キール兄弟戦決着
(なるほど…確かに弟さんをすぐに倒すのは得策ではありません……)
(そうですね…一刻も早く処分したいのですが、それならば仕方ありませんね……
それにしても喚き声が鬱陶しいです…やっぱり消しましょうか……)
(!?…ダメですよ!)
事情を聞き、私とユキナはフィルちゃんがトドメを制止した理由が分かりましたのに、弟さんの喚き声が大きすぎたのか、再びユキナがトドメを刺そうとします……
(ユキナが我慢出来なさそうなので、とりあえず弟さんはこのまま置いといて、師匠の援護に行きますか?)
(それは無理ね…あのまま放置してるとあの男退場するわよ)
(なぜでしょうか…?)
(腕や脚が切断されたままだと継続ダメージが入るからよ)
(そんなシステムがあるのですね……)
(あれ?…弟さんのHPそろそろ無くなりそうですが……)
(あら本当ね…)
(すぐに回復しないと!)
『クイックヒール』
「…なんで敵である僕を回復したの?」
あっ!…確かに…端から見ると敵に回復するのはおかしいですね…
でも、正直に伝えてるとあの女性の方達が危険です……
さて、どう答えましょう…?
「え、えっと……その…あなたが痛そうだったので……」
私は悩んだ挙げ句、良く分からない返しをしてしまいます…
「あはは…なにそれ……君…面白いね~
特別に僕の女にしてあげるよ」
ザシュッ!… 「ぎゃっ!……」
「えっ?……ユキナ!何をしているんですか!?」
「舐めた事を言っていたので思わず……」
ユキナの表情を見る限り、わざとではなさそうですが……
衝動的に脚を切断するなんて……
「もうっ!…ユキナ気をつけて下さい!…『ハイヒール』」
「やっぱり君…僕の事が好……」「しーっ!」
「また余計な事を言うと、ユキナに斬られちゃいますよ!」
「……」
私が口に人差し指を添えて忠告すると、弟さんも分かってくれたようでコクコクと首を縦に振ってくれました。
顔が少し赤くなっていたのと、頷くスピードが早かったのがちょっと気になりますが、
恐らく私の必死さが伝わって全力で頷いてくれたのと、振りすぎて体温が上がったせいで顔が赤くなったのでしょう。
(ふぅ…何とかなりました……
忠告に頷いてくれたので、次からは妙な事を口走る事はなさそうです)
(……いや、あれは照れ隠しじゃないかしら…?)
(照れ隠しですか……?)
(シア…また一人落としちゃったわね……)
(どういう事でしょうか……?)
(お嬢様は知らなくて大丈夫です!)
(……)
むー…ユキナは、また私を子供扱いしてます……
(それより今後の動きだけど…シアとユキナさんはパンダさんを援護してあげて。
私は頃合いを見てこの男を始末するから)
(私は構いませんが……)
(この男の始末は私が引き受けたいのですが……)
(ごめんなさい…ユキナさん。今回は私に譲ってくれないかしら?
それに援護に行くなら私よりもタンクのユキナさんの方が良さそうだし。)
(畏まりました。では、こちらはフィル様にお任せします。)
(ありがとう)
フィルちゃんがこの場に残ることが決まり、私とユキナは師匠の援護に向かいます!
「さて行ったわね…」
「残ったのが君一人か~♪」
「私じゃ不満?」
「いやいや…そうじゃないんだよ
3人がかりで来られたら面倒だったからね~」
「それで…? 脚を切断されたあなたに何が出来るのかしら?」
「脚かぁ…じゃあこれで『グロウヒール』」
へぇ…あの魔法は脚を生やす事が出来るのね……
「これで元通りだよ~♪
あの二人の代わりに君をいたぶってあげるね~」
「ありがたいわね…」
「何を言ってるの?…いたぶられるのに感謝なんて、君ってマゾなの?」
「違うわよ…ただ無抵抗な相手を倒してもつまらないから、そうやって万全の体勢になってくれて嬉しいのよ」
「?……意味が分からないや……」
「こう言った方が良いかしら。負けた言い訳が出来ないぐらいボコボコにしてあげる」
「へぇ…僕の事舐めすぎだよ!『トリプルクイック』!
でスピードを上げて、これでもくらえ!『ベノムペネトレイト』!!」
「はぁ…真正面から来るなんて…そちらこそ舐めすぎよ!」
「影花!!…『エレメンタルブースト』!」
「えっ!?…消えた?」
「宵月!!」
「ぼ、僕の腕がぁぁ~」
「うるさいわね…灰雪」
簡単に倒す訳にはいかないから、二刀で放つ"雪"の型の中で、浅めの斬撃を放つ灰雪で切り刻む……
「くっそー!『マッハリープ』!」
「逃がさないわよ『シールチェーン』!」
「なっ!?…移動阻害用のスキル!?…」
「逃げてないでかかってきなさい!」
「調子に乗るなー!『サイクロン』!」
あら、良い技持ってるじゃない……
エレメンタルブーストの効果も切れたし、ブレイクエッジで対処が最善かしら……
「轟月!!」
「えっ!?……」
思ったよりも簡単に斬れたわね……
さて、あの子達も見てる事だし徹底的に叩きのめしましょうか!
「細雪!!」
「くっ……」
『ハイヒール』
「なんで?……僕を回復するの?」
「あなたを徹底的に叩きのめす為よ」
「ひ、ひぃぃ……」
そこからはあまり語りたくないわね…
切り刻んでは回復のループを繰り返したせいで、あの男の精神が持たなかったみたい……
最終的にはピクリとも動かなくなっちゃった…少し反省しているわ……
でも、PKで名を馳せたって聞いてたからどれだけ強いのかと思ってたけど、全然大したことがなかったあの男が悪いのよ!
ステータス的にはタリアと同じぐらいだったと思うけど、PSが違いすぎるわね……
時間も稼げた事だし、そろそろトドメを刺してパンダさんの援護に向かわないとね。
……私の分残ってるかしら?
弟を処分し、キール兄の居場所へ向かうと、そこには先程の弟と同じように脚が切断された状態で倒れている兄がいました。
「えっと…ほとんど終わったみたいね……」
「私達が着いた頃には決着がついてましたね」
「パンダさん一人で倒したって事?」
「そうや。最初はちょっと苦戦したけど、ワンパターンやから終盤は勝負にならんかったで……」
「だから、少し微妙な顔をしているのね……」
「それもあるけど、主にアイツの暴言が鬱陶しいねん……ユキナさんが秒で脚切断するレベルや……」
「こっちでもそうなのね……」
「って事は向こうも同じやったんか……ユキナさんには絶対に逆らわれへんな……」
「何か仰いましたか?」
「な、なんでもありません!」
バカね…ユキナさんの事が好きなら黙ってたら良いのに……
相変わらずバカ正直ね……
「それでこの男どうするの?…そろそろ他のパーティーとエンカウントしそうだから早めに済ました方が良いと思うけど……」
「こっちも同じ意見や。フィルちゃんが来てから最終的に決めようと思ってたんや」
「そうなの…? じゃあ最後に一つやりたい事があるからちょっとだけ時間貰えるかしら?」
「大丈夫やと思うけど、念のためフェリシアちゃん空間把握たのむで」
「分かりました。『空間把握』」
「歩いて5分ぐらいの所から2パーティーがこちらへ向かっています!」
「5分か…フィルちゃん何分ぐらい欲しい?」
「3分も要らないわね」
「じゃあ好きにしてくれても構わんで。俺達は念のため周囲の確認をしとくから」
「ありがとう。じゃあ早速やるわね」
私はさりげなくカメラの位置を誘導しながら、倒れながらも喚き散らしているキール兄の元へ移動し話しかけます。
「無様ね」
「なんだとコラァァ!」
「あれだけ調子に乗っていたのに、そんな姿で倒れているなんて、無様としか言いようがないでしょ」
「てめぇ…絶対殺す!」
「あら怖いわね…でもそんな姿じゃあ、ただのハッタリにしか聞こえないわね」
「黙れ!…この試合が終わったら覚えとけ!」
「正々堂々と勝てないからって闇討ちでもする気?……
実力で劣っているって自ら宣言しちゃっているじゃない…本当に滑稽ね。」
「てめぇフィルって言うんだな…覚えたぜ!」
「だから何?」
「今日から徹底的に潰してやるよ!」
「やってみなさい。何度も言ってるでしょ…そんな姿で息巻いたってただのおバカさんだって」
「ッ!……てめぇは殺すだけじゃ済まないぜ!
あの正義づらしたクランみたいに、"ピー"して、"ピー"して、生きてきた事を後悔させてやる!
そしてあのクランマスターみたいに、現実世界でもとことん追い詰めて、"ピー"して、潰してやるよ!」
「ユキナさん…シアの情操教育に悪いからって"ピー"音をいれないでよ…」
「そうですよ!…あのお兄さんが何を言ってるか聞き取れませんでした…」
「証拠としてアレで十分でしょう?
お嬢様…あんな雑音気にすることはありません。
耳が腐ってしまいます」
「むっー…ユキナはまたそうやって私を子供扱いします…」
「お嬢様…決して子供扱いしている訳ではありません。
あの男が卑猥な事を言っていたので…
お嬢様卑猥な事を聞きたくないでしょう?」
「……はい。え、エッチな事は恥ずかしいので……」
「てめぇら!…何俺様の事を無視してやがる!
絶対にころ…」「うるさい!」「がはっ!……」
「……」
「あっ……つい…やってしまいました……」
「!?…ユキナさん……まあ良いわ。
証拠もある程度揃ったし、運営への報告と現実世界の罪状を明らかにしたら、あの男達も終わりでしょ」
トドメはユキナさんに持っていかれたけど、証拠の音声も取れたし、後はカデナさんとリベットさん、そして元正義の剣華のメンバーの証言があれば、あの男達のアカウントは消されるでしょ
現実世界での対応はお父様とお母様の伝を使って対応しましょう。
こうしてPK2人の凶悪な事件は、一先ず解決の方向に進みました。
最近フィルしか活躍していない気が……
主人公交代のお知らせ?…
でも、そろそろフェリシアの出番が増えてきそうです




