特訓開始です!
公式イベントに向けての特訓初日は、アーサーさん達とのトラブルもあり、ジーベルトに拠点を移した所で終わりを迎えました。
翌日、私達はジーベルトの近くにあるダンジョン『竜人の湿地帯』へ向かいます。
竜人の湿地帯は主にリザードマンが出現し、全20階層の上級者用のダンジョンだそうです。
そう言えば、私達ゲームを初めて1週間経っていないのに、上級者ダンジョンに来ちゃいましたね……
竜人の湿地帯に現れるリザードマンは、プレイヤーみたいに様々なロールとスキルを駆使する為、公式イベントの練習にピッタリと師匠が仰っていましたが、まさにその通りで、苦戦を強いられます……
「フェリシアちゃん、回復お願い!」
「すみません師匠。クールタイムがまだなので回復出来ません!」
「なんやって!?」
「一先ず私が繋ぐけど、回復量は少ないから被弾少なめでお願いね」
「お嬢様危ない!! ……お嬢様を狙うなんて許せません!」
「ユキナありがとうございます。私の為に怒ってくれるのは嬉しいですが、隊列が崩れてますよ……」
「ユキナさん! はよ戻ってきてくれー!」
「たかがリザードマン3体も相手に出来ないのですか…?」
「なんやて! ええわ。やったろうやないか!」
「パンダさん本当に3体を相手にしてるわよ……」
「戻りました。2体引き受け……あら、もう1体しかいませんね……」
「でも、パンダさんのHPも結構ヤバイわよ」
「クールタイム終わりました。
『ヒール』! そして『ヒーリングオール』!」
「助かる! これでトドメや!『リベンジスラッシュ』!」
ハァハァ……パーティーでの戦いは自分一人で戦うよりも何倍も疲れますね。
しかも慣れていないヒーラーは更に神経を使う為、かなり疲弊します……
「師匠申し訳ございません。私の回復量が足りなくて何度も危険な目に遭わせてしまいました……」
「ええで、それを克服する為の修行やからな」
「ありがとうございます。あっ…新しいスキルを獲得しました!」
「マジで!? どんなスキルや?」
「えっと……『ハイヒール』です!
あれっ……ハイヒール?って靴の事ですよね…?」
「……フェリシアちゃん、それってボケてるん?」
「えっ…?」
「シアの事だから、ボケてる訳じゃなくてただの素ね」
「……恐るべし天然。
フェリシアちゃん、それはヒールの強化版や。」
「……あっ、ハイ・ヒールって事ですね!」
「そう言うこと」
「これで回復手段が増えたので、次は安定すると思います。」
「まあ、安定したら次の階層いくけどな」
「えっ!?……もしかして師匠は意地悪さんですか?」
「意地悪さんて……
意地悪じゃないで。イベントまで時間が全然足らんのやで、ガンガン負荷かけないと成長しいひんで」
「そうです。絶対に勝たないといけませんからね!」
それから私達はリザードマンを沢山倒し、この日は3階層まで行くことが出来ました。
翌日も竜人の湿地帯に入り、リザードマンと戦います。
師匠が今日の目標は6階層と仰っていましたが、
私は8階層まで行く事を目論んでます。
ですが……
「また、ライトニングが来るわよ!」
「「「「ッ……」」」」
「ヒーリングオールがクルータイム中です!
全員を回復出来ないので、HPの危ないフィルちゃんから回復します!」
「くそっ!……水場でライトニングはヤバイ……
1箇所に固まってると感電で全員にダメージがいっちまう…」
「でも、離れると連携が取れないわよ」
「せやねん。だから手詰まりなんや……」
「とりあえず『インテリジェンスダウン』!」
「ライトニングがまた来ます!」
「ちっ!……しゃあないな…」
「グッ……」
「!?……感電で全員にダメージがいくのを避ける為とはいえ、よくライトニングに突っ込めるわね……」
「でも、師匠だけ回復したら良いので、大分楽になりました。『ハイヒール』!」
「中々男らしい所もあるじゃないですか」
「!…しゃあ!」
「ユキナさんに褒められたからって、調子に乗ってヘマしないでよね!」
「分かっとるわ!」
今回は師匠の機転に助けられました。
パーティーの全体回復がヒーリングオールしかないので、被弾が増えると回復が間に合いませんね……
特訓2日目は結局6階層までしか行けませんでした。
悔しいです……
特訓3日目も、お馴染み竜人の湿地帯です。
今日の目標は8階層だそうなので、私はこっそり10階層を目標に頑張ります。
「ちょ!……リザードマン沸きすぎやろ!」
「本当に何体いるのよ!」
「無限に出てきますね……」
「モンスターハウス的な所やな……撤退するで」
「後ろに回り込まれてますね」
「はぁ!?……てかユキナさん何でそんな冷静なんや?」
「焦っても仕方ないかと」
「その通りやけど……」
「後ろのモンスター片付けて、さっさと撤退するわよ」
何とか撤退出来ましたが、武器と防具の耐久値の回復と、ロールの付け替えの為に一度ジーベルトに戻ります。
「何とか撤退出来て良かったわね……」
「ホンマにな……」
「それで、耐久値の回復とロールの付け替えの為にジーベルトまで戻った訳だけど、防具も武器もあまり耐久値減ってないわね……」
「マジで!? 俺半分ぐらいやねんけど……
流石、アマノとマーガレットの渾身の武器と防具やな」
「ええ、素晴らしいわね。それにこの子も段々強くなってるわ」
「「いいな~」」
「パンダさんは兎も角、シアまで?」
「だって、黒雪使ってないもん」
「もんって……
確かにシアはずっと回復に追われてるものね……」
「でも今だけの辛抱です! イベントが終わったらこの子と一緒にモンスターを沢山倒して、成長させてあげるので!」
「そうね……その時は付き合うわよ」
「ありがとうございますフィルちゃん!」
「そう言えば、その子の名前はなんて言うのですか?」
「この子の名前は『双緋桜』よ」
「双緋桜……もしかして、鞘の桜の模様と赤い刀身、それが2本あるからでしょうか?」
「正解よ。」
「可愛い名前です。私も杖が出来たらまた名付けてあげないとですね。」
「あっ!…ロールの熟練度全部100%になってます!」
「相変わらず早いなー」
「それで、何のロールに付け替えるん?」
「えっと……新しく増えたのが、プリーストと牧師と衛生兵なので、これらをセットしてみます。」
「まだ上位のロールはゲット出来ひんかったか……
まあ、初めて1週間未満でゲット出来たヤツは今までおらんけどな……」
特訓3日目は結局7階層止まりでした。次こそは必ず……
特訓4日目、「今日は10階層まで行きましょう!」と師匠が目標を決める前に言うと、なんと採用されちゃいました。
昨日、全力で撤退してる時にモンスターを沢山倒した事と、ロールの付け替えにより、スキルをいっぱい獲得しました。
何と6つです。6つですよ!
【キュア】
【キュアオール】
【クイックヒール】
【プロテクション】
【ヒールサークル】
【エンドレスト】
キュア系はヒールとほとんど同じですね。若干遠くまで回復が飛ぶようになりました。
クイックヒールはクールタイムが普通のヒールの半分しかないので中々重宝します。
プロテクションは対象のDEFを上げるみたいです。
ヒールサークルは5mほどの円の中にいる味方を回復します。
エンドレストは師匠も持っている凄いスキルで、なんと1つのスキルのクールタイムを無くしてくれます。
エンドレスト自体のクールタイムが10分と長めで、同じスキルに連続して使えない制限はありますが、特殊なスキル以外のクールタイムを無視できるのは凄いです。
ロールを付け替えた事により、昨日よりも格段に強くなったので、10層目まであっという間に到着しました。
このままもっと上の階層まで目指せるんじゃ…と考えていると、大きな広場を発見しました。
「あれは……もしかして11階層の階段では?」
「多分そうやけど、その前にボス戦をやらなアカンやろな」
「ボス戦…でしょうか……?」
「そうや。あそこにいるのはリザードマンジェネラルや。
俺は戦ったことはないけど結構強いらしい」
「師匠でも戦ったことがなく、噂では強いモンスター……
私は戦ってみたいですが、フィルちゃんやユキナはどうですか? 」
「私はお嬢様の意思を尊重します。」
「良いんじゃないかしら。今日は順調すぎて物足りないのよ」
「分かりました。師匠、戦ってみても良いでしょうか?」
「ああ、俺も戦ってみたいしな!」
「では、参りましょう!」
リザードマンジェネラルの体長は普通のリザードマンの2倍近くあり、立派な鎧と剣を装備しています。
ジェネラルの横には2体のリザードマンが控えており、
剣を持っている事から恐らく戦士系のロールをセットしていると思われます。
「ギャャャオ!!」
ジェネラルが私達に気付いたようで、お供のリザードマンと共に向かってきます。
「フィルちゃんはお供のリザードマンを頼む。
ユキナさんジェネラルのヘイト稼いでくれ!
フェリシアちゃんは適宜回復とフォローよろしく。」
師匠は私達に指示を送ると、ジェネラルの方へ向かいます。
「気休めだけど、『アタックダウン』、『ディフェンスダウン』!」
「いえ、フィル様助かります。『挑発』、『スポットライト』!」
スポットライト……ユキナが新しく覚えたスキルで、全体のヘイトを使用者に集めるスキルです。
あれ?……スポットライト使っちゃうと、お供のリザードマンのヘイトも持っていてしまうのでは……?
「「ギャオ!」」
思ってた通り、お供のリザードマンもユキナ目掛けて突撃してます。
「ユキナ!」
「大丈夫ですお嬢様。 『フルガード』、『ファランクス』! フィル様、今です!」
フルガードは10秒の間、DEF値を10倍にするスキルで、盾で受けてる時だけの条件がありますが非常に強力です。
そのフルガードでジェネラル含む3体の攻撃を完全に受けきって、ファランクスでリザードマン2体を大きく吹き飛ばします。
ファランクスは盾で完全に防いだ時にダメージと衝撃を相手に返すスキルで、ジェネラルは重量の関係で仰け反る程度でしたが、リザードマンは吹き飛ばす事が出来たようです。
吹き飛んだ隙をフィルちゃんは逃しません。
「ありがとうユキナさん。『エレメントエッジ』!」
スキルを発動した瞬間フィルちゃんの刀が虹色に光り、体勢を崩してたリザードマン1体をあっという間に倒しちゃいました。
「ユキナさんナイス! 『ソウルキャリバー』!!」
ユキナのファランクスにより、仰け反っていたジェネラルの胸元に向かって、師匠がソウルキャリバーを放ちました。
このスキルは相手のHPが多いほどダメージが増すそうで、ジェネラルのHPが3割も削れています。凄いです……
「ギャャャオ!!」
ジェネラルもタダでやられている訳ではなく、
師匠とユキナに向かって剣を振り回してきますが、
ユキナは反撃を許しません。
「そのような単調な攻撃…『パリィ』、『シールドバッシュ』!」
パリィでジェネラルの剣を大きく弾き、シールドバッシュでジェネラルの上半身に衝撃を与えることで、ジェネラルを転倒させる事に成功します
「ナイス!!『バーサク』、『ヒートエッジ』!!」
バーサク…30秒間ATKを大幅に上げる代わりに、
3分間DEFの低下とHPの回復が不可になる使いどころが難しいスキルです。
そこに火属性のダメージをプラスするヒートエッジで斬りつけます。
ジェネラルはHPが2割を切った所で、ダウンから回復し、大きな咆哮をあげます
「ギィャャャャオ!!!!!!!!!」
ジェネラルの咆哮は想像以上に煩く、耳元でクラッカーが鳴ったように、耳がキィィンとし、思わず耳を塞いでしまいます。
耳を塞いだ師匠とユキナの隙をジェネラルは逃しません。
くっ……しかもこれは恐慌状態ですね……
恐慌状態は暫く何もする事が出来なく、無防備になってしまう最悪の状態です。
ですが、私にはこのスキルがあります!
「『リトルブレイブ』! 皆さん大丈夫ですか?」
「フェリシアちゃんマジ助かるわ。あのままじゃなぶり殺しやったで……」
リトルブレイブ…罪禍の古城遺跡で覚えてから一度も使ったことがないスキルでしたが、このスキルにはパーティーの恐慌状態を解除する力があり、この場面を切り抜ける事が出来ました。
ただ、師匠はまだバーサクのデメリットで回復を受け付けず、DEFが下がったままなので、ピンチであることには変わりません。
「師匠、『プロテクション』、『エンドレスト』、
ユキナも『プロテクション』、それと『『ヒールサークル』、『リジェネレーション』!」
ここが勝負どころだと思い、師匠にはDEFを上げるプロテクションを使い、
そして、エンドレストでプロテクションのクールタイムを無くし、ユキナにはプロテクションでDEFを上げ、
ヒールサークルでHPを回復し、さらにHPが少しずつ自動で回復するリジェネレーションも使います。
ダウンから復活したジェネラルの攻撃は苛烈を極めましたが、ユキナが上手く捌いてます。
ただ、ジェネラルの体長が大きい事もあり、攻撃範囲も広く、徐々に師匠とユキナのHPが減っていきます。
「『クイックヒール』、『ヒール』!」
ユキナは回復出来ますが、師匠はまだ回復出来ないのでHPが2割程になってしまいます……
バーサクのデメリットが消えるまで約30秒……
このままでは師匠が持ちません。
この状況を打開したのは、フィルちゃんでした。
「こっちよ!『マッドネススピア』!」
もう一体のお供のリザードマンを倒したフィルちゃんがジェネラルの後頭部へマッドネススピアを放ち、
ジェネラルのヘイトがフィルちゃんに向かいます。
「フィルちゃん、マジでナイス! ジェネラルよHP削ってくれてありがとうな。これで終いや『リベンジスラッシュ』!」
師匠の攻撃はジェネラルの残りHPを全て削り、
遂にリザードマンジェネラルを倒すことが出来ました。
「勝ちました!」
「勝ったわね」
「お疲れ様です。お嬢様、フィル様。」
「ダウンからの復活が、思ったよりも早かったわ……
結構危なかった…フィルちゃんのお陰で何とかなったけど、スマンの……」
「私はリザードマン1体と戦ってただけなのよ。
それぐらいフォロー出来るわよ」
「フィルちゃんカッコいいです。」
「確かにカッコいいでー」
「ふんっ、これぐらい当たり前よ。当たり前の事で褒められても嬉しくないわね」
そう言いながらも、フィルちゃんの頬っぺたが少し赤くなってます。照れてるフィルちゃん可愛い……
「きゃ!……シア。急に抱きつかないでよ」
「えへへ、ごめんなさ~い」
「絶対悪いと思ってないわね……」
「もう!……歩きにくいから離れて。
まだ時間もあるし次の階層にいくんでしょ?」
「はっ!…そうでした。次の階層目指しましょう!」
ボスを倒してテンションが上がった私達は、その日13階層まで進む事が出来ました




