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死神との死闘と山越え


沢山食べて、沢山寝た。

いや、沢山寝て、沢山食べて、沢山お風呂に入って、また沢山寝た。


チャールズもレオンも、複数個所の骨折やヒビ、打撲の跡が痛ましかった。

私とフローレンスは、お風呂に入って自分たちを癒した後、リビングルームで倒れている彼らの傷をまずは治した。

骨を繋ぎ再生させる。

その後、信号機トリオにエネルギー鉱石を渡して、これを二人と一緒に風呂場に漬けてくれとお願いした。


私がベッドで、ぐっすりと仮眠している間に、彼らは大分マシになっていたようだ。

姉が焼いてくれたステーキを皆で食べながら、作戦会議をした。


「お姉様とララと相談したの。リベンジマッチやるわよ」


「「「え?」」」


綺麗にハモった声が聞こえた。

うん。

分かるよ。

あれだけ、ボコられたからね。

でも、私達は凄い負けず嫌いなの。

あの気持ち悪い痩せ細った死神にも負けないし、女神にも負けない。


「チャック。シャキっとしなさい。男でしょ。ショボくれているんじゃないのよ。女性陣がリベンジすると言っているのよ」


フローレンスに怒られて、チャールズも顔を上げた。

口が、への字になっちゃっているよ。

レオンは最初から、その気らしい。


「それでね。勝利条件はヤツらのテリトリーを突破すること。別に殴り合いで勝つだけが勝利じゃないのよ」


「なるほど。フローレンスさんの仰ることは分かりました。あとは、ララさんの魔法を駆使して切り抜ける方法を考えれば良いということですね」


「そう。流石、信号機。チャック、赤信号がGOサイン出しているよ。オールグリーンだ。もう止まる選択肢はない」


「分かったよ。フローレンスもララちゃんも。じゃぁ……、僕も考える。一旦、ブレスト的にわぁーっと言うね。まず透明魔法は雪の跡が付くから意味なし。結界魔法は体当たりされて坂を落とされる。あの叫び攻撃は結界設定すれば防げる。矢や斬撃は飛ばしても木が邪魔で当たらない。残るは落とし穴魔法かな?」


「チャールズ、ドレカヴァツは跳躍して攻撃してくるわ。落とし穴を張った地面に乗ってくれるかしら」


「うん。結界をガンガン蹴ったりしてきたら、落とせるかも。でも、チャック、悪くない。続けよう」


「ララ、飛ぶのはどうだい? 俺は前にも言ったけど、形状さえ安定させれば行けると思うんだけど」


レオンの案を聞いて、信号機トリオが質問してきた。

姉が飛行魔法の件を説明する。

問題は空中でバランスを崩してしまうことだ。

地面に落ちたら、結界スキーになっちゃう。

木に当たるまで滑り落ちるだけだ。


「レオンさんは、どんな形状だと安定すると考えています?」


「はい。俺は球体が良いと思ったのです。バランスを崩しても、皆で動いて結界を回転させれば安定するかと」


ピエロの曲芸かい。

とは、つっこまなかった。

ブレストです。

否定的なことは言ってはいけない。


「レオン、もし球体が地面に落ちたら、綺麗に転がり落ちて、きっと雪だるまよ」


言っちゃった。

フローレンスが言っちゃったよ。

でも、間違いない。

コロコロと坂道を転がる球体がイメージできた。

その中で、ハムスターの様に足掻く私達の映像も。


ん?

ハムスター?


「ふと思ったんだけど。球体の結界を作って、その中を皆で走ったら、前に進めるかな?」


四角い結界の欠点は、中で私達が走っても、結界の地面を蹴っているだけで、結界自体が前に進まないことだ。

球体ならば、コロコロ回転させられるのではないだろうか。

私達が前に進む動力を、結界の回転に変換すれば良いのだ。


「面白いですね! その球体の結界は、俺らのブーツに付けた雪道用のスパイクみたいに、トゲトゲさせられます?」


「うん。出来る。やれる。問題は結界が転がるかだ。どれくらいの力が必要なんだろう」


「ララ、大丈夫よ。わたし達には男性が五人もいるわ。そのうち一人は力持ちよ」


姉のレオン贔屓は、今に始まったことではないが、言っていることは間違っていない。

チャールズもハムスター張りに足をクルクル回転させてくれるだろう。


「うん。ララがちょっと浮かせることも出来る。つまり重力は軽減できる。やれるかも。飛行魔法とハムスター移動の併せ技だ」


ハムスター移動と聞いて、皆がキョトンとしたけど、同じ歳の使徒連中には伝わったようだ。

フローレンスとチャールズが一生懸命に説明してくれている。


その後は、球体の大きさやトゲトゲのサイズ感を絵にかいて協議した。

黄色信号はイラストのセンスがあるみたいで、中に入っている私達までちゃんと描いていたよ。

フローレンスがいないのも、よく分かっていらっしゃる。


「ふふ。このチームなら、やれる気がしてきましたよ。わたしは」


「うん。まずはグッスリ寝よう。そして、もう一回お風呂に入って、完全に疲れを取ろう。その後、あの時、あの場所に戻るよ。死神をギャフンと言わせるのだ」


「「「「おう!」」」」



沢山寝た。沢山お風呂に浸かった。そして、軽食も食べた。

その後、書庫脇の空いたスペースで、球体の結界を作り出した。

皆で押したり、中に入って転がしたりして、サイズを調整する。

結界の内側の壁は滑りにくくした。


前に三人。

真ん中に二人。

最後尾に体重の軽い私と姉。

前と真ん中の五人は交代制だ。

動力は前の三人が受け持つ。


サイズが決まってから、結界の外側にスパイクを作った。

長さと太さを信号機の三人の意見に合わせて調整する。


一度解除して、私達を囲うように再度生成する。

最後に高音を遮断する効果を付けた。


「じゃあ、行くからね」


「オッケー。いつでもいいよ。フローレンス、やっつけてくるから、ゆっくり待っていてね」


「ケガしたら、もう治さないからね」


転移した先には、未だにドレカヴァツがウヨウヨしていた。

彼らからすれば、瞬きする間に獲物が動いた程度の認識だろう。

私は空中魔法で少しだけ浮かせた。

レオンが力を入れて、球体を転がす。


「よっしゃ! 進んだ!」


最初は必死の形相で足に力を込めていたけど、転がりだしたらスムーズに動き出した。

ドレカヴァツが気持ち悪い口を大きく開けて、何か言っているけど、全然聞こえないよ。


「いけー!」


これ、走るよりも全然速いかも。

飛行魔法も、落とさないように気を使わなくて済むから楽だ。

ほんの少しだけ浮かしているだけだし。

実際は浮いていないのかもしれない程度だ。


「うぉー! 右! 右だ!」


「行き過ぎ! 左! 左!」


真ん中の二人がいつの間にか、舵取り役になっている。

右に行くときは、右側の人が全力で右の壁を押して、

左に行く時は、左側の人が頑張る。


ガンガン木にぶつかりながらも、コロコロと坂道を転がっていく。

平衡感覚がおかしくなってきた。

登っているのに、下っているように感じる。


ドレカヴァツが突撃してくるけど、何体かはスパイクに串刺しにされている。

ざまぁみろ。

ギャフンって言ってみろ。


「抜けたんじゃない? もういない?」


数十分走っていると、周りにドレカヴァツの姿が見えなくなった。


「いや、光る眼が遠目で見ている。様子見している感じだ」


「そうですね。まだ進みましょう」


「カルロスさん、方向合っている?」


「大丈夫です。問題ありません」


コロコロ。

ゴロゴロ。

たまにガン。メリ。


さらに十数分続いた先で、レオンが左前方を指差して告げた。


「あれ、洞窟?」


「ちょ、ちょ、一旦ストップ」


赤信号に止まれと言われる。

渡ってはいけない。

全員が足を止めた。

皆、少し息も上がっているみたいだ。


信号機の三人がジトっと洞窟を眺めている。

そのうちに、三人で協議し始めた。

これだよ、いや違うだろ、でもそうだよ、やばいだろ。

そんな感じの話し合いだった。


「えっと……。ドレカヴァツの話はしたと思うのですが……。一つ伝え忘れていたことがありまして」


ドレカヴァツは死者の使者だ。

遭遇したら、まず生きては帰れない。

そして、死骸すらも残してくれない。

遺留品は全て持ち帰られる。

その痕跡すらも残さない。

そんな話だ。


「つまり、ドレカヴァツが棲む洞窟には、これまで殺した人の遺留品が全て蓄積されていると言われています。当然、遺品ですが、中には財宝も……」


「うん。分かった。行ってみよう。遺品があれば回収しよう。遺族のためになる」


「そうね。まあ、財宝はないでしょうね。被害者の多くは冒険者でしょうからね。このまま転がって入れるのかしら?」


「入れないところまで行って、歩こう。洞窟の中なら、レオンとチャールズも負けない、よね?」


「当たり前だよ! 来たぜ、リベンジマッチが。レオン、やるだろ?」


「ふ。当然だ」


そのまま、洞窟の方に転がった。

皆、先ほどよりも速度が速いよ。

どんだけ楽しみなんだよ。


思ったよりも大きい洞窟だった。

入口から、しばらく進んでから、球体を解除した。

森の中にいるドレカヴァツが、帰ってこないように、結界で入口を封じた。


レオンに懐中電灯を渡す。

今の所、生物反応はない。

洞窟は一本道だった。

分岐点もなし。

そのまま、真っすぐ進んだ。


しばらくすると、少し先を進んでいるレオンが懐中電灯を消した。

ハンドサインで、向こうに敵がいると伝えてきた。

姉がボウガンを背中から下ろす。


チャールズに乞われて、もう一つの電灯魔道具を収納から渡す。

こっちの方が広範囲に明かりを灯せるのだ。


レオンとチャールズが先頭。

信号機トリオが続き、最後尾に私と姉だ。


レオンが三本指を立てて、一つずつ減らした。

グーのサインで、全員が突入する。

チャールズが明かりを点けた。


一瞬で、明かりが広がる。

暗闇に突然眩い光が生まれ、少しだけ目を細めた。

広場の様だった。


かなりの数のドレカヴァツがいる。

侵入者に気付いて、叫んでいるけど、あの高音は結界に防がれている。

乱戦が始まった。

いや、乱闘だな。


姉が壁に背を預けて、ボウガンを連射している。

私は姉の少し前で、落とし穴魔法を発動した。

飛び掛かって来るドレカヴァツには断裂魔法を投げつける。

それでも抜けて来たドレカヴァツは、私と姉に辿り着く前に、落とし穴に落ちて行った。

木々がない洞窟だ。

それだけで、随分戦いやすい。


仲間たちは剣を抜いてブンブン振り回している。

剣と爪での華麗な剣戟ではない。

体当たり、殴り合い、蹴りあい、どつき合い。

何でもありだ。

何度か吹っ飛んだり、転ばされたりしているけど、

大きなダメージはないみたいだ。


チャールズとレオンは、蓄積した怒りを爆発させるように戦っている。

やったら、やり返す。

やり返したら、またやられる。

そんな子供の喧嘩みたいな感じだけど、こっちの防具の方が有能だ。

徐々に、天秤が傾いてきた。


私と姉はノーダメージで倒し切った。

全部で何体くらいいたのだろうか。

床に転がっている死骸だけで、三十体くらいはいそうだった。


信号機トリオは座り込んで、肩で息をしていた。

チャールズとレオンは、勝利の雄たけびを上げている。


姉はその様子を見て、クスリと笑った後、広場に空いた幾つもの穴を検めていた。


「あるわね……。沢山、あるわ」


姉がいる方に歩いていき、眺めている穴を私も見た。

洞穴の中に、ガラクタが大量に積み上がっていた。

馬車三台分くらいはありそうだ。


「アス姉さん、こっちにもあります」


レオンが、その後、黄色信号からも報告が上がった。

全部で五か所。

十数台分くらいのガラクタの山だ。

何か貴重な物が中にはあるかもしれないが、多くは遺品だろう。

私は全部、空間収納にしまった。

冒険者組合で渡してあげよう。

遺族の元に届いたら、きっと喜ぶだろう。

悲しむ人もいるだろうけど、届かないよりはマシだと思う。


「みんな、身体が痛むだろうけど、もう少し安全なところまで進んでから、部屋に戻りましょう。良く戦ったわ。五人とも恰好良かったわよ」


姉にそう言われて、喜ばない男子はいない。

信号機トリオは二十代後半だから、男子とは言えないけど、満面の笑みでハイタッチをしていたよ。


その後、空間部屋で、もう一人の美人さんに、しこたま怒られるんだけど、それは御愛嬌である。

五人とも嫌な顔はしていなかったよ。

充実した顔をしていた。

全員、顔は腫れあがって、気持ち悪かったけど。



尾根に到着するまで一か月と少し。

赤信号曰く、想定よりも十日は短縮出来ていると言っていた。

敵部隊との差は、あと二十日ちょっと。


尾根に着く前に、ドレカヴァツの群れと一度遭遇した。

尾根に着いてからも、一度。

いずれも球体結界で駆け抜けた。

そのうちの一つは洞窟も見つかったので、遺品も回収した。

こうして、私の収納は粗大ごみが占める割合がドンドン増えて行った。


尾根に着いてからは、最後の数日まで登ったり下ったりをしながら進む。

スキーでイエィってやるつもり満々だったけど、正直ヴァルデンの山と違って面白みが無かった。

密集した針葉樹。

速度を上げて滑走するには、危険すぎる。

細かくスラロームしていく感じなのだ。

木に何度かぶつかったけど、凄く痛い。

木々が多すぎてトナカイさんで引っ張ってもらうのも難しい感じだった。

私は何日かお願いしたけど。


球体結界に乗って下る案も勿論試した。

そして、一回で諦めた。

木々にぶつかっても、こっちの結界の方が強いので痛みはない。

むしろ、高い針葉樹が大きな音を立てて、倒れていった。

ただ、球体の転がる速度が上がり過ぎて、その中で走る私達の足が追いつかないのだ。

最終的に球体の中で、私達も回転して下ることになる。

マジで辛かった。

一日中、頭がクラクラしたし、吐き気が収まらなかった。

しばらくしてから、全員で肩を叩き合って、大爆笑したけど。


信号機トリオとは、共に雪山アタックすることで、大分親しくなった。

彼らの身の上話も聞かせてもらった。

彼らは、千三百三十五年にセラーノ(Brograd Serrano)市の山の中に降下したそうだ。

姉よりも十歳年長ということだ。

三つ子の使徒が裸の山で見つかる。

当時のセラーノでは大騒ぎになったそうだ。


そのまま発見者の冒険者に育てられる。

冒険者だったけど、山のガイドを専門にしている人だったという。


「だから、戦闘よりも、山の中で戦いを避ける方法を教わったんだよね。まあ、強くない言い訳にしちゃっているけど」


赤信号は、そう言って照れていた。


その育ての父も、彼らが成人する前年に、山で行方不明になったそうだ。

彼らの冒険者としてのデビュー戦は、義父の捜索だったという。


「今となっては、冒険者組合が俺らのために用意してくれた依頼任務だと思うんだけどね」


「見つかったの?」


「いや、二か月捜索したけど、見つからなかった。オヤジが行きそうなところは全部行ったけどね」


赤信号は坂道を噛みしめながら進んでいるけど、青信号と黄色信号はパンチとキックを繰り出しながら歩いているよ。

どういうこと?


「あ、ひょっとしてドレカヴァツ?」


「うーん。わからない。でも、近づいてはいけないエリアの一つが、ドレカヴァツの棲み処だとは聞いていた」


「ズメイ・ゴリニチの近く?」


「ああ、もう少し奥かな。ドレカヴァツって、結構奥の方に棲んでいるからね」


「今回通る?」


「いやいや、流石に怪しいところは避けて通るよ。少し奥まで行ってから、回り込むようにズメイ・ゴリニチの棲み処に近づくつもりだ。山の上から近づいた方が、警戒されにくいと思うんだよね」


「ねぇ、行ってみようよ。ドレカヴァツの棲み処。街に一番近いんでしょ。今後の危険のためにも潰しておこう」


「いやいや、敢えて行く必要はないよ。ララさん、まずはズメイ・ゴリニチの棲み処に行くことが最優先でしょ」


「でも、遠回りしなくて良いんでしょ?」


青信号と黄色信号のパンチとキックが早くなったよ。

それを見て、赤信号が苦笑を浮かべている。

この中で、一番慎重なのが、赤い人なんだろう。

赤信号だけに。


「青信号がGOって言っている。黄色信号も注意は不要って言っている」


「はは……。いや、でもな……」


「遺品が見つかると怖い?」


「うん……。そうだね……」


「赤信号、勇気を見せろ。大人になるチャンスだ。迷ったら止まるのをやめる。迷ったらGOだ」


「はは。ララさんみたいな小さな女の子に言われると、ダメな大人みたいで恥ずかしいね」


青信号と黄色信号が赤信号の肩を抱いた。

下を向いて歩く赤信号を、二人が支えるように歩く。

しばらくしてから、赤信号がこっちを向いて、小さく頷いた。



最後の数日の下り坂。

その二日目にドレカヴァツの棲み処にアタックした。

球体結界でコロコロ転がりながら、洞窟を探す。

全然見つからない。

半日かけて、ようやく見つけた。

針葉樹の隙間に隠される様に洞窟の入り口があった。


過去三回を、遥かに凌ぐドレカヴァツの群れ。

百体はいるかも知れない。

大混戦の戦いになった。


私は広場に繋がる入り口に、大きな落とし穴を作った。

その後ろ側から、姉と中距離攻撃を受け持つ。

見える端から順番に数を削っていった。

決して、腰が引けていた訳ではない。

落とし穴に三割は落ちたと思うし。


信号機トリオは凄かった。

何かを振り切る様に戦っていた。

何かを守っている様にも見えた。


今回の戦いの主役は信号機の人たちで、チャールズとレオンは、それを補佐しているだけにも見えた。


全てを倒し切るのに二時間はかかっただろうか。

三時間、四時間だったかも知れない。

全力疾走で駆け抜けた五人は、仰向けになって倒れていた。

沢山の死骸の中、彼らも同じ様な姿で倒れていた。


顔は腫れ、鼻は折れ、頬骨にヒビが入り、皆、手足のどこが折れていた。

見えないけど、身体中がアザだらけだろう。


私は骨折だけ整形して、五人をフローレンスの元に送りつけた。

姉も同行する。

私は、山の様な遺品を収納した。

これまでにない最大量のガラクタの山だった。


ドレカヴァツの棲み処を離れ、少し先に進んでから、空間部屋に戻った。


空間部屋部屋では、フローレンスが怒りながら治療していた。

怒気と罵声を巻き散らしながら、聖女の癒しを注いでいたよ。


「バカなの、アンタたちはバカなの」

「普通死んじゃうんだからね! 分かっているの!」


五人とも笑顔で受け入れていたよ。


レオンとチャールズは、お風呂に浸かりに行った。

信号機トリオは未だ腫れあがったジャガイモみたいな顔で、私に、遺品を調べさせてくれとお願いしてきた。

ちゃんと身体を治してからにしたら、と聞いたが、もう骨折は治して貰ったから大丈夫だと。


私は書庫脇の空いたスペースに連れて行った。

先ほど回収したガラクタをドンと積み上げる。

ちょっとした小山になったよ。

信号機トリオは、小山に突進して調べ始めた。

確認しては後ろにポイっと投げる。

汚されるのも嫌だから、周囲に結界を張っておいた。


私達は夕食を食べて、お風呂に入って寝た。

トリオは未だにガラクタの山にいるのだろう。

私達は、そっとしておくことにした。

自分たちも同じような身の上なのだ。

育ての親の事を思えば、その気持ちは痛いほどわかる。


彼らの泣き叫ぶ声が聞こえたのは、多分、明け方くらいのことだと思う。

私は寝ていたから、正確な時間は分からない。

泣き声が、私の部屋まで聞こえて、私は寝ていた身体を起こした。

信号機トリオだろう。

その叫びは悲し気でもあり、見つかった喜びにも聞こえた。

これまでの感謝の念を、育ててくれた恩を、その泣き声にぶつけている様にも感じた。


その泣き声は、綺麗にハモっていた。





世界地図

挿絵(By みてみん)

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