暗殺
「何なの? アイツ何なのよ」
光の使徒が私達の近くを離れて、壁際に戻っていった。
その背中に向けて、マリーが呟いた。
でも、全員と仲良くなれる訳ではないのだ。
誰とでもすぐに仲良くなるマリーには、分かりにくいかもしれない。
私は、マリーの肩を叩いて、気にするのはやめようと伝えた。
私達に紹介したラージャスティの王様と王妃がオロオロしている。
「ララ様、大変申し訳ございません。まさか平民のシスター如きが、高貴な方々に失礼を働くとは考えておりませんでした。こちらで対処いたします」
「はい。本当に申し訳ございません。厳罰を与えますので、どうか御赦しを……」
ニコニコ顔が見るからに萎んで謝っていた。
でも、私はそこまで気にしている訳ではない。
首を振って気にしていないことをアピールした。
「大丈夫。気にしていないから平気。罰とかも要らないからね」
先ほどまで、光の使徒と会話していたチャールズも、私の言葉を補足するように話した。
「はい。僕らは本当に気にしておりません。選ばれし使徒とは言え、考え方が違うこともあるのです。これまでもありました。どうか、国王陛下も王妃殿下も、お気になさらないようにお願いします」
「ララ様もチャールズ様も有難うございます。我が国の教会から強く推薦があったために、今回の旅団に随行させたのですが、間違いだったようです」
「彼女はシスターだと仰いましたよね?」
「そうです。我が国の東の端の小さな町の教会で育てられたそうです。レスレベルハリ(Reslebelhari)というサンパウリーナ王国首都ポルト・ド・ソルとの国境近くの小さな町です」
「カリーム・アーバの女神像に参拝に来られない遠さですね。ポルト・ド・ソルの方に向かったのでしょうか」
「いえ。あの娘は平民でございますから、聖地カリーム・アーバへの巡礼以外は国を出ることも町を離れることも認められておりません」
先ほどから『平民』という言葉が強調して使われている。
ラージャスティが身分格差のある社会だとは聞いていたが、どれ程の物なのだろうか。
少し気になったので、私も質問してみた。
ニコニコ王様は、笑顔で誇るように明快に答えてくれたけど、その内容は酷く差別的な内容だった。
『シュードラ』とか『ヴァイシャ』とか、そういう呼び名で、身分が四つに分かれているそうだ。
一番下は、平民。単なる労働者だと言う。
一番上は、王族。
平民(商人・農民)→兵士・司祭→貴族→王族。
全人口の割合としては、平民が半分以上を占めるそうだ。
司祭はさておき、シスターなど平民に過ぎない。
自国であれば、同じ部屋に同席することすら、ありえないと言っていた。
「我が国では『礼』という教育が徹底してなされております。社会的な礼儀や儀式を重視し、秩序を保つための行動規範です。決して裕福ではない国ですが、教育制度だけは我が国の自慢であります」
ニコニコ王はそう胸を張って言った。
礼というのは、例えば、兵士や司祭が道を歩いていたら、平民は頭を地面に付けて礼を尽くすということだそうだ。
つまり、あのシスターは私達と立って話していただけで、著しいマナー違反だと。
「でも、ララは別に貴族ではないので……」
「ララ様、何を仰いますか。ララ様は今では使命のために、身分を御隠しになられていますが、元々は高貴な姫。エイナル・アフ・スヴェンソン教皇閣下の姫ではございませぬか」
「あなた、それだけではございませぬよ。一級冒険者は貴族同等の身分と扱われます。かつ、サンテール、カスティリオからは自国の王女と同等の扱いと周知されておりますよ」
ニコニコ王の言葉をニコニコ王妃が補足した。
なるほど、そういう解釈なのかと理解した。
この人たちは全く悪気もなく言っているが、きっと普通に会ったら、会話もしてくれないのだろうなとも思う。
良い人だが愚か者。
お母様とお祖母様が言っていることも、何となく分かって来た。
「あの光の使徒は、どうやって降下したの?」
「私どもが教会から受けた報告によると、ナヴァラトナ大河で流れていたところを助けられたそうです。国境の町レスレベルハリの教会に運び込まれた時には、既に溺死寸前であり九死に一生を得たそうです」
ナヴァラトナ大河とは、ラージャスティに唯一流れる大きな河だそうだ。
ラージャスティには高い山もなく、雪解け水も多くはない。
さらに降雨量も少ないので、ナヴァラトナ大河は貴重な水源でもある。
首都ナヴァラトナだけでなく、第二都市ウマラセドリも、その貴重な水源であるナヴァラトナ大河沿いに建てられている。統一街道でさえ、それに沿っているくらいだ。
その大河の終端に町があり、それが国境の町レスレベルハリだと言う。
それを聞いて、ひょっとしたら、首都ナヴァラトナに降下したのだが、何かがあって、川に落ちて、流されてしまったのではないかと思った。
そうだとしたら、凄く運の無い使徒だと思う。
「でも、教会に運び込まれて良かったね。そのまま海に流れていたら危なかった」
「ララ様は平民にも慈悲の心を……。何とお優しいのでしょう。感動いたしました」
「全くですわ。教会での生活はひどかったでしょうが、命あるだけマシというもの」
「え、教会での生活って大変なの?」
「司祭もいないような小さな町の教会に、大きな価値はございません。女神様に祈りを捧げる民たちの慈悲で生かされているような者達です。我が国では最も罪深い魂を持って生まれた者だけが、孤児となり教会で生きると言われています」
「メーガンちゃんも教会育ちだったよね?」
「メーガンの場合は少し異なります。首都ナヴァラトナの司教に育てられました。十歳の時には私達の養子になったので、最初から魂の穢れが無く素晴らしい輝きを放っておりましたから」
ニコニコ王曰く、幼い時から優秀さが光っていたらしい。
何度か話して、彼女の魂の輝きを確認したのちに、王女として迎え入れたと言っている。
女神様のお導きでしょうとニコニコしていたよ。
でも、ちょっと、それは、あんまりなのではないかと思った。
おそらく、同じように首都の司祭に預けられる想定で、光の使徒は送り込まれたのだと思う。
多分、手違いだと思うのだ。
そう考えると、彼女の少し歪んだ感じ、重い表情の理由も推し量ることが出来る。
※
夕食は全ての国の首脳が一堂に会した晩餐会だった。
マリー、お母様、お祖母様によるピアノ、バイオリンの演奏も披露された。
私達はナスルのオジちゃんに気を遣われたのか、サンパウリーナ王とは反対側の位置に座らされた。
ラージャスティの王家の人たちの近くだった。
そのおかげで、メーガン王女とゆっくり話すことが出来た。
メーガン王女は、私に農業の支援を要請してきた。
もちろん、問題ないと二つ返事で受けた。
私も国の状況を聞きたいと思っていたのだ。
「私達の国の主食は米だってことは知っている?」
「あ、そうなんだ。小麦じゃないんだね」
「うん。そうなの。そもそもの問題はそれだと思うの」
ラージャスティは東の国々と同じように、米食を好む文化だ。
ただ、米作には、皆が知っているように、水田が必要だ。
水が豊かな土地でないと育めない作物でもある。
要は降水量の少ないラージャスティに、そもそも米作は合っていないのだ。
メーガン王女は色々なことを勉強して、そのことを知った。
ただ、王家や貴族は自分たちの食欲を満たすために、米を税として徴収している。
その結果、農家は米を作らざるを得ない。
大して多くは取れない米に力を注ぐため、平民に回る食料が少ないという訳だ。
「なるほど。水の問題を解決するのは凄く時間がかかると思う。別の作物を育てるのでも良いの?」
「勿論。ララちゃん、でもラージャスティには他の作物を育てるにしても……」
「大丈夫。それはララが渡すよ。米作ってことは、もうすぐ田植え?」
「そうなのよ。十一月から十二月に始まるわ」
「じゃあ、その前に行って、違う畑に変えちゃおう。ダメな地域って決まってるの?」
「西側は全滅よ……、東のナヴァラトナ大河沿いだけで保っているのよ。貴族たちは東にしかいないでしょ? だから、西の惨状が分かっていないのよ」
「わかった。やろう。でも、メーガンちゃん、決断しないといけないことがある」
「うん、税よね?」
「そう。乾燥した土地に相応しい穀物をララは渡せる。その育て方も教える。でも、米は無理。ジャガイモは時期が合わないから、サツマイモ、ミレット、ソルガムを十一月から十二月に植える」
「民の困窮を救わないとラージャスティは崩壊するわ。私がお父様に言う。だから、そこは心配しないで」
「分かった。三月には収穫できると思う。ララは全部の畑にはいけない。だから、通った町に教えてまわるから、国の中で伝えられる様にして欲しい」
「ララちゃん、私も同行する。一緒にやらせて。ね、お願い」
つぶらな瞳で真っすぐ私を見て、メーガン王女はそう言った。
綺麗な顔だなと、少しボゥっとして眺めてしまった。
「勿論いいよ。でも、従者はいない。メーガンちゃん、一人だけがついてくる旅になっちゃう。調印式が終わったら、ララ達の高速船で出発するから、王様と王妃様には今日のうちに言っておいてね。荷物があれば、先に預けておいて」
「分かった。今、言うわ。荷物も晩餐会が終わるまでには持ってこさせる」
本当に今、この場で話が始まった。
同行することだけでなく、東部以外の地域の米作をやめる話まで始めた。
凄い行動力だし、凄い明快な話し方だ。
途中で私は話を振られたけど、上手に話せない。
姉とフローレンスがカバーしてくれた。
私は農業の学術的な話だけをすれば良い。
三人の優秀な姉達が私をカバーしてくれる。
フローレンスは同じ歳だけど。
この間のサンパウリーナ王との会談もそうだったけど、自分の会話力の無さに嫌気がしてくる。
もう少し大人になったらって思っていたけど、多分、これが私の性格、特性なのだろう。
上手く話せないし、長く説明できない。
いつも言葉が足りないのだ。
そんな風に自信無さげにテーブルの下の自分の指先を眺めていると、おい、と呼ぶ声がした。
「あ、レオ。どした?」
私の席の後ろに、サンパウリーナ王、レオナルドが立っていた。
チャールズとレオンが席を立って、その横に近づいてきた。
「ふ。過保護だな。お前らが守る必要がないくらい、このガキは強いじゃねーか」
サンパウリーナ王は笑顔を浮かべて、チャールズとレオンに言った。
「まあいい。ララ、これを持っていけ」
ポイっと私のテーブルに、幾つかの書類を置いた。
「これ何? 御手紙?」
「ああ。一つはサンパウリーナ国内の通行手形だ。俺の直筆でサインしてある。紋章入りだ。国内で何かあれば、これを見せろ」
「ありがと、レオ、助かる」
「ああ。もう一つはサン・ミラージュに行った時に、冒険者組合を訪ねろ。サン・ミラージュのことは知っているか?」
知らないと私は首を振った。
レオ曰く、元々レオ達の民族が住んでいた南の島の街らしい。
サンパウリーナ海峡の南側にある島だ。
大きな港があり、船が沢山ある魚が美味しい街だそうだ。
「そこに、選ばれし使徒がいる。元々はポルト・ド・ソルに降下したのだがな。海が大好き過ぎて、サン・ミラージュで漁師に弟子入りしている。そいつ宛の手紙だ。いつか訪ねろ。そして……、そうだな、出来れば友達になってやってくれ。良い娘だぞ」
アリシア・ロペス(Alicia Lopes)。
風神の加護を持つ使徒だそうだ。
風の魔法使いが漁師?
そう思ったけど、この世界の船は帆船だ。
ひょっとしたら、一番良い仕事かもしれない。
「分かった。ありがと。ララ、アリシアさんの友達になるよ」
「ああ。まあ、なんだ……。お前なら、あの娘とは合うだろう。アイツも肝の座った娘だし、上手く言えんが、都市よりも大自然が似合うのも似ている」
レオなりに、私に気を遣ってくれたのだろう。
頬をポリポリ搔きながら、少し照れたように話している。
マリーパパに何か言われたのかもしれないし、
自分なりに考えることもあったのだろう。
「レオ、怒っていないの?」
「あ? 何をだ」
「ララ、この間、レオを怒らせるようなこと言っちゃった。ちゃんと、仲間になって欲しい、ララを助けて欲しいって言うべきだった」
「ふっ。今、言ってもらったからな。もう十分だ。俺に任せておけ。それにな。お前なりに周りが敵ばかりの中、気を張って生きてきたのだろう? フィリップにも言われたぞ。父親にすら信じてもらえなかった少女が、頑張って自分の足で歩いているのを、お前は邪魔するのか、とな。すまなかったな」
マリーパパ、ちょっとだけ見直したよ。
でも、イキった中学生男子みたいな会話だな。
「あの参謀とか言う人に、レオはきっと怒られる」
「ああ気にするな。元々は俺の問題だ。アイツに頼り過ぎた。だが、国王は俺だ。最後の判断は俺がする」
レオは少し恥ずかしかったのか、両脇にいるチャールズとレオンに絡み始めた。
中学生のまま大人になった男子が、本当の中学生男子達に絡んでいる。
お前らは弱すぎだとか、
立ち方と身体の向きが悪いとか、
そのうち、具体的な指導が始まってしまった。
マリーパパまでもやってきて、それに喜んで参戦し始めたよ。
私は姉とフローレンスの顔を見て、小さく頷いた。
二人とも笑顔で頷き返してくれた。
「ララちゃん、一曲、歌うさね」
カスティリオ王国女王のお母様のご指名だ。
頑張って歌うことにしよう。
私は席を立って、晩餐会の会場の端に向かった。
少しだけ、晴れやかな気分になれたよ。
※
同盟締結式は、首都カリーム・アーバの一階講堂で行われた。
女神像が鎮座している台の前に、もう一つ台を設置して、その前で民に向けて宣言する。
女神にも認められた同盟という形にするのだ。
沢山の民が講堂に集まった。
混乱の最中、ナスルのオジちゃんが新しい国を立ち上げた。
それを近隣の国が同盟相手として認めてくれたのだ。
会場中に歓迎と喜びが溢れていた。
壇上に上がったのは、各国代表。
そして、何故か私達もだ。
壇上に向かって左から、サンテール、ヴァルデン、カスティリオ。
そして私達が間に入り、イフヤ、ラージャスティ、一番右にサンパウリーナと、私達を除けば、大陸の国の位置通りに並んでいた。
サンテール国からは、フィリップ・ド・フランス国王(Philippe de France)。
そして、王女アンヌ=マリー・ド・フランス (Anne-Marie de France)
ヴァルデン共和国からは、首相のヘルガ・フォン・アウグスブルク(Helga von Augsburg)。
カスティリオ王国は、もちろんお母様とお祖母様だ。
ナタリア・デ・サラゴサ(Natalia de Zaragoza)
カタリナ・デ・ラ・クルス(Catalina de la Cruz)
私達五人が並び、壇上に向かって右手には、イフヤ共和国のサミール・ナスル (Samir Nasr)国家元首が立っている。
ナスルのオジちゃんの向こう側には、ラージャスティの王家の三人がいた。
国王ラフール・ナイアール(Rahul Nair)
王妃カリシュマ・ナイアール(Karishma Nair)
王女メーガン・ナイアール(Megan Nair)
一番端に、豪華な金髪のサンパウリーナ王レオナルド・ダ・コスタ(Leonardo da Costa)がドンっと構えていた。
今日は全員が正装だ。
マリーも豪奢なドレスを着ている。
お母様とお祖母様もだ。
あれだけの豪奢なドレスだと、ちょっと話しかけずらい。
私達はいつもの恰好だけど、さすがにマントと帽子は置いてきた。
少し無防備な感じが気になってしょうがない。
既に調印自体は二階の会議室で署名済み。
今は、締結された同盟の内容を、ナスルのオジちゃんが掲げながら、民に説明をしている。
私は拍手と歓声を送る民を壇上から眺めていた。
壇上の真下には、私達を守る護衛の兵士さんや憲兵さん達が並んでいる。
この講堂に集まった民の中に、不届者がいたとしても、壇の下に並ぶ兵士さん達が、身体を張って止めてくれるのだろう。
念のために、壇上全体を私は結界で囲っていた。
観衆の先頭には、見知った顔の人たちもいる。
ナスルのオジちゃんの執事さんも、イフラシアで知り合った人たちの姿も多くあった。
先日仲良くなれなかった光の使徒インドラ・アリ (Indra Ali)さんも、そこにはいた。
開かれた講堂だけあって、窓も大きく、採光もバッチリだ。
扉も全て開かれているので、講堂の外、広場にも沢山の人たちがいるのも見える。
門の方まで見渡すことが出来た。
『ここに! 南六国連合の同盟締結を! 宣言する!』
ナスルのオジちゃんが大きく手を挙げて宣言した。
講堂の観客から、広場の方の人たちからも、大きな拍手と歓声が再び上がった。
壇上の私達全体が明るく輝いた。
壇上に上がっている者たちが、まさに世界に平和を与える使徒である。
そう主張するように、ひと際、明るく輝いた。
壇上がいきなり輝いたのを見て、観客はさらに大きな歓声を送ってくれた。
きっと、何かの演出だと思ったのだろう。
「女神様の祝福だ!」
誰かがそう叫んだ。
さらに興奮する人たち。
先頭の何名かは、額を床に付けて礼拝を始めたくらいだ。
「「「「おー!」」」」
「「「「女神様が!」」」」
「「「「平和の使徒様たちに!」」」」
会場の熱気が、ヴォルテージが、数段上がった気がした。
私は壇上の様子を伺うべく左右を見渡した。
本当に光輝いている。
仲間たちも同じようにキョロキョロ見渡しているよ。
「ララ、光の使徒よ」
フローレンスが小さい声で囁いた。
私は前列の方にいた光の使徒インドラ・アリの方を見た。
両目を瞑って、両手を壇上に向けて、魔法を放っていた。
あれか。
辛そうな顔をしているし、額には汗が浮かんでいる。
魔法レベルは高くないのだろう。
全力で、壇上に光を送り込んでいた。
パリン!
大きな音がした。
何かガラスが割れた音だ。
その瞬間、私達の身体が、何かのフィードバックを受けたように反応を感じた。
少し、身体が揺れた気がした。
ウワっと身体に感じる熱気。
暑い。
人が多いからか、酸素が足りない様に感じた。
少しだけ人の体臭がキツく感じる。
プシュッ!
そんな音がした。
その後に、バタっと何かが倒れる音が。
プシュッ!
プシュッ!
プシュッ!
左手にいたラージャスティの王家の三人が、額から血を噴出して後ろ向きに倒れた。
その向こうのサンパウリーナ王は既に、仰向けになって倒れている。
プシュッ!
ナスルのオジちゃんの眉間の真ん中に穴が開き、血が流れた。
チラっと私の方を見る目と目があった。
ユラリと後方に倒れていく。
プシュッ!
私とナスルのオジちゃんの間、私の少し斜め後ろにいた姉が撃たれた。
頭を一撃。
ナスルのオジちゃんを見ていたからか、眉間を撃ち抜かれたようだ。
そうだ。
これは狙撃だ。
誰かが、私達を狙撃している。
結界は?
結界に囲っていたはずだ。
ありない。
あ、あの割れた様な音は結界が割れたのか?
え? アス姉?
頭を撃たれたって……。
結界もないのに?
え?
嘘でしょ?
姉の綺麗な金髪が血に染まり翻った。
プシュッ!
私の後頭部に衝撃が走った。
姉を振り返っていたからか、観客に完全に背を向けていた。
その後、背中にも。
パン!
胸の中で何かが砕けた音がした。
あぁ、魔石を割られたのか。
あぁ、魔石を割られるとこうやって死ぬのか。
せめて、マントと帽子を着ていれば……やってしもうた。
そう感じたのが最後の記憶だった。
世界に闇が訪れて、私は死んだ。




