森の人たち
翌日からは十日間、皆で馬に乗って北上した。
北に向かって、緩やかな坂を登る。
一時間に一度、お馬さん達にフローレンスが回復魔法をかけた。
フィオレンティアから沢山の兵士が、セレニティアに向かって南下して行った。
何百人、千人近い数の兵士とすれ違った。
おそらく、セレニティアが壊滅的被害に遭ったことが報告されたのだろう。
復旧支援か。
それとも犯人探しか。
「ララ、あの賢者の話はどう感じた?」
道中、馬に乗りながら、姉に問われた。
皆が集まってくる。
道幅いっぱいに並んで進む感じになった。
『女神は人ならず。神でもあらず』
最後に賢者のオジちゃんが言ったセリフのことだろう。
「何の違和感もない。女神は一人ではない。それは元から想像できた。規模と力が一人の人間の行いにしては大きすぎる」
「国ってこと?」
「分からない。組織かも知れない」
「教会とか?」
「最大の容疑者。設置されている場所が教会だからね」
「でも、父は知らなかったわ」
「うん。教会に関係した裏組織かも知れない」
「秘密結社的な?」
「そう。あとは……。相当古くからある組織ということと、相当古くから技術力が高かった組織ということしか分からない」
「古くってどれくらい?」
「少なくとも五百年前にはあった。フィオレンティアの首都移転の時には、教会の女神像に自動機械が埋め込まれていた」
「ララちゃん、でもそれって、ユニオン・リパブリックじゃないか、旧アメリカーナ王国が自動機械を一大産業化する前から、自動機械の技術を保有していたって事になっちゃうよ」
「うん……。だからこそ、旧アメリカーナ王国の自動機械産業を許さなかったのかも。技術を独占するために」
「なるほど……、筋は通るね」
「賢者は『人類の起源を調べよ』とも言った。少なくとも五百年前だけど、ひょっとしたら千三百年以上前って可能性もある」
「いや、流石にそれは……」
「ま、そうだよね。賢者の爺ちゃんがどして、そんな事を言ったのかは、東の国の資料を読むしかない」
「次の目的地はミナセって事だね」
「そう……かな」
もう一つ、擦り合わせしたのは、フィオレンティアに行った時、もしくはその後、どうするかだ。
「大使、大使としては国王陛下との謁見は必須ですか?」
「アストリッド様、ご心配なされているのは不当拘束ですか?」
「はい。可能性としてはある……。正直言って、また嫌な予感がするのです……」
「いや……流石に、他国の駐在大使を不当拘束するとは思えないですが……」
「いや、大使様、お姉様の直感は、ほぼ正しい予測と思って頂いた方が良いです。今回のセレニティアの件も……結果的に当たってしまいましたから」
「僕もそう思います。大使、アス姉さんが正しい前提として、そうなるケースはどんなケースですか? セレニカーナ王が、その様な無謀を決断する理由を考えてみましょう」
「はい。わかりました。うーん。そうですね……。サンテールへの宣戦布告。実際に戦争するかはさておき、宣戦布告を前提とした賠償請求とか……ですかね……。いや、どうなのだろう」
「今回のセレニティア被害はララ達、終末の使徒が起こしたもの。そのため、司教と予知の使徒を拉致誘拐。街を破壊した上で、民を虐殺。サンテール王国は終末の使徒を匿い支援した」
私がそう話すと大使は顔を顰めた。
「まぁ、証拠もない言いがかりですが、主張することは出来ますね。でも、サンテール王国と事を構えて何をしたいのでしょう」
「セレニカーナ王国としては、セレニティアが復興されるまでは、唯一の収入源を絶たれるのですよね? さらに他国から大使館の被害を責められるかも知れない。少しでも矛先を向けられる、お金をぶんどれる相手が欲しいとか」
姉の発言に大使は深く考えた。
「カスティリオ王国が後ろ盾になっている。もし、その場合なら、多少強引でもやってくるかも知れません。カスティリオ王国はご存知の通り、セレニカーナ王国とは兄弟国。かつ、サンテールの同盟国であるサンパウリーナ王国と敵対している国です」
「カスティリオって、マリオとか言う変態殺人パーティの国だっけ?」
「ララ、モレノね。マリオじゃ存在が小さく感じちゃうわ」
「サンパウリーナ王国は殺戮の使徒と自国の使徒がパーティを組んで、セレニティアを蹂躙したことを知ってるとか」
「矛先を終末の使徒と、庇護しているサンテールに向ける。かつ、サンパウリーナ王国への牽制と意趣返し」
「なるほど……。分かりました。今回はリスクが高そうです。逆に謁見するメリットは多くないですからね。避けておきましょう」
「アス姉、ララ達はバレていない? 冒険者として街に入れるかな?」
「うーん。正直怖いわ。でも、教会の女神像に謁見しないと……。ひょっとして、ララ、忍び込む気?」
「うん。それも一つの手かな。チャールズと二人で透明魔法で忍び込む。他の人は空間部屋で待機。ヤバかったら、空間部屋でやり過ごすか、チャールズに抱えて走って逃げてもらう。もしくは、チャールズを生贄にして、ララだけ逃げる」
「ララ、三つ目の選択肢ね」
「ちょっと! フローレンスも! ちゃんと抱えて逃げるよ!」
「ふふ。そっちの方が安全な気がするけど、もう少し考えましょう。まだ時間はあるわ」
「ちょっと! アス姉さん! そっちって?」
「ふふ、チャールズ、忍び込む案の事よ。生贄案じゃないわ」
「アス姉、大使もだけど。フィオレンティアに行った後はどうするの? セレニティアには戻れないって事だよね?」
「そうですね。カスティリオ王国の首都アクアリスの港が最も近いです。セレニティアからフィオレンティアに行くのと、大きく移動日数に違いはないですから……」
「ただ、同じ様なリスクがある?」
「はい。ただ、そうなると、ヴァルデンの小さい港、ツィルク港に出るのが次策。かなり遠いです。セレニティアの近くまで戻って統一街道を西に向かうしかありません。山道という手もありますが、別の危険や難所もあります」
「うーん。どうせ統一街道まで戻るなら、カスティリオ王国に行くのが良いかも。距離が近いのなら、首都アクアリスの通信の自動機械を壊さないとセレニカーナ王国の安全が確保できないかも知れない」
「ララ様、カスティリオ王国アクアリスに神託の女神像はございません。カスティリオ王国の使徒もフィオレンティアに謁見しにきます」
「うえ。そうか。世界に十か所って言っていたな。全部の国にある訳じゃないのか。じゃあ、アクアリスに無理していく必要もないね。移動距離の問題だけだ」
意見は出し合った。
案はテーブルに並べた。
この作業を事前にやっておくのが最も大切だ。
必ずしも、話し合ったその時、その場で決める必要もないのだ。
テーブルに並べて、一度皆で話しておけば、何かあった時、瞬時に即断できる。
そして、概ね、それが最も最適解となるものなのだ。
※
お馬さんに乗って、坂を上りながらも、鍛錬は欠かさない。
一日八時間移動するのならば、八時間鍛錬し続けられるということだ。
こうした移動の日々は得てして単調になりがちだが、日々続ければ魔力量を増やす機会になる。
「奥の山には雪がかかっていますね」
「はい。フィオレンティアの標高は大分高いです。各国の首都の中では一番高いかもしれません。街中はおそらく雪が積もっているはずです」
姉が言った奥の山は、ヴァルデン側にある山々のことだろう。かなり高い山、深い森に感じた。
ウィンザーグローブのクリスタルハインツ山脈が小さく見えるくらいだ。
距離の問題だろうが。
大使の言う通り、フィオレンティアに近づくにつれて、雪景色となっていった。
今も曇天の空から細かい雪が降っている。
この国に入国してから、あまり太陽を見ていない気がした。
フィオレンティアまで残り一日半辺りで、姉が少し様子がおかしいと言いだした。
「昨日すれ違った兵士たち。あの人たちが、わたし達の後方にいるの」
「僕も気づいていたけど、フィオレンティアに帰る人たちかと思っていたよ」
「気にし過ぎって言いたいですけど、他ならぬお姉様ですからね。昨日の兵士だとしたら、考えられるのは私達の捕縛かしら?」
「フローレンス様の仰る通りでしょう。フィオレンティアの門にもう一部隊。後ろの部隊は私達が逃げられないようにする役目ではないでしょうか」
「大使、次に宿泊できるような町や集落って、ここからどれくらいでしょうか……」
「そうですね……。私も少し自信がないですが、フィオレンティアに行くまでにもう一つあるはず。距離的に考えると、あと二時間と言ったところでしょうか」
「なるほど。でしたら、ここで敢えて立ち止まってみましょう。もしフィオレンティアに帰る部隊でしたら、こんな所に立ち止まらずに、先に進むはずです」
「うん。そうだね。ララ達は空間部屋で休めるし。兵士さん達は道端じゃ凍死しちゃう。早く宿泊出来るところまで行きたいはず」
姉は道端の少しだけ開けたところに馬を寄せた。
木々に囲まれているので、後ろから簡単には見られないと思う。
森の近くなので、木に隠れて襲撃されそうな恐れはあるけど。
私は収納魔法で手頃な木のベンチを取り出した。
チャールズが私の背後に立ち、道から見られないように壁になってくれる。
フローレンスがお馬さんたちに回復魔法をかけた。
「やはり、来ませんね……」
「一人だけ、向こう側の森でこちらを監視している兵士がいます」
「うん。やっぱり、ここで休もうか」
皆の分もベンチを出した。
私は魔力鍛錬を始めた。
より広く、より速く魔力を展開するのだ。
少し距離が離れた敵を瞬時に収納できるように。
日々の積み重ねが大事なのだ。
時間をかけて、かなり広範囲に広げた魔力に違和感を感じた。
三百フィート(約九十メートル)の範囲に多数の人。
道の後方にいる十名はおそらく兵士たち。
道の反対側、斜め後方に二名。
これが姉が言っていた監視だろう。二人いるな。
もう一組、私達が休んでいる側。
この森の奥に二人いる。
こっちに向かって歩いてきているようだ。
「兵士と反対方向から二人歩いてくる。森からだよ」
チャールズが立ち上がった。
ララは皆の周囲に結界を張った。
真っ直ぐ近づいてきた。
もう、すぐ近くにいる。
でも、姿は見えない。
足音もしない。
でも、私は魔力で捉えている。
少し私達の後ろの方に移動してから、また近づいてきた。
「いるよ。三十フィート」
皆が私の視線と同じ方向に目を向けた。
チャールズが剣の柄に手をかける。
姿が見えずに、そこから声だけがした。
「エッジ・シーカーの皆さま。私達は敵ではございません。『ウッドランド・ドゥエラー』という冒険者の二人組です。ヴァルデン政府の依頼で、調査任務に就ています」
『ウッドランド・ドゥエラー(Woodland Dweller)』。
森の人って意味かな。
長いよ。言いにくいよ。
「ヴァルデンの特別部隊に情報提供しているパーティですか? ハンブルク隊長には良くして頂きました」
「はい。アストリッド様。ヴィルヘルム・フォン・ハンブルク隊長は今回のミッションで協働する方です。私達の任務の依頼主は共和国政府です」
姉の名前も正確に把握しているみたいだ。
この人たちだな。
情報収集、調査のスペシャリストって人たちは。
「お姿をお見せいただけませんか? どうにも話しにくいのです」
「はい。かしこまりました。ただ、兵士に姿を見られる訳にはいきません。任務に支障が出るので。ララ様。透明魔法で結界を囲って頂けますか?」
皆からピリっと警戒する気配がした。
この人たち、どこまで知っているのだ。
「皆さま、どうか警戒しないでください。私達は敵ではございません。アヴェリーヌでの新たな女神の伝説を聞いております。また先日の殺戮の使徒との戦闘も拝見しておりました。燃える建物から多くの民を救出する手腕。終末の使徒001(ダブルオーワン)、見事でございます」
「ララが変態達にボコられていたのを見ていたんだね。助けてくれれば良かったのに」
クスリと笑った感じがした。
「私達は調査専門の冒険者パーティです。とても、あの恐ろしい変態の相手など出来ませぬ。特別部隊を案内するだけで精一杯でした」
ああ、あのタイミングで特別部隊が来てくれたのは、この人たちが呼んでくれたからなのか。
あとは女神教の敵か味方かの確認かな。
「えっと。『森の人』って呼んでもいい?」
「ちょっと、ララ、『ウッドランド・ドゥエラー』よ。失礼よ」
「ぷっ。はは。ララ様、問題ございませんよ。森の人レナです。キチンと自己紹介させて頂くためにも、お力をお貸しください」
「うん。ありがと。森の人レナさん。その前に、ララ達がフィオレンティアに行く目的を知っているか教えて。それをどう考えているかも」
「はい。セレニティアには賢者様にお会いに。女神の敵でありながら、旅の道中で必ず教会に立ち寄っている。おそらくは、教会に何かがあり、フィオレンティアでも教会を訪れて何かをするのかと。あ、私達は女神教の信者ではございません。むしろ、多くの民を救っているララ様を信頼しております」
仲間たちが私の顔を見て、頷いた。
信用して良いのだろう。
ただ、ここに結界を張って、透明魔法をかけたら、兵士たちが集まって来ちゃうのではないだろうか。
監視対象がイキナリ消えるのだ。
それは問題だろう。
私が考えている内容が分かったのだろう。
フローレンスが提案してきた。
「ララ、私と大使、チャールズがここに残るわ。結界で囲っておいて。私達がここにいれば、兵士たちも動かないわ。お姉様とララで空間部屋に連れて行くのが一番良いと思うの。何かあったら、ララとお姉様だけ戻ってきて、ミイラ魔法かけちゃえば良いのよ」
美しい笑顔で恐ろしい事を言うフローレンスの案に乗った。
私は姉と森の中にいる二人に魔力を展開して、空間部屋に転移した。
瞬間で景色が変わる。
森の人たちの姿も確認出来た。
部屋の中をキョロキョロと見渡しているけど。
「ここはララが作った別の空間のお部屋なの。そこのソファに座って」
「え? え? あ、はい……。かしこまりました」
ソファに向かい合って、正式に自己紹介した。
女性パーティと思っていたが、女性と男の子のパーティだった。
まだ若い三十歳くらいの女性と、チャールズと同じ歳くらいの男の子。
あ、ということは、私とも同じ歳なのかな。
そうだとしたら、流石にショックだな。
姉と同じ歳って言われても、納得できる。
レナ・シュヴァルツ (Lena Schwarz)。
ヴァルデンの一級冒険者。
三十歳だそうだ。
少し色が抜けたような黒髪にグレーの瞳。
姉と似たような体形だった。
とても、冒険者には見えない。
そして、姉と同じように綺麗な人だった。
黒革のロングブーツに同素材のブレー(長ズボン)。
厚手の毛皮のショース(靴下)をブーツの下に履いている。
同じような生地のセーターを着て、その上に革のジャケットを重ねている。
先ほどまでは、頭をすっぽりと覆うようなポンチョを被っていた。
男の子は私と同じ歳だそうだ。
選ばれし使徒。
真っ直ぐな純粋な瞳を持つ黒髪黒目の東の民族の男の子。
面差しがチャールズに似ている。
チャールズを、東の国の民族にしたら、この子になりそうな感じもした。
レオン・シュヴァルツ(Leon Schwarz)。
ヴァルデンの二級冒険者。
レナさんの弟子と本人は言っていた。
紋章は『XIX』十九番だ。
チャールズ残念。
「レナさんも使徒ですか?」
「はい。これです」
左の手の甲。
『LX』の紋章。
六十番だ。
ララがそう呟くと、紋章の意味、読み解き方について知りたがった。
私はローマ数字変換表を書庫から持ってきて見せて上げた。
物凄い勢いで、革の手帳に書き込んでいたよ。
流石、調査専門冒険者だ。
「森のレナさん。覚えた。黒銀髪なのもララは好き。どうか味方になってくれると嬉しい」
「ぷっ。ふふふ。ララさんの喋り方、私は大好きですよ。それに味方です。調査しているだけで、素晴らしい人格だというのは伝わってきましたし、こんなに調査対象と会って話したくなったのも始めてです。ね、レオン?」
「え? 俺? まぁ、うん……。ララ様とアストリッド様は本物の女神だと思い……、ました」
私と同じ歳なのに、姉と同じ歳だと思えたのは、この体格だろう。
十一歳なのに、チャールズよりも少し大きい感じがする。
それに筋肉質だ。
性根も真っすぐ。ちょっと口下手なのも可愛い。
私は凄く気に入った。
「うん。レオン。気に入った。『逞しくて強くて真っすぐで裏表がない』姉の好みにもピッタリ。姉も気に入った」
「ちょっと、ララ、勝手に人の心の中まで口に出さないで」
「ぷっ。はは……。お腹が痛いわ。思ったより面白い人たちなのね。レオン良かったわね。二人の女神には気に入られたみたいよ」
レオンは下を向いて照れていた。
顔が真っ赤だ。
チャールズも、この純朴さを見習ってほしい。
「でも……。俺は強くない。強くなりたい」
「大丈夫よ。貴方は強くなるわ。この子はね、あの殺戮の使徒に向かっていく、ララさんとチャールズさんに刺激を受けたのよ。あの恐怖の権化みたいな人に立ち向かう勇気に」
レオンの加護は『強化』だそうだ。
肉体強化なのだろうか。
本人は、人よりも頑丈なのと力持ちなだけと言っていた。
でも、それは魔法の使い方が間違っているのだろう。
チャールズに出会った時と同じだ。
森の人レオさんは、『狩人』という二つ名を貰ったそうだ。
探索、調査、斥候。
その辺が得意だと言っている。
戦うのは苦手と言っているが、背中には小さなボウガンを背負っていた。
森の狩りでは使うのかも知れない。
「私が教えられることはレオンには教えたわ。森での生き方。調査や斥候の仕方。でも、この子の特性は多分、そこではない」
「うん。ララが鍛える」
レナさんは笑い上戸らしくて、そう言った私をまた大きく笑った。
その後、姉がいつもの女神話をした。
今回は予知の使徒、賢者、そして街の襲撃の話が新たに加わった。
レナさんは、全てを手帳に記録している。
私達としても、ヴァルデンの政府に、そのまま伝えてもらいたいと思っている。
後ろめたいことは何一つないのだ。
話を聞き終わった後、レナさんは私を真っすぐ見て言った。
「さぁ、最初にやることは、私達の頭の中から、気持ち悪い自動機械を除去してもらうことね」
私は一つ頷いて、二人の自動機械をテーブルに取り出した。
カツンと二つの音が、ソファの前の小さなテーブルからする。
うん。大分速くなったと思う。
自動機械で私達が分かっていることを幾つか話し合った。
その後、レナさんは、フィオレンティアの内情を説明してくれた。
やはり、終末の使徒と、エッジ・シーカーという冒険者パーティ、それに大使の捕縛を準備しているようだった。
終末の使徒は、エッジ・シーカーという冒険者パーティに護衛されている。
そんな認識だそうだ。
終末の使徒=エッジ・シーカーだとは思っていないのは安心材料だ。
次の宿泊地で私達にそれを伝えるために、南下してきたそうだ。
ところが、私達が兵士の尾行に気づき、足を止めたので、コンタクトするのを決めたと言う。
「例の透明魔法で忍び込むつもりなのは想像がつくの。ただ、街には雪が積もっているわ」
「うん。それは知っているけど……。あ、足跡か!」
「そう。だから、私達と一緒にフィオレンティアに入る方が良いと思う。ララさんだけなら、何とかなるわ」
「チャールズも連れて行きたい。逃げ足が速い」
「そうね。チャールズさんなら何とかなると思う。こんな隠れ家があるのなら、他の人はここにいてもらえば安心安全だしね」
「わたし達、エッジ・シーカーと大使は尾行に気づいて逃亡したことにする形ですか?」
「そうですね。それが良いと思います。南に皆で馬で下って、逃げたように見せかけた方が良いかも知れません」
「なるほど……。フィオレンティアで教会の自動機械を除去した後は、山越えでしょうか?」
「はい。雪が降りしきる最も困難な季節での山越え。流石にセレニカーナ王国もそんな無謀なことをしたとは思わないでしょう。セレニティアかカスティリオに逃げたと思うはずです」
「無謀なの?」
「うん、ララさん、普通なら私とレオンでも選ばないようなルートよ。夏限定ね。雪の山はね、本当に危険なのよ。強い魔獣もいるし、遭難の可能性もある。進むのも難儀するわ。でも、何よりも夜ね。一日ならまだしも、何日も極寒の夜を過ごせないわ」
「そうか。この部屋があるから、その選択肢を取れるって、レナさんは言っている」
「そうよ。フィオレンティアの街で山越えの準備をするわ。食料とあとはスキー板ね。ララさんを考えるとソリがあっても良いかも」
「雪ソリ! 最高! トナカイさんとかは?」
「はは、連れて行けないわ。険しい森の中もあるのよ。いや、そうか。ひょっとして、他にもお部屋を作れる?」
「うん! トナカイさんの部屋も作れるよ」
「ははは……。凄すぎて腰が抜けるわ。じゃあ、買っちゃいましょうか。そうなると二日は街で準備期間が欲しいわね。まあ、一日で何とかなるか……。ちょっと考えるわ」
森の人たちは空間部屋に残して、自由に過ごしてもらった。
私達はフローレンス達のところに戻る。
陽が暮れないうちに、南に逃走した形跡を残すのだ。
お馬さんには頑張ってもらった。
フローレンスが濃厚な回復魔法をかけて、全力で南に下った。
兵士たちが慌てた様子で、立ち上がったけど、もう遅い。
しばらく進んでから、空間魔法で姿を隠した。
「ははは! すげー慌てているし」
「さ、姿を隠したまま、北上するわよ。ギリギリまで北上して、お部屋に戻りましょう」
兵士達が馬に乗って、全力で南に下って行くのを私達は見送った。
日が暮れるまで北上してから、空間部屋に戻った。
早速、森の人たちを皆に紹介しようと思ったけど、二人とも、私達が帰ったことにも気づかない。
リビングルームのソファに座り、貪るように書庫の本を読んでいた。




