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時の魔法と命の順番


目を開けると、マリーが何かを叫んでいた。

涙を流しながら、私を見て、叫んでいた。


あれ?

何だっけな。

何で、ここに寝ているのだろう。


「ララちゃん、結界を張って! 急いで! マリー、次だ! フローレンスを頼む!」


上半身を起こすと、レオンの盾を持って、私とマリーの壁になっているチャールズがいた。

マリーが這いつくばるように、私の右側に倒れているフローレンスに近づき、時の魔法をかけ始めた。

えんえん、大きな声を上げて泣きながら、時の魔法をかけている。

フローレンスは、目を開けて、死んでいた。


それを見て、私は身体から、全ての血が無くなったように、力が抜けた。

フラっと、上半身が揺らぐ。


そして、全ての記憶が戻った。

狙撃されたのだ。

頭を撃ち抜かれて、胸の魔石も割られた。

慌てて、胸に手をやった。


「あ、アス姉」


最後に見たシーンは、アス姉が撃ち殺されたシーンだった。

左手を見ると、その最後の記憶にある姿のまま、アス姉が死んでいた。

眉間を撃ち抜かれている。


「ララちゃん! 結界! まず結界張り直して!」


チャールズに言われて、私は壇上の結界を再び張り直した。


講堂にいた民はパニックになり、広場に向けて走って逃げている。

兵士達が講堂を封鎖するべく、扉を閉めようとしていた。

テオドール隊長は、壇上に登って、倒れているマリーパパの横で、胸を押さえている。

中将のオジちゃんも同じだ。

厳しい顔で、お母様とお祖母様の、遺体の横に佇んでいた。

遺体……。

そうなのだ。

みんな、死んでいた。

撃ち殺されていた。


きっと、次々と狙撃されたのだろう。

こんなに開かれた場所だ。

壇上には逃げ場もない。

一秒に二発くらいのペースで撃っていたと思う。

私だって、撃たれる直前に狙撃だと気づいたくらいだ。

銃を知らない、この世界の人が反応できる訳がないのだ。


ああ、そういうことか。

チャールズだけが反応出来たのだろう。

実際は、レオンもフローレンスも反応出来たのかもしれない。

でも、チャールズだけが反応して、狙撃から逃れられるくらいの速度で、一時退避出来たのだ。

そして、マリーさえいれば、時を戻して無かったことに出来る。

そう思って、マリーを抱えて、一時退避したのだろう。


凄いな。

瞬時に、そこまで判断できるなんて。

私なんて、今ですら、何をするべきか分からないのに。


「オッケー! マリー、次はアス姉さんだよ!」


「えーん、えーん、もう無理よ……、きっと間に合わないわ」


「出来る。マリーなら出来るんだ。頑張れ、きっと間に合う」


泣きじゃくるマリーをチャールズが叱咤激励して姉のところまで、引き摺って行った。

時の魔法が始まる。


私は吐き気と嗚咽を抑えるのに必死だ。

胃袋が反転している。

姉、フローレンス、レオン、ナスルのオジちゃんの、近くで目を開けたまま死んでいる顔が頭から離れない。

頭を撃ち抜かれたシーンが頭から離れない。

ダメだ、吐きそうだ。


ガンガンと結界を叩く音がして、顔を上げた。

ジョヴィが泣きそうな顔でこっちを見て、結界を叩いていた。

入れてくれ、ということだろう。

私はジョヴィを一度収納してから、結界の中で取り出した。

すぐにマリーのところに行って、背中を抱いている。


「出来るわ。マリーなら出来る。毎日練習していたもの。出来るわ」


ジョヴィは、そう言って、マリーの背中をさすっていた。


数分、その様子を眺めていると、姉が目を覚ましたみたいだ。

冷え切っていた身体に、少しだけ力が戻る気がした。


「マリー、頑張れ、次はレオンだ」


チャールズに抱きかかえられて、マリーはレオンのところに連れていかれた。

顔がグチャグチャだ。

私の背中に温かい手が当たり、癒しのエネルギーが注ぎこまれた。

あぁ、これはフローレンスだ。

凄いな、フローレンスは、もう動けるんだ。

私なんて、首を左右に振って、周りを見ることすら出来ないのに。


「ララ、大丈夫よ。みんな戻って来るから、大丈夫」


「うん……、フローレンス、ありがとう。でも、ララ、吐いちゃいそうだよ。胃から逆流してきているんだよ」


「分かるわ。私もよ。あの光の女の顔にゲロを吐いてやりたいわ」


光の女?

アリとかいう光魔法の使徒の事?

でも、あの子は光魔法をかけていただけだ。

狙撃していた訳じゃない。

どこにいるんだろうと、講堂を見渡したが、観客と一緒に外に出たのか、もう見つからないや。


私の次に、フローレンスは姉のところに向かった。

姉にも回復魔法をかけている。

姉の顔は真っ青になっていた。

ナスルのオジちゃんや、メーガンちゃんの方を見て、凄く辛そうな顔をしている。


「ララちゃん! エネルギー鉱石を! マリーの魔力が枯渇してきたみたいだ! 凄いエネルギーを消耗するらしい!」


そりゃ、そうだろう。

壊れた皿を元に戻すのではない。

人間を丸ごと元に戻すのだ。

時間もかかるし、エネルギーも使う。


私は、空間収納から大きなエネルギー鉱石をチャールズの足元に取り出した。

三フィートは超える特大の鉱石だ。

倒れているレオンの向こう側に、お母様とお祖母様の姿が見えてしまって、私はまた吐き気を催した。

無理。

とても、見れないよ。

マリーが大泣きしている理由が分かるよ。


「よし! マリー、頑張った! 次はマリーのお父様だ! 後は、端から順番にやろう!」


チラっと後ろをみると、レオンにフローレンスが癒しの魔法をかけている。

姉は……。

フラっと立ち上がって周囲の様子を確認していた。

フローレンスも姉も強いよ。

私は膝小僧の間に顔を埋めた。


あれは、狙撃だった。

光魔法ではない。

パンって言う銃声もしなかった。

プシュッって小さな着弾音がしただけだ。

凄く遠くから撃っていたのだと思う。

でも、どこから?


講堂ではない。

流石にあの人込みで、銃を抜いて構えたら、私達でも分かる。

広場?

でも、同じくらい人がいたよな。

撃たれたということは、私達からも見える場所だろう。


私は記憶を探る。

開かれた扉から、かなり遠くが見えていたはずだ。

門まで見えたな。

外壁?

外壁の近くには、木も植えられている。

そこからなら、誰にも見つからないかも。

でも、何フィートあるんだよ。

相当な距離だよ。


「パパ! パパ!」

「あぁ……、陛下……、王女殿下がお救いくださいましたぞ」

「よし! 次はヴァルデンの首相だよ! 行けるぞ! マリー! いけるぞ」


そんな声が聞こえた。

私の背中に誰かが抱き着いた感触がする。


「ララ? 平気?」

「うん……。でも周りを見られないよ、アス姉……」

「分かるわ。見ない方がいいわ」


姉とそんな話を耳元でしていると、後ろから声がかかった。


「ララ、俺を結界から出してくれ」


レオンの声が背後から聞こえた。


「ララ、レオンの身体に結界を纏わせてあげて」


「うん、アス姉、分かったよ」


「レオン、俺も行こう」

「俺も行く」


顔を上げると、中将とゲオパパだった。

私は三人の身体に結界を纏わせた。

一度収納してから、壇上の前に取り出す。

三人は外に向かって走っていった。

レオンも私と同じことを考えたのかもしれない。

多分、外壁近くの木々に痕跡がないかを探すのだろう。


「アス姉……、ララは何をすればいいのかな」


「わたしと一緒にこうしていれば良いのよ。みんなが戻ったら、美味しいご飯でも食べましょう」


「無理……。今、吐きそうなんだよ。食べ物のこと考えたら、間違いなく吐く」


私は結局顔を上げられなかった。

耳だけで、様子を伺っていた。


その間、どうして自分の結界が割れたのか、それを考えていた。

パリンと大きな音がして、その直後にプシュッと狙撃された音がしたと思う。

私の結界をも撃ち壊すことのできる銃?

そもそも本当にライフル銃なのかな?

レーザー銃とか?

結界が焼き壊されたとか?


膝の間に顔を埋めたまま、魔力を身体の中に浸透させた。

弾丸の痕跡はない。

ああ、時の魔法をかけられたのだ。

銃弾は消えちゃうのか。

存在すら『無かった』ことにされちゃうのか。

良く考えると、物凄い魔法だと思う。

宇宙物理法則を、世界の根底を、大原則すら無視する魔法だ。


私は隣に倒れるナスルのオジちゃんに、魔力を延ばした。

うぇっと、食道まで胃液がせり上がって来た。

頭には……。あった。銃弾が残っている。

それを空間収納に一度しまった。


普通の銃弾に空間結界が壊される訳がない。

そうなると、やはりフローレンスが言っていたように、あの光魔法使いが何かしたのか?

自分たちが光り輝いていた様子を思い出す。

でも、本当に光を当てられていただけだと思う。


パリンと割れる音がして、その後、少しだけ身体に揺らぎを感じた。

そうだ。

暑かった。

外気の気温を感じるということは、壇上に張っていた結界だけでなく、

身体に纏っていた結界すらも、壊されたということだ。

そうだよな。

そうじゃないと、銃弾を撃ち込まれても、身体に穴が開くことはない。

せいぜい骨折するくらいだ。


つまり、一気に外に張っていた結界と、身体に纏わせていた結界が割られたということだ。


壇上に張った結界だけであれば、物理的に破壊した可能性も完全には否定出来ない。

でも、全員の身体に纏っていた結界を一気に割るのは無理だ。

物理的にではないのだろう。


カスティリオ王国女王のお母様、そしてお祖母様、ナスルのオジちゃんの時が巻き戻ったみたいだ。

マリーパパが、サンパウリーナ王を次にしろと怒鳴っている。

でも、チャールズはメーガンちゃんを指定している。

口論が聞こえた。

マリーは、ちょっと黙っていて! と反論しているけど、メーガンちゃんに魔法をかけ始めたみたいだ。


ここまでムキになっているということは、もう制限時間が近いということだろう。

確か、今のマリーは三十分とか、それ位の時間制限があったはずだ。

その時間を超えると巻き戻せない。

これまで治したのは、私、フローレンス、アス姉、レオン、マリーパパ、首相、お母様とお祖母様、ナスルのオジちゃん……。

徐々に、時の魔法をかけている時間が、長くもなっている。

それだけ巻き戻さないといけない時間も、長くなっているということだろう。

次の人が最後かも知れない。

これは命の順番決めだ。


メーガンちゃんの時が戻った後、マリーはレオに着手したみたいだ。

メーガンちゃんの泣き声が聞こえたことで、彼女が無事に戻ってきてことを悟った。


私の近くに、両脇に誰かが座り込んだ気配がする。

私の手に重ねられる温かい手の温もり。

ああ、これは、お母様とお祖母様だ。


「ララちゃんや、何も責めることはないさね」

「そうよぉ。また、大きな山を私達は一緒に越えた。それだけよぉ」


「うん、うん……。でも、怖かったよ……、お母様とお祖母様のこと、ララは見れなかったよ」


「そうさね。わらわも、ララちゃんやアストリッドが倒れた風景が忘れられないさな……」


「マリーとチャールズを褒めてあげて。きっと、一番辛い思いの中、頑張ったのは、あの二人」


「そうさな……」


二人の手が強く握りしめられた。

二人とも、少し震えてる。

私だけじゃない。

みんな、怖かったのだ。

死ぬって、想像していたよりも、遥かに怖い。

家族を殺されるって、もっともっと遥かに辛く悲しくて、とても耐えられないような痛みだよ。


「うぉー! レオナルド!」

「あぁ……、陛下! 陛下!」


ああ、間に合わなかったのだ。

マリーパパや護衛の兵隊さんの泣き叫ぶ声が響き渡った。

お母様とお祖母様が、立ち上がる。

マリーのところに行くのだろう。


『俺に任せておけ』

そう言ったレオの言葉、その表情を私は思い出した。

あんなに強かった人が、こんなに簡単に、あっという間に死んじゃうのだ。


レオン達が戻って来た。

もう講堂にいるのは、各国の兵隊さんたちと、大使館の人たちだ。

私は少し広めの結界を張って、レオン達も大使館の人たちも結界の中に入れてあげた。


ゲオパパはヘルガ首相に何やら報告をしている。

中将は、お母様とお祖母様の無事な姿を見て、身体の力が抜けたように座り込んだ。


他方、助からなかったラージャスティの大使館や護衛の人たち、レオのところも一緒だ。

サンパウリーナ王国の関係者たちが嘆きかなしんでいる。

メーガンちゃんは国王と王妃の亡骸に覆いかぶさったように泣き崩れていた。


喜びと悲しみ。

対照的な光景が、壇上で広がっていた。


「マリーや。ようやった。わらわは誇らしいし、人生で一番感謝しておるぞ」

「そうよぉ。泣かないで、マリー。貴方は世界一の聖女よ」


「うえーん、えーん、あーん」


子供の様に、マリーが天を仰いで泣いていた。

お母様とお祖母様に抱き締められている。

ジョヴィも、その傍らで泣いていた。


チャールズは膝を抱えて頭を埋めていた。

フローレンスと姉が、抱きしめて頭を撫でている。


私はその姿を見て、漸く立ち上がることが出来た。

レオとニコニコ国王陛下の元に行き、帽子を脱いで黙祷した。

そして、彼らの頭の中から、自動機械を取り出した。

必ず。このカタキは討つからね。

そう亡骸の前に誓った。


「「敵襲! 敵襲!」」


憲兵隊がそう叫びながら、講堂に入って来た。

護衛の兵士達が、各国の首脳の近くに駆け寄って来る。


パリン!

講堂の大きな窓が幾つも割れて、自動機械が飛び込んできた。

アイツだ。

機関銃を搭載した蜘蛛型の自動機械だ。


ガガガガガガガ

私達の結界の外にいた憲兵達が一斉掃射されて、肉片に変わる。

カンカンカンカンカン

結界に銃が弾かれる音が鳴り響いた。


私は魔力をグワっとさらに広げて、講堂全体を囲うような結界を外側に張った。

逃がすものか。


外側の結界の中に魔力を浸透させ、中にいた自動機械を特定していく。

1,2,3,4,5……。

蜘蛛型の自動機械が七つ。

監視の自動機械が三つ。

全て収納した。


「船よ! ララ、船!」


「わかった。ララが行く。レオンついてきて」


「了解」


「ララ、俺も行くぞ」

「僕も行くよ! 絶対見つけ出してやる」


「中将とチャック。そしてララとレオン。四人で行く。残りは結界の中にいて」


「ララ、おそらくサンパウリーナ王国の旗艦船よ」


「何を! 我が国をお疑いになりますか!」


「ラージャスティは船で来ていません。馬車で入国しています。イフヤ共和国以西の国は自動機械が仕込まれる余地がもうないのです。別にサンパウリーナ王国の人たちがやったとは言っていません。おそらく利用されているのです」


姉がサンパウリーナの人たちに説明しているが、私達はそれを無視して、結界の外に出た。

全員に透明魔法付きの結界を纏わせる。


「先頭はチャールズとレオン、中将のオジちゃんは、ララと手を繋いで」


「了解」


私は中将のオジちゃんの手をギュっと握って、足元だけを見た。

チャールズとレオンが走る痕跡だけを辿って走る。

広場に出たところで、街中が攻撃されているのが分かった。

大パニックだよ。

みんなが逃げ回っている。

早く建物に入った方が良い。

そう願いつつ、私達は走った。


ガガガガガガガガ

自動機械に撃たれたようで、チャールズとレオンがこちら側に倒れ込んできた。

私は彼らの影に入っていたから無事だったけど、中将のオジちゃんからは、くぐもった声がした。

おそらく何発か食らったのだろう。


「くそ、痛ぇ」

「チャールズ、走るぞ。俺が盾を構えて先頭を走る」


私達も立ち上がって、また走った。


ガガガガガガガガ

カンカンカンカンカン

痛い、痛い、痛い、痛い

メッチャ撃たれているよ。

どして?

ジグザグに走っているし、もう広場は抜けて、大通りに出ている。


「向こうからは、見えているみたいだ!」


レオンから声が上がった。

透明魔法が効いていない?

あり得ないよ。


「ララちゃん、僕が自動機械を壊してくる。レオン達と走り抜けて」

「わかった」


チャールズがそう言って、違う方向に走って行った。


「ララ、担ぐぞ。レオン、速度を上げるぞ」

「了解です」


中将のオジちゃんに抱きかかえられた。

一気に速度が上がる。

また、機関銃の音と、弾が盾に当たって弾かれる音が聞こえた。

多分、レオンと中将のオジちゃんには、何発か当たっているのだと思う。

それでも、速度を緩めない。


何度か隠れたり、またダッシュしたりを繰り返しながら、サンパウリーナ王国の旗艦船のタラップを駆け上った。

甲板の中央で私は周囲を囲む結界を張った。


「オッケー、結界を張ったから、透明化を解除するね」


大きく息を吸って、旗艦船の甲板上に薄い膜の様な魔力を張る。

これまでの経験から、大体どの辺に自動機械を配置するのかは想像がつく。

真ん中の方に置かないと、船のバランスが崩れるのだ。

だから、おそらく、この辺だろうとあたりを付けながら探った。


「見つけた。やっぱり、この船だよ」


「もう一度、透明化しよう。船底に向かう時に見張りの兵士に見つかるのを避けたい」


「ララ、抱え上げるぞ」


「あ、ちょっと待って、チャールズがいるみたい。結界を叩く音がする」


チャールズと合流して、四人で透明化して甲板を降りた。

下へ下へ降りる。

どうせ、自動機械があるのは、船底だ。

一番下まで降りて、床を剥がした先に置いてあるのだ。


通信の自動機械は想像通りの場所に置かれていた。

剥がした床は敢えて、そのままにした。

中将のオジちゃんが、床の中を覗き込んで、周囲の様子を確認していた。

私は一度床の上に置いて、チャールズに確認させた。

都市型の通信自動機械だと、チャールズは断定した。


「ララちゃん、見て」


通信の自動機械を回収して、私達は甲板まで上がった。

教会の講堂に戻ろうと思っていたところ、チャールズが空を指さして言う。


「みんな、止まって。結界張るよ」


チャールズが指さしたのは、あの空を飛んで機関銃を掃射する自動機械が戻ってきているからだ。

それも何台も。


結界の中で自動機械が近づいてくるのを待つ。

ところが、私達の存在に気付いてはいるだろうが、全く攻撃せずに、船の中に入って行ってしまった。


「換気ダクト?」


「そうみたいだね。換気ダクトの中に皆入って行ったね」


「チャック、どういうこと?」


「うーん。正直、全く分からないんだけど、あの自動機械は通信範囲でしか活動できないよね。通信が途絶えると、自動的に戻る場所が決まっているんじゃないのかな。推測に過ぎないけど」


「ララ、チャールズ、そもそも、この船に自動機械を設置したのは誰だ? あの参謀か?」


「中将、それ、僕らにも分からないのです。先ほど見た様に、床に残った跡を見る限りは、結構古くから設置自体はされているのですよね」


「ふむ」


「チャック、換気ダクトを辿ってみようぜ」


「そうだね。概ね、各階の天井とキッチン関連だと思うよ」


「ララが各階で魔力を展開して調べるよ」


再び、甲板から階段で下に降りた。

換気ダクトが通っているところを起点にして、魔力を広げて確認する。

チャールズの言った通り、天井裏にダクトは走っていて、それが各部屋の喚起の役割をしているみたいだ。


すぐに自動機械の所在は分かった。

換気ダクトの中に、ただ並んでいるだけだ。

甲板の真下、地下一階部分の天井裏にある換気ダクト。

その中で動きを止めていた。


「ここら辺から、三部屋先くらいまでかな。そこにいる。動きを止めている」


「マジか。ちょっと中を見てみたいな。チャールズ、肩を貸せ」


中将のオジちゃんが、部屋の中に入り、天井付近にある換気口を強引に開けた。

かなり狭い換気口なので、奥までは見えないみたいだ。

レオンが部屋にあった手鏡をチャールズの肩に乗っている中将のオジちゃんに渡した。

オジちゃんは、手鏡を換気口の中に挿しこみ、角度を変えながら見ている。


「ああ、いるな……。動きを止めているだけだ。手を突っ込めば触れる場所にもいるぞ」


「自動機械の駐車場として作られた訳じゃない感じですかね」


「そうだな。換気ダクト自体は、普通のダクトだ」


「ララちゃん、どうする? 全部収納しておこうか」


「そだね。そうするよ」


自動機械を回収した後、教会の講堂まで戻った。

中将のオジちゃんがサンパウリーナ王国の大使館や護衛隊長に説明していた。

旗艦船の船底に繋がる床を剥がしておいたから、後で自分たちでも確認しろと言っている。

相当前から設置されていたことも、周囲の様子を見れば一目瞭然であろうと。


チャールズ、レオン、中将のオジちゃんをフローレンスが治療していた。

三人とも相当数被弾したようで、見えているところだけでも酷い状態だった。

中将のオジちゃんは、私に当たるはずの弾も代わりに受けてくれたのだ。

お母様とお祖母様からも、褒められていたよ。


世界地図

挿絵(By みてみん)

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