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008(ダブルオーエイト)火神の変態使徒


今日の日を象徴するかの様な空だ。

太陽が差したと思ったら、急に厚い雲に覆われる。

天気が、二転三転する私たちの運命を表していた。


私たちは北に向かって大通りを歩いた。

重い足を引きずって歩く。

前に進まないと行けない。

立ち止まるな。

その気持ちに押されて足を前に出す。


道なき道、瓦礫に足を取られないように踏み場を選んで歩いた。

一時間ほど歩くと、瓦礫のエリアを超えた。

黒の建物、公共施設が建てられていたエリアを超えたのだろう。

人々は大通りに集まって、肩を寄せ合って南の方角を眺めていた。


しばらく進んだ先で、大使は店の前にいた人に声をかけて、中に入っていった。

そこは洋服店というよりも、武器防具店のようなお店だった。


全身革装備のスタイルで出てきた大使を見て、皆が驚いた。

茶色の革のブーツ。

同じ素材のズボン。

白いシャツの上に、毛糸のセーター。

革製のベスト。

その上に、厚手の毛布の様なマントを羽織っていた。

元々のスタイルが良いので、大変カッコよい。

とても、中年女性には思えない出で立ちだ。


「大使さん、冒険者になったね」


「ウフフ。皆さまに合わせましたのよ。これで私もエッジ・シーカーの一員と偽れるわ」


「はい。とてもお綺麗です。乗馬しますからね。適切な選択だと思います」


この辺は、少し人が多すぎる。

もう少し、人がいない所まで歩き、裏路で馬を出そう。

そう言って、また歩いた。

大通りを北に進む。

港から山方面に進むからか、道は上り坂になっている。

先行く道の大変さを感じさせるような坂になってきた。


このまま、北に大通りを進むと、統一街道に出る。

そこを左折して、統一街道を西に行くとフィオレンティアに行く分岐があるそうだ。

そこで北に折れたらフィオレンティアまで一本道だ。


振り向いて、坂の下、港の方向を眺めた。

港からは煙が立ち上っていた。

あの彩豊かな街は消え、ポッカリと黒い穴が空いた様に見えた。


あの黒い穴に多くの人が埋まっている。

マルグリットさんも。

私達を案内してくれた兵士さん達も。

ジョヴィは昨日出航しておいて、本当に良かったと思う。

反対にあの司教さんはもうダメだろう。

何とか生にしがみつこうとして、結局、死への近道を選んでしまった。

人生は分からないものだ。

私たちだって、オジちゃんと別れることになるなんて、全く思わなかったよ。


「煙? 火事かな」


姉が指さす方向を見た。

港と反対側。北方面だ。

煙が上がっている。

しかもかなりの量になってきた。


「火事だね。行こうか。かなり大きいかもしれない」


坂を駆けあがる。

煙はドンドン広がっていく。

遠くの建物が燃えているのが見えてきた。

思ったよりも広範囲に火は広がっているようだ。


大使にも結界をかけ直した。

纏う結界だ。

これで煙を吸うことはないはずだ。


北から多くの人たちが走って駆け下りて来た。

周りの人に叫び伝えながら、港の方向へ駆け下りていく。


「「「逃げろ!」」」

「「「終末の使徒だ!」」」

「「「殺されるぞ!」」」

「「「焼かれる」」」


え? どゆこと?

チャールズが逃げている男性を捕まえて事情を聞いた。


「終末の使徒のパーティが暴れまわっているんだ!」


「パーティ?」


「そうだ! 三名の男たち! 終末の使徒のパーティだって叫びながら、火を付け回っている。逃げ出したやつを、変なノコギリで斬り殺しているんだ!」


やりやがったな。

多分、使徒だ。

女神が使徒を唆しているんだ。


私は走った。

好き勝手やらせる訳にはいかない。

何が出来るか分からないけど走った。


見えた。

大通りを闊歩してくる三人組。

一人が両脇の建物に火を付けている。

全身が炎だ。

燃える人間だ。

残りの一人は剣を、もう一人はノコギリを手で持って、逃げ行く人を切り裂いている。

笑いながら。


「ララ! 止まりなさい」


姉に言われて立ち止まった。


「収納できるの? 無策じゃダメよ」


「う……。しばらく止まってくれないと収納魔法で囲えない」


「僕が組み伏す。一秒、二秒止めればいいんでしょ?」


「ララが触れるくらいまで近づいて、それくらいよ。遠距離なら、もっと。数秒はかかる」


「うーん。どうしよう?」


「倒すのは無理よ。精々邪魔をする。街の人たちを助ける。それが今の私達には精いっぱい」


「わかった。ララは空間ボールを沢山ぶつける」


「僕が助ける役をやる。アス姉、遠目から教えてくれると助かる」


「負傷者は私のところまで連れてきて」


「わたしが撤退の合図を出したら、全員中断して逃げること。合流地点は大通りと統一街道の交差点!」


「了解」


走る。

後ろから追いかけて来る足音がする。

おそらくチャールズだろう。

そう思うよりも先に、アッと言う間に追い抜いていった。


ニセモノ終末の使徒パーティが近づいてきた。

炎の男は女の人に抱き着いて、焼けこげにして楽しんでいる。

高笑いしてやがる。

誰だよ、変態放火魔にマッチを与えたのは。


手に五センチくらいの硬い空間ボールを生み出して、魔法で動かした。

頭の上から落とす。

ガツンと頭に当たった。

痛っと頭を抱えて、女の人を手放した。

でも、あの女の人はもうダメだ。黒こげだ。


あの火魔法は結界と違って、維持型の魔法じゃないみたいだ。

ずっと出力を維持するタイプのようだ。

頭を抱えている間、身体を纏う炎が消えた。


うぇ。アイツ素っ裸じゃん。

そうか。服が燃えちゃうからか。

局部まで見えちゃっているよ。キモイ。

左胸に『VⅢ』の紋章が見えた。

八番。選ばれし使徒だ。


もっと近づけば、空間魔法で収納できるな。

今度は真っすぐ勢いを付けて、空間ボールを局部にぶつける。

やった。

股間を押さえて飛び上がっているぞ。

近づいて魔力を展開して、囲おう。

二歩踏み出した、その刹那、横殴りで弾き飛ばされた。

右側から斬られたのか。

衝撃だけ右肩に伝わってきた。

転がりつつ、殴ったやつを確認した。


ノコギリ野郎だ。

超怖い。

もうお爺ちゃんなのに、ギラギラしている。

筋肉ムキムキで、こっちを見てニヤ付いている。


「あれ? 斬れねーな。面白れぇじゃねーか!」


ただのノコギリじゃない。

刃が回転するやつみたいだ。

それに右から、左から振られて、ガンガン殴られる。

おまけに結界を斬ろうとしている。

まずいよ。

ボコられちゃっているよ。


「ウハハハ! 全然斬れねーぜ!」


お腹を思いっきり蹴られて、吹っ飛んだ。

お腹に衝撃が走る。

大丈夫だ。

衝撃は伝わるけど、そんな痛くない。


距離が開いたところで、空間ボールを沢山生み出して、ぶつけた。

痛ぇっと言いながらも、ノシノシと近づいてくる。

超、怖い。

こうやって、歩いて近づかれるのが一番怖い。

走ってくれれば、こっちも自然に身体が反応して走れるのに。

身体が竦んで動けない。


「チャールズ! ララのフォロー!」


姉の声がした。


チャールズが高速で走ってきてくれたみたいだ。

抱えられて、ノコギリ野郎から逃げる。


「お? すげぇ速いのがいるな! おい、マルコ! ラファエル! こっちだ! 面白れぇのがいるぞ!」


チャールズに下ろしてもらった。

でも、こっちに向かって三人が集まって来ちゃっている。


「チャック。今の隙に負傷者回収しちゃって」


「ララちゃん、ヤバいよ。逃げた方がいい」


「いや、オトリになる。ヤバかったら、空間部屋に逃げ込んで姿をくらますから」


「わかった」


空間ボールを数十個生成して、ガンガン落とす。

火の変態は嫌がっているけど、ノコギリ野郎は気にしていないみたいだ。


もう一人は……。

落下してくる空間ボールを避けている。

もしくは剣で撃ち返していた。

やべー奴がまたいた。

見えないボールに反応しているヤツがいるよ。


見えない、という単語で閃いた。

走りながら、自身に纏っている結界に干渉する。

光を屈折させて、透過させる条件を付与した。

透明魔法。

これでこっちは見えないはず。


近づいて、三人を収納魔法で囲もうとしたところで、剣士に剣で横殴りされた。

四十代。片目剣士のオジちゃんと同じ歳くらい。

でも、こっちは。

完全に両目がない。

盲目の剣士なのか。


だから、見えているのか。

いや、感じているのか。

完全にこっちを見定めている。

魔力感知?

気配?


分からないが、ダメそうだ。

全力で逃げることにする。


「こっちだ。こっちにいるぞ」


「今度は姿隠しの魔術か? 面白れぇ。ワシが分解してやる」


チラっと仲間の様子を見る。

フローレンスのところに沢山負傷者が集められていた。

もう少し時間がかかるか。

逃げ回ろう。

もう少し頑張ろう。


こいつらをフローレンス達から遠ざけた。

適当な近くの建物に入る。

二階建ての民家だ。

階段に身を隠した。

中に入ってきたら、すぐに収納できるように魔力を展開させる。


「ん? 妙なものが張られているな……。おい、カール、罠かもしれん。家ごと壊せ、圧し潰せ」


やっぱ、盲目の剣士には結界が、いや魔力が感じ取れるみたいだ。

簡単に罠を見破られた。


「ワハハ! 何だか分からねーけど、面白れぇな!」


「オヤジ。俺もやるぜ。燃やしまくってやる!」


民家の壁を、ノコギリで斬り始めた音がする。

炎の変態が、家に火をつけまわってる。

でも、大丈夫だ。

瓦礫の中でも生きていけるのは、さっき実証済みだ。

私は、自分の周りにもう一つ四角い結界を張った。


ガラガラと家が崩れていく。

柱を斬られたのだろう。

壁も天井も無くなり、空が見えた。

暗くて厚い雲が見えた。

そして、周囲が炎に包まれた。


くそ……。

私は燃え盛る家の中、透明な結界に囲まれて、膝を抱えて考えた。

攻撃力が無さすぎる。

絶対に突破されない防御力があっても、これじゃ、逃げ回るだけだ。


「おい……。カール、何か近づいてくるぞ。馬の蹄の音がする」


「あぁ? ラファエル、ちょっと見てこい。ワシは炎が消えたら、ガキの死骸を斬り割いてやる。使徒だったら、紋章を剥ぎ取っておかんと」


「あ! あれだよ。オヤジ、ヴァルデンの特別部隊が来たよ。面倒くせー奴らだ。逃げようぜ」


「ちっ。しょうがねーな。行くぞ」


ヴァルデンの特別部隊?

隣国まで乗り込んできたのかな。


三人の気配が無くなった。

炎の中を歩き、外に出た。

アイツらはもういない。

馬に乗った兵隊さんたちが大量にやってきているのが見えた。



全然ダメだったな。

空間魔法って、どう使えば攻撃魔法になるのだろうか。

もっと頭上高くから鋭角な槍のようなものを落とす。

空間ボールを勢いよく発射させる。

それこそ、あの四つ足の蜘蛛型自動機械の鉄の石みたいに。

何とかしないと、逃げ回るだけになっちゃう。

囲まれたら幼児虐待されるがままだ。

あ、もう幼児じゃないな。十一歳の少女だった。


トボトボ、反省しながら、フローレンス達のところまで戻った。

大使と姉がヴァルデンの特別部隊の人と何やら話していた。

負傷者はまだ治療中みたいだ。


フローレンスのところに行って、骨折の患者の魔力整形を引き受けた。

チャールズが運んでくる人は、もう亡くなった人たちも多い。

色んなところに走り回って、片っ端から回収している様だった。


「ララちゃん、燃えている建物に、まだ人がいるみたいなんだ」


「分かった。そっち行く」


チャールズに案内されたのは、コンクリート造の五階建ての建物だった。

寮なのか、集合住宅なのか、小さな部屋が沢山ある建物だ。

炎の変態野郎が一階の各部屋に火をつけたのか、少しずつ上に延焼していき、今は三階部分が燃えている。

四階、五階の窓から何人かが乗り出していて、助けを求めていいた。


「そのままララが中に入って、収納してから戻って来るね」


「え? 燃えているんだよ?」


「残念ながら、さっき検証済み。チャールズも燃えないよ。一緒に行く?」


「う、うん。じゃあ、行く……」


イマイチ信用していないみたいだけど、結界魔法だから大丈夫なんだよ。

そのまま燃えている一階に入っていった。


「ちょっと、君! ダメだよ! 危ないよ!」


野次馬なのか、集まっている人たちから声がかかるけど無視だ。


「ホントだね……全然平気だよ」


「当然。ララは四階の人たちを収納する。チャックは五階の部屋を回って」


「了解」


四階の部屋は全部で十部屋。

声をかけるのは面倒なので、廊下から魔力を展開して、一部屋ずつ収納していった。

五階に行くと、チャールズが廊下に集めていてくれたので、まとめて収納する。

地上に降りて、野次馬たちの後ろで、全員を解放した。


騒ぎになる前に、二人でその場を離れた。


「うーん。こういうのは得意なんだけどな……」


「何を反省しているのさ?」


「あいつらに全く敵わなかった。チンチンにやられた」


「はは。ララちゃん、やられていないじゃない。むしろ誰にも倒せない強者じゃん」


「うーん。でも逃げ回るだけなんだよね」


「まあ、僕がもう少し強くならないとダメなんだよね。反省するのは僕だよ。僕が攻撃役でララちゃんが防御。アス姉が司令塔。フローレンスが回復。それがパーティの役目って事じゃん。今は僕が弱いのが問題」


普通、パーティは攻撃役がもう一人いるよね、とは言えなかった。

互いに思っているだろうけど、互いに言わなかった。


攻撃役がもう一人。

そして、中距離で魔法を撃てる役を私がやれれば、最強パーティだ。



その日は夜まで救助と治療支援を繰り返した。

夜は大使も連れて空間部屋に入った。


姉が一通り、空間部屋を案内した。

姉の部屋を大使に貸して、姉は私のベッドで寝ることにした。


「アストリッド様、私はソファで構いません」


「いえ、まだ十日あるのです。ゆっくりと身体を休めましょう。それにララと一緒に寝るのはいつものことなんです」


「そうですよ。大使様。私とお姉様は末妹のベッドで寝ることが多いのです。妹が寂しがりますからね」


「ララ、妹じゃないし」


「妹みたいなもんでしょ」


姉が遅い夕食を用意している間、順番にお風呂に入ってノンビリした。

大使とフローレンスから、特別部隊の隊長さんと話した内容を共有された。


彼らは、『殺戮の使徒』を追っていたらしい。

調査を依頼していた冒険者パーティから、セレニカーナ王国で見つかったと報告を受けて、入国したそうだ。

セレニティアの街が破壊されたことは、大使たちから伝えた。

彼らも知らなかったそうである。


『殺戮の使徒』カール・ツー・フランケン(Karl zu Franken)。

齢七十歳の老人だ。

額に『XCⅢ』の紋章があるようだ。

つまり九十三番。欲望の使徒の一人だ。

人を斬り刻んで殺すことが何よりも好きなサイコパス。

あのノコギリ野郎である。


「あれは、ヴァルデンの林業の人が使っている『チェーンソー』という機械だそうよ」


「刃が回転していた。結界が切断されそうで怖かったよ」


他の二人の身元も判明している。

調査専門の冒険者パーティが調べ上げたそうだ。


マルコ・モレノ(Marco Moreno)。

盲目の剣士。四十歳。

右腕に『XXXⅢ』の紋章。

気配察知に優れ、目が見える人よりも良く見えると言われている。


ラファエル・モレノ (Rafael Moreno)。

紋章は『VⅢ』。

八番。

ついに『ダブルオー』の番号を持つ敵が登場した。

火神と呼ばれているそうだ。

選ばれし使徒。つまり、あの炎の変態は私と同じ歳ということだ。


「う……。変態が私と同じ歳。随分と成長した局部を持っていた」


「え? ララ、見たの? 生で?」


「うん。服は燃えちゃうからか、真っ裸だった。見ちゃったよ」


「それは……。初体験が残念な結果だったね」


「フローレンス、言い方ね。でも、同じ歳の男子って、あんななんだ。キモ」


フローレンスがジッと、チャールズを見た。

もちろん、私もジト目で見る。


「ちょっと! また! そういうのダメだよ! 僕は清廉潔白じゃん!」


チャールズは空間部屋に帰ってきてから、早々にお風呂に入ると言っていなくなった。

オジちゃんの遺品も引き取っていった。

しばらくして、戻ってきた時には目が真っ赤だったので、多分、大泣きしてたのだろう。

フローレンスも勿論気づいていた。

だからこその、イジリでもある。


「でも、どして、そのモレノ親子は殺戮の使徒とパーティ組んだの?」


「さあ。ヴァルデン特別部隊でも分からないと言っていたわ。でも『終末の使徒』のパーティを偽って名乗っていることは知っていた」


「『偽って』って、偽物だと知っているの?」


「そりゃ、パーティに『001(ダブルオーワン)』がいないしね。明らかに予知に便乗した愉快犯だとは分かるでしょう」


「まあ、でも、セレニカーナでは悪名になるのは確定した。残念」


「それはいつか払拭できますわ。私が大使として責任をもって対処します。でも、その代わりって言ってはですけど、エッジ・シーカーの冒険者パーティは知っていました」


「あら。ちょっと嬉しい」


「ララ、でも、あれは多分、バレているわ。私、自己紹介していないのに『フローレンス様』とか『再生の聖女』って呼ばれたもの。完全に『005(ダブルオーファイブ)』だと気づいていたわ」


「そうですね。サンテール王国のアヴェリーヌの件も知っていましたからね。『神界の空間を司る女神によるアヴェリーヌの奇跡』って言っていたわ」


「『エッジ・シーカー御一行様がヴァルデンに来た際には、お声がけください』って言われたわよ。お姉様が連絡先を貰っていたわ」


「すごいね。何て言うか。調査能力が優れているのかな」


「特別部隊が持つ調査能力なのか、依頼した冒険者パーティの力なのかは不明ね。でも、陛下には報告しておくわ。サンテール王国は丸裸かもしれないと」


「ねぇ、ララちゃん、フローレンス。その『ダブルオー』って格好良いね……。僕もそういう呼び名ないのかな?」


「チャックは、ただの二十番でしょ」


「うん。選ばれし使徒で最弱」


「え? 嘘でしょ? そういう強弱で決まる番号なの?」


「知らないわよ。でも、一番二番が最強能力なのは間違いないわ。実際の強さはさておき」


「ララ、弱かったよ……。思ったよりも弱かった。全然ダメだったよ」


この流れで、私はフローレンスにも相談してみた。

今日の戦いの詳細を説明し、守る以外の手が無かったと。


「ララ、そんなの決まっているじゃん。私にもマリーにも言っていたわ」


「え? なんだっけ?」


「量と質よ」


「うん。でもどう増やす? どう上げる?」


「より早く魔力を展開して囲えれば、収納魔法でシャットダウン出来るんでしょ?」


「うん。そうだけど。遠距離だとどうしても時間かかるよ」


「今はね。だから、一秒で囲える距離を増やす。これは量の鍛錬よ」


「なるほど。今までやってきたことの延長か……」


「もう一つは質。ただの思いつきなんだけど、必ずしも四角で囲う必要あるのかな?」


「え? どういうこと? 空間ボールみたいにってこと?」


「さっき、空間部屋に入る時に、空間に裂け目を作って、そこの裂け目を拡げて、みんなで入ってきたじゃん。あれって、ここ一か月で始めたと思うんだけど」


「ああ、うん。そっちの方が皆を魔力で囲って、空間部屋に移動させるより速いから」


「それよ。裂け目を作れば良いじゃない。つまり線ね。その線を相手にぶつければ」


「あ、斬れる。その線で二つに分けられる。もっと言うと面でも良いのか。そしたら、剣みたいに使える」


「魔力を全面で展開するよりも、速いと思うのよ」


それだ。

そう思った。

線を伸ばして刺す。

面を伸ばして刺せば斬れる。

魔力を全面に展開するよりも、速いのは間違いない。

中距離魔法だ。

これならば、最強パーティの後衛役になれる。


流石天才フローレンスだ。

その可愛い笑顔に向けて、拳を握ってガッツポーズを見せた。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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