lopes)。

第二軍、海軍の司令官さんだ。

中将のオジちゃんと同じような年代の人だから、五十代だと思う。

陽に焼けて若々しく見えるオジさんだった。


「エドゥアルドやジョアンから話は伺っております。大変お会い出来て光栄です。オスカー・フェルナンデス中将、終末の使徒パーティの皆様」


爽やかな笑顔でそう言われて、私は大変好感を持った。


「うん。ペレイラ司令官みたいに怖い人じゃなくて良かったよ」


微笑ましく私達と海軍の司令官さんたちの挨拶を見ていたペレイラ司令官が、心外とばかりに目を丸くして聞いてきた。


「ララ様、何を仰いますか。自分も怖くはないでしょう?」


「いや、最初に会った時は超怖かったよ。中将のオジちゃんの手をギュって握りしめちゃったもん」


まあ、ペレイラ司令官と最初に会った時は、互いに敵として戦地で会ったのだ。

第二都市ウマラセドリで。

サンパウリーナ王国軍はウマラセドリを包囲していて、私達は都市内に侵入した上に、捕虜にしたサンパウリーナ王国軍の兵士さん達と引き換えに撤退交渉に赴いたのだ。

そりゃ警戒もされるし、さぞかし憎たらしかったとは思う。


「ジョアン、だから言ったのだ。眉間に皺を寄せる癖を止めよと。女子供を怖がらせてどうする」


エドゥアルド隊長から肩を叩かれて、ペレイラ司令官はションボリとした顔をした。

中将のオジちゃんが、あの時はそう言う状況のだったのだからやむを得ないとフォローをしていた。


私は、壁際にいる知り合いの隊長さん達にも会釈をした。

そうして、明るい雰囲気のまま、席に座って、話が始まった。


中将のオジちゃんから、ラージャスティ王国での戦闘が終了したことを説明される。

彼らは既に予期していたのか、うんうんと頷いただけだった。

流石に王都ナヴァラトナの水攻めには驚いていたけど。


中将のオジちゃんは、鞄から身分証の束を取り出して、彼らに渡した。


「サンパウリーナ王国第一軍の兵士は既に解放した。武器は押収したが、食糧は持たせたので、一か月もあればポルト・ド・ソルに戻って来るだろう。武器もララが収納しているので、後ほど返す。それと……、これは第一軍司令官と側近たちの身分証だ。彼らだけは殺害させてもらった。ご容赦頂きたい」


ペレイラ司令官が身分証の束を受け取り、パラパラと確認する。

海軍のオジちゃんやエドゥアルド隊長にも回して見せた。


「ほぼ無傷で五万の兵士を解放していただけたのです。これ以上にない終わらせ方だったと思います。オスカー中将とララ様の御厚意のお陰です。唆されたとは言え、他国へ侵攻したのは我が国の軍隊。その隊長格が罰せられるのは止むを得ないでしょう」


「ジョアンの言った通り。改めて謝罪させてください」


ペレイラ司令官の言葉を受けて、エドゥアルド隊長が頭を下げた。

海軍の司令官もそれに続く。

私は皆を代表して、サラっと受け流す返答をした。

私達としては、過去の事よりもサンパウリーナ王国での行動指針を決めるための情報が欲しい。


「うん。もう仲間だからね。気にしないで。こっちの話は中将のオジちゃんが言った通り。そっちの話を教えて」


「ははは。もう少し王都ナヴァラトナの水攻めの詳しい話を知りたいのですがな」

「ジョアンの言う通り。まあそれは夜に食事をしながらで良いでしょうな」

「では、私から話しましょう。カリーム・アーバから王都ポルト・ド・ソルへ旗艦船で戻ってからの話をしましょう」


エドゥアルド隊長が私達と別れてからの話をしてくれた。

彼が旗艦船で王都ポルト・ド・ソルに戻って来た時、まだ第二軍は出航していなかったそうだ。

エドゥアルド隊長は幼馴染でもあるマテウス・ロペス海軍司令官に急いで会いに行ったそうだ。

レオが亡くなったこと。

偽女神の話や旗艦に埋め込まれていた通信の自動機械の件も内密に共有したそうだ。

もちろん、マテウス海軍司令官は信じなかったらしいが、第二軍の旗艦船の船底を調査して、通信の自動機械を発見したことで、エドゥアルド隊長の話を否定できなくなったそうだ。

「船底の同じ様な場所にありましたわ。しかも船の建設時から置いてある様でした」

マテウス海軍司令官は、そう言っていた。


教会の尖塔にも行き、そこに置かれていた大型の通信の自動機械も回収したそうである。


「その自動機械は何処に?」


「どうやっても外の鉄枠が破壊出来ないので、海軍の旗艦船にあった自動機械と一緒に、港の海の中に沈めてあります。ララ様が来たらお渡ししようと考えておりました」


「うん、ありがとう。後で案内してもらうね」


どれだけ防水処理がなされているかは分からないので、私の空間に収納しておくべきであろう。

女神像の中の自動機械の回収も含めて、自分のやるべきリストとして記憶しておいた。


「ガブリエル・サントス参謀はどうしたのだ?」


中将のオジちゃんが王都ポルト・ド・ソルにいたはずの『キモ男』こと、知性の十使徒の所在、処遇を聞いた。


「自分とマテウスの兵で捕縛しようと向かった時には既に王都から移動した後でした」


「移動? 逃亡ではなく?」


「はい。護衛の兵士を百名ほど引き連れて、都市セラ・ダ・ルナに向かいました。カサ・デ・アグアの侵攻が予測されるからと言っていたそうです」


都市セラ・ダ・ルナ(Serra da Luna)とは、統一街道沿い、サンパウリーナ王国の東側にある都市だ。

第四軍が駐留している都市だったと思う。


「早いね。エドゥアルド隊長が帰って来たからかな。まだララ達はウマラセドリにも到着していない時期だよね?」


「はい。私が王都に帰還する五日前には出立していたそうです。サンパウリーナ王国に第一軍、第三軍を侵攻させておきながら……。何と言うか……、最初から、この国を戦火にまみれさせることが目的だったとしか思えませぬ」


「うん。カサ・デ・アグアの侵攻は? 始まったの?」


「現時点ではカサ・デ・アグアで大軍が出征の準備をしているという報告があるのみです。ただ、向こうからの情報はタイムラグがありますからな。既に北部に向かって侵攻してきているかもしれません」


なるほど。

やはりカサ・デ・アグアとの戦争はありそうなのだな。

私が頭の中に地図を思い浮かべながら、侵攻ルートを考えていると、中将のオジちゃんが細かい状況を聞き始めていた。


「大軍とは、どれくらいの軍勢なのだ?」


「はい。報告では三十万とのことでした」


三十万……。

流石に多い。

全勢力をサンパウリーナ王国に向けてきたのだろうか。

まあ祖国の土地の奪還だ。

カサ・デ・アグアとしても、ここが勝負所と踏んだのだろう。


サンパウリーナ王国の全兵力をかき集めても、その数には足りない。

カスティリオ王国軍やマリーパパ達の軍を足して、同じ数に届くくらいかな。

これは思ったよりも大変かも知れないな。


オジちゃん達が、細かい話をしている間に、私は世界地図を思い浮かべて考える。

サンパウリーナ王国は広大な土地を保有する王国だ。

大きく言うと、大陸にある領土と、南の島の二つに分かれる。

南北の領土の大きさは概ね同じくらいの面積だったと思う。


元々サンパウリーナ王国は、南の島だけを保有していた国だ。

北の大陸の領土は、旧カサ・デ・アグア王国の土地である。

三十年ほど前に、レオが南の島のサンパウリーナ人を束ねて侵攻してきた。

カサ・デ・アグア王国は北にドンドン押し込まれて行って、今のユニオン・リパブリックの東の土地に移り住んだという訳だ。


「ねえ? どして、レオはこの土地が欲しかったの? 南の島だけじゃダメだったの?」


中将のオジちゃんと話していた三人の隊長たちが、私の唐突な質問にキョトンとした顔を浮かべた。


「この土地というのは……、大陸側の領土ということですか?」


「うん。サンパウリーナ人ってのは、本来は南の島の人たちでしょ? 例えば生活に困っていたとか、何か理由があったのかなと思って」


「いや、南のサンパウリーナ島は非常に良い土地です。海の資源も豊富ですし、土壌も豊かです。ただ、大陸側の南部で収穫される『キヌア』の貿易で、カサ・デ・アグア王国と揉めましてな。それでレオナルド様が……、その……」


「ああ、うん。理解できたよ。レオの事だからね。だったら、奪ってやれ! とか言ったんだね。ありがとう。分かったよ」


『キヌア』とは穀物の一種だが、非常に栄養価の高いスーパーフードだ。

トウモロコシやジャガイモだけでなく、キヌアも生育させているということは、サンパウリーナ王国の大陸南部は本当に豊かな土壌なのだと思う。

面倒くさい外交交渉よりも、目の前にある土地を奪うことを選んだレオは、カスティリオ王国の女王のお母様達からすると、粗忽者、乱暴者でしかないと思うけど、分かりやすくはある。


じゃあ、レオが欲しかったのは南部だけってことなのかな。

私の言葉に苦笑を浮かべていた三人の隊長たちに、私はさらに聞いてみた。


「レオは南部以外は別に要らなかったの? どして、今の国境線になったの?」


「えっと。単に旧カサ・デ・アグア王国の領土を、そのまま継承しただけです。カサ・デ・アグア王国軍が抵抗をやめたのも、北部の山脈を超えて王国の領土外に追い出されたからだと考えています。北部から向こう側においやられては、中々こちら側に来ることが難しいのです」


海軍司令官のオジちゃんが、壁際に控えていた人に声をかけて、地図を持ってきてくれた。

世界地図ではなくて、サンパウリーナ王国の周辺国だけが拡大されている地図だ。

しかも、立体で出来ているので、地形まで良く分かる。


それを見て、何となく理解できた。

サンパウリーナ王国の北部と現カサ・デ・アグア王国の南部は隣接している。

ただ、その境界となっているところは高い山岳エリアなのだ。

当然、ウィンザーグローブにある高い山々ほどではないが、簡単に乗り越えられるような山でもない。

この山の向こうに追いやられたということは、こちら側に簡単に侵攻できるような場所ではないところまで押し込まれたということだ。

実際に現カサ・デ・アグア王国の首都パラディソは、その山をずっと下った海沿いの場所にある。


「なるほど。オジちゃん達が話していた内容がララにも分かったよ。カサ・デ・アグア王国から侵攻するには、この高い山を越えて、サンパウリーナ王国東部の統一街道まで降りてこないといけないという事だね。セラ・ダ・ルナが守りの拠点ということは分かった。でも、山の稜線沿いにサンパウリーナ王国の西側に来ることはないのはどうして?」


海軍司令官のオジちゃんが、サンパウリーナ王国の領土の特徴を説明してくれた。

それを聞いて私も納得する。

どう考えても、カサ・デ・アグア王国軍は、東部の統一街道に一度出るしかない。

大軍なら尚更だ。


サンパウリーナ王国の大陸側の領土は、大きく四つの大行政区に分けられている。

チンチャスヨ、コンティスヨ、アンティスヨ、コリャスヨと呼ばれるエリアだ。


『チンチャ』は北を意味し、『スヨ』は地域を意味するそうだ。

つまり、『チンチャスヨ』は『北の地域』という意味だ。


チンチャスヨ、北部は山岳地帯だ。

急峻な地形のため、山越えの国道すら存在しない。

唯一、人が通るルートは東側へと続く道だけだそうだ。

そこも冬には雪に覆われ通行が出来ないエリアだと言う。


『コンティ』は西を意味し、コンティスヨは『西の地域』という意味だ。

厳密に言うと、北西部。

統一街道より上の西側のエリアということだ。


この地域は熱帯雨林や雲霧林が広がっており、自然環境が豊かだと言う。

高い降水量を特徴としており、特に雨季は、湿度が非常に高く、熱帯雨林の生態系にとって重要な水源となっている。

高温多湿な気候、急峻な谷や山々、多数の川。

簡単に言えば、広大なジャングルだ。


『アンティ』は東を意味し、アンティスヨは『東の地域』という意味だ。

この地域は海に近く、海洋資源が豊富。

ただ海岸部分は峻烈な崖となっているため、大きな港は作れずに小さな漁村が沢山あるエリアだと言う。

面積としても最も小さい。


最後の『コリャ』は草原を意味し、コリャスヨは『草原の地域』という意味だ。

統一街道から南側の大きな平野部は全てコリャスヨと呼ばれる農業地帯になっている。


「その『コンティスヨ』と呼ばれるジャングルが自然の防波堤になっているってことなんだね。とても人間が通過できるようなエリアではないと」


「そうです。危険な魔獣、怒らせてはいけない伝説級の魔獣すらおります。カサ・デ・アグアの連中は良く知っているでしょうからな。そんな無謀なことはしないでしょう」


理解は出来たが、私は嫌な予感しかしなかった。

姉達の様子を見渡すと、皆、同じような顔をしている。

中将のオジちゃんですら、苦笑を浮かべていた。

カスティリオ王国の北部にも似た様な森がある。

あっちはジャングルではないが、同様に広大な深い森があった。

北黒の森と呼ばれる寒々しい人外魔境だ。

そこは、冬は深い雪に埋もれ、高い木々に覆われている日中でも暗い森だった。

そして、同じ様に伝説級の魔獣が棲んでいた。

ズメイ・ゴリニチという人間が戦ってはいけないドラゴン達が棲んでいたのだ。


「うん。分かった。捨てよう。北部も西部も要らないよね。必要なのは南部。東部はまあ、状況によって考えるか」


「はい? ララ様?」


私は立体地図の上に指で線を描いた。

防衛ライン。

侵攻してくるのは三十万の兵士。

サンパウリーナ王国軍は十数万。

アホみたいに正面衝突する必要もない。

故郷の土地が欲しいのなら、一部上げれば良いんじゃないのか。


「統一街道沿いに壁を作ろう。東側はセラ・ダ・ルナから真っすぐに東の海岸まで壁を敷く。その北側はカサ・デ・アグアにあげちゃえば? 無理に壁を越えようとするのならば、堀と弓で戦う。兵糧はこっちが圧倒的に有利だ。北には駐留する町も多くない」


「ふむ……。なるほど……」


「ララ、壁を建てるにも半年はかかるだろう。カサ・デ・アグアは夏の間に何としてでも北部を越えて来るぞ。雪が降る前に超える必要があるだろうからな。そう考えると早くて三か月で東部の統一街道には辿り着くはずだ。最短四か月でセラ・ダ・ルナで開戦だ」


「うん。中将のオジちゃんの言う通り。だから、西側、ジャングルのところは後回しにしよう。必要なのはセラ・ダ・ルナから東の海岸まで壁と……」


「ララ様、西側はこのポイントまであれば大丈夫でしょう」


エドゥアルド隊長が示したポイントは、川の合流する地点のようだった。

マラニョン川、ソリモンイス川と呼ばれる複数の川が合流し、ソル大河になる地点がある。

そこまで壁を敷けば、ここより西はジャングルだ。


「東西同じくらいの距離にはなったが、それでも壁の建設は間に合わぬだろう?」


「オジちゃん、ララの時間を止めた空間部屋で兵士さん達に壁を作ってもらうのはどう? 建設はララが空間魔法で溝を掘るよ。そこに作った壁を埋めて固めていくだけの作業。それならば間に合わない?」


姉とチャールズが、大きな紙を広げて、何やら書き始めた。

チャールズが書いているのは壁の設計図みたいだ。

姉は工程表か。

フローレンスは地図から距離を算出して、必要な壁の数を見積もっている。


壁の設計図を見た中将のオジちゃんも、注文を付け始める。

どうやら何も言わなくても、フィージビリティチェックが勝手に始まったようだ。

三人の司令官のオジちゃんたちは、その様子をただ茫然と見ていた。

レオンと私は苦笑を浮かべて、ただ結論が出るまで待つだけだ。


「ペレイラ司令官、壁の厚さは十六フィートくらいで良いか?」

「え、あ、はい……」

「高さは十フィート?」

「いや、十三は欲しいな」


そんな会話が飛び交い出した。

ペレイラ司令官たちも壁の構造が書かれたイラストを見ながら、議論に加わり始めた。


「サンパウリーナ王国には石材が豊富です。下部は厚い石造りのカーテンウォールにしましょう」

「城壁の上にメルロンや石落としを設けよう。城壁の上の兵士達が隠れながら戦えるようにしたい」

「構造はフェーシングで良いでしょう。表面は石を積めば相当強固な造りになります」


最早何を言っているかが私には分からないが、外壁のイラストがドンドン変わっていった。

それに応じて、フローレンスと姉の工程表や材料、日数の計算がドンドン変化していく。


たっぷりと一時間は議論したと思う。

細かい詰めは、まだ時間がかかるようだが、結論は出たようだ。

中将のオジちゃんが、三人の司令官たちと最終意見を調整して、私に伝えてきた。


「ララ。結論はGOだ。今回も其方の力を頼ることになる」


「了解。どうすれば良いかだけ教えて」


カスティリオ王国軍の兵士達五万人。

その全てを投入して、私の新しい壁建設用の空間部屋で壁の部材を作る。

サンパウリーナ王国軍の兵士達は、それを建てる役だ。


部材を仕入れる準備に三日。

それを兵士達と一緒に壁建設用の空間部屋に収納する。

勿論、兵士達にはテントと水と食糧を持たせる予定だ。


私達はソル大河を高速船で上る。

マラニョン川、ソリモンイス川の合流地点まで、高速船ならすぐだ。

そこから、私は溝を掘り、兵士達が組み立てていく。


「わかった。これどれくらいの日数がかかるの?」


「机上の計算では一か月ね。時間が縮められないのは徒歩での移動時間だけなのよ。壁の建設、設置は物量で何とかするしね」


フローレンス先生が、そう言っていた。

つまり私達が移動する日数だけが縮められないということだ。

溝を掘りながら移動する。

川の合流地点からセラ・ダ・ルナを経由して、海岸線の漁村まで、ほぼ真っすぐ東に進む。

後は兵士の数の物量と空間部屋による時間短縮で、何とか出来る範囲だと言う。

頑張るのは私と言うことだ。

言い出しっぺだから、勿論頑張ろうとは思う。


四人の司令官たちだけなく、私の仲間たちや壁際に控えていた隊長たちも混じって、ドンドン具体的な計画が作り上げられていった。

部屋を何人もの人たちが出入りして、色々な確認作業も進んでいく。


これだけ優秀な人たちが集まっているのだ。

そりゃ、アッと言う間に決まっていくのだろうなと、私は今後起きそうなことを頭の中で考え始めた。




世界地図

挿絵(By みてみん)

東側立体地図

挿絵(By みてみん)

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