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カスティリオ王国からの出航


南半球の九月は、大抵の都市では未だ寒い冬の空だ。

でも、このカスティリオ王国の港町ラ・フールの空は、もう春、いや夏に近い空をしていた。

太陽の位置が高く見える。

雲は高いところに浮かんでいて、空が二回り程、広くなった様にも見える。

おそらく、南半球の中でも緯度が低い、要は赤道に近い場所にあるからだと思う。


基本的に、この星は非常に温かい惑星だと思う。

北極点に近い北の大地は、さすがに人が棲める環境ではないが、

南の方に向かうのなら、南の島の端以外は、充分人類が生息可能な領域が広がっていると思う。

ただ、ウィンザーグローブを筆頭に非常に高い山が多くある大陸でもあるので、

気候の変化は、周辺の地形に大きく影響されている。


ここラ・フールは、少しサンテール王国首都リュミエールに似ているかもしれない。

入り江に位置する港、穏やかな海、明るい街、暖かな太陽の光。

リュミエールは、そのまま『光』を意味する名前だが、ラ・フールは『花』だ。

太陽の光を浴びて、色とりどりに咲く花々が、この街の特徴でもある。


全く思いがけず、サンテール王国フィリップ・ド・フランス国王(Philippe de France)が、この街を訪れた。

西の大国ヴァルデン共和国ヘルガ・フォン・アウグスブルク首相(Helga von Augsburg)を伴ってである。


私達は、ラ・フールの『中央塔』と呼ばれる役所の最上階に入った。

中央塔の最上階には、来賓をもてなすための迎賓館の様な設備があり、今はその宿泊部屋を女王と宰相が使っている。

ラ・フール港にサンテール王国とヴァルデン共和国の多数の戦艦がやってきたことは、早々に周知されていたのだろう。

中央塔最上階の迎賓館の入口で、この街の代官エレナ・バルガス(Elena Vargas)と姉が出迎えてくれた。

姉とマリー、ジョヴィは長い長いハグを交わしていた。


五十人は入れるような国際会議場の様な部屋に通されて、早速協議が始まった。

サンテール王国の国王マリーパパの後ろには、テオドール隊長が護衛として立っている。

ヴァルデン共和国のヘルガ首相の後ろには、ゲオパパだ。


私はカスティリオ王国のナタリア・デ・サラゴサ女王(Natalia de Zaragoza)の左に座っている。

右は、カタリナ・デ・ラ・クルス宰相(Catalina de la Cruz)だ。

つまり、カスティリオ王国の人みたいに座らされているということだ。

私の真後ろには、オスカー・フェルナンデス中将(Oscar Fernandez)が護衛に立つ。


姉はエレナ代官と共に、司会者席に座り、その後ろにはレオンが控えている。

チャールズ、フローレンスはマリーとジョヴィと一緒に何処かに行ってしまった。


「それでは、三国の首脳会談を始めさせていただきます。扱いは非公式会談ということにしますので、忌憚のない意見を交わしましょう」


姉の宣言で急遽首脳会談が始まった。

非公式ということもあるのだろう。

最初に発言したのはマリーパパ。

かなり砕けた口調で話し始めた。


「なぁ……。ララがカスティリオ王国の王女の様に見えるし、アストリッドが外務大臣として振る舞っているが……。ナタリア、カタリナ……、お前ら独占しすぎじゃねーのか。そもそも、最初に庇護したのは俺で……」


「黙れ。うつけものに預けたら、ララちゃん達が穢れるわ。マリー含めて、わらわの元に預けなされませ。必ず造詣の深い娘に育てるでおわす」

「そうよぉ。カスティリオ王国の良い後継者が見つかったわ。アストリッドは宰相に。ララちゃんは国王に相応しい器よ」


「ダメだろ! ダメに決まっておるわ!」


「女王陛下、宰相閣下も……、終末の使徒パーティは、我がヴァルデン共和国にとっても、最高の賓客です。大恩ある神の使徒。流石に一国で独占するのは如何なものかと」


「却下。わらわは決めたのじゃ」

「アストリッド。戯言を止めよ。早く議題を進めるのよ」


「は! それでは、サンテール国王陛下、一旦、私達の扱いはさておき、カスティリオ王国への訪問理由と同盟の件、改めてご説明頂けますでしょうか」


姉の仲介で、一旦、矛を収めた二国だが、後ろの護衛隊長たちも苦虫を嚙み潰した様な顔をしていた。

まぁ、女王のお母様と宰相のお祖母様が言っていることは、半ば冗談だと思う。

私達が、女神討伐のために東に、少なくともバイシンの賢人さんに会いに行かないといけないことは、二人とも知っているし、その背中を押しているのも、この二人だ。


首脳会談が始まるまでの間に、私は姉にも二人にも聞いた話は説明しておいた。

それでも、マリーパパが、丁寧に詳しく説明してくれている。

五か国の同盟締結が、ほぼ固まったこと。

そのため、カスティリオ王国には降伏を通達しにきたこと。

クーデータが収束して国の運営が正常化されているのであれば、同盟に加わって欲しいことを話した。


「マリーパパ、同盟って、具体的にはどんな内容なの?」


「ああ、ララの部屋の文献を参考にさせてもらったぞ。今回は軍事同盟から始めるつもりだ。相互不可侵。同盟国が他国から侵攻された場合は、皆で戦う。ただし、他国へ侵攻した場合は除く」


「経済と文化面は無いのね?」


「それを最初から入れると纏まるものも纏まらんからな。その辺は、各国間で個別条約から開始しようとなった。最終的にはナスル国家主席が判断した」


「良いこと。カスティリオ王国も参加するでおわす」

「フィリップ、調印の手筈はどうなっているのですか?」


「ああ。一か月後の十月中旬に新生イフヤ共和国首都カリーム・アーバで調印式を行う予定だ。ラージャスティからは国王夫妻が、サンパウリーナからはレオナルド自ら来るそうだぞ」


レオナルド・ダ・コスタ(Leonardo da Costa)。

サンパウリーナ王国の国王だ。

十王の一人で、稀代の戦上手と言われている。

サンパウリーナ王国派、元々南の島にあった国だが、レオナルドが王様になった後、北部のカサ・デ・アグアに侵攻し、その地を侵略して併合した。

カサ・デ・アグアは、さらに北部に逃れるしかなく、今ではユニオン・リパブリックの東側の地に追いやられていた。

その戦国強者な振る舞いが、女王のお母様と宰相のお祖母様は好きではないらしく、凄く嫌な顔をしている。

チって舌打ちまで聞こえたよ。


「まあ、よきこと。わららも、カタリナも出席しよう」

「そうね。私も行くわ。オスカー、船はあるのかしら?」


「は。オリベイラから早馬で首都アクアリスに指示を出しております。ラ・フールに向かっている最中かと思われます」


「中将のオジちゃん、間に合う? 旗艦を待っていたら、調印式間に合わないかもよ。サンテールの船に乗らせてもらったら?」


「いや、陛下を他国の船に乗せるなど……」


確かにカスティリオ王国がサンテール王国の属国に見えてしまうかもしれない。

中将は非常に嫌がった。

ヴァルデン共和国の首相から、予期せぬ提案がある。


「ララ様、バイエルン商会から終末の使徒パーティに贈呈される高速船を預かってきています。それを使われたら如何でしょうか?」


「え? 自動機械の?」


前にヴァルデンで知り合った鉱山の社長さんが、私達にプレゼントしてくれると言っていたのだ。

チャールズが凄く欲しがっていた高速船だ。

あれ、でも、私達をまたヴァルデンに立ち寄らせるための餌として使うと思っていたけど。


「はい。完成したらしいので、強引に奪って牽引してきました。あれがあった方が、早くララ様が帰ってきてくれるのだと言ったら、喜んで差し出してきましたよ」


「ふふ。頭の中で計算している鉱山の社長さんの顔が目に浮かぶよ。でも、ありがとう。それで行くよ。お母様、お祖母様、ララの御船で行こう。速いし楽だよ」


「決まりじゃ」

「そうですわ。それが良いわ。オスカー、護衛の兵士はララちゃんに収納してもらうわ」


「は!」


兵士を収納して他国に入れる……。

良く考えると、すごい輸送手段だと思う。


「フィリップ、あの乱暴者は本当に不可侵同盟を受け入れたのかえ?」


女王のお母様が、話を戻すようにマリーパパに聞いた。

乱暴者とは、サンパウリーナ国王のことだろう。


「ああ。大丈夫だ。俺の判断を尊重すると返事があった。ただ、同盟国間の不可侵は同意したが、ララの件は保留だ。正確に言うと、女神の件だな。それは、終末の使徒に自分が会って判断すると言っているらしい。どうも、参謀が反対しているらしいな。レオナルドとしても、ガブリエルの反対を押し切るには、自分が直接会うしかないと思っているのだろう」


「ガブリエル……。わらわは、アイツだけは好きになれぬ」

「レオナルドは所詮ガキ。ガブリエルは確信犯よ。悪質だわ」


「お母様、お祖母様、ガブリエルって、どなた?」


私は左右に座る女王と宰相に聞いたのだが、返事は会議テーブルの向こう側、マリーパパと首相からあった。


ガブリエル・サントス(Gabriel Santos)。

サンパウリーナ王国の宰相である。

ただ、宰相ではなく、『参謀』と呼ばれることの方が多いそうだ。

レオナルド国王の右腕として、全ての戦争の戦術を策定。

王様は先陣を切って戦うタイプなだけに、情報収集、分析、作戦立案をする参謀の力が非常に大事らしい。

戦争だけでなく、国政に関することも、全て差配しているのは参謀さんだそうだ。

王様と違って、凄く陰キャ。

頭は良いけど、人に忌み嫌われちゃうタイプだと言う。

お母様曰く『何を考えているのか全く分からん』

お祖母様曰く『いつ、どこで、人を陥れるかだけを考えているキモ男』

そんな悪口を綺麗な声で言われていた。


「まあ、ララ、ガブリエルはレオナルドの横に常に付き従っている。間違いなくカリーム・アーバにも来るだろう。会ってみると良いと思うぞ」


「不要。ララちゃんが穢れるでおわす」

「そうねぇ。会って収納しちゃえば良いかも。人類の安寧のために」


凄い嫌われようだ。

流石に可哀そうになってきたよ。


「うん。わかった。マリーパパ、ラージャスティはどうなの? 女神教の熱狂的な信者だって聞いている」


「ああ、ラージャスティは問題ないだろう。元々、旧アル・ナジール王国時代から、ラージャスティは弟の様な存在だ。明確に上下があったということだな。『終末の使徒パーティへの扱い、女神の扱いはイフヤ共和国の意思に従う』と明言されたそうだ。ただし、教会と王家の間の溝があるから詳細は不明だ。むしろ、教会の方がサミール・ナスル大司教を信じるから問題ないのかも知れん。王家は……、分からんな」


マリーパパの説明は、イマイチ歯切れが悪かった。

一応、ナスルのオジちゃんに従うと意思表明はあった。

でも、本心は不明。

今日の時点では、そう捉えた。


「ララちゃんや。ラージャスティの王家は、おそらくどうでも良いと思っているでおわす」

「そうねぇ。あの子たちは、気の良い人達だけど、頭の中はアレですからね」


「ふむ。言っていることは、俺も分かるぞ。その通りだと思う」


国王ラフール・ナイアール(Rahul Nair)

王妃カリシュマ・ナイアール(Karishma Nair)

王女メーガン・ナイアール(Megan Nair)


国王は十王の一人だ。

つまり使徒だ。

凄く優しくて、ここにいる誰もが良い人だと口を揃えて言っていた。

ただ、物凄くおバカさんだそうだ。

何も分からずに王様の地位に座っているため、国は貧しいまま。

貴族に、体の良い神輿にされて、都合よく扱われている。

国の実権は貴族に握られているそうだ。


王妃はラージャスティで最も美しいと言われた人だと言う。

ラージャスティの絶世の美女。

気立ても良く、性格も優しい。


「良い人が必ずしも良い王という訳ではない。良い女性が必ずしも良い王妃という訳でもない」


女王のお母様に、そうバサっと切られていた。


「後任に立つだろう王女には期待が持てますわ」


逆に宰相のお祖母様は、娘の方を褒めていた。


メーガン・ナイアール(Megan Nair)

姉と同じ歳の使徒。

教会のシスターとして育つが、王妃の目に留まり、王女として引き取られる。

王妃に似て、美しい外見と優しい心を持つ。

ただ、宰相のお祖母様曰く『非常に賢い知性を持っている』そうだ。

だから、良い仲間に恵まれれば、貴族を御せる可能性もあるだろうと。


「ありがとう。概ね分かった。あとは……、イフヤ共和国の貧しい人たちのために、食料の交易を活性化して上げて欲しい。ナスルのオジちゃんも困っている」


「ああ。アストリッドの手紙にもそう書いてあった。もちろん、交易は活性化させるさ。だが、自国の自給率を増やさないと中長期的には困ることになろう。だから、ジャガイモやサツマイモの種イモは持ってきたぞ。ララに預けておこう。どう農業を発展させるかは、ララ、お前がその専門だろう。その辺は任せるぞ」


「やった! ありがとう。マリーパパ、ナスルのオジちゃんも喜ぶよ」


「ララちゃんや、イフヤ共和国もラージャスティも、南の方は気候変動や水不足が問題となることが多いのじゃ。耐乾燥性の作物を育てることが重要さね」

「そうねぇ。ララちゃん、ミレットやソルガムを持っていくのが良いわ。エレナ、準備してあげなさい」


「は!」


文化面ばかりに注力しているとはいえ、カスティリオ王国は世界最大の農業輸出国家だ。

穀物に関する知見も、この二人にはちゃんとあるのだろう。

ミレットやソルガムは、私も育てたことがない。

空間畑で、一度育てた方が良いかもしれないと考えた。

確か、雑穀の一種で、栄養価が高く、乾燥した土地でも育てやすい作物だと記憶している。


「フィリップや、セレニカーナ王国の件はどうするのかえ」


女王のお母様は、アリーチェさんが守る国が気になっていたのだろう。

マリーパパとヴァルデン首相に向けて、そう聞いた。


「ああ。セレニティアはヴァルデン共和国に割譲する。フィオレンティアはカスティリオが併合したらどうだ? アリーチェもそれを望むだろう?」


「痴れ者め。其方がアリーチェの気持ちを代弁するでないわ。同じ民族じゃ。わらわが面倒みよう」

「そうねぇ。アウグスブルク首相、セレニティアの港はヴァルデンにとっても良いと思うけど、民との相性が心配だわね。移住の相談には乗るから、いつでも声をかけなさい」


「はい。大変助かります。移住希望者を募ります。その際は、是非、御国で受け入れて頂けると助かります」


議題は少しずつ重要な個所から雑談に近くなっていった。

そろそろ終わりかな、というところで、姉がラップアップを始めた。

合意した内容、それぞれがやるべきこと、今後の予定、全てがもう一度おさらいされて、夕食の案内が始まった。


「ララ、俺とマリー、テオドールは、ララの部屋で泊まらせてもらうぞ」


「ダメじゃ。あそこは、わらわとカタリナが泊っておる。痴れ者を出入りさせはせん」

「そうよぉ。マリーだけは預かるわ」


「なっ……。俺はあそこの本を楽しみにだな……」


「お母様、お祖母様、男子部屋とお風呂が汚れるだけだから、別にララはいいよ」


「ふむ……。チャールズとレオンが可哀そうじゃ。フィリップよ、寝床は自分たちで用意せい」


「う……。完全にナタリアの家になっているじゃねーか。そもそも、あそこの内装は俺が買ったものだ。俺に優先権があるじゃねーかよ」


「そうか。では、わらわが其方らの寝所くらいは贈ろう。ララちゃんや、あとで家具屋に行くでおますよ」


「うん。お母様ありがとう」


夕食の準備までには時間があるとの事だったので、先に家具屋さんに行くことになった。

お母様とお祖母様に言われて、書庫の奥の左右に空いたスペースがあるため、そこを客間にすることになった。

左側のピアノがある場所は、楽器を弾いたり、本を読むソファやリラックスチェアを置く。

右側はパーテーションの様に、可動できる間仕切りを買ってもらった。

チャールズの自動機械の遊び場を確保したとしても、今、結構なスペースがある。

取り急ぎ、六部屋分の客間を作ることが出来た。


リビングルームのソファ、ダイニングテーブルも、より大きくて沢山の人が座れる物に変えてもらった。

古いものは、ソファは音楽エリアに。

ダイニングテーブルは書庫の横の勉強スペースに転用した。


ちなみに、家具屋さんの支払いは『代官宛に請求書を送るがよい』の一言で終わりである。

大丈夫かな、この国の財政は……。

まぁ、貿易黒字国家なので、きっと大丈夫なのだろう。


私達がイフヤ共和国首都カリーム・アーバに向けて出航したのは、一週間後だ。

それまではサンテール王国から、ジャガイモ、サツマイモの種イモを受け取ったり、

エレナ代官から、ミレットやソルガムの種も沢山もらった。


私の空間畑で、両方とも一期分育成して、沢山収穫したのと、さらなる種も確保した。

この収穫作業は、女王のお母様も、宰相のお祖母様も、凄く喜んで一緒にやってくれた。

土仕事なんて、全く未経験だったそうだ。

一度やってみたかったのよぉと顔も体も泥だらけにして楽しんでいたよ。


マリーとジョヴィも手伝ってくれた。

作物を育てて、自分たちで収穫する。

それを体験するのは、いつの時代でも良いことだと思う。


もう一つ、私にとって素晴らしい体験だったのは、空間部屋でのコンサートだ。

マリーがピアノを弾き、お祖母様とお母様がヴァイオリンを弾き、私が歌った。

自分は歌を上手に歌うことが出来る。

きっと、前世の私はギターを弾きながら歌っていたのだと思う。

それを知れただけでも、私にとっては良い機会だった。


古い歌に触れると、私の体調が不安定になる可能性がある。

そのことを、私が凄く怖がっているのを、お母様もお祖母様もご存じなので、

私が一緒になって楽しめるように、なんと、新しい曲を創ってくださったのだ。


それは本当に素敵な曲だった。

優しい小さな女の子が、困窮を極めた社会に生まれ育つ。

家族に支えられて、新しい仲間を増やし、成長していく。

最後は弾圧する国家権力と戦い、社会を平和へと誘う。

そんな壮大な曲だった。


この曲だけでなく、私に音楽を届ける側の喜びを教えてくれた二人には感謝しかない。

私にとっては、魔法が出来ることよりも、歌を歌えることの方が、よほど嬉しかった。

最初に歌った時には、鼻の奥がツーンとして目が充血してしまった程だった。


「ララちゃんや、貴女には、音楽を毎日楽しめるような人生が合っている。でも、そんな生活を送らせてあげられない大人たちを許しておくれ」

「そうね……。私達の所為ね。こんな小さな子の両肩に人類の存亡がかかっている。貴女なら、きっとやれる。でも、私は心配でしょうがないのよ。ララちゃん、嫌だったら投げだして帰っておいでね」


「うん……。ありがと。一番良いプレゼントをもらった。頑張る。あと、ギターも弾いてみる……」


私が少し涙ぐんだことが分かったのか、

姉もフローレンスも、マリーも、ジョヴィも、輪になって抱き締めてきた。

それに、お母様とお祖母様が加わる。


後からチャールズとレオンに聞いたのだが、マリーパパはこの様子を見て、号泣していたそうだ。

あのお子ちゃま王様らしいと思う。

「俺もお父様と呼ばれたかった」

とか泣きながら言っていたらしいが、お父様ってキャラじゃない。


そんなことがあったけど、私達はイフヤ共和国首都カリーム・アーバに向けて出航した。

自動機械の高速船は、ギュイーンと加速して、海を駆けた。

船の後方の押す力が強く、船首が少し持ち上がるくらいに一気に加速した。

一瞬だけ私達の視界も、上に持ち上がり、遠くの空が見えた。

ここカスティリオ王国の晴れた空の向こう側には、積乱雲の様に高く聳える暗く厚い雲が見えた。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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