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慈愛の聖女  作者: クー
第2章 第三回公式イベント~予選編~
34/67

絶対に負けられません!


「とりあえず、この近辺では熟練度も上がりにくいから、アインベルグを出てモンスターが強い所にいこうか。」


「モンスターの強い所……それはどこでしょうか?」


「『ジーベルト』って所や。今日は街まで行くのが目標やな」


「ジーベルト……ここから遠いのでしょうか?」


「ここからやと2時間かからんな。

1時間ぐらい行った所に『ドライベン』って街があるからそこに行って、ドライベンのポータルゲートから『ゼクスディア』の街まで飛ぶんや。

ゼクスディアからは30分ぐらい歩くとシーベルトに到着するで」


「では、早速ドライベンまで行きましょう!」


「その前に……ゴメン!  フェリシアちゃん。

この4人パーティーやと、フェリシアちゃんはヒーラーやってもらわなアカンねん。」

「それでな、爺さんの所で薙刀を受け取ってたばかりやけど、ヒーラーはATKよりもINTが必要やから、INTが上がる杖とかに変えてほしいねん……」


「がーん!……黒雪は暫く使えないのですね……」


「ホンマにごめんな」


「師匠のせいではありませんよ……

元々ヒーラーを目指してたので、丁度良い機会と考えます。」


「すまんな……

それで、もう一回爺さんの所に戻って、杖を依頼するか、出来合いの杖を買って欲しいんや。

他の店で買うより絶対に良いもんやからな。」


「別れたばかりで恥ずかしいですが、もう一度お爺様の所に行ってきます。

皆さんは先に進んどいて下さい。」


「お嬢様。私も同行します。」


「じゃあ、私とパンダさんは先に進むわね。

エスコートよろしくね、パンダさん」


「お、おう……」


気恥ずかしい思いを抱えながら、私とユキナはお爺様の所に戻るのでした……




お爺様に呆れられた顔をされながらも、杖の依頼は完了し、完成するまでの繋ぎでINTが40上がる杖をお借りしました。

なお、今回は素材の持ち合わせが無いらしく、暫く時間がかかるそうです。


お爺様は今回も料金をタダにすると仰いましたが、無理やりローンで支払う約束を交わしてきました。

料金は私が決めて良いそうなので、感謝を込めて目一杯高くするつもりです。




武器の依頼を終えた私達は、フレンド画面からフィルちゃんと師匠の居場所を確認し、合流を急ぎます……






















パンダさんと少しお話をしたいと思い、シアとユキナさんの2人を変態の所へ行かせ、こうして2人になったのだけど…


「ねぇ、パンダさん」


「な、なんや……」


「なんでそんなに挙動不審なのよ……」


「なんかフィルちゃんから圧を感じたからや……」


「……特に怒ってるわけではないのだけど……

少し聞いてもいいかしら?」


「お、おう。俺が答える事なら……」


「回りくどいのは好きじゃないから単刀直入に聞くけど、ユキナさんの事好きなの?」


「ゲホッ!……き、急になんなん……」


「言葉のままよ。それでどうなの?」


「いきなり言われてもな……正直分からんのや」


「男ならハッキリしなさい。好きなの?嫌いなの?」


「い、いやその2択はズルいやろ。」


「いいから答えなさい」


「怖っ……そりゃ嫌いやったら色々教えとらんし、同じパーティーでやってないやろな…」


「じゃあ好きなのね」


「暴論すぎる!……もちろん人として好きやけど……」


「そんな模範解答はいらないわよ。

もし、ユキナさんとお付き合い出来ると考えたらどう思うの?」


「……あんな別嬪さんと付き合えるならそりゃ嬉しいやろ。

でも、俺なんかが付き合えるワケないやろ。釣り合ってないわ!」


「そんな御託はどうでもいいの。

肝心なのは、あなたがユキナさんと付き合いたいかどうかよ。」


「付き合いたいに決まってるやん!」


「それでいいのよ。今後、私の出来る範囲でサポートをしていくから頑張りなさい。」


「俺とユキナさんが付き合ったとしても、フィルちゃんにメリットなさそうやけど、なんでそこまでしてくれるんや?」


「理由は2つあるわね。

1つ目はシアの貞操を守るためよ。最近、ユキナさんの愛情が暴走し過ぎているので、別の事に目を向けないとシアが食べられちゃいそうなのよ……

2つ目はユキナさんの幸せの為ね。ユキナさんは私にとっても姉のような存在だから、妹として幸せになって欲しいわ」


「理由は分かったけど、ユキナさんを幸せにするには、そ、その…俺でいいんか?」


「うーん、確かにあなたはパッとしないし、デリカシーもないし、お金も…あまり持ってはなさそうね」


「ガハッ!……フィルちゃんは俺の事嫌いなん……」


「でも、誠実な人だとは思うわね。」


「……ありがとう」

「フィルちゃんって思ってたよりも、ずっと世話焼きやな」


「長年、シアと親友やってると、勝手にそうなるのよ……」


















「くしゅん……」 


「お嬢様。もしかして風邪でしょうか? 

私は医者の手配をしますので、お嬢様はすぐにログアウトして安静にして下さい。」


「ユキナ、大袈裟ですよ……特に体調が悪いとかではありません。」


「では、先ほどのくしゃみは……?」


「誰かが噂をしているのかもしれません……」


「確かにお嬢様の愛らしさなら、噂の一つや二つぐらいされてそうですね……

ほら、あちらの男性プレイヤーもこちらをガン見してますよ」


「うっ……確かに見られてますね……」


「フードが無くなって、ハイドが使えませんから、

お嬢様の輝かんばかりの美しさが隠しきれませんね……」


「ユキナ。恥ずかしいのであまり言わないで下さい……」


「恥ずかしがっているお嬢様も、大変愛くるしいですよ」


「もう! そろそろシアちゃん達に追い付くので急ぎますよ!」



















「シア達、結構近くまで来てるわね。あそこのベンチで少し待ちましょうか」


「せやな」


シア達が来るのを近くのベンチで待とうとすると、

甲高い声が聞こえて、眉を少しひそめます。


「あー! いたー!!」 

「アンタ不死身とか言われてるプレイヤーでしょ!

そっちの金髪はアンタの弟子ね。

丁度いいわ。アンタ達顔を貸しなさい!」


この女に礼儀というものを叩き込みたいわね……

初対面の人に指を差し、アンタ呼ばわりをして、一方的に命令する……一体どんな教育を受けてきたのかしら?


「この可愛い私の命令よ。拒否は許さないわ」


言うだけあって見た目はそこそこ可愛いわね。

勝ち気な瞳で、人を見下したような表情、

髪はツインテールで、売れないアイドルをやってそうだけど……

年齢は同年代ぐらいかしら…? 

同年代にこんな生意気な子はいなかったから、ちょっと新鮮ね。


そんな風に考えていると、その女の後ろから1人の男性プレイヤーがやって来た。


「君たち、すまないね。

エリサ、初対面の方に失礼だよ。謝りなさい。」


「だって師匠……」


「謝りなさい。」


「ごめんなさい……」


「やっぱり、お前アーサーか?」


「僕の事を知ってくれてるなんて光栄だね。不死身のパンダさん」


「ッ!……お前の事を知らんプレイヤーはほとんどおらんやろ」


ちょっと待って、アーサーって前にパンダさんが言ってた、最強のプレイヤーよね?

確かに立ち姿からも強そうな感じがひしひし伝わってくるわね……


「師匠の事をお前って呼ぶなんて、アンタ何様のつもりよ!」 


……その言葉返してあげるわよ!

人をアンタ呼びしてる子に指摘されて、パンダさんも固まってしまったわね……



「お待たせしました。フィルちゃん、師匠」


良いタイミングなのか、悪いタイミングなのか判断つかない場面で来たわね……


「取り込み中だったでしょうか? だとしたら申し訳ございません。」


「シア。大丈夫よ。なんかこの女が喧嘩吹っ掛けてきただけだから」


「え、えーと、どういう状況でしょうか?」


「丁度いいわ。そこの銀髪もよく聞きなさい。

ちょっと掲示板でチヤホヤされてるからって調子に乗るんじゃないわよ!」


「掲示板……何の事でしょうか?」


「うるさい! そこの銀髪や金髪が掲示板で可愛いなんて言われてたのよ。

でも、アンタ達より私の方が余裕で可愛いわよ!」


……この女は何を言ってるかしら?

シアの方が圧倒的に可愛いに決まってるでしょ


「確かに貴方も可愛いですが、ユキナやフィルちゃんの方が可愛いと思います!」


「ぶりっ子ぶるんじゃねぇよ、このブスが!」


「ハァ? お嬢様がブス? 消えたいようですね……」


大変不味いわ! ユキナさんを止めないと……

いや、別にヤっちゃってもいいわね


「なによ何か文句ある…フギャ!」


「エリサ。口が悪い。謝りなさい。」


「ご、ごめんなさい……」


なにこれ……コントなの?

でも、あのアーサーって男、やっぱり只者じゃないわね。ユキナさんの殺意に反応してあの女を止めたわね。


「とにかく、調子に乗ってるアンタ達を今度のイベントでボコボコにしてあげるわ。

あれ? あのユーピョンとか言うオバサンはいないのね?

オバサンなんて老害は、不要だから切り捨てたのかしら?」


「えっ?……貴方は何を言ってるのですか?」


あっ……シアがマジギレしてそうね……

まだフェーズ1だから止められるけど、あの女が火に油を注ぎそうで危ないわ。


ユキナさんとアイコンタクトを交わし、シアの鎮火を考えていると、案の上、あの女が燃料を投下していく


「な、なによ、事実でしょ? 

そこの不死身が若い女だけでパーティー組みたくて、オバサンを追放したんでしょ?」


「……もういいです。その不愉快な口を閉じて下さい」


「アンタ生意気な……ひぇ…」


シアの殺気をあの女も感じたようね……

とりあえずあの女は置いといて、まずはシアのケアね!


私とユキナさんがシアの方へ向かうと、パンッと大きな音がし、それを見ると、あのアーサーとか言うプレイヤーが柏手(かしわで)を打った所でした


「この不肖な弟子にかわり、謝罪させてもらうよ。

本当に申し訳ありません。」

「出来れば、金髪の子――確かフェリシアとか言ったかな? 殺意を抑えてもらってもいいかな?」


これを機に私がシアを抱き締め、ユキナさんが頭を撫でて殺気を鎮めます。


「フィルちゃん、ユキナ……ごめんなさい…」


「殺意を抑えてくれねありがとう。」

「お互い(わだかま)りが残るのは本意ではないよね?」


「確かにな。No.1プレイヤーのお前とキグシャクするのは勘弁やで」


「じゃあ、不肖の弟子が言ってたように、今週末の公式イベントで決着つけるのはどうだろうか?」


「決着をつけるもなにも、一方的にその女が喧嘩を売ってきただけよ。」


「そうだね。でも、そちらもこの子をキルしようとしたよね?」


「未遂だわ」


「その通りだ。でも、こんな街中で殺気をぶつけてきたのも事実だ」


「結局どうしたいのよ?」


「僕はね、勝負がしたいだけなんだ。特に強者との戦いは良い」


「バトルジャンキーってことね」


「いやいや弱者に興味はないよ。興味があるのは、君達みたいな強者だけだよ。」


「このマークの通り、私達は初心者よ」


「ゲームを初めて2日目で、罪禍の古城遺跡の6階層に到達出来る人を初心者とは言えないよ」


「ッ……なんで知ってるのよ」


「どこにでも目や耳はあると言うことさ。

公式イベントで君達が勝てば、願いを1つ叶えようか。

もちろん出来る範囲でだけど精一杯頑張るよ」


「私達が負けたらどうなるのよ?」


「特に何もないかな。

いや、待てよ……一方的な賭けは公平ではないから、君達が負けると、そうだな……4人全員うちのクランに入るのはどうだろう?」


「円卓の騎士に入れるって事かいな!?」

「お宅のクラン、入団者続出してるって聞いたけど、4人も入れる枠あらへんやろ!」


「君達の為なら、席なんていくらでも空けるさ」


「……」


「そもそも、貴方のクランになんか入りたくもないわよ」


「だから、君達の敗北の条件なんだよ」


「バッカじゃないの。円卓の騎士に入りたくないなんて……

トップを走るクランだから、いくらでも強くなれるのに。アンタ達には向上心がないわけ?」


「向上心はあるわよ。ただ、この男の下に付きたくないだけよ」


「プレイヤーの中で最強の男の下に付きたくないなんて、信じられない……」


「僕も嫌われたものだね……

それで、イベントでの対戦は受けてもらえるかな?」


「受けて立ちます!」


「周りにこれだけプレイヤーがいると僕達の勝負もほとんどのプレイヤーに広まってそうだね。

これは盛り上がりそうだ。」


この男…最初からイベントでの勝負が目的だったみたいね……

それで、あの生意気な女は上手く利用されたった所かしら


「じゃあ、イベントで相見(あいまみ)える事を楽しみに待ってるよ」


そう言い残すと、全プレイヤー最強の男は颯爽と去っていきました。


「絶対に勝ちましょう!」


「そうね。負けられない理由が1つ増えたわね」


「ユーピョンさんを侮辱した事を謝ってもらいます!」

それにフィルちゃん、ユキナ、師匠を侮辱した事もです!」


「お嬢様を侮辱したことを、心の底から後悔させてあげましょう……」


「絶対に勝たんとな!

さっさとジーベルトに行って、特訓や!」


「はい!」

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