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地獄へのラインを越えて


空占いって言う物があるのか、私は知らない。

でも、新しい街に入る時には、私はいつも空を眺めていた。

空の色、明るさ、高さ。

雲の色、多さ、厚さ。

太陽の輝き、傾き、眩さ。

行く先の空を眺めることで、これから起きることを想像するのが、半ば習慣になっていた。


今、私達は、イフヤ共和国の国境で、ラージャスティの空を呆然と見つめている。

これ以上はない景色が、ラージャスティの空には広がっていた。


私達は高速船でイフヤ共和国の東の都市バハール・シティに入った。

私達が漂流して辿り着いた場所を眺めながら、高速船でバハール・シティの港に入り、そのまま馬で国境に向かった。

国境にはイフヤ共和国の憲兵たちが沢山いて、ラージャスティの方を全員で眺めていた。

当然、私達も馬で近づきながら、それを見ている。

憲兵や私達だけではない。

イフヤ共和国側に住む全ての人が、それを眺めているだろう。


広い統一街道が人で埋まっていた。

私達は馬から降りて、人込みをかき分け先に進む。

メーガンちゃんが走りだそうとするのを、姉とフローレンスが腕を組むことで抑えていた。


「危険です! ここから先は進まないようにお願いします!」

「ラージャスティに帰国なされる方! こちらにお願いします! イフヤ共和国で宿の手配が可能です!」


憲兵たちの何名かが、そう叫んでいた。

他の憲兵たちは、ラージャスティ側をただ眺めていた。


「雷か!」

「違う! もっと恐ろしい何かだ」

「星が落ちてきたんだ!」

「女神様の天罰?」


集まった民たちだけじゃなく、見上げている憲兵たちからも、そんな声が上がっている。


でも、転生前の記憶を持つ私達の仲間は違う。

あれが何だか分かっているし、知っている。

「空襲」

マリーが呟いた。


天から地上に向けて真っすぐ、ミサイルの様な何かが降り注いでいた。

着弾して上がる黒煙。

少し遅れて響き渡る爆発音。

それも一か所ではない、ラージャスティ方面の全ての空に爆撃の雨が降り注いでいた。

何百、何千の光が空から降り注いでいた。


姉が国境を守る憲兵に何やら話して、何やらを見せて、国境を越えた。

私達だけが、その境界線を越えることを許された。

その境界線は、見えないけど、明確なラインが引かれていたのかもしれない。

人が住む場所と、人が住むことを許されない地獄と。


ここから先は地獄だ。

そのラインを、今、私達は跨いだ。


「皆さま、お願いです。急いで駆けつけましょう。民が……。民が虐殺されております」


「メーガン、落ち着きましょう。必ず行きます。ただ、今はダメです。あの空の攻撃が止むまでは」


「アス姉、統一街道からは外れちゃうけど、あそこの丘まで登ろう。一番近い町なら見えるかもしれない」


皆で丘に登り、さらに結界を真っすぐ上空へと浮かせて、遠くの景色を眺めた。

流石にラージャスティの国土全ては見通せない。

見えているのも、西側のほんの一部だと思う。

それでも、分かった。

点々と焦土が広がっていた。


「町だけを破壊しているのか」


「レオンの言う通り。畑は攻撃対象ではないみたい」


「つまり……。女神の目標は人」


「正確には『人の心』だろうね」


「チャックの言う通りだ。この国を亡ぼす。そして人に知らしめるのが狙いだ」


「ララの言ったあれね。『諦めて鶏舎の中で大人しくしていろ』と」


「ララちゃん、私はどうすれば……?」


「メーガンちゃん、ララ達のやることは変わらないよ。町に行き、食べ物を配給する。フローレンスが治療する。ララは畑の作り方を教える。それだけ」


そのまま、直近の行動方針を相談した。

移動は走る。

脚力に自信の無いフローレンスとジョヴィは空間部屋で待機だ。

山越えで足腰を鍛えている私と姉はさておき、マリーとメーガンちゃんは厳しいだろう。

それでも、そのために自分は来たのだと、彼女たちは譲らなかった。


結界魔法で纏っているが、強固な結界で囲っている訳ではない。

それに結界自体を破壊する光魔法もある。

もし、光に照射されたら全力で走って逃げる。

逃げ先は私のいる場所だ。

最悪空間部屋に逃げ込めば良い。


町に着いたら、三チームに分かれる。

レオン、姉、ジョヴィが炊き出しと物資の配布。

チャールズ、フローレンスが医療。

私、メーガンちゃん、マリーが畑の指導だ。

何かあれば、笛を鳴らす。

集合場所を決めておいて、そこに全員が集まることにした。


女神の空襲は三時間ほど続き、そしてピタっと止まった。

「行くよ」

フローレンスとジョヴィを空間部屋に送りだし、私達は走り出した。

レオンが先頭。

チャールズが最後尾。

姉とメーガンちゃん。

私はその後ろにマリーと並ぶ。


一時間に一度、フローレンスが回復魔法をかけに出てきてくれた。

お馬さんの扱いと同じである。

ふくらはぎ、太ももの筋肉に治癒のエネルギーが浸透される。

足首、膝、股関節も入念に癒してもらい、また走る。

それでも、時間を重ねるたびに、マリーとメーガンちゃんの息が上がり、明らかに速度が落ちてきた。


「最初の町は、多分もうすぐだよ」


「う、うん……、はぁはぁ、だ、だいじょう、ぶ」


隣のマリーからの返事の声が小さい。

国境を境に、大抵は馬車で半日の距離の町があるものだ。

レオンとレナさんは、馬で歩くよりも、自分たちのジョギングの方が速いと言っていた。

でも、私達は、お馬さんの歩く速度と同程度だろう。

午前中に国境を越えたから、おそらく、そろそろのはず。

そう考えていると、漸く最初の町が見えてきた。


「ララ、教会だけ壊されていないようだ」


「レオン、ララにも見えてきたよ。周囲の建物は全部だめ?」


「全部ではないみたいだが……。教会の周囲は平気みたいだな」


「女神の信仰を残すためかしら?」


「アス姉さん、どっちかと言うと通信の自動機械を残したいのじゃないかな」


「チャックに一票」


町自体が焦土と化しているので、元々どれくらいの大きさの町だったかは分からない。

でも、教会の大きさと、黒煙の上がっている範囲を見る限りは、そんなに大きな町ではなさそうだ。

近づくと、人々が建物の撤去や、負傷者を救出している様子も見えてきた。

周囲の畑からも、町の様子を見るためか、手助けするためか分からないが、農家の人も歩いてきていた。


「光! 敵襲!」


焦土と化した町に、足を踏み入れた瞬間に、先頭のレオンから声が上がった。

女神の攻撃で吹き飛んだ石畳の残骸を蹴って、方向を変えて横に走る。

光で照射されたかは、私には分からない。

レオンが背中に背負った大盾を前面に持ち直したことからも、間違いはないのだろう。

でも、身を隠す場所なんて、どこにも無いよ。

全ての建物が崩壊しているんだもん。


「レオン、あの塹壕、空爆で出来た穴!」


チャールズが後ろから叫んだ。

女神の空爆で、地面には幾つも大きな穴が開いている。

そこに飛び込めということだろう。


レオンが隠れやすそうな穴に向かって速度を上げた。

チャールズがマリーを抱え上げた。

私と姉がメーガンちゃんの両腕を掴み、引っ張るように速度を上げる。

あ、見えた。

今、地面に光が差しているのが見えた。

小さめのスポットライトみたいな光だ。

私達を探すかのように、地面を動いていた。


ズシャっと穴の中に飛び込んだ。

穴と言っても、そんなに深い穴じゃない。

少し窪んだクレーターだ。

皆が匍匐前進するような姿勢で、地面に腹ばいになる。

メーガンちゃんの息が上がっている。


パリン!

と結界が割れる音がして、私達全員の身体が強張った。


「チャールズ! 足が出ちゃっている! もっと小さくなりなさい!」


私達よりも大きい体格のチャールズの足が隠れ切れていなかったのだろう。

そこが光魔法に照射されていたらしい。

ターン!

プシュ!

姉の指摘でチャールズが小さくなろうとした瞬間に、その足から血しぶきが上がった。


「痛ぇ」


チャールズから呻き声が漏れる。

私はチャールズの結界を張り直した。


「チャック、それじゃ走れない。一度、フローレンスのところに送るよ」


「くそっ」


「ララ! 私が戻すわ!」


マリーが時の魔法をかける。

巻き戻す時間が短い分、すぐに終わった。


「悪ぃ。マリー、助かった」


チャールズが珍しく素直にマリーに御礼を言った。

私はチャールズの身体に結界を纏い直した。


ターン! ヒュン

ターン! ヒュン


銃声と同時に近くの土が弾け飛ぶ。

完全に狙い撃たれちゃっているよ。


「銃声が近いな」


「教会の尖塔じゃないか?」


レオンが一瞬だけ顔を出して覗いた。


ターン! カン!


レオンの頭が衝撃で後ろに弾ける。

大丈夫。結界の上から撃たれただけだ。


「くそ。めちゃくちゃ痛い。頭がフラフラするぜ」


「ララ、もう少し穴を深くできないかしら」


「あぁ、アス姉、そうだね。ちょっとやってみるよ」


地面に魔力を浸透させる。

まずは私達の範囲だけ、三フィート分だけ土を除去した。


「キャ!」

「うわ」

「え?」


しまった。

腹ばいの態勢のまま、三フィート分、落下してしまった。


「ごめん、失敗しちった」


「いや、ララ、大丈夫だ。さっきの狙撃を食らった時の方が余程痛い」


「ララちゃん、もっと横の方まで穴を掘らない?」


「うん、チャック、ナイスアイデアだ。違うところから逃げ出そう」


奴らはジッと、私達の隠れた穴を観察しているだろう。

まさか、離れたところから逃げ出したとは考えないはずだ。


今度は横に長く小さなトンネル様な穴を掘り進めた。

崩れちゃうかもしれない。

でも、今は補強のやり方も分からない。

女神ではない神に祈りながら、男子たちが四つん這いでギリギリ進めるくらいの穴を掘り進めた。


しばらくしてから、今度は真上の土を除去する。

少し広めの穴を地上まで通した。

レオンが地面に手をかけて、這い上がった。

続いてチャールズが上がった。


「うん。大丈夫だ。ララちゃん、おいで」


私は手を伸ばして、チャールズに引き上げてもらった。

すぐに周囲に結界を張る。

マリー、メーガンちゃん、最後に姉が出てきた。


「レオン、教会の尖塔に、まだいるの?」


「うーん。それがいないみたいなんだ。ライフル銃も光も見えない」


「僕たちを見失ったから、撤退したのか、それともジックリと長期戦で監視することにしたのか。いずれにしても、こっちから行ってやろうぜ」


チャールズの言葉に全員が頷く。

皆で教会に向けて走り出した。


かつて広場があった場所なのだろう。

教会の周囲には、無事な建物が幾つか並び、近くに拓けた場所があった。

そこに沢山の人たちが集まっていた。

集まっている、というよりも、混乱のるつぼだ。

嘆き悲しみ、抱き合っている人もいる。

大ケガで、のたうち回る人や、瀕死の状態の人も多い。

沢山の人が亡くなってもいた。

痩せ細った子供達が泣いている。

腕を失って血を流し、助けてくれと叫んでいる人たちもいた。


私だけじゃないだろう。

皆がキツく歯を食いしばった。

それでも、やるべき事がまずある。

私達は、まず教会の中に入った。

そのまま、女神像のある講堂に入り込む。

女神像の前で礼拝している人もいた。


「天板が開きっぱなしだね」

「ロープもあるな」

「あの聖女がロープで上れるのかな」


私がいつも通り、結界で階段を作ると、レオンが剣を抜いたまま、登り始めた。

チャールズが、その後ろに続いた。

姉が背中からボウガンを外して、天井に向けて構えた。


「クリアー!」


上の方から声が聞こえた。

あの狙撃の老婆達は、いなかったと言う事だろう。

私達も尖塔まで登った。


自動機械を回収してから、皆で狙撃された場所を小窓から眺めた。

大分遠い。

千五百フィートくらいあるんじゃないだろうか。


「この距離で狙撃って出来るんだね」


「うん。ララちゃん、ライフル銃なら可能だよ。マクミランTAC-50は、この倍の距離でも行ける。実際に使っているのは五十口径だから、本当にそのライフル銃かもしれないよね」


「ララ、逆に光魔法の方が距離制限あるのかもしれないわ」


「ああ、そうかもね。距離と時間。そうか、撤退したのは光魔法が限界だったからかもね」


あの講堂で暗殺された時を思い出す。

光魔法使いは、かなり苦しそうに光魔法を使っていた。

多分、小さい時から頑張って鍛錬してきたというタイプじゃないのだろう。

痕跡を調べていたレオンが、薬莢を拾いながら、私達に言った。


「足跡は三人分あるな。狙撃の婆さん、光魔法使いに、護衛。やはり、その三人はチームで活動しているようだな」


「護衛さんは強いんだっけ?」


「メーガンさん曰く、槍使いらしいぞ。相当な腕前だと言っていた」


「なるほど。近距離担当もいるのか。嫌な敵だね」


「さぁ。仕事はここからですよ。みんな、頑張りましょう」


姉に言われて講堂にもう一度下りた。

フローレンス達も空間部屋から呼んだ。


この女神像の講堂を、治療室にすることにした。

女神像の裏に隠すように空間部屋への裂け目も作っておく。

何かあったら、笛を鳴らし、ここに避難する。

それを皆で決めた。

講堂の入口の警護は、町の兵士さんにお願いすればいい。


広場に出てから、メーガンちゃんが大きな声で宣言した。


「みなさま! ラージャスティ王国メーガン・ナイアール王女です! 一級冒険者パーティのエッジ・シーカーの方々と、この町の支援に来ました!」


「「「「おおー!」」」」

「「「「メーガン第一王女殿下だ!」」」」


メーガンちゃん、可愛いだけあって、大人気だな。

あっという間に町の混乱が収まってきた。

少なくとも、絶望感を薄れされる事は出来ている。


「まずは、支援体制を組みたいと思います! 教会の方! 兵士の方! 各領域のリーダーの方は私のところに集まってください!」


もうすぐ夕方になるので、今日は治療と炊き出しだ。

こういう時、一番役立たないのは、私だ。

フローレンスも、マリーも、姉は当然だが、皆リーダーシップがある。

チャールズとレオンが、兵士や冒険者風の人たちと、町の警護体制を相談し始めた。

姉、メーガンちゃん、ジョヴィが、炊き出しの差配を始める。

フローレンスは教会関係者や女性たちに指示を飛ばして、講堂での治療体制を早々に組んだ。

マリーはケガした人の搬送の差配やトリアージをするみたいだ。


「ララは崩れた建物の捜索をしてきて。まだ生存者がいるかもしれないわ」


「あ、うん、わかった」


フローレンスに言われて、私は町を歩いた。

崩れた建物全体に魔力が行き渡るように薄く広げる。

人らしきものがいたら、生死に関わらず、取り出して、道に並べた。

子供の頭とか、誰かの足首とか、見てられないよ。

遺体のほとんどは爆撃でバラバラになっているか焼け焦げていた。

ついでに瓦礫も一度全て収納する。

更地にした方が、復興活動も早まるだろう。


町を歩く人の全員が栄養不足に見える。

やせ細ってガリガリだ。

子供たちは衣服もぼろいし、栄養失調だ。

まともな物を食べることすら出来なかったのかもしれない。

思っている以上に、この国の惨状は酷かったのだろう。


日が暮れるまで、私はその作業を一人チマチマとこなした。

沢山の人を指示したり、チームで働いたりすることは正直苦手だ。

こうして一人で動く方が、確かに性に合っている。

色んな事を考えながら、私は作業に集中することが出来た。


翌日はメーガンちゃんが農家の人を集めてくれた。

町の近くの一番広い畑に皆で行く。

私は少し時間をもらって、広い畑全体に魔力を展開させた。

元々田んぼだったのだろうが、既に干からびた栄養の無い土地だ。

収納していた水を畑全体に撒き、雑草ごと、一度空間収納に格納して、年単位で休ませた。


「うん。大丈夫だ。大分健康になった。メーガンちゃん、みんなで種まきするよ」


ミレット、ソルガム、サツマイモ、マスタードも植えた。

農家の人は、米作でなくて良いのかと心配そうに王女に聞いていたが、メーガンちゃんから今年は税の徴収も免除しますと言われて、大喜びしていた。

その分、全員が一生懸命に働いてくれたよ。


「じゃあ、一期分作っちゃうよ」


皆がキョトンとしているが、詳しい補足はメーガンちゃんがやってくれるだろう。

私はそのまま収納魔法で畑全体を格納した。

思い描くのは、畑にとって最適な環境だ。

暖かな陽が差し、雨が降る。

そんな空間を思い描いて畑ごと移動させた。

何故かマリーが一番得意げにしているけど。


今度は九十日分時を進める。

再び畑に戻した時には、既に収穫できる状態だ。


「どう! 皆、見たわね! これが本物の女神の加護よ!」


「「「「おー!」」」」

「「「「女神様だ!」」」」

「「「「本物の使徒様だ!」」」」


何故だかマリーが得意げに宣言しているよ。

マリーに向けて、額を地面に擦り付けて礼拝しているけど、それは絶対に違うと思う。

メーガンちゃんは苦笑を浮かべているが、マリーは胸を反らせて得意げだ。


メーガンちゃん、マリーが差配して、皆が収穫作業を始めた。

ここから、収穫するものと、もう少し寝かせて種にするものを選別しないといけない。

マスタードは緑肥にする必要もあるのだ。

でも、賢いリーダーの王女コンビに任せておけば大丈夫だ。

私は少し休ませてもらうことにした。


サンテール王国アヴェリーヌのジャガイモ畑でも、かつて同じことをした。

あの時の畑よりも、もっと広い畑だ。

それをスムーズに、もっと短い時間で終わらせることが出来た。

魔力の疲労感も全然違う。

私も、確実に成長している。

それを噛みしめながら、地面に寝転んで、晴れ上がった空を眺めた。


想定よりも負傷者が多かったらしく、エネルギー鉱石を抱えたフローレンスが、最も疲労困憊していた。


もう一日、この町で過ごす事になった。

私はさらに周辺の二つの水田を開墾して、畑へと変えた。

それ以外の水田も時間が許す限り、耕すまでは頑張った。


翌朝、私達は町の人達に沢山の歓声で見送られながら、次の町へと走った。

マリーもメーガンちゃんも、心なしが足が軽そうだ。


「二人とも、体力がついた?」


「違うわ! 心が軽いのよ!」


マリーから、意味不明な返答が上がった。

最後尾から、それを馬鹿にする発言が投げられて、口喧嘩が始まる。


「でも、マリーちゃんの言う事はわかるわ。自分達が頑張れば、多くの人が助けられる可能性がある。それが足を軽くさせるのよ」


メーガンちゃんが言う事は理解できる。

あの今にも死にそうな人達に、たった二日半で光を灯す事ができた。

頑張れば作物が実る。

頑張れば生きていける。

そう思わせることが出来たのだ。

手応えを感じるには十分な変化だと思う。


次の町でも同じタイミングで、同じような距離で狙撃があった。

でも、こちらも想定していた事態だ。

予め魔力を展開していた箇所に穴を開けて、私達は飛び込んだ。

そして、斜め前方に穴を掘り進める。


でも、準備していたのは、あちらさんも同じだった様だ。


「ララちゃん、後方から光!」


「マジ? 穴に入ってきたってこと?」


角度を変えて穴を作り、光が届かない箇所を作った。


パリン!

ターン!

プシュ!


「うっ」

「撃たれた! チャックが撃たれちゃった!」


マリーの叫び声に反応して、レオンが戻ってきた。

四つん這いになって、最後尾のチャールズを引っ張り込んだ。


ターン!

バシュ!

ターン!

バジュ!


連続して穴に響く狙撃音が身をすくめさせる。


「ララ、ジグザグに掘って! チャールズはマリーに任せるのよ!」


姉に言われて、穴をジグザグに掘る。

これならば、光は入ってこれないはずだ。

もし進んできたら、落とし穴に沈めてやる。

少し進んだところに、広めのスペースを作って、照明魔道具で灯した。

チャールズも無事だったようだ。

最後尾のレオンが合流したところで、後方に落とし穴を展開した。


「良かった。チャックが撃たれて死んじゃったかと思ったよ」


「いや、ララちゃん……、僕、一度死んじゃったよ。首を撃ち抜かれたもの……」


「ああ、俺が行った時は、息していなかったな。マリーがいなければ、アウトだ」


「そうよ! これからは、マリー様って呼ぶのよ!」


「うう、何も言い返せねー……」


でも、そう言ってるマリーの顔には、涙の跡が沢山付いていた。

目も腫れている。

また大泣きしながら、時の魔法をかけたのだろう。


「さて、どうしましょうかね」


「アス姉さん、おそらく撤退しているでしょう。光魔法を相当使ったと思いますから」


「もう追ってきていないってことは、ララもそうだと思う」


「外に出ましょう! こんな暗い中は嫌よ!」


「そうね……。そうしましょう。次の町に入る時には、また考えないとね」


私は頭上に大きな穴を開けた。

相当深くまで潜ったらしく、地上まで、かなりの高さがあった。

穴を開けたら、狙撃銃が見えた、ということも無い。


そこには、綺麗な空が広がっていた。

穴の真上には太陽が見えた。


世界地図

挿絵(By みてみん)

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