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サンテール王国の希望の太陽


少し高くなった段の上に、大きな玉座がある。

玉座の後ろには、明るく輝く太陽を模した国旗が飾られている。

そこに大柄な男性が足を組んで座っていた。

肘掛けに片腕をついて、顎に手を当てている。

口元には笑み。

凄く楽しそうな子供みたいな表情だ。


ブロンドの髪に豊かな髭。

姉の金髪とは違い茶色に近い金髪だ。

彫りの深い濃い顔は、知性よりも行動力を想起させる。

日焼けした肌が、そう感じさせるのかもしれない。

外で散々遊んできた男の子特有の焼け方だ。


床には玉座に向けて敷き詰められた絨毯。

黄色に近いオレンジ色の絨毯だ。

絨毯の左右には、全身鎧を着た兵士が剣を抜いている。

それぞれ十人。

今にも斬りかからんとしていた。


兵士が一斉に剣を抜いた段階で、私達は跪くのをやめた。

すでに全員が立ち上がっている。

オリバーのオジちゃんと、チャールズは剣の柄に手を置き、左右それぞれに相対している。


「さて。終末の使徒よ。貴様を殺せと女神から神託があった。俺はどうすべきだと思う?」


国王から、そう問いかけがあった。

面白がる様な声色だ。



国王陛下との謁見。

指定された日の午前中。

私達は新調したばかりのパーティユニフォームを着て、王城へ向かった。

オリバーのオジちゃんが、得意げに城内を案内した。

道行く兵士に声をかけ、先輩風を吹かせまくっていた。

謁見室のような豪華なホールに案内されて、姉が挨拶の口上を述べた途端。


左右の兵士が一斉に剣を抜き、こちらに剣先を向けた。


『ワシが繋いじゃる』と自信満々だったオリバーのオジちゃんが、青くなって慌てふためいた。



「ちょいと、陛下。これは冗談ですかいな。ちょい悪ふざけが過ぎまっせ」


オリバーのオジちゃんが、そう返答するも、最前列の兵士から、怒号が返ってきた。

この人だけ鎧を着ていない。

騎士服だ。

きっと隊長さんなんだろう。


「黙れ! オリバー! 貴様は神敵に与したのだ! 最早敵だ!」


私は脱いでいた帽子を被り直した。

別にどうもこうもない。

王様が女神側に立つのならば、私達の味方ではない。

そう判断するだけだ。


「王様のオジさんが、どうすべきかは、ララは知らない。自分で考えて。でも、敵になると言うのなら、もう帰る」


「ほう。帰れるとでも?」


私は左右の兵士たちを空間魔法で収納した。

国王の顔から、笑みが消えた。


「貴様。護衛官たちをどうした?」


「邪魔だから、一度しまった。帰っても良い?そしたら、どこかに出しておくけど」


「人質か?」


「人質なら、王様を確保する。ただ邪魔だっただけ。それでどうするの? 話を聞くのか、敵になるのか、早く決めて」


王様は先ほどとは、打って変わった様に真剣な表情になった。

さっきは遊び半分だったってことか。

だとしたら、ぬるい。

剣を抜いた時点で、こっちが攻撃しても良かったのだ。

マリーのパパだと思うから、穏便にしたいと思っていただけだ。


「終末の使徒ローラ・アフ・ラーズドッティルよ。貴様は人類に終末をもたらす悪の使徒と聞いた。そう女神に作られたと。このように、人類を消していくつもりなのか?」


「女神から勝手に付けられたその名前は捨てた。今はララ・スティエルナ。ララって呼んで。女神から言われたのは『世界の混乱を平定して、悠久に続く平穏な世界を人類に与える』こと。言っていることが違う」


私は私なりに説明した。


私の役目は平定。

使徒を世界から除去すること。


女神は使徒を操作して社会に混乱を生じさせようとしている。

混乱の源は、欲望や渇望。

使徒の存在はその具現化。

十王ですらそう。

人には過ぎた力を具現化した存在。

選ばれし使徒は、まさしく神の御業を使う存在。

その力を持った時、どう使うかは、おそらく分かれると思う。

そこに再び混乱が生じる。


そんな自分なりの解釈を説明した。


「でも、ララは思う。結局、世界に混乱を生じさせているのは、女神だと。女神を止めない限り、この世界に平穏は訪れない。人類は決して解放されない。女神に良いようにやられるのは嫌」


「ふむ。なるほど。貴様の解釈は理解した」


そこまで話した後、姉が再び跪いて頭を垂れた。

そして、いつもの説明をし始めた。


「国王陛下。どうか、わたしのお話もお聞きください」


「アストリッド・アフ・スヴェンソン。其方のことは知っている。教皇と会談した時に一緒にいたであろう。まだ子供だったが、その美しい容姿。覚えておるぞ。其方が何を話すかは、もう分かっておる」


「わたしの名前はアス・スティエルナ。ララと同じように古い名前は捨てました。今は一介の冒険者です」


「二級冒険者パーティのエッジ・シーカーのリーダー。冒険者としての評判はすこぶる良い。アヴェリーヌから報告と上申も受け取っておる。我が王国の民をよく救ってくれた。礼を言うぞ。昨日、娘を助けてくれたとも聞いておる。自動機械とやらの話も聞いた」


「国王陛下。それでは…」


「姉君よ、待つのだ。さて、終末の使徒よ。テオドールを、あの騎士服を着ていた護衛隊長だけでも戻してやって貰えぬか。アヤツがいないと不便で困るのだ」


王様の顔をジッと見る。

おふざけモードは終わった。

真剣なモードも終わった。

今は、穏やかな表情を浮かべている。

むしろ、ワンちゃんが怒られた時みたいな顔だ。

でも、自分勝手すぎるとも思う。

王様だから、そういうものなのかもしれないけど。


ちょっと考えて、一つだけ聞くことにした。


「王様のオジさん。兵士さん達にどうして剣を抜かせた?あの時点で殺し合いに発展していたかもしれない。マリーのパパだと思ったから、穏便に済ませようと思っただけ。本当ならば、もう兵士さん達は可哀相なことになっていた」


「すまぬ。詫びを入れよう。許してくれ。この通りだ」


王座から立ち上がって、こちらに下りて来た王様は、綺麗に頭を下げた。

こういう真っすぐなところは、マリーに似ている。

でも、いかんせん子供っぽ過ぎる。


「わかった。王様は許す。でも、理由を知りたい」


「護衛隊長のテオドールに言われたのだ。『女神が正しいかも知れない、暗殺の危険もあるので、威嚇して本心、本質を確認しましょう』とな」


愚かだ。

王様を守る護衛隊長が逆に危険を作ってどうする。


私は空間収納から、兵士たちを元に戻した。


何事も無かったように、剣をこちらに向け続ける兵士たち。

騎士服を着た護衛隊長だけが、王様の位置がイキナリ変わったことに驚きの表情を浮かべた。


「良いのだ! 皆の者、剣を収めよ! この場から退出せよ! アンヌ=マリーを呼んで来い。テオドールだけは残れ」


「「「「は!」」」」


兵士たちは、剣を収め、王様に頭を垂れて、退出していった。

この場には、私達と王様、護衛隊長だけが残る。


「チャック。あの愚かな隊長をボコせ。剣は使うな」


「え?ララちゃん?」


「チャールズ。行くんや。アイツは強いで。真剣にやりぃ」


王様はまた笑みを浮かべた。

今度はニカっと笑う満面の笑みだ。

「ハハ!」と大きく笑った。


マリーがサンフラワーみたいに育ったのは、近くに、この太陽みたいな王様がいるからだろうと思う。


テオドールと呼ばれた護衛隊長は再び剣を抜いた。

チャールズが身体に魔力を浸透させて、全身を加速させる。

一瞬、姿が見えなかった。

護衛隊長の背後に現れて、ハイキックで護衛隊長の側頭部を蹴った。

護衛隊長は大きく。チャールズはまだ小さい。

大人と子供だ。

それでも、速度と手数で圧倒した。

護衛隊長は、その姿を捉えきれないまま、右から左から蹴り込まれ、地面に倒された。


「もうそこまでにしてやってくれ。テオドールよ。こちらが調子に乗り過ぎたのだ。神の使徒を愚弄した俺の罪も含めて、反省するのはこちらだ」


フローレンスが護衛隊長の元に行き、回復魔法をかけた。

噴き出た鼻血はどうしようもないが、顔が腫れる前に治療してもらえたのは良かったと思う。


「もう大丈夫です。ありがとうございました。フローレンス殿。再生の聖女様」


護衛隊長は立ち上がって、フローレンスに礼を言った。

こちらに対しても、深く頭を垂れた。

『再生の聖女』か。

良い二つ名だと思う。

私も聖女がいいな。


「ちょっと! なにやってるのさ! この馬鹿パパ!」


背後の扉がバーンと開いたと思ったら、大声をあげながら、マリーがやってきた。

ドカドカと小さな歩幅を精一杯広げて、王様の元まで行き、その胸に指を突き立てた。

昨日と違って、今日のマリーは豪華なドレスだ。

これ以上ないくらい、ふんだんに生地が使われたプリンセスラインのドレスだ。


「ワタシの友達だって言ったよね! ねえ! 言ったよね! パパ、聞いていたよね!」


凄く怒っている…。


「す、すまん。アンヌ=マリー……。テオドールに、脅しつけておけと言われたのだ」


「はあ? 王様でしょ? パパが王様でしょ?  何言っているの!」


王様はタジタジだ。

仲間たちから失笑が漏れた。


「マリー、ありがと。もう、憂さ晴らししたから良いよ」


「ララ! ごめんね! 護衛官から話を聞いて走って来ちゃったわ」


マリーは飛んできて私に抱き着いた。

優しい匂いがした。

身長差が5センチくらいあるけど、同じ歳って感じがするのが、また嬉しい。


しばらく、というか、ずっとマリーは怒り続けていた。

こっちを向いて、悲し気に謝り。

向こうを向いて、怒りを飛ばしていた。


「うん。マリー、もうわかった。話が進まないから、ちょっと黙る」


「分かったわ。でも、ずっと一緒にいるから! テオドールは後でワタシが叱るつけておくから!」


いや、もうチャックにボコボコにされたし。


「ありがと、マリー。それでマリーのパパ、この後はどうするの? もう敵じゃないってことで良いよね?」


「ふむ。敵ではないのだが、テオドールを含め、配下を完全に納得させるためにも見ておこうか」


王様はドアの方に歩き出した。

テオドールが急ぎ、その前に出た。

私達もその後に続く。


マリーは私とフローレンスの手を握った。

三人で手を繋ぎ、王様の後を追う。

ふわふわドレスの女の子と手を繋いで歩くのは、非常に歩きづらい。



王城を出ると、沢山の兵士が周囲を囲んだ。

王様は、王城の道沿いではなく、綺麗に刈り込んだ緑の芝生エリアに足を踏み入れた。

どうやら、ショートカットするようだ。

芝生の広場の向こう側には、大きく立派な教会が見える。


既にそのつもりだったようで、教会は沢山の兵士に封鎖されていた。

周囲に沢山の国民が集まって、様子を見ている。

教会を兵士が封鎖したのだ。

そりゃ、大変な騒ぎになるだろう。


想像した通り、王様が向かったのは、女神像のある講堂だ。

講堂のドアの前に兵士を待たせる。

中に入るのは、王様とテオドール、マリー、そして私達だ。

女神の通信を遮断するために、部屋中に結界を張った。


「さて、テオドールよ。大剣を寄越せ」


「は!陛下……、何をなさるので?」


「決まっておろう! 前からやりたかったのだ!」


王様は女神像の前に立ち。

その大きな女神に向かって、大きく大剣を振り下ろした。

大柄な王様よりも、さらに大きな女神像。

無謀と思われたが、それでもバキっと重厚な音がして亀裂が入った。

もう一度。

さらにもう一度。

粉々になった女神像の中から、大きな自動機械が見つかった。


「ハハハ! テオドールよ、見たか! やはり終末の使徒が正しかったようだぞ!」


「は! ご慧眼感服いたします。しかし陛下……。女神像を壊してしまっては民が……」


「ふ。アンヌ=マリーよ。この女神像だけ復元してくれ。ララよ。自動機械は持っていくが良い」


「わかった」

「いいわよ! やるわ!」


私は自動機械を空間魔法で収納した。

マリーがバラバラになった女神像の前に座り込み。

その欠片に手を当てて、魔法をかけた。


「再生魔法……?」


フローレンスが呟いた。

確かに目の前で、砕けた女神像が元に戻っていく。

でも、これはフローレンスと同じ再生魔法ではない。


彼女の二つ名は『時の管理人』

つまり、これが、時間魔法だろう。

時を巻き戻しているのだ。


巨大な女神像が元に戻った。

マリーがフラっと揺れたところをフローレンスが抱きかかえた。

そのまま、回復魔法をかける。


「空間を司るララ。時間を司るアンヌ=マリー。001と002。二人が世界で最強の使徒であろう。生み出した最強コンビが、まさか敵に回るとは女神も思わなかっただろうな。ハハハハハ! こんなに愉快なことがあろうか!」


王様が何故か得意げに、豪快に笑った。


「王様。ついでに、この上にある通信の自動機械も回収したい」


「ん? この上にあるのか? テオドール、ハシゴを持ってまいれ!」


「は!」


「テオ、不要。階段はララが作る」


空間魔法で、色を付けた四角い箱を幾つも生み出し段差を作った。

慣れたチャールズが段差を駆けあがって、女神像の真上の天井板を押し上げる。

王様が行きたがったが、先にテオドールが向かった。

王様も見に行ってしまったので、マリーが私も行きたいと駄々をこねる一幕があったが、無事に通信の自動機械も回収できた。



教会で自動機械を回収した後、私達は昼食会に招かれた。

王様の横にはマリーと私が並ばされ、後の仲間たちは対面の席に座らされた。

自分の両手に、最強使徒二人。

きっと、この王様がそうしたかったのだろう。

子供みたいな人だ。


フィリップ・ド・フランス (Philippe de France)

現サンテール王国の国王。

千三百二十年に転生した。

始まりの使徒が世に生まれて、二十年後。

十王の一人として、十五歳の姿でサンテール王国に転生した。

つまり、今五十歳を超えたということだ。

随分と若い見た目だと思う。


『LXXI』という紋章が首に彫られている。

七十一番ということだ。


女神像からの神託は『人類が渇望する前向きな未来を構築せよ』だったそうだ。

与えられた加護は『希望』。

道理で陽キャな訳だと私は思った。


転生してからの人生は波乱万丈だ。

時は、欲望の使徒が全盛の時代。

転生当時、『色欲の使徒』と呼ばれた欲望の使徒がサンテール王国を支配していた。


色欲の使徒、エリザベート・ド・フランス(Élisabeth de France)。

恐ろしいほどの美人であり、王族は全て彼女の色香で堕ちたそうだ。

王位継承権を保有する全員の子を成し、国王を自死させ、自らが女王として君臨。

高額の納税を課して、首都リュミエールを困窮せしめた。


マリーのパパは、民の先頭に立って戦った。

圧政を弾劾し、弾圧に抵抗した。

民を鼓舞し、人々に希望を与えた。


色欲の使徒を王城前の芝生広場でギロチン刑に処し、

その血筋を全て斬首させた。

民に請われ、新生サンテール王国の国王となる。


盛大な就任式で彼は高らかに宣言した。

『妻は取らぬ。俺は色欲には負けぬ。次代の王は皆が選ぶがよい』


大歓声を浴びる中、彼はある種の懐疑的な思いに襲われていたと言う。

民は、自分をこの地に降臨させた女神に感謝している。

だが、欲望の使徒を送り込んだのも、同じ女神だ。

これは盛大なマッチポンプではないか、と。


アンヌ=マリー・ド・フランス(Anne-Marie de France)。

私と同じ歳に生まれた選ばれし使徒。

マリーと出会った王様は、自分以上に明るい少女を見て即決しそうだ。


自分の次は、この子に託そう。

この子が選んだ者を王にしよう。

そして、永遠の平穏の時を管理してもらうのだと。


「あれ? じゃあ、マリーは王様にならないの? 王女なのに」


「嫌よ! ワタシは沢山の動物と楽しく暮らすの! 王様役は嫌よ!」


「でも、結婚相手が王様なんだよね?」


「脳筋は嫌よ! 優しい人を選ぶわ!」


「うん……。マリーを相手にする男の人だからね。優しくないとやっていけない」


「ララ! どういう意味よ!」


「ハハハハハ! お前ら仲良くて良いな! ララよ、どうかアンヌ=マリーの友達になってやってくれ」


「うん。マリーパパが言うまでもなく、昨日友達になった」


「パパ! ララ達を庇護してあげて! 助けてあげて欲しいの」


「勿論だ。最初から、そのつもりだ。ただ、女神を語る不届き者を探す旅をするのだろう?俺がやれることは、幾つもないぞ」


王様は、指折り数えながら、支援策を挙げてくれた。

それを聞きながら、それで十分じゃないかと思う。


サンテール王国の国王印が押された書状を渡す。

それがあれば、各国のサンテール大使館で国王の客人として扱われるそうだ。

それだけでなく、王国籍の船舶には無料で搭乗できる。

サンテール王国内の通行の安全を保障する。

各都市の兵士が味方に付くだろうと。


「其方らは賢者に会うのだろう? セレニティアまで船に乗ると良い。過酷な陸路の旅路よりも安全で速い」


「国王陛下。ありがとうございます。十分でございます。心から感謝を」


「良い良い。ララの姉上。俺たちは同じ船に乗った同志だ。俺の最後の敵は女神か。腕がなるな。おそらく強敵だぞ」


「はい……。存じております。各国の教会に自動機械を設置する権力。自動機械を作る技術力。その全てが想像を絶する力だと思っています」


「ふむ。自動機械の技術者と言えば、旧アメリカーナ王国。現ユニオン・リパブリックが怪しいが。世界を支配しようとする野望はセヴェルスカ帝国かバイシン帝国……。まあ、まず賢者の知恵を借りるのは良い案だ。いずれにしても、世界の反対側までの旅となりそうだな」


それは私達も理解している。

それでも……、世界の反対側に行ってでも、解決するべき問題だと思っている。


「アル・ナジール王国とラージャスティ王国。この二つの国は避けた方が良いかもしれぬ。異常なまでの女神教の信者たちだ。聞き耳を持つことはないだろう」


女神の教えを、多くを求めず質素であることを遂行するため、月に二度断食をする国だ。

女神に対する不敬は即打首だと聞いている。

その事は勿論、理解しているが、その国の中に探している奴がいるかもしれないのだ。

避けて通れない道かもしれない。


食事中であったが、本人の要望で、王様の頭の中の自動機械も除去した。

ナプキンで小さな自動機械を拭き、王様はじっくりと眺めた。


「相当な技術力だろうな。全く想像もつかない仕掛けだ。やはり自動機械を開発した技術者が関与しているとしか思えないな」


「教会の通信自動機械を除去すれば、その小さな自動機械は機能しないはず」


「サンテール王国内の教会の自動機械は、俺たちの兵士に除去させよう。ララはいつまでリュミエールにおるのだ」


ララは姉の顔を見る。

私達のスケジュール管理は姉の役割だ。


「今、ララの空間部屋の内装工事をしております。おそらく完了するのは一か月。それが終わり次第。船に乗らせて頂けると助かります」


「空間部屋か……。其方らの持ち運べる家か?」


「はい。ララだけが連れて行ける特別な空間です」


「そうか! 最高だな! 完成したら招待してくれ!」


「マリーパパ、良いけど、小さい家だよ」


「構わん。真の意味で神界だろう。見るだけで良い。お、そうだ。家具はどうだ? 俺がプレゼントしてやってもいいぞ」


それは助かる。

内装の発注が終わったので、家具屋に行こうと思っていたのだ。

仲間たちの顔が笑顔になった。


その後、王国内の教会に設置された自動機械の処分方法を話し合った。

どの様に動作しているのか不明なので、私が収納しておくのが一番安心だ。

リュミエールに滞在している間になるべく多く回収してくると王様は言ってくれた。

王様の頭の中にあった自動機械も空間魔法で収納しておいた。


三日に一度は共に食事を取ることを約束して別れた。

マリーは毎日遊びに来ると言っていた。


王城の出口まで見送りに来てくれた二人は、馬に乗る私たちに大きく手を振っていた。


「また会おうぞ!」

「また明日ね!」


大きな笑顔で手を振る親子を見て、ソックリじゃないかと思った。

そして、この国に、この首都の名にピッタリな二人だと、そう思った。



世界地図

挿絵(By みてみん)

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