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湖に浮かぶ王都ナヴァラトナ


三号トンネルに向かって歩いている最中に私はクラっと眩暈に襲われた。

昨日の夜、もう少し仮眠を取るべきだったか……。

身体が全力で眠ることを求めている。

でも、まだ、私にはやるべきことが残っている。

頑張らないと、と足を踏ん張ったところで気づいた。


よく考えると、空間部屋に仲間たちがいる訳ではない。

チャールズとレオンは、このトンネルの先に。

姉たちは全員、第二都市ウマラセドリに残したままだ。


空間部屋に戻って、ゆっくり眠った後、時間を経過させずに戻って来れば良いのではないか。

最近は、誰かが空間部屋に残っているので、時間を常に同期させて使っている。

でも、空間部屋は好きに時間を止めたり動かしたり出来るのだ。

この世界とは切り離された時空間であり、私はそれを繋げているだけなのだから。


バタっと私は転がるように空間部屋に転がり込んだ。

リビングルームで、帽子とマント、着ている洋服を全て脱いだ。

誰もいないのだ。

下着だけは風呂場横の洗濯機に放り込む。

飛び込むように風呂場に飛び込んだ。


滲みる……。

身体中に癒しのお湯が滲み渡った。


「ぷふー」


大きな風呂場の縁に後頭部を乗せて休んでいる間に意識を失っていたみたいだ。

このままだと風邪をひいてしまう。

ヤバいと思って、急いで風呂場を出て、雑に拭いた。

そのまま自室のベッドでに転がり込んだ。


「ぐがっ」


変なイビキを自分があげたことで、私は目覚めた。

大分、スッキリした。

チャールズとレオンもきっと眠いだろう。

彼らは私の様に眠らずに頑張っているのだ。

そう考えると、非常に申し訳ない気がしてきた。


急いで下着を着こんで、リビングルームに脱ぎ捨てた服をもう一度着る。

マントと帽子を被って、空間結界を纏った。

さぁ、あと何個かやるべきことが残っている。

頑張ろう。



三号トンネルを越えた先にはチャールズとレオンがいた。


「ララちゃん、僕が背負うよ。疲れたでしょ」


「う、うん。ありがとう」


ひとっ風呂浴びて、ぐっすり眠ってきましたとは勿論言えない。

微妙な返答をしつつ、チャールズの背中に乗った。

透明化の魔法をかけて、私達は街に出た。


「三か所行くよ」


「了解」


チャールズが加速する。

向かうは食糧庫だ。

北、南、中央に一つずつ大きな倉庫がある。

当然、厳重な警備体制が敷かれている。


最初に向かったのは一番遠い南の倉庫だ。

貴族街に入る手前に配置されていた。


「兵士がいっぱいいるね。どうする?」


「忍び込もうと思っているんだ。もしかして、外からやれる? だいぶ大きな倉庫だけど」


「うん。十分位時間を貰えれば多分、建物全部を囲えると思うよ」


「ララちゃん、昨日からずっと収納魔法を掛けっぱなしでしょ?」


「え、あ、う、うん。でも大丈夫。ララ頑張れるよ」


うーむ。

胸が痛い。

私は少しでも彼らの負担を抑えるためにも、外から頑張って収納魔法を掛けることにした。

薄く広く魔力を広げる。

中規模なコンサートホールと同じくらいの大きさだ。

まずは面積全体をカバーするべく魔力を広げた。

中に格納されている物を魔力で確認していく。

大きなコンテナが積み上げられているみたいだ。

コンテナの中を個別に確認して収納するよりも、コンテナごと収納しちゃう方が結果的に楽かもしれない。

数十あるコンテナを一気に格納した。


「オッケー、チャック、次に行こう」


南、中央、北の順番で回った。

倉庫の大きさも、その順番だった。

一番人口の多い北の倉庫が、一番小さいのが、少し腹が立つ。


その後、五つのトンネルの出口を潰すべく走り回った。

最後の一号トンネルは私達が入った後に塞いだ。

これで、トンネルが発見されることもないだろう。


あと仕事は二つ。


「ララちゃん、どっちが先だっけ?」


「城壁の外の掘を解放するのが先。最後にナヴァラトナの堰を切って終了」


透明魔法を解除してトンネルから出た。

収納していた土を使って穴を塞ぐ。


チャールズとレオンは城壁の周囲を走り始めた。

私は順次、城壁の周囲に作った掘りを解放していく。

流石に息が上がって来たのか、後半、チャールズとレオンの速度が落ちた。


「チャック、レオン、あとはララが一人で行けるよ。空間部屋で寝ておいでよ。十時間後に呼び出すから」


「ララ、俺は大丈夫だ。ララだけを働かせる訳には行かん」


「僕もだよ。最後までやり切ろう。その後、皆でぐっすり寝れば良いんだ」


ほんと、申し訳ない。

ちょっと遅くはなるけど、せめて自分の足で走ると主張した。


私達がトンネルの入口を作った林の手前で、ナヴァラトナ大河は西に向かって折れている。

その少し先から、流れる大河とは別に分岐するルートを掘っておいたのだ。

堰を切れば、その堀に大河の一部が流れ込むはずだ。

そして、城壁を囲む堀に大河の水が溜まる。

都市に籠っている彼らは、いつの間にか、都市に閉じ籠められることになるのだ。

城門を開いても、そこには深い水堀がある。

簡単には出て来られないだろう。


食糧庫に貯められた食糧も全て回収した。

武器を捨てて降参する以外に生き残る術はない。


水責めをするのは簡単だった。

空間魔法で水堀を掘るだけである。

難しかったのは、民を避難させることだ。

沢山議論したし、沢山の人の力を借りた。

それが無事に終わった以上、この作戦は成功したも同然である。


私達は作戦開始地点の林を横目に、さらに奥のなだらかな丘に登った。

掘った水路沿いに登っていく。

ナヴァラトナ大河と合流するところに作っておいた堰まで辿り着いた。


「じゃ、結界を解くね」


「この水路沿いに大河の水が流れていくんだよね。水堀が埋まるところも見てみたいな」


「ララ、飛行魔法で上空から見られないか?」


「そうだね、じゃ、そうしよう。ボール型にするから、中で動き回らないでね」


私の左右にチャールズとレオンが並んだ。

球体の結界を作り、そのまま上空に浮かべる。

五十フィート上がったところで、王都ナヴァラトナの全貌が見えた。

こうして見ても、本当に大きな都市だと思う。


行くよ、と声をかけて、水路を塞いでいた結界を解除した。


「おー、凄い勢いで水路に流れていくね」


「本当だな。ナヴァラトナ大河は幅が広いからな。流れの速さも水量も良く分からなかったけど、思っていたよりも勢いあるのだな。ん? ララ、これ、大丈夫か?」


レオンに心配されたが、私も同じ心配をしたところだった。

水路に勢いよく流れ込んだ大河の水は、あっという間に水路の高さを超えそうだった。


「うう……、これやってしもうたかな……」


「ララちゃん、城壁の方まで、このまま飛ばそうよ」


「わかった。二人とも動かないでね」


水路に沿って、そのまま飛行する。

もう眼下の水路からは水が溢れている。

先ほどいた林まで水は広がり始めていた。


「城壁の周りの水堀に水は引けたな。ララ、成功だ。これは成功だぞ」


優しいレオンは褒めてくれたけど、ちょっと微妙な空気が流れている。

水路から流れてくる水が大量過ぎて、城壁にぶつかり高く水飛沫が上がっていた。

城壁の上で監視していた兵士が集まってきていた。

みんな、打ちつける大河の水で、びしょ濡れになっているよ。


「ああ、南側……」


チャールズが見ていた視線を追う。

南方向、統一街道にまで、水が溢れていた。

急いで空間ボールを南の方向に進ませる。


味方のカスティリオ王国軍が、慌てて統一街道を撤退していく姿が見えた。


「やってしもうた。もはや大河の氾濫になってしもうた」


「ははは……。面白すぎる。まぁ、これで確実に都市から脱出出来なくなったよ。レオンの言う通りだよ。ララちゃん、これは成功だ」


ガックリと肩を落とす私の頭を、両サイドから伸びた手が優しく撫でてくれる。

ナヴァラトナ大河は統一街道に沿って南下していく。

統一街道に溢れた水も、南に行くに従って、大河の方に戻っていく様だった。

私達は、水が引いた統一街道に降り立って、味方が避難しているところまで戻った。


カスティリオ王国軍の兵士たちは、拍手で迎えてくれた。

恥ずかしくなるくらいの大騒ぎである。

軍服を見ると、腰まで濡れてしまった人もいたけど、その人達も楽しそうな顔をしてくれていたよ。


「はは! ララ! チャールズ! レオン! ようやった! 国に帰って、女王陛下と宰相閣下にお話するのが楽しみでしょうがないぞ!」


中将のオジちゃんに、私は高く抱き抱えられて、最大限の褒め言葉を貰った。

周囲の隊長さんたちも、喜んでくれていた。

チャールズとレオンが肩をバンバン叩かれている。


「でも、水堀じゃなくて、湖に浮かぶ都市みたいになっちゃったよ」


「湖に浮かぶ都市か! 良いではないか! 風流な表現だ! 気に入ったぞ!」


兵隊といえども、カスティリオ人だ。

いちいち大袈裟だし、うるさいよ。


中将のオジちゃんや隊長たちが、監視ポイントを決めて逃げない様に見張ると言っていた。

ついでに女王のお母様や宰相のお祖母様に見せるために、絵を描いてくるそうだ。

十日程は彼らも頑張るだろうから、降伏勧告はそれ以降にする様だ。


私達は第二都市ウマラセドリに、避難した十万人を送り届ける仕事が待っている。

とりあえずレオンとチャールズを寝かせるために空間部屋で休むことにした。



第二都市ウマラセドリには、結局、高速船で大河を下って向かった。

最後は浮かせた上に、収納していた綺麗な水で洗い流してから、しまっておいたよ。

なんか、この大河の水は臭そうで嫌なのだ。


ウマラセドリの門は開かれていた。

憲兵さんが門番していたけど、もう戦時じゃない。

普通の運用に戻っていた。


憲兵さんたちに敬礼されて、街に入った。

そのまま、役所を訪ねる。

メーガンちゃん、姉、ナスルのオジちゃんを呼んで貰うと、出かけていた様で、最上階会議室で待たされた。


連絡が入ったのか、最初にマリー、ジョヴィ、フローレンスがやってきた。

程なく、メーガンちゃん、姉、ナスルのオジちゃんも帰ってきたので、報告を始めた。


「すごいわ! 見たい! 見たい! 湖に浮かぶ王都なんて素敵よ!」


「おい山猿、メーガンさんの気持ちを考えろ。故郷が水攻めされているんだぞ」


「あ、大丈夫ですよ、チャールズさん。お気遣いありがとうございます。破壊された訳ではないのです。それに十万もの国民を救ってもらいました。これ以上ない成果だと思います。ありがとうございました」


「ふむ。その通りだ。降伏した後の貴族達の対応は別で考えねばならぬな。可能であれば、貴族身分の放棄を条件としたいな。その辺はオスカー中将と相談しよう。ララ、向こうに戻るのだろ?」


「うん。十万の避難民をここで解放したら戻るよ。サンパウリーナ王国軍が降伏してきた時にはいた方が良いだろうし」


「わかった。手紙を持って行って欲しい。避難民はどうするかな。可能ならば、西部も含めて復興した町に移住するのも検討してもらいたいな。まあ、それはこちらで引き受けよう」


あの広い王都の北側半分に住んでいた人の数だ。

よく考えると、早々に受け入れるのは簡単な話じゃない。

十万人の住居を準備するのだって、相当大変だろう。


「住む場所はどうするの?」


「貴族街を建て直す計画がある。あそこを更地にして、住居を建てていくのが良いだろう。それを皆で作るのも公共事業の一種だ」


「じゃあ、暫く空間収納に入れておいた方がいいね。冒険者と商人だけ先に出すとか」


「ああ、そういう順番が付けられるのは助かるな。ララの空間にいた方が安心安全だしな。ふーむ。ちょっと考えさせてくれ。今日中には返答する」


ナスルのオジちゃんは、姉やメーガンちゃん、役所の人たちと相談して、夕食の時に返答してきた。

結論としては、冒険者だけを今回は出すことになった。

彼らは冒険者組合を経由して作業員として働いてもらう。

新しい町を建てる労働力として活用したいとのことだった。


それ以外の人たちは、私の空間部屋の中で時を止めることになる。

王都がすぐに降参して解放されれば、早々に自宅に戻れる可能性もあるのだ。

それまで大変な生活を強いる意味もないだろうと判断された。

まあ、よく考えれば、そりゃそうだという話である。


私は旧貴族街の建物の撤去を引き受けた。

西側の空襲で破壊された町のように、家ごと空間収納に入れて、ウマラセドリの都市の外の一角にドカンと取り出してくれれば良いと言われた。

姉から、幾つか確保したいモノがあると言われたので、レオンに付き合ってもらって、三人で貴族街を回った。

姉が狙っていたのは主に食器類のようだった。

私はノッキングチェアを再び発見したので、それも頂いておく。

それ以外にも最高級馬車だったり、役立ちそうな物は貰っておいた。

その代わりに貴族街は綺麗な更地にしておいてあげたよ。



私達が王都ナヴァラトナに戻ったのは、二十日後のことだ。

途中の水田を確認したりしながら、ゆっくりと北上した。

王都の水没は大分落ち着いたようで、中将のオジちゃんは、東側にある高台に本陣を構えていた。

ここからなら、王都ナヴァラトナが確かに良く見える。


「オジちゃん、王都に動きはなし?」


「ああ。特にないな」


「中の様子を見に行こうか?」


「ふむ。どうやって中に入るのだ? 飛ぶのか?」


「うん。トンネルは塞いじゃったからね」


中将のオジちゃんは、少し考えた後、百人ほどの部隊を率いて入ろうと言った。

私もチャールズ達も少し驚いた。


「大丈夫だ。サンパウリーナ王国軍の軍服を全員着ていく。バレはせんだろう」


翌日の明け方に王都へ潜入することになった。

オジちゃんは久しぶりのお風呂を堪能しに、空間部屋で夜を明かした。

お風呂どころか、ワインもガブガブ飲んでいたよ。


私達三人以外は一度収納魔法でしまって、本陣から空間ボールで飛んだ。

もちろん、透明化の魔法をかけているので、城壁で監視している兵からも気づかれないだろう。

でも、もはや、あの監視は無意味だと思う。


「ララちゃん、大分、飛行魔法が安定したよね?」


「あ、チャックもそう思う? ここ最近で魔法の練度があがったと思うんだよね。全部の魔法の操作が上手になったと思う」


「ララ、それはトンネル掘りが原因か?」


「うん。それもあるけど、やっぱり畑仕事が大きかったのだと思う。二段階くらいレベルがアップした」


「僕らも頑張らないとな。訓練はしているけど……」


「俺らの場合、魔法よりも剣の技量だよな。兵士達と模擬戦していても、技量だけなら明らかに俺らより強い人たちが沢山いる」


私もたまに見物したりしているが、チャールズの剣の技量は上がっていると思う。

レオンは、剣というよりも武術全般に秀でている。

無手で戦った方が強いんじゃないかと思えることも多々あるのだ。

やはり、東の国に行ったら、片目剣士のオジちゃんのように、キチンとした師匠に一度教えて貰った方が良いのだろう。


城壁の監視所には、サンパウリーナ王国軍の兵士が数人詰めていた。

ただ、壁に座り込んでいる様子を見る限りは、大分食糧不足の影響が出ている様に見える。

そのまま貴族街の上空を飛んだ。


「兵士達の数が多いね」


「ああ。巡回じゃないな。色々な家から出入りしているようだ」


「どういうこと?」


「うーん。ちょっと分からないな」


貴族街の多くの家から兵士達が出入りしているのが見える。

沢山の兵士ではない。

それぞれ数人が出入りしているのだ。

軍が接収したのかもしれないな。

貴族達は追い出されたのか……。


中央部にある駐屯地を眺めながら、北部の広場の近くに空間ボールを降下させた。

この辺には全く人通りがない。

冒険者組合本部のスイングドアを押して、中に入ってから、まずは中将のオジちゃんを出した。


「オジちゃん、北部の冒険者組合本部だよ。この辺には全く人がいない。中央部の駐屯地にも兵士はいなかった。テントで寝ているのかもしれないけど。でも南部の貴族街の家に兵士達が出入りしているのが見えたよ」


「ふむ。わかった。十人単位で出してもらえるか? 個別に指示を与える」


十人で一つのチームだ。

その単位で収納しているので、私は順番に冒険者組合本部の一階ロビーに出していく。

中将のオジちゃんは、次々に担当エリアを割り当てて行った。

北部に3チーム、南部に4チーム、中央に2チーム、ここの護衛で1チームだ。


チャールズとレオンも透明化魔法をかけて、どこかに走っていった。

私はオジちゃんと護衛の兵士さんと話しながら、じっくりと待つ。

早朝開始した潜入作戦は、午後三時を過ぎたあたりから、各チームが戻って来た。

北部、中央、南部。その順番で帰って来る。

最後に帰って来たのは、チャールズとレオンだった。


これまでの報告をチャールズとレオンにも、オジちゃんは共有した。


「北部は既に亡くなっている人以外は人影なし。中央部のテントには衰弱した兵士が寝ているらしい。教会も同様だ。役所に作戦司令本部が設置されているようで、その建物にはそれなりの数の兵士がまだ活動している。南部の貴族の家に兵士が出入りしているのは、貴族が隠し持っている食料を奪うためらしいな」


「オスカー中将、僕らは貴族の家の中も見て来ました。見た感じ、彼らも食べる物が無くなっているようです。侍女、執事の一部には餓死者も出ていました」


「末端から弱って行っているということだね」


「そういうことだな。ここらで仕掛けるか」


「どこを?」


「作戦司令本部だ。全員で奇襲をかける。第一軍司令官や側近がいたら拉致しよう」


説得ではない。

拉致もしくは殺害だ。

まあモタモタしていたら、兵士さんが大量に集まって来るかもしれないしな。

弱っていても、集まってきたら面倒くさい。


私はオジちゃんの指示で、再び兵士さん達を順番に出した。

作戦開始時刻と配置を指示して、全員が中央にある役所の建物に向けて走っていく。

私達も護衛の十人と一緒に走った。

念のため、私達三人だけは透明魔法をかけておく。

突入までは、なるべくサンパウリーナ王国軍の兵士だけに見せかけておいた方が良い。


王都ナヴァラトナの役所は、中央の王宮の敷地の南の角に建てられている。

石造りの堅牢な建物だ。

外壁に豪華なリリーフも彫られている。

各階の窓枠には彫刻のような彫り物も見えた。

窓を数える限りは、おそらく五階建て。


最初に私達を護衛していたチームが突入した。

その後、五つのチームが中に走って入り、二つのチームが正面を塞いだ。

おそらく建物の裏口にもチームは配置されているのだろう。


建物の中から、大きな音がし始めた。

私達も透明化を解除して、中将のオジちゃんの後に続いて、建物の中に足を踏み入れた。

正面階段を上る。

おそらく目的地は最上階なのだろう。

邪魔が入ることもなく、私達は最上階へと登った。


「閣下。こちらです」


既に制圧済みということなのだろう。

最上階には顔なじみの隊長さんがいて、奥へと案内してくれた。

彼が案内したのは、大きめの会議室。

中に入ると、十名ほどの人たちが既に拘束されている。


「其方がアレクサンドル・バルガス第一軍司令官かな?」


中将のオジちゃんは、一番立派な軍服を着ている中年の人に声をかけた。

頬がこけているが、元々は精悍な顔つきなのだろう。

その問いにも答えずに、ギロっと睨みつけるだけだ。


「身分証を奪え」


オジちゃんの指示に、兵士さん達が動く。

拘束されているサンパウリーナ王国軍の偉い人達の軍服を漁り、オジちゃんに渡してきた。


「ふむ。その一番左の者は伝令役で生かす。それ以外は広場に連れて行き、首を斬り落とせ。その首を晒すのだ」


「は!」


第一司令官と呼ばれた人を筆頭に、偉い人達が後ろ手を縛られたまま、部屋から連れられて行った。

オジちゃんは、一番左の若い人の前に立ち、指示を出した。


「ロナウド・アルジーナ大尉。其方には同胞を救うミッションを渡そう。明日0800までに中央の広場に投降した者は、無事に都市から外に出してやろう。武器の放棄。荷物の保有も認めん。食料は都市の外で支給しよう。その時間までに来ないものは、この都市で干からびることになろう。残っている貴族達も含めて、其方が責任を持って伝達せよ。この情報が広く行き渡っていない場合は、其方の責任として首を斬り落とす。良いな?」


伝令役として指名された若い司令官は、目を大きく広げたまま頷いた。

では、行けと指示されて、会議室から走っていった。


「総員退却」


オジちゃんが指示をすると、全員が動き出した。

私達も会議室を出て、階段を下りる。


「ララ、明日八時に再び連れてきてくれ」


「うん。どうせ、ほとんどの人が降伏するでしょ? どうせなら、城壁の門を開けて橋を作っちゃおうよ。カスティリオ王国軍も全部街に入れちゃおう」


「ふむ。そうだな。念のために一度、確認してからが良いだろう。広場に多くの者が集まっていたら、正門から突入だな」


歩きながら、中将のオジちゃんとそんな話をした。

私はこの都市の復興を考える。

あの水堀はどうしようかな。

どうやって水を抜くか。

水堀を作ることは結構時間をかけて真剣に考えたけど、

元に戻すことは全く考えていなかったよ。


うーん、と私は頭を悩ませた。


世界地図

挿絵(By みてみん)

東側立体地図

挿絵(By みてみん)

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