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四分の一


四月に入り、雨季が終わったのか、首都カリーム・アーバは晴天が続いている。

この国を覆っていた厚い雲が晴れ、お日様が街を照らしていた。


私はチャールズとレオンを連れて、姉とフローレンスを迎えにイフラシアまで一度戻った。

二十日かけて往復して、再びカリーム・アーバで建国の支援を今はしている。


ナスル国家元首が最初に行ったのは、第二都市バハール・シティへの通達だ。

王国が滅びたこと、カリーム・アーバの憲兵は壊滅した。

新しいイフヤ共和国への恭順を示すか、戦うか、選べ。

そう通達した。


私たちがカリーム・アーバに戻ってきたと同じタイミングで返答があったそうだ。

第二都市バハール・シティの行政長と憲兵隊長、ならびに教会長が恭順の挨拶にやってきた。

今後、人事的な異動は大きく行われるだろうが、内戦はこれで終戦ということだ。


四月も終わりに差し掛かったころ、ナスルのオジちゃんに声をかけられた。


「ララ、そろそろ、カリーム・アーバの元憲兵達の処遇を決めたい」


「処遇?」


「そうだ。情報は大分集まり、新憲兵隊長に精査させた。処断する元憲兵と、本人が自省するのであれば再雇用しても良い元憲兵は決まっている」


「なるほど。わかった。取り出せる単位には制限がある」


基本的には収納した単位でしか取り出せない。

大きく分類すると、イリア大橋で収納した数千人が三つ分。

カリーム・アーバの元隊長連中が、十三人。

東門に攻めてきた南部の元憲兵達が、おそらく百人くらい。

それをオジちゃんに説明した。


「分かった。まずは、隊長連中の斬首だな。それは民に公開しないと、民の怒りも収まらんだろう。少し辛い仕事になるが、頼めるか?」


「分かった。どこでやるの?」


「斬首刑は旧教会跡地だな。数千人の元憲兵達の解放と説諭は旧王宮跡地になるだろうな」


王宮と教会、それぞれの瓦礫は、公共事業と貧困層支援という名目で撤去作業を行った。

カリーム・アーバの外に瓦礫の山を運んでもらったのだ。

私たちが多くの寄付をした。

姉たちも是非そうしたいと言うので、かなりの大金を渡すことになった。


王宮は市民の憩いの公園、広場として、そのまま活用するそうだ。

教会は同じ場所に再建することになると、オジちゃんは言っていた。


国家元首であるナスルのオジちゃんは、スラム街に近くに政府機能を構えた。

ボロい建物で、とても外交的な活動は出来ないだろう。

でも、今はそれでも良いと本人は言っていた。

身の丈にあっていると。


数日後に教会跡地に向かうと、既に沢山の人が集まっていた。

ちょっと殺気立っていて、怖い。

私たちは憲兵さん達にアテンドされて、教会跡地に急遽建てられた、木枠の処刑台の上に登った。

何となく、嫌な気持ちになった。


「皆のもの! 本日は通達した通り、元カリーム・アーバ憲兵隊の隊長、小隊長を斬首する! 既に多くの証拠が集まった。国王陛下、王妃と皇太子の暗殺、それ以外にも少なくとも約千三百の犯罪に直接関わっていた者たちだ!」


ナスルのオジちゃんが、その後、詳しい犯罪の記録を説明した。

この者たちだけは、自分の権限で、斬首することを決意したと結ぶ。

その後、彼らを捕えた冒険者パーティとして、私たちは紹介された。


「ララ、済まぬが、ここに連中を出してくれ。後は引き受ける。見なくて良いぞ」


「うん、わかった。捕まえた時のまま出す? それとも、何日か経過させた状態で出す?」


「ん? そんなことも出来るのか……。そうだな。弱っていた方が良いだろう。五日くらい経過した状態の奴らを出してくれ」


何も指定いない空間に収納した場合、どのような状態で日数が経つのだろうか。

真っ暗で何もない状態で、ただ転がされているのか。

そもそも、どれくらいの部屋の大きさなのか。

全く分からないな。

彼らに聞いてみたいくらいだ。


処刑台の上に、十三名の隊長格の元憲兵達を取り出した。

全員がゴロっと転がって出てきた。


ナスルのオジちゃんが、周りの憲兵たちが顔を顰めた。

ああ、そうだよな。

私たちは結界を纏っているので、匂いが分からない。

多分、酷い悪臭がしたのだろう。

汚物にまみれていたということだ。


周りの憲兵達が彼らの近くにあった武器を全て押収した。

後ろ手に縛りあげ、正座させた上に、頭を床に押し付けた。


元憲兵達は顔を上げて、周りの様子を見ていた。

既に生気のない顔をしている。

ここがカリーム・アーバの広場の前だと分かったのだろう。

驚きの表情が浮かんだ。


「そなたらは、公開斬首されることになった。言い訳させるつもりはない。既にアフマド・サイード元憲兵隊隊長の執務室から、国王陛下、王妃、皇太子を含む多くの人たちの暗殺の証拠が見つかった」


隊長さんがギロっとナスルのオジちゃんを見上げて睨んだ。

クンクン女は知らなかったのか、さらに驚愕の表情を浮かべていた。

その他の人たちは知っているのだろう。

頭を垂れた。諦めたみたいだ。


「め、め、女神様の、お、思し召しだ」


掠れた声で、元隊長が囁いた。


「ふん。偽物の女神に唆されただけであろう。本物の女神様はこちらについた。其方らも、自分がどうして、その状態で、ここにいるのか、少しは考えればわかるだろう?」


「騙されちゃったんだよね。偽物女神に頭の中に通信の自動機械を埋め込まれて。神託だと思わされちゃった。でも、しばらく前から、もう聞こえないでしょ? ララが、自動機械を取り除いちゃったからね。もし、本物の女神様だったら、今、声をかけてくれるハズだよ」


「私は! 私は騙されていたのよ! 知らなかった! 本物の女神だと思っていたし! 本物の神敵だって……」


クンクン女が私に向かって叫んで来た。

自分は悪くない、自分は被害者だ、頼むから救ってくれと表情で訴えていた。


「うん。でも、結果的に無実の人たちを無残に殺したことは変わらない。気づくのが遅いよ……。ララのことだって、同じように殺すつもりだったんでしょ? 貴女たちが殺した、スラム街の女の子は何をしたの? 殺されるようなことはした?」


姉とフローレンスに肩を抱かれて、耳元で、もう行きましょうと言われた。

何かクンクン女が言っているが、私たちは処刑場の階段を下りる。

これが終わったら、王宮で数千人の元憲兵達の解放だ。

そっちの方が精神的には楽だろう。


広場を抜け、立派な家が立ち並ぶエリアに向かった。

多くの人たちが、公開処刑を見たいのか、足早にして広場に向かっていった。

顔に嬉々とした表情を浮かべて、走って行った。


反対方向に歩く私達は、彼らとは反対の表情を浮かべていた。

ものすごく俯瞰して、視座を上げて、舞台を眺めてみれば、処刑される彼らだって被害者だ。

そういう役を与えられて、舞台の上で、歌って踊っただけにすぎない。


広場から、大きな歓声が聞こえた。

大きな歓声と、大きな罵声と、拍手と、足を踏み鳴らす音が、私たちの背後から聞こえた。



王宮跡地での解放は、先ほどと比べれば平和的な物だった。


名前を読み上げられた人たちは、犯罪者として連行されていった。

三百人近くいたけど、逆に言うと、凄く悪いことをしたのは、それだけなのかと拍子抜けした。

それ以外の大半の元憲兵の人たちは、自省と恭順の意を示した。

彼らは数日休んだ後、新しい配属先に赴くことになる。

これまでよりも大変な場所だと思うが、彼らは女神様のために、苦難を乗り越えると誓っていた。


最後にあっと思い出したように、ナスルのオジちゃんに伝えた。


「そう言えばさ、ララ達がこの国に上陸した際に、憲兵さんに襲われたんだ。その十人も解放するから、オジちゃん宜しくね」


姉もあっと思い出したような顔を浮かべて、ナスルのオジちゃんに説明していた。

オジちゃんは、大きな笑い声を上げて、よいよい、出すが良いと言ってくれた。



アル・ナジール編もそろそろ終わりに差し掛かっている。

エンディングの迎え方を、私たちは決めないといけない。


ナスルのオジちゃんに、少し多めの時間を確保してもらった。

最近は皆が忙しくしているので、じっくり集まって話す時間が取れていない。

一緒にご飯を食べて、その日あった出来事を皆で話したり、

その時、気になっていることを相談したりするくらいだ。


私たちの旅立ちの時はもうすぐだ。

いや、むしろ、長く居過ぎたのかもしれない。

応援したかったし、助けてあげたかった。

貧乏な国だけど、みんな一生懸命生きていた。

少しでも、良い未来を創ろうと、全員が真剣に考えていた。


私たちで話し合った結論を、ナスルのオジちゃんとも相談しないとけない。

最初から同席してもらった方が良いだろうと、姉と相談して決めた。


五月のある日。

カリーム・アーバにも、また冬が訪れようとしていた。

私たちは、空間部屋のダイニングルームに集まって、これから先のことを話し合った。


「オジちゃん、そろそろ出発しようと思う」


「アストリッドから聞いた。其方らのお陰で、この国は先に進めた。ずっと共にいたいとワシは思っている。だが、前にも言った通り、其方らは大きな使命を背負っている。それを遂行する方が重要だろう。ただ……」


「ただ?」


「ワシがもう少し上手にやれれば良かったのだが……。すまぬ。其方らが東の国に行くための安全を確保しておきかったが、まだ暫くかかりそうだ」


これは、姉から、私たちも聞いていた話のことだろう。

ナスルのオジちゃんは、ラージャスティとサンパウリーナとの停戦と三国同盟の交渉を進めていた。


ラージャスティは、兄弟国である。

アル・ナジールの方が宗教上の兄で、ラージャスティが弟の関係性だ。

これまで真の女神像がある首都カリーム・アーバを、ラルナー教の聖地の一つだと考えているから。


ラージャスティとしては、ラルナー教の大司教が国のトップに就任した。

それは歓迎すべきことだ。

ナスルのオジちゃんも、ラージャスティという国全体からリスペクトもされている。

当然、すぐに隣国として承認と歓迎の使者を送ってきた。


ただ、ナスルのオジちゃんは、サンパウリーナとの停戦も実現したいと考えている。

ラージャスティとサンパウリーナの拗れた関係性を修復するのに、もう少し時間がかかるだろうと姉は言っていた。


三国同盟まで持っていければ、私たちが統一街道を東進するのに不安はなくなる。

そのために頑張ってくれていたということだ。


「ありがと。オジちゃん。でも、大丈夫。ここから先は、ララだけが考えていること。だから、アス姉もオジちゃんも、みんなも意見を聞かせて欲しい。ララは、カスティリオ王国に行こうと考えている」


オジちゃんが一瞬で険しい表情を浮かべた。

姉は目を瞑り、フローレンスは頷いた。

チャールズとレオンは笑みを浮かべている。

みんな、想像はしていたということだろう。


「はぁ……。ララよ、どうして、自分から危険に足を踏み入れる。もはや、隣国と戦争しているとは言え、ラージャスティの方が遥かに安全だ」


「うん。分かっている。でも、いつかは行かないといけない国。逃げてばかりはいられない」


「この時期に行く必要もないだろう」


アル・ナジール王国が滅んで、イフヤ共和国になって、最も気に入らないのは、カスティリオ王国だ。

正確には、事実上クーデータで国を乗っ取っているリカルド・エスコバル将軍。

仲間のアフマド・サイード憲兵隊隊長が斬首されたのは、女神から聞いているだろう。

おそらく、イフヤ共和国への侵攻がこれから始まるはずだ。


カスティリオ王国としても、サンテール、ヴァルデンとセレニカーナ王国の領土を巡って紛争中である。

東側のイフヤ共和国と戦争が始まれば、二正面作戦となる。

それは好ましくない事態だろう。


ただ、イフヤ共和国を叩くなら、国が安定しない間が最適だ。

時間が経てば、ラージャスティも含めて敵に回る可能性が高まる。

ひょっとしたら、サンパウリーナ王国との同盟の交渉が始まっているのも知っているかもしれない。


間違いなく、来る。


「オジちゃん、勝てる? カスティリオ王国には戦艦もあるよ。多分、海からやってきて、カリーム・アーバに直接乗り込んでくる。これから冬になるし、統一街道から大軍が来る訳じゃないよ」


カスティリオ王国は大国だ。

元セレニカーナ王国セレニティアの近く、つまり西側に首都アクアリス(Aquaris)がある。

大きな港を保有する街だ。


東側、イフヤ共和国の近くには、ラ・フロール(La Flor)という都市がある。

大陸に大きく入り組んだラ・フロール湾(Bahía de la Flor)に隣接した港町だ。


ナスルのオジちゃんは、元首都の憲兵隊員の恭順を受け入れて、彼らを統一街道沿いの国境に配備させた。

カスティリオ王国の国境に近くには、数千の憲兵がいる。


だが、カスティリオ王国は国土の真ん中に大きな山脈が聳えている。

西側の首都アクアリスから、統一街道を通って、東に行くには、その山を越える必要があるのだ。

おそらく、雪道となる冬は避けるだろう。

だとしたら、強い海軍を活かして、海から攻めて来ると思うのだ。


「分かっておる。だが、ララがカスティリオ王国に向かう理由にはならんだろう。むしろ行ってはいけない理由を補強するだけだ」


「いつ戦争は始まるの?」


「南カリブリ岬にいた戦艦が、首都アクアリスに戻ったという報告を受けた。おそらく、そこで将軍からの指示を受けるはず。今頃、もう受けているだろう。そこから、二か月というところかな」


「何人くらいで来るの?」


「陸軍の兵士を乗せて来るだろう。どの街の陸軍が担当するか次第で代わる」


「首都アクアリスの兵力は使わない。サンテール、ヴァルデンの両国と睨み合っているからね。東側ラ・フロールの兵力も同様。イリアの憲兵が国境に配備されていることは知っているはず。そうなると、選択肢は一つ」


「ふっ。ララ、いつの間にか軍師になっているな。良く知っておる。そうだ。南のカリブリ市の兵力だろう。あれは、そもそも、こういう上陸作戦のために存在する陸軍だ」


「そこに行く。船で先回りしたい。南カリブリ岬には戦艦が今はいない。行けるよね?」


「ララ、何をするつもりだ?」


「ララの目的は二つ。カスティリオ王国から通信機械を奪うこと。最低一つはあるはず。おそらく、その一つは戦艦の中」


カスティリオ王国首都アクアリスの女神像は、真の女神像ではないと聞いている。

カスティリオ王国の人たちは、隣国のフィオレンティアまで神託を受けに参拝していると。

フィオレンティアの女神像の通信の自動機械は既に撤去している。

そちら側からのネットワークは既に遮断されている筈なのだ。


それでも、南カリブリ岬を私達が小型船で通り抜けようとした時、

監視の自動機械に捕捉されていた。

だからこそ、女神に攻撃されたのだ。

考えられるのは、戦艦に自動機械が積んであるということだろう。

サンテールで見つけた様に、船底に隠されているのだと思う。


「ララちゃん、将軍は首都アクアリスにいるんだよね? だとするのならば、戦艦が南カリブリ岬にいる間は神託を上手く受け取れていないってことも考えられるよね?」


「うん。チャールズの言う通りだとララも思う。少なくともアル・ナジールが崩壊するのを指くわえて見ていた。情報が適切に入っていたら、何らかの邪魔をしたと思う」


「今、戦艦がアクアリスに戻った。今頃、女神から貴重な助言を頂いているという訳だ」


「そう。ナスルのオジちゃん、ララ達はあれを放置できないの。あれがあると、チャールズが高速船を手に入れたとしても、安心して南の大海を航海できない。オジちゃんのところにも遊びに来れなくなっちゃう。そして、真の意味で南の国が解放されないってことにもなる」


「ララ、清々しいほどの自分都合な理由で安心したわ。私もララの意見に賛成」


「ララ、カスティリオ王国には、殺戮の使徒もいる。あの火の使徒もだ。それは俺がやる」


「レオン、『俺たち』だろ? 僕もやるよ。強くなったところを見せてやる」


「チャールズ、レオン、目的は通信の自動機械の除去よ。遭遇するか分からないわ」


「オジちゃん。一番早い船で送って。カリブリ市まで」


「ふぅ……。わかった。すぐに手配しよう。ただ、ララよ。念のために言っておくぞ。我らのために無茶は不要だ」


私はコクリと頷いた。

このやり方が一番、良案だと思う。

結果的に、この国の人たちも救えるはずだ。


「閣下。わたしからも一つお願いが。南カリブリ岬に戦艦がいないということは、サンテールとヴァルデンにまで海路で行けるということです。どうか使者を派遣して頂けませんでしょうか」


姉が言う通り、状況報告は必要だろう。

この国で起きたこと。

これから、ナスルのオジちゃんがやろうとしていること。

彼らならば、きっと後押ししてくれると思う。

支援もしてくれると思うのだ。


詳しく書いたらマリーが怒りだしそうだな。

また、こっちに来るって言いそうだ。

姉とフローレンスに上手に書いてもらおう。

私は一言書けばいい。

『元気だよ。マリーも元気?』

そう書けば十分だ。



ナスルのオジちゃんは、その日のうちに一番速いという船を貸し出してくれた。

自動機械の推進力が付いていない小さな小さな帆船だった。

チャールズが、空間部屋から、船の後ろに取り付ける自動機械を持ち出して設置していた。

多少、船足が速くなると思うと言っていた。


出発の日の朝、ナスルのオジちゃんの邸宅の部屋から、空間部屋の入口になっていた裂け目を除去した。

オジちゃんと、執事長が早起きして、見送ってくれた。


「閣下、執事長、長い間お世話になりました。また来ます」


姉がそう挨拶した。

ナスルのオジちゃんと同じように、胸の前に手を合わせて、礼を示していた。

後ろに並ぶ、私たちも、それに倣う。

この国で沢山見て来た、他者に対する礼の尽くし方だ。

出発の朝には相応しい振る舞いだと思う。


「しばしの別れだ。カスティリオ王国の仕事が片付いたら、必ず立ち寄るのだ」


「うん。オジちゃん、またね。色々ありがとう」


「何を言うか。礼を言うのは、こちらだ。アストリッド、ララ、フローレンス、チャールズ、レオン。我が国はエッジ・シーカーの皆を決して忘れぬ。また会おう」


皆、大きく頷いた。

中東で最も危険で、決して立ち寄ってはいけない国。

そう言われていたけど、ここを離れる時に、こんな気持ちになるなんて想像もしなかったよ


「オジちゃん。『救済』の使徒。ナスルのオジちゃんにピッタリだよ。ララ達も救ってもらった。実際に助けてもらったという意味だけじゃない。心も救済してもらえたよ。またね」


オジちゃんの邸宅の敷地で、全員の分の馬を出した。

そこから、広場を抜けて、街の反対側、港の方に進む。

建設中の教会が見えた。

沢山の人たちがそこで働いていた。

その多くは、スラムの人たちだと思う。


スラムがあった地区も再整備されていた。

建物が壊されて、新しく自分たちが住むことになる建物を彼らが、自分の手で建てている。

あの女の子が首を吊るされた建物も、もう既にない。

そうやって、辛い過去も乗り越えて、人類はより良い未来を創るために進む。


でも、私は忘れない。

私の手を引いて、この街に入れてくれた、あの小さな手を。


「ララ、この街の使徒の平定。ちゃんと終わらせたね」


「平定、あ、そうだね。アス姉、五人の自動機械を回収できた。多くは亡くなっちゃったけどね」


018『XVIII』選ばれし使徒ナディア・ジャファール(Nadia Jafar)

034『XXXIV』憲兵隊隊長アフマド・サイード (Ahmad Said)

067『LXVII』猟犬カリム・アフマド (Karim Ahmad)

070『LXX』救済の使徒サミール・ナスル (Samir Nasr)

075『LXXV』国王ラシード・サラーム (Rashid Salam)


頭の中で、回収した自動機械の数を数えてみた。

人食の使徒のオジちゃんが食べた使徒の分を加えると二十一人。

セレニカーナ王国の女王アリーチェさんの様に、既に亡くなって回収できない人もいる。

その五名を足すと、二十六名だ。

まだ七十四人分もある。


でも、考えようによっては、四分の一は終わったということだ。


もう少し頑張ろう。

百人の使徒の頭の中から、自動機械を除去する。

十の女神像から、女神への通信機械も除去する。

そして、自由を手に入れるのだ。


女神が支配している、この世界に終末を。

それが、私の、この世界に転生した私の使命だ。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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