戦争の後始末は誰がやるのか?
ユニオン・リパブリックで起きている戦争を何とかすることが、次のミッションだ。
数日、頭から離れていたけど、本来はユニオン・リパブリックのプリモーディアル(Primordial)の森に封じられているプラダーナを討伐するのが目的だ。
プリモーディアルの森は、ユニオン・リパブリックの国土の中でも、西の奥にある。
西の端の方、首都フリーダムランドから北西方向に進むとグレートハーモニーという名前の湖と都市がある。
そこを拠点に、南西に降りていくと広大な森があり、そこが目的地であるプリモーディアルの森となるのだ。
ユニオン・リパブリックでは、この広大な地域を、『アメリカーナ西部国立公園』と呼称していて、冒険者すらも立ち入りを禁止されているという。
これまでの聖域と同じように、独特の生態系が維持されており、これまでと同じように伝説の魔獣が生息していると言われている。
「そして、ララは東へ向かっていると……」
「ララ様? 何か言いましたか?」
「いや、ナナちゃん大丈夫。本当はユニオン・リパブリックの西の森に行かないといけないんだよなと思い出していただけ」
「はい。プリモーディアルの森ですね。ただプラダーナは千年以上封じられたままなのです。数週間遅れたとしても、問題ありますまい」
「うん。そうだね。粛々と一歩ずつこなすしかないね」
私達は首都パラディソを飛行船で出発した。
西ノースレット湾(West Northlet)を東に向かっている。
眼下には、マテウス・ロペス海軍司令官率いる軍艦が、数隻連なって巡回しているのが見られる。
既に二度ほどウルグル帝国の海軍と衝突があったそうだ。
自動機械化されているサウスウェスト連邦国の海軍は、速度、小回り共に敵艦を凌駕しており、全ての敵艦を撃沈し完全勝利したと報告があった。
私達が気にしているのは、女神の空襲だ。
あの空襲を受けたら、流石に我が国の軍艦でもひとたまりもないだろうと思う。
チャールズの仮説を信じる限りは、女神が空襲を実行するためには、正確な座標を通信で届ける必要があるとのこと。
つまり、沿岸に残る通信機器を全て撤去してしまえば、少なくとも西ノースレット湾の安全は保障される。
首都パラディソから北上する統一街道沿いの教会は、私が国境の壁を敷設する際に全て除去してある。
残りは統一街道を東に進む道中の教会。
特に大型の通信機器が設置されていると思われる旧カサ・デ・アグア王国第二都市エルソル(Dird ElSol)へ向かっているのだ。
「ララちゃん、あれだね。あの小さな港町がエルソルだ」
チャールズが指さす方向の窓に近づき、私はその港町を眺める。
ノースレット湾(Northlet)の底を越えて、東ノースレット湾(East Northlet)に入ったところにある港町がエルソルだ。
首都パラディソの港町を半分くらい小さくしたような港町だと思う。
首都パラディソは、元々アメリカーナ王国の玄関港として昔から大きく栄えていた。
対してエルソルは、バイシン帝国との貿易に限定して活用されていたに過ぎない。
陸路で運ばれた荷物が、エルソルで船に積まれて、パラディソの街まで運ばれる。
そのために作られた港だとも聞いている。
アメリカーナ王国時代は、『ダード(Dird)』と呼ばれていたが、カサ・デ・アグア王国になって、『エルソル(ElSol)』と改名された。
今でも、地図の製作年によっては、ダードと表記されている物もあるし、両方を併記している地図もある。
「この辺で大丈夫?」
チャールズが港町の近くにある教会の尖塔の真横でホバリングしてくれている。
大丈夫、と答えながら、魔力を伸ばし、尖塔の中の自動機械を捉える。
そのまま収納した。もう慣れた作業だ。
「オッケー、このままミョンジュの方に向かって、統一街道沿いの教会の自動機械を除去しよう」
「そうだね。国境を越えたら北上して、バイシン帝国のハンジョウの機械も取っ払っちゃおう」
「うえ、敵国の領土の上を飛ぶ?」
「大丈夫さ。向こうは攻撃手段を持たないからね。ハンジョウの自動機械を除去したら、ノースレット湾の下半分以上は安全地帯になるよ」
飛行船はノースレット湾を離れて、統一街道に沿って飛ぶ。
途中の幾つかの小さな教会にも立ち寄り、自動機械がある場合は除去していく。
統一街道沿いには、見知らぬグレーの軍服を来た兵士達が、綺麗に整列して行軍していた。
「ナナちゃん、あれ、ミョンジュ? それともバイシン?」
「ここはミョンジュ共和国の国土ですが、あれはバイシン帝国軍ですね。ミョンジュ共和国軍は似ていますが、軍服の作りが違います。バイシン帝国軍はあの鉄製の兜が特徴ですね。ララ様もセジュンの丘で見たはずですよ」
「ああ、そうだったかも。朝方だったしな。あまり気にしなかった。ここにバイシン帝国軍がいるってことは、ミョンジュは北部だけでなくて、西部も占領されちゃっているんだね」
「はい。先ほど立ち寄ったエルソルの街ですが、海軍が念のために詰めています。まあ、バイシンはこちらには攻めてこないとは思いますが……」
パラディソの街や、西ノースレット湾は濃霧が酷かったけど、東ノースレット湾は全く霧が発生していない。
カサ・デ・アグアやユニオン・リパブリックが、谷間に作られた都市なのに対して、ミョンジュやバイシンは平野部だ。
流れる風も違うのだろう。
クリアになった視界で、眼下の風景を眺めながら、飛行船は進む。
二つほど小さな教会を確認すると、ミョンジュ共和国とバイシン帝国の西の国境に辿り着いた。
この国境沿いの統一街道には、大きな検問が設けられている。
バイシン帝国軍も沢山いるようだ。
「皆、こっち見ているよ」
「はは。届く攻撃手段があるのなら、やってみろよ」
「いいよ、チャック、あそこの教会を確認したら、ハンジョウの方に行こうよ」
国境近くの教会から小型の自動機械を回収して、細い畦道の上を飛行船で北上する。
国境から馬で兵隊さん達が追ってきているけど、絶対に付いて来れないと思うよ。
「何かバイシン帝国って、凄い発展した国をイメージしていたけど、全然違うんだね。暗く悲しい雰囲気がする」
「この辺は西の田舎町ですからね。首都バイシンは大陸一の大きさと言われていますよ。我らの仲間では殆ど行った人はいないと思いますけど」
東国なので、木造りの家なのだろうと思っていたが、石造りの小さな家ばかりだった。
その石は全て灰色にくすんでいる。
農家の人たちだと思うけど、来ている服も皆、灰色で古びている。
デザインも色合いも、全部同じ服を着ているようだ。
配給されている服なのかもしれないな。
数十分飛行すると、ハンジョウと呼ばれるバイシン帝国西の港町に着いた。
ハンジョウ(Han Zhou)。漢字で書くと『寒州』かもしれない。
名前の通り、寒さの厳しい土地なのだと思う。
それでも、港のサイズは大きかった。
大きな軍用艦が幾つも停泊している。
かつて、サンテールにいた商船と同じようなタイプの船も幾つもあった。
むしろ、漁船が殆どないのが気になるくらいだ。
「前にマリーの部屋が襲撃された時は、こういう船に通信の自動機械が積まれていたんだよね」
「あ! そうだね。ララちゃん、船を全部収納しちゃおうか」
「ええ、百近くあるよ」
「いや、大型船だけに絞れば、二十隻もないよ。あの大型の通信機器をバラストに使っているってことは、相当な大型船なはず。せっかくだからゲットしておこうよ」
「まあ、せっかくだから、やっておくか。リスクは排除しておいた方が良いしね」
チャールズに上手く乗せられている気もするが、言っていることは間違いない。
飛行船をかなり高度を落としてホバリングしているからか、相当数の兵隊さん達が集まって来ている。
カンカンと矢が窓に当たってるけど、全く問題ないよ。
チャールズの指示通りに大型船を片っ端から、収納して行った。
ガガガがガガガ!
カンカンカンカン!
お馴染みの音が聞こえたと思ったら、ドローンが列をなして機関銃で攻撃していた。
強化ガラスを破ることは出来ないみたいだけど、なんか嫌だ。
空間ボールを周囲に浮かべておく。
「オッケー! ララちゃん、大型船はこれで終わりだ。あとは教会行ったら完了だよ!」
港町を東に進み、大通り沿いにある教会の尖塔に横付けする。
眼下の通りは、灰色の服を着た人達で大騒ぎだよ。
ドローンの接待を甘受しながら、尖塔の大きな通信機器を除去する。
「あ! 殿下! ドローンが次々と落下していきます!」
「うわ、ほんとだね、虫が死んだみたいだ」
「そうか。もう船もないから、帰るドッグが無いんだよ。へぇ、こうなるんだね」
「ララちゃん、行こうか」
「うん。パラディソの上空に転移するよ」
この収納した大型船って、どうすれば良いんだろう。
サン・ミラージュに持って行くのかな。それともヴァルデンの商会で改造してもらうのか。
そんな事を考えながら、パラディソまで転移した。
そのまま、チャールズは西に舵を切る。
シルバーレイクまではすぐだ。
上空からシルバーレイクの街の上空を視察して、今日は帰ることになっている。
バイシン帝国のハンジョウから転移してくると、ノースレット湾の東岸か西岸かで、気候が随分と異なるのが感じられる。
クリアな視界と見渡す限りの平原が広がっていた東岸のバイシン帝国と比べ、濃霧に覆われて視界が不良であり、左右に聳える山々すら見えない西岸。
地表に届く太陽光が少ないためか、お昼なのに少し暗い感じがした。
バイシン帝国は街や民の色合いが暗い感じがするのに対して、西側のこちらは物理的に暗い。
南のカスティリオやサンパウリーナに長く滞在した私からすると、北側の国々は何となく暗く寂しい感じがする。
「ああ、あれがシルバーレイクだよね?」
「うん、そうだね。霧で覆われた幻想的な湖。対岸に都市があるはずだけど、良く見えないね」
統一街道と大河の間を縫って飛んで来た。
カサ・デ・アグアとユニオン・リパブリックの国境は、大きな検問所があり、上空からでもすぐに分かった。
都市シルバーレイクは、国境の検問所から大湖シルバーレイクを越えた反対岸に建てられているという。
だが、濃霧の所為で、湖の向こう側は見えない。
チャールズは濃霧を切り裂く様に、湖の真ん中を突っ切る。
ギリギリ眼下の様子が分かる程度の高さを飛行船は維持して飛んだ。
シルバーレイクはションボリした瓢箪の様な形をした湖だ。
統一街道は瓢箪の頭の部分に一度近接してから、瓢箪の腰周り、足元をグルっと迂回するように西に延びていく。
都市シルバーレイクは統一街道がぶつかる湖の頭部分。その反対岸にある。
飛行船で飛べば直ぐだ。
どうして、この場所に都市を近接したかは、地形を見れば分かった。
都市の北と西側は崖なのだ。
そのままセヴェルスカとの国境を断絶している急峻な山々に繋がっている。
東側は湖。北と西は山。都市シルバーレイクの出入口は必然的に南だけに限定されていた。
東側の岸には、沢山の船が接岸しており、この地域の交通手段が馬車ではなく船なのが伺えた。
南側、都市シルバーレイクの正門に当たるエリアには、沢山の兵士達が駐留していた。
テントだけでなく、仮説住宅も多く見受けられる。
大きな石造りの正門や外壁は殆ど全て破壊されている様だ。
瓦礫は片付けられて奥の方に山積みになっている。
「街は破壊されていないみたいだね」
「うん、でもララちゃん、外壁があったところを見てよ。建物まで大分距離がある。多分、外壁と一緒に壊されたんだよ。今は片付けられているから、何も無いように見えるだけだと思うよ」
「なるほど……」
「ララ、チャック、兵士の数が少ないな。一万程度じゃないか?」
「レオン、奥の方まで見える? 街を巡回しているとか」
「街の上まで飛んで行こう」
バイシン帝国ハンジョウの時と違って、兵士達は上空の私達には気づいていない。
結構な高度を下げて飛んでいると思うのに、チラともこちらを見ない。
多分、この辺に住む人たちは、この季節、空を見上げることが無いのかもしれない。
この飛行船は霧や雲と同じような色合いをしているし、綺麗な青空に浮かんでいるのとでは、視認性に大きな違いがあるだろうし。
「街の人たちは普通に生活しているみたいだね」
「うん。特に武力で占領されて感じはしないね」
シルバーレイクの人たちは、他国の軍に制圧、占領されている筈なのに、普通の生活を営んでいるようだった。
市場はそれなりの人で賑わっているし、東側の湖沿いにある港町も色々な荷物を運ぶ人たちが沢山見えた。
街を巡回しているカサ・デ・アグア軍からも威圧的、暴力的な感じは見受けられない。
「こうやってみると、もうこのままでもいいんじゃないかって気になっちゃうな」
「上空から見ただけだと分からないこともあるだろう。実際に民に聞けば、他国の兵士に占拠されて困っていることも沢山出て来ると思うぞ」
「うん、レオンの言う通りだよ。ララちゃん、あそこにいる兵士達はもう正規軍じゃないんだよ。国が無くなった訳だからね。だから、その辺にいる山賊や傭兵と同じだ。山賊に武力で制圧されている状況は社会にとって不健全だからね」
「まあ、そうだけどね……」
山賊呼ばわりされている兵士の人たちが、シルバーレイクを独立国家として宣言したら、再び正規軍として扱われると思う。
所詮『国家』なんて、目には見えない概念的な物だし。
この武装勢力が非人道的な行いを街の人たちにしているか否かの方が、正規軍か非正規軍かの議論よりも大事なんだろうなと上から見ていて思った。
「うん、大体様子は分かったね。あの兵士達を街から締め出すのも難しくは無さそうだ。逆にユニオン・リパブリックの都市行政を再生する方が難しいかも」
「あの役所の建物の中身は、上空から見えないしね。行政担当の役人たちが追い出されていたら、首都フリーダムランドから連れてこないとだね」
※
シルバーレイクの視察を終えて、私達は迎賓館に戻った。
報告は皆にお任せして、お母様達に判断は任せる。
何か意見を求められた時だけ、思うことを言えば良いと私は考えていた。
ところが、夕食時に、お母様達から意外なことを言われた。
「え? 何もしなくてよいの?」
「そうさな。ユニオン・リパブリックの現政権と協議したさな。彼らは戦車を駆逐出来たのであれば、自国での戦争は自分たちだけで十分だと言っているさな」
ユニオン・リパブリックに侵攻したカサ・デ・アグア軍は、二十万以上残っているとは思う。
それをどうやって捕えるかを私達は考えていたが、ユニオン・リパブリック側はそれを自分たちで行うと言ってきたらしい。
女神の兵器である『戦車』がいないのであれば、私達の手を借りるまでもないと。
カサ・デ・アグアの首都パラディソは、サウスウェスト連邦国が制圧して、王族も確保しているのだ。
もう支援としては十分ということなのだろう。
アス姉が笑顔を浮かべて、付け加えてくれた。
「サウスウェスト連邦国がパラディソの街を制圧したでしょ? 次はシルバーレイク、ひょっとすると、その次はリバーヘイブンかもしれない。サウスウェスト連邦国がユニオン・リパブリックの街を占拠していくのも困るってことだと思うのよ」
「えー、ララ達は土地や街が欲しい訳じゃないんだけど」
「ごめんなさいね。ララさん。私もそれを主張したのだけどね。彼らには彼らなりの意地や立場もあるのだろうね。サウスウェスト連邦国とは仲良くしたいけど、支配されたくはないってことだと思うのよ」
「ふん。くだらん連中じゃ」
フィオナお婆さんが、私に向かって頭を下げて謝ってくれる。
始まりの使徒のお爺ちゃんは、不機嫌そうな顔をして、コップに注がれた飲み物をグイっとあおった。多分、お茶だと思うけど、まるでお酒の様に見えるよ。
「まぁ、別にいいんだけど。プリモーディアルの森には行ってもよいのかな?」
「アメリカーナ西部国立公園の立ち入りは許可してもらったわ。近くの町グレートハーモニーを拠点にしてもらって良いそうよ」
「そうか。じゃあ、チャック達、明日からジャングルでの戦闘に切り替わるみたいだよ。また魔獣戦だ。まあ、人間相手よりはいいね。準備しておこうね」
「ララ様、ユニオン・リパブリックの各都市に行かないとなると、プラダーナだけでなく、プラダーナを封印している巨大ロボット達との戦闘もあります。兵力も必要かと」
「うぇ……、そうだったよ」
プラダーナを封印している森の地下施設は、女神が配備した大量なロボット達が稼働している。
彼らは日々、プラダーナと戦い、その魔力を削り取ることを数百年以上繰り返している。
プラダーナは大きなエネルギーコアを内部に保有している。
物理攻撃を繰り返してダメージを与えても、その大きな保有魔力で回復してしまうのだ。
エネルギーコアを破壊したとしても、その場所に再び魔力が集まり再生していく。
じゃあ、地下施設に閉じ込めるだけで良いのかと言うと、それもまた違う。
プラダーナがいることによって、周囲の土地の魔力濃度が上がり、危険な魔獣が大量に発生する土地になってしまうのだ。
日々攻撃し、ダメージを与え、魔力を使わせる。そうして、周囲に魔力が溢れださない様にするのは非常に有効な対策だと思う。
問題はプラダーナを討伐する戦力をどうするかだ。
前回はララ近衛隊百名と、ミナセの戦力を借りた。
それで数か月かけて、プラダーナを討伐したのだ。
でも、今回はプラダーナに到着する前にロボット兵士戦が待っている。
多分、数百はいただろうと思う。
ララ近衛隊は連れて行けるけど、他の戦力は戦争対応で手いっぱいだ。
とても、同行してくれと言える状況ではないだろう。
「アス姉さん、パラディソの街はどうするのですか? 今はサウスウェスト連邦国の軍で守っていますけど」
「戦争が落ち着いたら、ユニオン・リパブリックに譲渡することになると思うわ」
「そうですよね。ということは、街を維持する戦力だけ保持していれば良いですかね?」
「うん。そうね。チャック、何が言いたいの?」
「ああ、ペレイラ司令官の部隊もプラダーナ戦に参加できるかなと考えたのです。元々、ユニオン・リパブリックに侵攻してカサ・デ・アグア軍を討伐する予定でした。その必要がないのなら、プラダーナの方に戦力を回すことも可能ではないかと」
チャールズの提案にアス姉は顎に手を当てて考え始めた。
司令官のオジちゃん達に聞いた方が早いと、私は思ったけど。
「そうですね。後で司令官と相談してもらえるかしら?」
「了解です。ララちゃん、ペレイラ司令官の第二軍にも装備が必要だね」
「チャック、でも百人程度で十分だぞ。地下施設は通路が狭い。そこまで大軍は送れない」
「ああ、そうだね。じゃあ、余裕じゃないかな。強い順に百名なら幾らでも派遣してもらえるよ」
※
夕食を食べた後、司令官たちを集めて相談した。
結論から言うと、プラダーナ戦の戦力は問題なさそうだった。
エドゥアルド隊長は元々アサインされているから二つ返事だ。
問題は、ジョアン・ペレイラ第三軍司令官と、エリザ・ロペス第四軍司令官だ。
二人とも、絶対に自分が参戦したいと主張したのだ。
しかも、ロボット兵士戦やプラダーナ戦だけでなく、ジャングル踏破から同行したいと。
「コンティスヨの森を担当している我が軍こそ適役! 森の行軍を甘く見ない方が良いですわ!」
「何を言うか。エリザ。今回ララ様が求めているのは、強い兵士。敵地に乗り込み戦うのは、我が第三軍の方が適任だ!」
今も、私達の目の前で、喧々諤々の議論を繰り広げている。
エドゥアルド隊長が何度か仲裁するべく話に加わろうとするが、両者とも一歩たりとも譲らないので、殆ど意味を成していない。
ナナちゃんから、私は幾つか耳打ちされた。
うん、その辺が落としどころだろうと私も思う。
「はいはい。もうそこまで。もうララが決めるね。同行するのは各隊五十名。ララ達を入れて、総勢百五十ちょいで森を進む。ただし、毎日迎賓館に帰還するから、メンバーは入れ替えていいよ。その段取りは司令官たちに任せるね。プラダーナ戦も長期戦になるから、数か月はこういうローテンションでの戦いがあると思うよ。武器は今ある素材で準備していくから、そこはチャック達と相談して」
「え? ララ王女殿下、近衛隊も五十ですか? 迎賓館の警備だけですから、九十名は毎日参加可能です!」
「分かった、分かった。じゃあ、五十から八十くらいの間で調整して。休みの日も必要だからね」
「ララ様、パラディソの街だけでなく、サン・ミラージュ国内の兵力を落とし過ぎるのは良くありません」
「うーん、そうだね。各司令官、その辺も自分たちで考えてね。司令官が遠征に同行するのは許可するけど、その場合、代理を立てて置くとか、ケアはしておいてね。出発は明後日にしよう。明日は小隊長陣集めてブリーフィングね」
「「「は!」」」




