北黒の森での完敗
午前中に私達は首都アクアリスを後にした。
空間厩舎から馬を出して、全員で統一街道を進んだ。
二日ほど統一街道を北に進んで、国道に入る予定だ。
アクアリスの東側の広い道を進み、街を抜けたところで、もうすでに上り坂だった。
頑張れ、お馬さん。
午前中に得た情報で、一つ残念なものがあった。
『一か月前に、五百人の兵士がセラーノに出発していた』
そんなニュースである。
信号機トリオが、お店に雪山の装備を買いに行った時に、店主から教えてもらったらしい。
その五百人は、セラーノから雪山に入ると言っていたそうだ。
そのための装備を揃えに、お店に大量注文していたという。
一か月と一日分の遅れ。
こっちは雪山のスペシャリストのガイド付き。
前半は二十四時間稼働するしかないだろう。
さすがに夜の雪山を進むのは難しいだろうから。
その他にも何か方策を考えないと、追いつけないかもしれない。
追いつけなかったとしても、手遅れにならない内に辿り着いておきたい。
初日から二十四時間体制を組んだ。
一時間に一回、お馬さんに回復魔法を注ぎ、彼らの疲れを溜めないようにした。
十時間進んだところで、お馬さんを厩舎に送り、私達も空間部屋に入る。
信号機トリオの空間部屋の案内は、チャールズたちに頼んだ。
彼らは男子エリアの奥に、寝袋を引いて三人で寝ることにしたようだ。
事前に言ってほしかったと嘆いていたけど、私達の誰もそれには反応しなかった。
二日目の午後、統一街道が右に曲がっていくところで、待ち伏せにあった。
道の両側から一斉に矢が飛んで来たのだ。
「ララ! 結界!」
レオンの声に反応して、全員を囲む結界を張った。
すぐにカンカンと結界に矢が当たる音がする。
私達は早速、馬から下りて協議を始めた。
「さて……。どうしましょうかね」
「何名位いるのかな?」
「ざっと見た感じだと百から二百」
「全部倒すのは面倒くさいね。時間もかかっちゃう」
「おそらく、その時間稼ぎが目的なのでしょうけどね」
「でも、僕らが統一街道を進まないことを知られたくはないよね」
「じゃあ、今回は頑張って倒すか」
「シグナル・ライトの御三方も戦闘するで大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。ララさんに結界魔法を纏わせてもらっていますので……。それに、何て言えば良いのでしょう。すでに、この時点でシュール過ぎて、負ける気もしません」
赤信号が苦笑を浮かべていた。
まあ、矢が大量に降り注ぐ中、道の真ん中で堂々と作戦会議しているのだ。
フローレンスなんて、欠伸しているし。
確かに傍から見たらシュールな絵に見えるだろう。
「フロ、空間部屋で待機ね」
「はーい。骨とか折らないでね」
私はフローレンスとお馬さん達を一旦帰した。
「チャールズは統一街道の奥まで一度走ってから、戻るように倒し始めて。一人も逃がさない様に。わたしは逆に一度坂を下って登って来るわ。レオンとララが右。左はシグナル・ライト。それで行きましょう。ララ、透明魔法を全員にかけて」
「オッケー。武器を使う人は注意ね。武器だけは透明化出来ないからね」
「「「了解」」」
武器を除いて、身体の表面に結界を纏わせる。
それを透明化した後、私達を囲う空間結界を解除した。
一斉に全員が駆け出す音がした。
私も後方右側に向けて走る。
走りながら、落とし穴魔法を維持することが出来るのだろうか。
道の左右には木々が立ち並ぶ。
あの木ごと落ちていくのだろうか。
やったことはないので、中距離の空間断裂の方にした。
私達の姿が見えなくなったことで、兵士達の射出は止まった。
何名かが道に出てきて、姿を探している。
そいつらに向けて、断裂を放つ。
「いるぞ! どこかに隠れている!」
林の中に入って、少しずつ近づいた。
木々の隙間から、ガンガン投げつけていく。
ボウガンの矢の様に、刺さる魔法だ。
刺した後、少し動かすことで、身体の中で二つに裂ける。
「矢で撃ってきているぞ! 探せ!」
彼らからすると、何処かから、矢を放たれていると思うようだ。
立ち上がって道の前後を確認し始めている。
私の断裂魔法は矢の軌道が見えない。
不可視の矢が突然身体の中に刺さるのだ。
撃っている方向が見つかることはない。
後ろから、順番に倒していく。
たまらずに道路に出て逃げていく兵士は、後ろから進んでくる姉が撃ち倒していた。
見ていると凄く不思議な映像だ。
一瞬だけボウガンが宙に出現して、そこから矢が放たれているのが見える。
背中に背負っている間は透明化出来るんだなと私も知った。
前の方が騒がしい。
レオンだろう。
剣だけが地表近くで動いているのが見える。
まるで蛇の様に近づいている。
背後から心臓を一突きだ。
隣の仲間がいきなり倒れていくことに、前の方はパニックになっていた。
逃げ出す兵士は、チャールズが蹴り飛ばして倒している。
倒れた敵は心臓を一突き。
その瞬間だけが目で見えた。
「右側は完了。ララ、左に行くよ」
「了解。またララは後ろから行く」
左側は、さらに混沌としていた。
林の中で、透明の剣士と兵士が戦っている。
あれだけ派手に剣を振り回していれば、透明にしている意味ないよ。
もう少し上手に戦いなさい、と心の中で呟いた。
混戦の中に断裂魔法を放る訳にはいかない。
隠れながら時間をかけて、魔力を広げた。
味方の場所を目視しつつ、敵だけを魔力で選別していく。
じっくりと目と魔力で確認した後、一気に収納した。
「みんないる? 赤、青、黄色、声出して」
「「「いまーす」」」
万が一彼らを間違って収納していたら一大事だ。
私は近くにいる味方の透明化を解除する。
信号機トリオとレオン。
よし大丈夫そうだな。
「左も完了したよー!」
しばらくしてから、姉とチャールズも戻って来たみたいだ。
「ララ、後ろも誰もいないわ」
「ララちゃん、前も完了」
姉とチャールズの透明化を解除した。
「逃げたヤツも無し。ミッションコンプリートだね」
「そうだね。林の奥の方まで見て来たけど、誰もいなかった。多分、大丈夫」
「ララ、死体はどうする?」
「こんなにいっぱいいたら、片付けるのも時間かかるよ」
「そうね……。じゃあ、放っておきましょう」
「アス姉、収納した左側の人も捨てて行ってもいい?」
「時間経過させるの?」
「うん。百年くらい?」
「まあ、骨だけになっていた方が、環境に良いだろうしね。そうしましょう」
百年経過した空間をイメージしてから、収納していた兵士達をポイっと取り出した。
「ウォ……」
赤信号から呻き声が上がった。
うん、わかる。
自分でもホラーかと思ったし。
軍服を着た兵士の骸骨が、積み重なって出てきた。
武器を持ったりしているのが、また怖い。
「うう……。大量殺人をしてしもうた」
「ララ、もう割り切りましょう。躊躇う気持ちを捨てないと、私達が女神に、こうされるのよ」
「はい……。アス姉の言う通りだ」
「俺らは、むしろ、ララさんが女神に見えますけどね……。あ、変な意味じゃなく、神の御業的な……」
青信号と黄信号が、胸の前で手を合わせて礼拝しているよ。
やめちくり。
「はい、みんな、ケガないよね? このまま、進みましょう」
お馬さんとフローレンスも出して、皆で統一街道を北上した。
右に折れ曲がる道を、私達は直進する。
ここから先は国道だ。
かなり劣化した舗装状態なのは、馬に乗っていても分かった。
頑張っちくり。お馬さん。
※
三日目からは完全に雪道になった。
未だ、人が住むエリアらしく、果樹園が周りに見えるが、道は完全に雪に埋まっていて、どこが道か判別できないくらいだった。
この日から、お馬さんも夜の活動も諦めた。
五日目からは周囲が完全に森になった。
密集した針葉樹。
高く伸びた針葉樹が空の光を遮り、凄く暗い。
人が歩く道はない。
獣道ですらない。
木々の間を縫って、歩けるところを歩く。
全く変わらぬ景色の中を黙々と登った。
お馬さんの代わりに、私達が、一時間に一度、空間部屋でフローレンスに回復魔法をかけてもらった。
陽が登ってから、暗くて周囲が見えなくなるまで、暗い森の中を歩き、部屋に帰った。
夕食には、姉が大抵温かいスープか、シチューを出してくれた。
お風呂に長く浸かれるだけ浸かって、皆で温かい夕食を食べた。
「でも、アストリッドさんも、ララさんも凄いですね。俺らに付いて来られるとは思いませんでした」
「まあ、わたし達は二回目ですからね。でも、足腰が痛いです。フローレンスが毎晩マッサージと回復魔法をかけてくれるからこそ、翌朝何とか立てる。そんな状態ですよ」
「うん。ララも足がパンパン。でも、まだ数日。これが一か月続くんだよね?」
「そうですね。一か月半は登ります。ここをどれだけ早く突破できるかにかかっていますから」
「じゃあ、半月は頑張らないと、順調かどうかも判断付かないね」
青と黄色が首をブンブン振っている。
順調ということか?
「いや、間違いなく順調です。彼らに追いつける程かは分かりません。でも、俺らの想定よりは確実に早いです」
「まだ数日なのに?」
「はい。一番大きいのは、寝床ですね。翌朝まで、キチンと寝られる。寒さの心配もしなくて良い。疲れでパフォーマンスが落ちることは、あるかもしれませんけど、そこまで低下しないでしょう。最悪一日OFFにすれば復活できる環境です。これは何よりも大きい」
「アス姉の温かい食事も食べられるしね」
「はい! その通りです! 最も険しい山道なのに美味しい食事付! あとは、ララさんの空間魔法、これは最強です。寒さも凌げますし、雪道も歩きやすくなりますしね。一時間に一度、聖女の癒しを貰える。護衛の男性二人は強い。いや、エッジ・シーカーは世界最強パーティでしょう」
世界最強パーティ。
私達は同じ冒険者仲間から、最高の誉め言葉を貰った。
自然と皆の顔が綻んだ。
でも、それは『人類の中では』という前提が付く。
人類という弱い種族の中ではね、という前提付きの話だ。
これを嫌と言うほど知ることになるのは、数日後のことだった。
「シグナル・ライトの皆さん、前方に怪しい光あり」
先行していたレオンが滑るように雪を駆け下りてきて、私達、いやシグナル・ライトの人たちに告げた。
「怪しいとは?」
「ダニエル、ちょっと見てきて」
レオンの返答がある前に、赤信号が青信号に指示をした。
青信号がレオンと入れ替わるように登っていく。
「大量の光る眼が、こっちを伺うように見ているんだ。待ち伏せしているのか、様子見しているのは、俺には分からない」
光る眼。
私は、木々の隙間に覗く空を見上げた。
雪が降っており、空は暗い。
伸びた針葉樹がさらに、光を遮る。
日中だけど、私達はずっと薄明りの中を歩いているのだ。
薄明りの暗い森の中に光る眼。怖すぎる。
青信号がすぐに駆け下りて来た。
「ドレカヴァツだ」
赤信号よりも1オクターブ高い声で、そう言った。
私達は赤信号に解説を求めるように視線を注ぐ。
シグナル・ライトの三人は、顔を顰めて、地面をジッと見つめていた。
「止むを得ません。退避しましょう。少し遠回りになりますが、ドレカヴァツの縄張りに入る訳には行きません」
「うん。結論は良いのだけど、ララにも分かるように教えて」
「ララ、空間部屋に一度戻りましょう。そこでキチンと話して、また同時刻に戻れば良いのです」
皆で空間部屋に戻った。
ダイニングテーブルに座り、信号機トリオの解説を聞く。
イキナリ帰って来た私達に、フローレンスが温かい紅茶を作ってくれた。
ドレカヴァツ(Drekavac)。
北黒の森に棲む伝説の魔獣の一つ。
出会ったら確実に殺されると言われているそうだ。
北黒の森の行方不明者の殆どが、ドレカヴァツの被害に遭っているのではないかと言われている。
ドレカヴァツは死骸を残さない。
骨まで食べ尽くし、遺品は彼らの棲み処に持ち帰る。
形跡が残らないのだ。
ドレカヴァツの身体は細長いそうだ。
痩せた身体に光る眼。
身体に対して、不釣り合いなほど大きな頭。
皮膚が所々剥げ落ちた様に見え、腐敗している印象を与える。
ドレカヴァツが『死者の使者』と呼ばれる所以だそうだ。
嗅覚鋭く、近づいた人間を見つけるのが得意。
木々の枝を高速で飛び回り、捕まえることは困難。
爪が鋭く、一突きで死に至らしめる。
甲高い叫びをあげることで、人は聴覚を失い、気絶させられることもあると言う。
「アス姉さん、ララちゃん、どれくらい速いのか知りたい。僕に一度戦わせて貰えないかい? 鋭い爪ってのも、僕らには効かないでしょ?」
「チャールズさん、危険です。幾らチャールズさんが速いと言っても、足場の悪い雪の坂道では走れません。彼らは木々を跳躍してくるのです」
「はい、理解しているのですが、戦わずにスゴスゴと尻尾を巻いて逃げるのがちょっと……」
「フローレンス、気絶するくらいの甲高い声って、周波数の問題?」
「周波数だけじゃなくて、音圧も関係すると思うわ。一定以上の高さで一定以上のデシベルだったら、気絶や眩暈を引き起こすこともありそう」
結界で音を塞いだことはあるけど、さらに細かい条件を付けたことはないな。
ぶっつけ本番だけど、出来ないことはないだろう。
「カルロスさん、迂回する場合は、どれくらいの日数がロスしますか?」
「十日くらいでしょうか」
「じゃあ、一日くらい、ここでロスしても、それは諦めましょう。チャールズやってみますか?」
「アス姉さん、俺もやります」
「じゃあ、チャールズとレオンで臨みます。危険ならば、すぐにララの近くに戻ること」
「「了解」」
私はチャールズとレオンの結界を調整した。
一定以上の音量と一定以上の周波数の遮断。
その後、フローレンスも含めて、もう一度、雪山に戻った。
しばらく、坂を上っていくと、確かに上の方から見下ろす複数の光る眼が見えた。
「不気味すぎるわ……、ホラーよ、ホラー。チャック、本当に行くの? 呪いにかかっちゃうかもよ」
「はは、フローレンス、魔獣だよ。呪いはないよ」
「いや……、でも、死者の使者って言われているくらいだからね」
すごい微妙な顔をしてから、チャールズは走り出した。
レオンもそれに続く。
私は残る全員を囲む結界を作り出した。
この場で観戦である。
五分保たなかった。
完敗。
剣を振り回して何とか当たった個体だけ、ダメージを与えられた印象だ。
チャールズが幾ら速くても、足場が悪すぎる。
相手は木々を跳躍しながら攻撃してくる。
そのうち、相手の攻撃が当たり、バランスを崩したところでタコ殴りである。
レオンも大盾で攻撃を受け流していたのは最初だけ。
四方八方から殴り掛かられて、最後はカメの様に丸まって耐えるだけになった。
「ララ、回収できるかしら」
「うん。ちょっと遠いから、もう少し近づくね。一旦、結界を解除して、またかけ直すから」
私だけが、ソロリと見つからないように、近づく。
徐々に魔力を延ばしていった。
二人を魔力で捕まえたと思ったところで、頭に衝撃が走る。
蹴られたのか。
腹に、肩に、衝撃が加わった。
やばいと思って結界で身体を囲う。
ブチっという音と共に、ドレカヴァツの腕が結界の中にゴロンと転がった。
「うぇ。ホントにホラーだよ」
結界の中から、もう一度、チャールズ達に魔力を延ばして捕まえる。
ドレカヴァツが私の結界をガンガン攻撃してくるけど、気にしない。
この結界を突破するのは、流石に死者の使者には難しいみたいだ。
チャールズとレオンを捕えて、空間部屋に送り込んだ。
その直後。
結界がドレカヴァツの体当たりで、地滑りを起こした。
やば。
ズルズルと結界ごと滑る。
「「「キィー!」」」
近くにいた複数のドレカヴァツに、物凄い甲高い声で叫ばれた。
クラっと意識が遠ざかる。
耳がキンキンする。
頭がフラフラする。
ドン!
何かが結界にぶつかった。
私も結界の壁に身体を強く打ち付けた。
うう。
頭を振って、周囲を見渡す。
木にぶつかったみたいだ。
相当、滑って落ちちゃったのかな。
坂の上に、ドレカヴァツの姿も、仲間の姿も見えないよ。
ただ、結界が滑り落ちた痕だけが、そこにあった。
やべー、これ、どれくらい落ちちゃったんだろう。
キンキンする耳とガンガンする頭を耐えつつ、坂を登る。
空間部屋に帰りたい。
でも、帰っても、次、出て来る場所はここだ。
姉のところまでは頑張ろう。
頑張って登ろう。
ああ、なんて馬鹿なことしちゃったんだろう。
なんで、自分の結界に音制限を付けなかったんだろう。
そんなことを考えつつ、ひたすら登った。
登っても登っても、全然仲間たちが見えない。
滑った痕があるから、道は間違えていないはず。
ただただ、不安に苛まれて、足だけを動かした。
三時間。
それだけの時間をかけて登った先に、姉達が見えた。
周囲を大量のドレカヴァツが囲んで、結界を蹴ったり殴ったりしている。
私は念のために自分の身体を纏う結界に音制限をかけた。
もう少し近づいてから、姉達の結界を囲んでいるドレカヴァツに向けて、断裂魔法を飛ばす。
ムカついたので、ガンガン投げまくった。
バタバタ倒れていくドレカヴァツ。
漸く姉達の姿が見えた。
耳を抑えて、皆が蹲っている。
くそ。
こんにゃろ。
悪態を付きながら、断裂魔法を投げた。
数体倒した後、もう少しだけ近づいて、魔力を広げた。
数分かけて姉達を魔力で掴み、空間部屋へ送り出す。
私も転がるように、部屋に逃げ込んだ。
姉とフローレンスを抱きかかえるように、お風呂場に連れて行き、洋服を着たまま、湯船に押し込んだ。
三人とも頭から湯船に飛び込む形になった。
空間収納から、エネルギー鉱石を取り出して、湯船の中で魔力を取り出す。
ジワっと癒しのエネルギーが身体中に染みわたった。
耳を切り裂いていた高音が鎮まっていく。
壊れた三半規管が修復されていく。
徐々に気持ち悪さが改善していった。
「ぷはー」
顔を上げると、半ば死にかけたような顔のフローレンスが、目を閉じたまま、湯船の縁に顎を乗せていた。
姉がゴソゴソと、湯船の中で服を脱ぎ始めた。
「ララ、何なのよ……、アイツら……」
「うん……、わたしも流石に怖かったわ。本当に死者の使者だったわね……」
「ごめんね。ララが失敗しちゃったから」
「皆でララが滑り落ちていくのを、絶望の思いで見送ったわ」
「見えなくなるまで、わたし達全員で見送ったのよ」
「そしたら、アイツらの標的がこっちに向いてね、そこから地獄まで連れていかれたわ」
「わたしも意識が飛んでいたもの。気づいたら、湯船の中だった」
「チャックの所為よ。アイツが調子に乗って挑んで勝手に負けた上に、私達まで、こんな目に合わせて。もう。クルクルパンチしてやるわ」
フローレンスのクルクルパンチは是非見てみたい。
でも、チャックだけの所為ではない。
私達全員が調子に乗っていたのは確かだ。
最強冒険者パーティと褒められて浮かれていた。
ホント、死ななくて良かったと思う。
もっと強力な音の攻撃があれば、脳を破壊されていた可能性だってあるのだ。
「ララ、どうするの?」
「もちろん、やり返す」
「何か方法はあるの?」
「うーん。皆で考えよう。自惚れず、謙虚になって、やれることを考えよう。何も思いつかなかったら、尻尾を巻いて逃げる。でも、何もせずにやられっぱなしで逃げるのはイヤ」
「そうね……。音の攻撃は結界をちゃんと設定することで何とかなるのよね……。あの速さをどうするか……」
「お姉様、勝つ定義を変えましょうよ。無事にテリトリーを突破できれば勝ちとする。それならば、可能性があるような気もします」
濡れて脱ぎにくい服を姉に脱がせてもらった。
フローレンスの服も二人で剥ぎ取る。
エネルギー鉱石のお陰で、頭も冴えわたって来たぞ。
ひと眠りしよう。
甘いものを沢山食べよう。
そしたら、リベンジマッチだ。
ゴリラの様に、ぺったんこの胸を叩いて、私は吠えた。
アイツら、絶対ギャフンと言わせてやる。




