オリベイラの制圧と機関銃
オリベイラ(Oliveira)。
統一街道で最も標高が高いところにある街。
統一街道で西から東に渡るためには、カスティリオ王国の真ん中を縦断している山を越える必要がある。
オリベイラは統一街道をずっと登った坂の上にある街だ。
標高が高い地域らしく、昼夜の温度差が大きい。
ぶどうの糖度が増すため、高品質なワイン用のぶどうが栽培されている。
それ以外にもリンゴ、プルーン、ブルーベリーなどが有名な街だと言う。
私は中将のオジちゃんの横に座り、馬車の窓から近づく街の様子を眺めていた。
見渡す限りの果樹園に囲まれた街。
北黒の森の終端だからか、強固な外壁も作られている。
恐ろしい魔獣が出て来た時には、果樹園で働く人たちも、この外壁の中に逃げ込むようになっているのだろう。
昨晩、私達は約束通り、一つ手前の小さな町で、中将のオジちゃんと合流した。
指定した酒場。
正直、女子供が入りにくい場所だった。
その奥に、こじんまりとした個室が用意されていて、そこに通された。
そこで食事をしながら、街への入り方を協議したのだ。
一番安全なのは、中将のオジちゃんの馬車に乗っていくことだろう。
透明魔法を使っていれば、まず見つかることはない。
オジちゃんはそう言った。
姉が自分も同行すると言い張ったのだが、中将の馬車には護衛が二人も乗っているので、スペースがない。
私一人が横に座るので精一杯だろうということで、諦めたのだ。
外壁の門は完全に封鎖されているようだった。
一つ前の町で聞いた通りだ。
オリベイラが封鎖されているため、あの小さな町には沢山の人が泊っていた。
宿屋は満員で、昨日行った酒場もいっぱいだった。
商人も旅人も冒険者も、全員が足止めを食らっていた。
門を通る時に、ジャリジャリと大きな音が鳴った。
これが、足音を鳴らす砂利というヤツだろう。
しばらくすると、馬車が止まった。
御者が門の兵士と少し放した後、一度馬車の扉が開かれた。
念のために、不審者が乗っていないか確認するだけのようだ。
「は! 中将閣下! 失礼いたしました! 問題ございません! お通りください!」
そう敬礼した兵士に、オジちゃんは「ご苦労」と言って応じた。
「向かうは離宮だ」
「閣下。将軍閣下との予定があります」
「構わぬ。まずは陛下と宰相閣下と会う」
「しかし! 離宮は第一軍によって閉鎖されております」
「閉鎖? 警備ではないのか?」
「失礼いたしました……。警備です」
「警備であれば、面会は問題ないだろう」
「いや……、しかし」
「どうした?」
「は。おそらく承認されないと思われます……」
「誰にだ」
「将軍閣下です」
「ふっ。いつから、中将が謁見するのを将軍が制限出来るようになったのだ。其方らは離宮の門で待機せよ。入るのは俺だけだ」
「閣下! いけません! 危険です!」
「危険? 自国の離宮に入り、陛下に謁見するのが危険だと言うのか? そんなバカげたことがあるか。其方らは待機だ。これは命令だ」
「は!」
正面に座る制服の護衛の兵士さんと、中将のオジちゃんのやり取りを私は黙って聞いていた。
この護衛の兵士さんの立ち位置が何なのかは分からない。
ひょっとしたら、将軍の息がかかった人なのかもしれない。
オジちゃんは、自分と一緒ならば、何処にでも入れるとか言っていたけど、きっと違うのだろうなと思った。
ここから先は、戦闘になるのかもしれない。
そっと、中将のオジちゃんの身体にも、結界魔法をかけた。
馬車から下りる時に、また護衛の兵士さんと同じようなやり取りがあった。
それでも中将のオジちゃんは、ここで戻るまで待機しておれ、と強く命令することで振り切った。
離宮は内壁に囲まれており、大きな門は、同じように兵士達が封鎖している。
そこに向かって、威風堂々と歩く中将は隣を歩く私に、囁くように言った。
「ララ、この先は戦闘になる可能性もある。俺の背後から出るな」
「もう兵士さん達が剣を抜いているよ。完全に戦う気満々に見えるけど」
向かう先の兵士は全員が剣を抜いている。
こっちに歩いてくるのが中将ということは、当然知っているのだろう。
そうだとしても、来るものは斬り捨てる。
ひょっとしたら、中将だからこそ、なのかもしれない。
「残念だな。ララ、自分の身は守れるな?」
「オジちゃんを含めて守るよ。もうララも姿を現しても良い? どうせ戦闘になるのなら隠れている意味がない」
「軍の中将が指名手配犯を引き連れ謁見か……。凄い騒ぎになるのだろうな」
「なると思うけど、もう凄い事は既に起きちゃっているんだよ。クーデータだよ。歴史に残る大イベントだよ」
私は歩く速度を上げて、中将のオジちゃんの手を掴んだ。
周りに落とし穴の結界を広げながら、門まで歩く。
いきなり姿を現した私に向かって、躊躇もせずに矢が飛んで来た。
中将含めて死んでも構わないということなのだろう。
「ん? 俺の身体にも結界を張ったのか? 違和感があるな」
飛んで来た矢を剣で弾き飛ばしていた中将が、私にそう言った。
「うん。だから、矢が当たっても平気だよ。身体に結界を纏わせると、剣を持つ手に違和感があるらしいね。でも、我慢して。あと、私の手を絶対離したらダメだよ。落とし穴が周りに張ってあるから」
「落とし穴? それは、どこに落ちていくのだ?」
「ララが別で作った空間に収納される。大丈夫だよ。死なないから」
「そうか……。では、俺が剣で斬るのはやめておこう。自国の兵士相手に戦いたくはない」
「そうだね。このまま、テクテク歩いて行けばいいだけだよ」
隣から、フフっと笑う声が漏れた。
門の兵士がギャーギャー騒いでいるけど、私達は気にせず歩く。
門を守っていた兵士達が一斉にかかってきて、一斉に落ちて行った。
「落とし穴魔法か……。地獄に堕ちていくように見えてしまうのだな」
「うん。悪の使徒っぽい魔法でしょ」
「そうだな。誰も殺していない優しい魔法なのにな」
門は向こう側から完全に閉じられていた。
申し訳ないと思ったが、断裂魔法でカンヌキ部分を切断させてもらう。
オジちゃんが右手で門を開けてくれた。
門の兵士が吹いた笛に反応して、離宮から沢山の兵士が出てきていたようだ。
凄い数の兵士が集まっていた。
私は門を念のために結界魔法で開かないようにしてから、歩を進める。
「フェルナンデス中将! 裏切りですか!」
「中将! 処刑案件ですぞ!」
そんな声も多くかかるけど、大抵の兵士は問答無用で斬りかかって来る。
トコトコ歩く私達の周りにだけ人がいない。
近づけば落ちていく。
上から見たら、凄く不思議な絵に見えただろう。
「軍というのは不思議な場所でな。如何なる命令であれ、従わない方が悪なのだ」
「まあ、しょうがないよね。戦場で善悪を兵士が判断していたら、勝てるものも勝てない」
「そうだな。だが、アイツらは、本当に自分が悪に加担しているとは思っていないのだな」
「それは兵士だけじゃないよ。多分、全員が自分が正しい方に加担していると思っている。何とかという将軍も。女神ですらも」
「そうだな……。しかし、残念だな。陛下に忠誠を示したはずの兵士が……」
「将軍、女神、陛下。傅く存在が沢山いる。どれに付くかは、個人が決めるしかない。みんなが正しいと主張する。主張するだけでなくて、全員が本気で正しいと思っている。だから、自分で決めるしかない。そのリスクを負うのも自分。結局は最後はそうなるのだと思う」
飛んでくる矢がウザいので、空間ボールを幾つか自分たちの周りに浮かせた。
これ、初めてやったけど、結構便利な守り方だと思う。
空間ボールなので、宙に浮かべたまま、付いて来させるのも余裕で出来ちゃう。
何しろ、小さい頃から、ずっと練習してきた魔法なのだから。
狭い廊下の中も、歩みを止めることなく進んでいった。
近づいたり、斬りかかって来る人たちは、落とし穴に堕ちていく。
前から後ろから放たれる矢も、多くは空間ボールに当たって、落ちて行った。
「もう数百は落ちたな」
「思ったより、学ばない人たちだったみたいだ」
「落ちると分かっていても、侵入者がおるのだ。呆然と見送る訳にはいかんだろうしな」
暫くすると、完全に封鎖されたエリアに辿り着いた。
こちら側から、カンヌキをかけて出られないようにしている。
そこを守る二人の兵士。
何が警備だ。
完全に監禁じゃないか。
「開けよ」
「なりません。中将閣下。この先は将軍以外は立ち入れません」
「貴様。陛下を何と心得ておる。開けよ」
中将の問いに対する返答は言葉ではなかった。
剣を抜き、こちらにジワリと歩み寄って来た。
私達は三歩進んで、彼らを落とし穴に落とした。
「ララ、ここから先が本館だ。落とし穴は解除して良いぞ」
中将がカンヌキを外しながら、そう告げた。
この扉の向こう側だけに落とし穴を張っておこう。
扉を開けて中に入り、結界魔法で鍵をかけた。
窓が全て塞がれていることを除けば、綺麗に整えられた離宮だった。
二階だろうか。
上階から、音楽も聴こえる。
ピアノに合わせて誰かが歌っている声がした。
「フッ。とても幽閉されているとは思えないノンキさだな」
「女王さん? 宰相さん?」
「ピアノはカタリナ宰相閣下。歌はナタリア陛下だ」
執事や侍女も働いているようで、外の喧噪を除けば、普通の王宮だと思った。
中将は階段を上がる途中で、執事さんに挨拶されて、案内を受けた。
「ニコラス。特に不便はないのか?」
「はい。外に出られないことが御不満の様ですが、食材も含め潤沢に支給されますので……」
「そうか。陛下も宰相閣下もお身体に問題は?」
「ございませぬ。ただ、オスカー様、おそらく大変怒られることになるかと……」
「怒られる? 俺がか?」
「はい。『迎えが遅い』と」
「ハハ……。そうだな。それは詫びるしかなかろう」
大きなリビングルーム。
いや、リビングルームと呼ぶには豪華すぎる。
ダンスホールと同じような大きさと豪華さだった。
壇上にピアノが置いてあり、その横で、豪華なドレスを着た五十代の女性が歌を歌っていた。
侍女たちが観客役なのだろう。
ワーワー、パチパチと称賛を送っていた。
ジャン!
ピアノが激しく鳴らされて、中将を呼ぶ声が上がった。
「オスカー!」
ピアノに座っていた初老の女性が立ち上がり、中将の名を呼ぶ。
中将は小走りに走っていき、壇上の前で跪いた。
侍女たちが、壁際に寄って控えた。
「オスカー・フェルナンデス。参上しました。遅れてしまい申し訳ございません」
「「遅い!」」
二人から綺麗な声で叱責が上がった。
ソプラノとアルト。
信号機はこの人たちの影響か。
綺麗にハモっていたよ。
その後、中将がステレオで怒られていたのを私は距離を開けて眺めていた。
「ララ」
一通り怒られ終わった中将は立ち上がって私を呼んだ。
私は壇上の前まで歩み寄る。
「其方が終末の使徒かえ?」
「ローラ・アフ・ラーズドッティルと言ったかしらん?」
女王さんは、ソプラノ声だけど、言葉使いが少し変だ。
表現が難しいけど、気品に満ち溢れているが、一般の人の口調から、かけ離れ過ぎな感じがする。
片や、宰相さんは綺麗な低音。
音楽の先生っぽい感じがする。
「ううん。女神に貰った名前はポイした。今はララ・スティエルナ。ララって呼んでいいよ」
「あら? 可愛らしい女の子だこと」
「ララちゃんって呼んでも良いかしら」
この人たちはセットで反応を返すようになっているみたいだ。
先に女王が話し始め、それが終わる前に宰相がそれに続く。
反応に困るし、聞き取り難い。
「うん。ララって呼んで。ララは、何て呼べば良い? 女王さんと宰相さん?」
「ララ。陛下と閣下を付けよ」
「あらあらまぁまぁ。わらわはお母様が良いの」
「うふふ。そうね。使徒は兄弟。この子達は私には孫にあたるのかしら。可愛いわ。オスカー、小さい子をイジメちゃダメよ。私はお祖母様で良いわよ」
「分かった。じゃあ、お母様とお祖母様ね。やった、この世界の母と祖母をゲットした」
中将は二人に命じられて、私を持ち上げて壇上に乗せた。
すぐに二人に抱きしめられたり、頭を撫でられたりする。
マリーに撫でられているワンちゃんと同じ扱いに感じた。
この人たち、めっちゃ良い香りがするよ。
「ララちゃんは、音楽が好きかえ?」
「楽器は何が出来るのかしら?」
「ララ、多分、ギターが弾けると思うの。でも、この間、ヴァルデンで知っている曲を聴いたら、頭痛が酷くなって倒れちゃったの。だから、怖くて触っていない」
私はヴァルデン共和国ベルクシュタットで起きた話を説明した。
話が上手くない私だが、この二人は上手に聞き出してくれる。
ついつい色んな事まで話してしまっていた。
ヴァルデン共和国の大楽団が演奏していたセットリストの詳細まで、楽しそうに聞いてくれた。
気付けば中将は私達の元を離れて、執事や侍女と何やら相談していた。
ここから逃げる算段でもしているのだろう。
皆が手荷物を持って集まってきていることからも、多分間違いないと思う。
「ララちゃん、そこまで音楽好きなのにやらないのは、勿体ないこと」
「そうね。私達も古い歌を歌ってあげましょう」
「うん。でも、まずはお母様もお祖母様も、ララの姉と仲間に会って欲しいの。きっと仲良くなれると思う」
空間部屋の書庫にはギターもピアノもある。
確か色んな楽譜もあったと思うから、この二人もきっと喜んでくれると思うのだ。
是非招待したい。
「是非連れて来なされませ」
「そうね。私も会いたいわ」
「中将のオジちゃんに相談してみよう。どうせ、ここから連れて行かないといけないのなら、ララの部屋に案内するのが一番安全だから」
私は大きな声で、オジちゃんを呼んだ。
横の二人から、笑い声が上がる。
どうもオジちゃん呼びをしているのが、おかしいみたいだ。
「オジちゃん、ララの部屋に二人を招待しても良い?」
「部屋? 部屋とは何だ」
「ララ、別空間に部屋というか、お家を持っているの。どこからでも行けるし、安全。今はアス姉たちがいると思う」
「ん? ここからでも行けるのか?」
「行けるよ。オジちゃんも、一度来る?」
「いや、俺が行くのはマズい。すぐにでも、第一軍が突入してきそうだ」
「じゃあ、ララも一緒に行って、一秒後に帰って来るようにするよ」
「あ? 時間も操作できるのか」
そこまで話したところで、階下から大きな音が聞こえて来た。
パリンっという音は、外から封鎖されていた窓を破って中に入った音かもしれない。
「マズいな。ララ、陛下と閣下を案内してくれ。あ、ちょっと待て、おいニコラス、二人の着替えのバッグを寄越せ」
中将が執事から四つの大きなバッグを受け取って、壇上にドンと置いた。
このまま、二人は空間部屋に送るしかないか。
アス姉が、きっと何とかしてくれると思う。
「お母様、お祖母様、ララはここでオジちゃんと戦う。二人を先に部屋に送るね。アス姉に事情は話してね」
二人が返事する前に、四つのバッグごと、空間部屋に送り込んだ。
私は壇上からピョンと飛び降りて、執事や侍女に声をかける。
「みんな、集まって! 安全なところに一度匿うから! 急いで!」
十人近くの執事と侍女なのに、荷物が多すぎるよ。
荷物ごと魔力で囲んで、空間収納に格納した。
「オジちゃん! こっち来て! 結界張るよ!」
階下に降りる階段の様子を見ていた中将が走って戻って来る。
「あれ? 他の者はどうした?」
「一度別の空間に避難してもらった」
「すまぬ。助かる」
私達を囲う四角い結界を張る。
その後、この広いホール全体に魔力を広げた。
さらなる結界を張るか、入って来た人たちを収納するか。
落とし穴を作る手もある。
いずれにしても、今のうちに魔力を広げておくべきだろう。
数十名の兵士が二階のホールに上がって来た。
先頭はいつかカリブリ港で見たことのあるヤツだ。
豪華な深緑の軍服に沢山の勲章。
何とかという将軍だ。
どうしてコイツが先頭なのか。
その理由は肩から下げた武器にあるのだろう。
機関銃。
この世界にもあるんだ。
あれは危険すぎる。
もちろん、私達には何の脅威でもない。
でも、これが世界に拡がったら、戦争の在り方が変わってしまうと思う。
ガガガガガガガガガガ
機関銃が火を噴いて結界に撃ち込まれたけど、全てを弾かれた。
「オジちゃん。あの武器だけはララが奪う。あれは放置しておけない」
「ああ。良いぞ。他の兵士は許してやってくれ。アヤツは殺しても構わん」
「分かった。じゃあ。やっちゃうね」
「首を刎ねられるか? 軍を掌握するためには、アヤツの首が必要だ」
「了解」
機関銃が効かないことに、露骨に舌打ちしながら、将軍が近づいてきた。
私は武器の出所だけを確認したい。
それだけ聞いたら、首を斬撃魔法で飛ばす。
魔力を練り上げながら、問うた。
「そこの女神の下僕。その武器はどこで手に入れた。この世界には無いはずのモノ」
「黙れ悪魔の使徒よ。女神様から下賜された神界の聖なる雷だ」
なるほど。
女神は武器売買もしているということか。
危険過ぎる。
それを多数製造出来るのならば、余りにも危険すぎる。
容赦なく首を切断した。
武器を抱えたまま、首がゴロリと地面に落ちる。
切断した首の方から、血しぶきが高く舞った。
首だけを収納して、こちらの結界の中に置いた。
中将が将軍の髪をムンズと掴み、それを前に掲げて兵士達に問うた。
「女王陛下と宰相閣下は、こちらが確保した。こうしてクーデータを起こした将軍も刑に処した。さて、クーデータは失敗に終わったのだが、諸君はどうするのだ?」
何秒か逡巡していた兵士達だが、一人逃亡を図ると、全員が一斉に走って逃げだした。
私は結界を解除して、オジちゃんに言う。
「オジちゃん、その生首、血が滴って気持ち悪い。結界に入れても良い?」
「ああ、そうだな。でも持ちにくいのは困る。持ち手も作ってくれ」
生首如きに何て贅沢なと思ったが、これから、これを持ち運びながら、軍を掌握するのだろう。
生首に纏う結界を作り出した後、頭の上に持ち手を生成した。
「ふむ。これは良い。部屋に飾るか」
「絶対やめて。さあ、空間部屋に行く? 女王さん達が待っているよ」
「そうだな。だが、この街の兵士を掌握してからだな。すまぬが駐屯基地まで付き合ってくれ」
「了解。執事さん達は?」
「ああ、首都に帰る準備があるだろう。出してやってくれ」
執事と侍女を荷物ごと、ここに戻した。
中将のオジちゃんが、首を掲げながら、討伐は終わったことを告げる。
全員から大きな拍手が起きたよ。
「ニコラス、この離宮を片付け次第、待機だ。女王陛下と宰相閣下は安全が確保されるまで、ララに守ってもらう。落ち着き次第、首都へ移動することになるだろう」
「かしこまりました。終末の使徒様。心から御礼を」
綺麗な所作で、執事が礼をする。
後ろの侍女さんも、スカートを摘んでカーテシーをしてくれていた。
「うん。ありがと。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
私は将軍の遺体から、まず武器と弾薬を奪った。
機関銃だけじゃなく、リボルバーまで保有していた。
これは、将軍の部屋も捜索しないと。
中将に頼まれて、遺体も収納しておいた。
バスケットボール大の空間ボールを十数個周囲に浮かべて、落とし穴魔法を生成した後、私は中将と手を繋いで離宮から離れた。
離宮にいた兵士達は将軍の直属なのか、殆どが逃亡を選んだ様だった。
離宮の内壁の外には、ちゃんと馬車が待ってきてくれていた。
二人の兵士さんが、敬礼して私達を迎えてくれた。
「閣下!」
「ふむ。クーデータの主犯は断罪した。この通りだ。陛下も宰相閣下も安全な場所に確保しておる。駐屯地の軍を掌握するぞ」
「は!」
「オジちゃん、ララは将軍の部屋を捜索したい。危険な武器は回収しないと」
「分かった。駐屯地にあるはずだ。共に行こう」
駐屯地にいた兵士は、二万程だったはず。
それが、私達が着いた時には、半分強まで減っていた。
将軍が打ち取られたと聞いて、心やましい人たちは逃げることを選んだようだ。
中将のオジちゃんが、駐屯地で兵士達に宣言した。
『終末の使徒の力を借りて、この国や隣国を巻き込んだクーデータは鎮圧した。女王陛下も宰相閣下も無事だ。これから、皆で正常化に向けて踏ん張らないといけない。皆の力を貸して欲しい』
オジちゃんが、ラ・フールへの早馬や、軍の移動の指示を差配している間、私は将軍の部屋から大量の弾薬を回収した。
機関銃用の弾薬とリボルバーの弾薬、その二種類しかなかったことから、下賜されたのは二丁だと判断した。
教会の尖塔から、通信の自動機械も除去する。
外壁の門が解放されたようで、多くの人たちも入って来たようだ。
教会から外に出た時には、沢山の人が道を歩いていた。
きっと、隣町にも連絡が向かっているところだろう。
信号機トリオも飛ぶように駆けて来るはずだ。
冒険者組合に伝えておくべきか。
うう。
女王さんと宰相さんが心配だな。
姉に預けたままだ。
信号機トリオと女王宰相コンビを天秤に乗せる。
当たり前だけど、大きく天秤は傾いたよ。
まるで、羽毛の羽一枚と、月を乗せたくらいの差があった。
ごめんよ、と東の方に向けて呟いた後、私は空間部屋へ飛んだ。




