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土神の使徒(013)との戦い


「公開オークションですか?」


「はい。アス・スティエルナ様、私共、冒険者組合主催で行わせて頂きたいと考えています」


イーストエリアの冒険者組合支部に立ち寄った際、待ってましたとばかりに応接室に通された。

ウェストエリアにいるはずの、冒険者組合本部長まで、待ち構えていたみたいだ。

挨拶してすぐに切り出されたのは、オウルベアとグリズリーのオークションの件だった。


彼らは、通常のオークションではなく、観客が集まった場で、公開オークションを行いたいと要請してきた。

グリズリーはともあれ、オウルベアの討伐は遠い昔の記録に残っているだけである。

多くの観衆の興味を引くだろうとのことだ。


姉は私達、そしてレナさんに意見を求めたが、全員否はない。

私達としては、ボウガンの素材となるオウルベアの爪だけを頂ければ、それで良いのだ。


「はあ。分かりました。わたし達がやるべきことは特にないのですよね?」


「はい。もし可能でしたら、立ち会って頂けると助かります」


「わかりました……。日程が合えば。どこで開催するのですか?」


「八月の終わりに、闘技場にて毎年ジョストが行われます。実は……。そのジョストの実行委員からも、今年は例のあれで、主だった兵士の参加が少ないそうで、集客面の相談を受けていたのです。この公開オークションをジョストの目玉にしたいと考えています」


「ジョスト……?」


ジョスト(Joust)。

ヴァルデン共和国で人気の強者が集まった武芸大会の様なものらしい。

かつては、騎士の一騎討ち競技であり、主に馬上で行われていたそうだ。

騎士たちが武勇を競い合うための重要なイベントであり、最強騎士を決める一大トーナメントだったという。

聖騎士を輩出していた、北の隣国のサンテール王国で始まり、今ではヴァルデン共和国で、多くの国民が参加する大会になった。

馬上での武器を使った戦いでは、馬にも人にも死傷者が出るので、武器の使用は禁止。

全員が円形の競技スペースで無手で戦う。

競技スペースから外に出されるか、背中を付けてテンカウントされると負けとなる。


「もし良かったら、チャールズさんとレオンさんも出場してみては如何かしら?」


「え? レナさん、僕もいいの? 子供はダメとかないの?」


「未成年は本来は出場できませんが、大会委員の推薦があれば可能ですよ。お二人とも使徒ですからね。参加は可能だと思います。今年は有名どころの兵士が遠征に行ってしまっているので、一躍優勝候補だと思いますよ」


「お、じゃあ、出ようかな。レオンは?」


「うーん。どうだろうな……。兵士が出ないのなら、まあ、決勝トーナメント進出くらいできるか。俺も、やろうかな」


レナさんがレオンを見て、優しい表情で頷いた。


「エッジ・シーカーのお二方、実はもう一人、選ばれし使徒が参戦なされます。ヴィルヘルム隊長のご子息のゲオルク様です。お二人よりも、少し背が小さいですが、使徒の御業をお使いになられます」


選ばれし使徒って、シュタインランドにいたんだっけ?

私はフローレンスと姉を見た。

二人とも、小さい声で教えてくれた。


ゲオルク・フォン・ハンブルク(Georg von Hamburg)。

ヴァルデン共和国の特別部隊隊長ヴィルヘルム・フォン・ハンブルク(Wilhelm von Hamburg)に預けられ育てられる。

紋章は右胸の『XIII』。十三番だ。

『土神』と呼ばれているそうだ。土の魔法使いだな。


「右胸なんだ」


「ララ、気になったのはそこなの? 普通、土の御業ってのが何だか知りたいでしょ」


「うん。でも、フロ、私とフロは胸の真ん中に紋章がある。チャックとレオンは左胸。あの変態放火魔は右胸。土の人も右胸。何か法則ありそうじゃない?」


「まあ、確かに。でも、推測するにもサンプルが少ないわよ。後回しよ。それより、土魔法ってどんな感じなのですか?」


「魔法……。あぁはい。ゲオルグ様のご加護は土の神。地面から壁や槍、色々なものを生成して戦いになられます」


「まあ、想定通り。でも、それは無手に入るの? 武器じゃなく」


「そうですね……。私もよく分かりませんが、おそらく購入できるものではなく、ご自身の能力と判断なされたのでしょう」


「ララが出場したら、誰も触れられずに優勝ね……」


「え! ララ様、お強いのでしょうか! それでしたら、是非。可憐な女性がバッタバッタと大きな男性を薙ぎ倒す! それこそが最高のショーになりましょう!」


「嫌。ララは戦うの嫌い。うちの脳筋二人を出す」


本部長が妙に興奮してきたけど、何か勘違いをしている。

バッタバッタと薙ぎ倒すことなど出来ない。

まあ、少女じゃなくて、女性と言われたので、一瞬だけ『良いよ』って言うところだったけど、ダメダメ。

そういうのに参加して目立つとロクなことにならんのだ。


「本部長、それでは、うちのパーティから二名、ジョストに参加します。オークションの方はお任せします」


「それでその……、疑っている訳ではないのですが、グリズリーとオウルベアをお見せ頂くことは可能でしょうか。レナ様から絵を見せて頂いたので、間違いないと思いますが」


「いいよ。でも、大きいから、広いところに行かないと無理。あと、オウルベアは爪だけは貰うから」


「かしこまりました。それでは、後ほど訓練所でお願いします。あと、冒険者ランクなのですが、当然一級になると思うのです」


「一級になると良いことあるの?」


「はい。依頼料、買取金額、各種割引が五割増しとなります」


「皆んなが?」


「ララ様、アス様、レオン様は一級。チャールズ様とフローレンス様は現在四級ですので、二級まで昇格なされます」


私達はレナさんの顔を見た。

一級冒険者はレナさんだけだ。

何かアドバイスがあるのなら、貰っておきたい。


「まぁ、貴女達であれば、遅かれ早かれ一級になるわ。一級冒険者パーティって、世界でも二十か三十に収まるくらいよ。だから、必然的に指名依頼してくる人が大物になる。まぁ、断りにくいことが増えるってのが、デメリットね」


二級でもサンテールには数組と聞いた。

一級は各国に一組か二組とかなのかな。

まぁ、別に良いかと思う。

姉も皆を見渡してから、頷いた。


「わかりました。それでは、そちらもお願いします」


「ありがとうございます。新たな一級冒険者パーティの誕生。心よりお慶び申し上げます」


訓練所で、本部長達にグリズリーとオウルベアを見せ、ボウガンの素材だけは剥ぎ取った。

オークションでは、立ちがった姿で見せたいと言うので、結界魔法で何とかしてあげることを約束した。


姉達はボウガンのオーダーをしに鍛冶屋に行っちゃったので、私はフローレンスと手を繋いで、大使館まで歩いて帰った。



八月末。

イーストエリアの闘技場で、ジョストなる大会が行われた。

闘技場の入り口に、結界で囲ったグリズリーとオウルベアを展示した。

物凄い人だかりになったと言う。


私達は観客席真ん中の関係者席で、観戦した。

闘技場は三万人くらい収容して、凄い熱気だった。

まだ、予選なのに、皆んなで大騒ぎしていた。

手を叩き、足を踏み鳴らし、指笛を吹き、大声を上げている。

まだ冬なのに、その熱気で闘技場全体の温度が上がり、湯気が上がってるのが見えるほどだった。


「フロ、何だか怖いね」


「うん……、私、こういうの嫌いよ。頭悪そうな男達がいっぱい」


「アス姉は楽しそうだね。アス姉、強くて逞しい男の人好きだもんね」


「そうね。強くて逞しくて真っ直ぐな人ね。やっぱ男性は男らしくなくっちゃね」


私はフローレンスと、微妙な色気を醸し出している姉を見つめた。

何だか、姉から女を感じる。

まだ子供の私達には分からない感覚だ。

私はフローレンスの手をギュッと握った。


選ばれし使徒は、別々の予選グループに配置された。

チャールズは円形のリングを駆け回り、相手を翻弄して勝ち上がった。

レオンは大人と同じように戦っていた。

組み合って力勝負だ。

それでも、圧倒しているから、もう身体強化は完全マスターしたのだと思う。


面白かったのは、やはり土の子だ。

背はアス姉と同じくらいしかない。

身体も細く、弱そうだ。

レナさんみたいに薄い黒髪。

目が細く、鼻がすごく高い。

神経質そうな印象を受ける男の子だった。

少なくとも、姉のタイプじゃない。


頭が良いのか、魔法の使い方は上手だった。

リングの土を盛り上げて坂道にしたり、

足場を盛り上げて倒したり、

一度も触られることなく、場外に弾き出していた。

観客も、初めて見る神の御技に大興奮だ。


試合が終わると、リングを魔法で元に戻す礼儀正しさが、私は気に入った。

少なくとも、変態放火魔みたいな人格異常者ではない。


決勝トーナメントでは、準決勝でチャールズと当たる。

反対山にいるレオンは、準決勝でヒグマと戦うことになる。

7フィート近い、2メートルを超える馬鹿でかいムキムキマンと戦わないといけないのだ。

非常に恐ろしい。


お昼を皆んなで食べている時に、レオンに聞いてみた。

怖くないのかと。


「うーん……。単純にデカくて力があるだけなら、ヒグマやグリズリーの前に立った時の方が怖かったな。俺が嫌なのは、ヴィルヘルムさんみたいなタイプかな」


「隊長さん? 強いの?」


「うん。強い。上手いってのかな。色々知ってるから、何をやっても対処されそうで、自分が無力に感じる」


「隊長さんって、やっぱ、この国で一番強いのかな?」


「あぁ、ララは知らないかもだけど、特別部隊って、ただ強いだけじゃダメなんだ。遭難救助とか、鉱山の崩落事故の時にも中に入る。山にも詳しい。そう言う人の集まり」


なるほど。

だから、『特別部隊』なんだ。

すげーカッコいいな。

強さだけじゃなくて、知恵と勇気もある。

素晴らしいな。

あの土の子も、そう言う子だったら嬉しいな。


「レオン。無理せず。今のレオンをそのまま、ぶつければ良いのですよ」


「うん。ありがとう、アス姉さん。期待に添うように頑張るよ」


「アス姉さん、僕は? 僕には?」


「ふふふ。チャールズはいつも、いつも通りに戦うでしょ。何も心配していませんよ」


「うん、チャック、土の魔法よりも早く相手を蹴飛ばせ」


「もちろんさ。僕のが速い。最速で近づけば、魔法なんて関係ないからね」


「ま、二人とも空間魔法防御付き。万が一怪我しても、こっちには再生の聖女様がいる。死なないから大丈夫」


フローレンスは戦うことが嫌なのか、凄く微妙な顔をして頷いた。



順調に勝ち上がった二人は、同じ様に順調に上がってきた相手と準決勝でぶつかった。


レオンは首をコキコキならして、堂々とムキムキマンの前に立った。

レオンだって、小さくない。

6フィートは無いけど、十二歳にならない子にしては大きい方だ。

相手は、1フィート、三十センチ以上大きい。


そんな少年がヒグマの前に逃げることなく立って、観客は大興奮だ。


ヒグマが腕を前に出す。

レオンはそれを受けた。

両手を組み合い、力勝負を受けた。


「「「「ウォー!!」」」」


大歓声がさらにヒートアップする。


上から押しつぶすようにムキムキマンが力を込める。

腕が肩が一層盛り上がった。

フローレンスが祈る様に手を組んだ。


ジリっと押し込まれるが、レオンは負けない。

右足はリングの土をガッチリと掴んでいる。

左足は地面に少しめり込んだように見える。


「行けー!」

「少年! 負けんな!」


組み合うこと数分。

ムキムキマンの頭から汗が流れてきた。

レオンは負けない。

一歩、前に踏み出した。

観客が大興奮だ。


さらに一歩。

ムキムキマンが、ついに、一歩下がった。

握った手が下から押し込まれて、身体が少し浮いた様に見える。


さらに一歩。

もう観客席は総立ちだ。

小さな少年が、ヒグマを押し込んでいる。


さらに一歩。

行け! レオン行け!

私も小さく呟いた。


ムキムキマンは組み合うのを嫌がる様に、手を離した。


「行けーー! レオン! 行けー!」


右隣から大音量の叫び声が響いた。

姉が、立ち上がって、腕を振り上げて、叫んでいた。


レオンに聞こえたかは分からない。

でも、ギュッと上体を沈めて、そのまま、ヒグマに突進した。

肩から、ぶちかます。

相手の胸に思いっきり、体当たりした。


ドン!

大きな音がして、ヒグマの巨体が地面に堕ちた。

長く宙に飛ばされて、堕ちた。


「「「「ウォー!!」」」」


「場外!」


審判が場外を宣告した。

勝っちゃったよ。

私は椅子に身体沈めた。

左隣では、フローレンスが同じように、椅子に寄りかかって身体の緊張を解いていた。


「心臓に悪いわ……」


「うん……、ララも、そう思う」


二人で右隣の姉を眺めた。

手をブンブン振って、興奮してレオンの名を叫んでいた。

私はフローレンスと一緒に大きく溜息を付いた。



チャールズは一撃だった。

一撃で、場外に吹っ飛ばされた。

いや、正確に言うと二撃だったか。


試合開始と同時にチャールズは全力で加速した。

誰にも見えない速度で近づいた。

そのまま、体当たりで弾き出そうとしたのだろう。

でも、弾き飛んだのは、チャールズだった。


土の子の周り、四方には土壁が展開されており、そこに物凄い速度で突っ込んで、弾き飛ばされた。

地面に転がされた後、そこから柱の様な土が出てきて、場外に飛ばされた。


わずか数秒。

あっという間にゲームが終わる。


観客席からも、あれ、終わったの? みたいな雰囲気が伝わってきた。


「あのバカ……」


フローレンスから、小さな呟きが聞こえた。


まぁ、でも、これは向こうを褒めるべきだろう。

チャールズが何をするか読んでいた。

だからこそ、四方に土壁を張ったのだ。

おそらく、試合開始前から準備して、即時生成出来るようしておいたのだろう。

『始め!』という声がかかる前に、土壁は生まれていたのだと思う。

チャールズが、何もしなかったら、恥をかくのは向こう。

それでも、彼は読み切った。


決勝戦。

一級冒険者と、特別部隊隊長の息子同士の戦いだと会場に紹介されていた。

観客席は五分と五分。

見たことのない神の御技を使う土の子を応援する人も多い。

もちろん、準決勝でムキムキマンを倒したレオンにも、熱い応援が送られていた。


試合開始とともに、リングが歪んだ。

壁が出来、坂が生まれる。

レオンはアジリティの高さを生かして走る。

アスレチック競技みたいになってきた。


距離を取り、障害物を生み出す土の子。

障害を乗り越えて、近づくレオン。

わかりやすい戦いに観客は、拍手と笑いを送ってくれている。


レオンのミスで勝敗は決まった。

段差のある所に足を取られてバランスを崩した所を、大きな土の柱に弾き飛ばされた。


「場外!」


審判が宣言することで、土の子の優勝が決まった。

パラパラと送られる拍手。

イマイチ盛り上がっていないな。


観客としては、準決勝のレオン戦のような戦いがみたいのだろう。

魔法使いの戦いには見慣れていないし、

どう反応して良いのか、分からない感じが見受けられた。


その様子を感じ取っているのだろう。

土の子も微妙な表情をしていた。


土の子は、細い目をさらに細めて、観客席の中段、私達の方を見た。

そして、人差し指を私たちに向けてきた。

その指をクイクイと折り曲げる。


「ララ、あの子、呼んでいるんじゃない?」


「誰を?」


私は周りをキョロキョロと見渡す。


「ララよ。ララのことを呼んでいるのよ」


「え? なんでさ。嫌だよ、行かないよ」


観客も、優勝者が誰かを挑発しているのに気づいたのか、

「「おー」」

とか言って、盛り上がってきてしまった。


パタパタと誰かがララの横にやってきた。


「エッジ・シーカーのララ様ですね……。どうも、ゲオルク様が対戦を望んでいるようです。エキシビジョンマッチとして参加頂きませんでしょうか?」


「え? ララ、嫌だよ。そういうのはやらない」


観客が大会実行委員が交渉しているのに気づいたのだろう。

もう一戦、もう一戦、と声を合わせて、要求している。

その声は徐々に大きくなって、会場中の人が立ち上がって、手を叩き、『もう一戦!』と斉唱していた。


「ララ……、可哀相だけど、もう行くしかないかも……」

「わたしもそう思うわ」


「アス姉、フロも、ララが戦ったら、絶対盛り上がらない試合になっちゃうよ。何やっているか、誰にも分からないんだよ」


「派手に、場外に吹き飛ばせばいいのよ。レオンの仇よ」


チャックの仇はいいんかい、とは言えなかった。

渋々と階段を下りる。

帽子を深く被り、マントの襟を引き上げて、顔の半分を隠した。


小さな女の子が、闘技場に下りたことに気づいて、観客が騒ぎだした。

まさか、優勝者が対戦を望んだ相手が、こんなチビの子供だとは思わなかったのだろう。

明らかに、皆が動揺し始めた。


「もう。土の子、ララ、すごく迷惑」


「ゲオルク・フォン・ハンブルクだ。勝負しようぜ。終末の使徒001(ダブルオーワン)。ナンバーワンの実力を見せてくれよ」


「こういう見世物にはしにくい魔法なの。誰も分からないから、きっと、つまらないよ……」


「ふっ。俺には関係ないな。弱かったらガッカリするから、ちゃんとやってくれよな」


「ちゃんとやったら、土の子、死んじゃうよ。適当にやるから、早く諦めてね」


「あ? お前! ちっ、まあいいや。早く準備しろよ」


「もういつでもいいよ」


土の子が審判に、頷いて合図を送った。

審判から、始めの声がかかる。


もう、いつでも良いと言ったのは、本心だ。

話しながら、この円形のリングには魔力を展開している。

というか、歩きながらやっておいたのだ。

既に、同じサイズの結界で、囲い済みだ。


それどころか、彼の身体の周りにも、魔力は展開済み。

いつでも収納することも出来る。


土の子は一生懸命に土魔法を出そうとしているけど、無駄だ。

地面には結界が張られている。

それを壊すことは誰にも出来ない。


土の子の弱点は何かというと、土がないと何も出来ないということだろう。

おそらく土を生み出すことも出来るのだろうが、今日、彼は全て地面にある土を使っていた。

実力が足りないのか。

魔力量が必要なのか。

多分どっちかだと思うけど、地面の土を封じちゃえば、ただの男の子だ。

あとは、どう分かりやすく終わらせるかだ。


土の子の真似をして、透明の柱を生み出す。

そして、その柱の上に土の子を乗せて、柱を伸ばした。

厳密に言うと、四角い結界を沢山下に作りだして、上に押し上げていった。


土の子は慌て出したけど、危険だから、動かないで欲しい。

観客は盛り上がってきたみたいだ。

空高く打ち上げられた土の子を見て、大興奮である。


上空高く上がり、姿が小さくなったところで、土台の結界を全て消した。

遥か上空に上がっていた土の子が地上に落下してくる。

手足をバタバタさせて、空中を泳いでいた。

観客から大きな悲鳴が上がった。


「「「「キャー!!」」」」

「「「「うわー!!」」」」


地上に激突する前に、土の子を空間収納に入れる。

そして、すぐに取り出して、そっと地面に横たえた。

まぁ、そうだよな。

既に気絶していた。


「1、2、3……」


ララは十まで数えて、審判に、これで勝ちだよね、と伝える。

審判は青い顔をして、コクコクと頷いた。


「テンカウント! 勝負あり!」


シーンとしていた。

そして、徐々に観客からザワザワと声が聞こえだした。


私は背を向けて、観客席に戻っていった。

周りの視線が冷たいよ。

ちょっとイマイチだったかな。

どうやれば喜んでくれるかが分からない。

帽子をさらに深く被り、下を向いて歩いた。


「ちょっと、ララ、やり過ぎでしょ」


「うぅ……、喜んでくれるかと思って、分かりやすいのにしたんだけど」


「みんな、ゲオルクが死んじゃったと思っているのよ。当たり前よ」


フローレンスが、隣からヒソヒソ声でガミガミ言ってくる。

じゃあ、どうすれば良かったんだよ。

あんなに短時間で妙案は思いつかないよ。


「「「「ウォー!!」」」」


観客の大きな声でビクっとなった。

その後、大きな拍手が沸き起こった。


「あ、目を覚ましたみたいよ」


土の子が、上半身を起こして、キョロキョロと見渡していた。

審判が駆け寄って、無事を確認しているようだ。

無傷だよ。

気絶していただけだもん。


立ち上がって、観客からの大声援に手を振って応えている。

勝ったのは私で、負けたのは土の子なのに。

解せぬ。


係員の人が来て、公開オークションをこのまま始めると伝えられた。

入口にあったグリズリーとオウルベアを、先ほどの円形リングに運んで欲しいと言われたので、私は席を立った。


未だに観客からの視線が痛いよ。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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