可愛いは正義?
「あっ、パンダさんがログインしたみたいね」
あれから大蛇の森でモンスターを倒していると、フィルちゃんが師匠のログインを知らせてくれました。
「一度ヤラナイト村まで戻りますか?」
「そうね。丁度ユーピョンさんもログインしたみたいだし」
ヤラナイト村に戻ると、師匠とユーピョンさんが深刻そうに話をしていました。
「師匠、ユーピョンさん、こんばんわ。
深刻そうな表情ですが、どうなさいましたか?」
「フェリシアちゃんこんばんわ。
深刻ではないのだけど、私が仕事の関係で暫くの間、平日のログインが厳しくなっちゃったのよ」
「えぇっ!? そうなんですか!?」
「そうなのよ。あの禿げ部長め……急に案件持ってくるとか……そろそろ、やっちゃてもいいかも……」
ユーピョンさんが不穏な事を呟いてますが、くれぐれも犯罪だけはやめてください……
「……ユーピョンさんと会えないのは寂しいですが、仕事でしたら仕方ありません……
お身体にはくれぐれもお気を付け下さい。」
「ありがとうフェリシアちゃん。ホントにヤバくなったらあの禿げをやっちゃうから大丈夫」
「それは大丈夫とは言えないわね……」
「ユーピョンさんちょっとこちらに……」
フィルちゃんからもツッコミが入ります。
ちょっとユキナ! ユーピョンさんにバレないように報復するやり方なんて教えてはダメですよ!
そもそも何でユキナがそんな事を知ってるのですか……
「ユキナさんありがとう。でもやるなら合法的にしとくわね。
暫く体力が必要になるから、今日も武器と防具だけ受け取ったらログアウトするつもり」
「「「「「……」」」」」
「皆そんな顔しないで! 二度と会えない訳じゃないんだから」
「で、でも……」
「フェリシアちゃんの泣きそうな顔は、なんかイケナイ扉を開きそうなのでホントに勘弁してほしいわ……」
「ご、ごめんなさい……」
「平日がお仕事でしたら、公式イベントはユーピョンさんも参加出来るのではないでしょうか?」
ユキナがユーピョンさんに尋ねます。
そうです! ユーピョンさんは平日お仕事と仰ってました!
では、公式イベントのある日曜日は参加出来るのでは!?
「えっーと、ごめんフェリシアちゃん。
そんなキラキラした目で見られると言いづらいのだけど、日曜日も午前中は会社に行かないとダメなの。
だから予選開始の10時にこれないのよ……」
「では、ユーピョンさんには本戦だけ入ってもらうのはどうでしょう?」
「このイベントは始まってからパーティーメンバーの入れ換えは出来ないからそれはムリやな……」
「では、予選はユーピョン抜きの3人で頑張って、本戦はユーピョンさんに入って頂き、4人パーティーで行うのはどうでしょう?」
「確かに人数が4人より少なくても参加自体は可能や。
だから、3人パーティーで予選に出場し、本戦4人パーティーちゅう手もいけるけど、
予選3人でやるのもリスクはあるし、本戦もユーピョンさんが間に合うかの保証もないんやで。
それにもし、人数不足が原因で負けたらユーピョンさんが責任感じるんやで」
「ごめんなさい……自分の事ばかり考えて、ユーピョンさんの気持ちを蔑ろにしていました……」
「フェリシアちゃんは私の事を想って提案してくれたのでしょう?責める事なんてしないわよ。
それに、私が参加出来るように色々考えてくれたことが嬉しい」
「ユーピョンさん……」
「よしよし……
本戦の応援は早く仕事を終わらせて駆けつけるから、頑張ってね!」
「はい!」
「それで武器と防具の受け取りだけど、先にマーガレットさんの方に行くの?」
アインベルグの街に戻る最中、ユーピョンさんが尋ねてきます。
「そうですね。マーガレットさんからチャットが来ていましたので。
それに、お爺様は今、アインベルグに不在なので後の方が良さそうです」
「えっ?フェリシアちゃん、なんであの変態の場所が分かるの?もしかして……」
「はい。お爺様とフレンドですよ」
「お嬢様! なぜあの変態とフレンドになってるのですか!」
「だって…完成した武器を受け取るのに連絡手段がないと不便ですよね」
「……………………………分かりました。では武器を受け取ったらフレンド解除して下さいね」
「了承までの間の長さが、ユキナさんの葛藤を表してるわね……」
「ユキナ、それはお爺様に失礼ではないでしょうか……?」
「あの変態に失礼も何もありません。」
「!?……お爺様が可哀想です……」
「「「全然!」」」
ユキナ、ユーピョンさん、フィルちゃんはお爺様に冷たすぎる気がするのですが……
確かにちょっとエッチな所はありますが、そこまで悪い人ではないと思います
「あら、いらっしゃい」
「マーガレットさん。こんばんわ」
「チャットの通り、皆の装備出来てるわよ」
「ありがとうございます!」
マーガレットさんに案内され、奥の部屋に入ります。
すると、そこには色とりどりの着物があり、あまりの美しさに思わず無言で見惚れてしまいました……
皆さんも見惚れてたようで、暫く無言の時間が続き、まるで時が止まったかのように思えます。
「どう? これがアナタ達の装備よ」
「凄く綺麗です……」
「ええ、素敵ね……」
「これは素晴らしいですね……」
「ホントに綺麗……」
「そこまで言ってもらえると嬉しいわね。
まあ、アタシが魂を込めて作った最高傑作よ」
「男の俺から見てもこれは凄いな。
こんな手の込んだもん1日でよう出来たな……」
「徹夜で張り切っちゃった。」
「マーガレットさん、そんな無理しなくても……」
「アタシの情熱が止まらなかったのよ。気付けば朝で焦ったわ……」
「そんなことより、皆のイメージを考えて作ったから、一人ずつ渡していくわね」
「じゃあ、フィルちゃんからいくわね」
そう言ってフィルちゃんに着物と袴を渡します
その着物は淡黄色の生地に椿の花があしらわれており、袴はフィルちゃんの雰囲気にあった深い青色です。
着物も袴もそれだけで十分に綺麗なのに、フィルちゃんが着たらどうなるのでしょう...…
「本当に凄く綺麗ね……」
「名は着物の方が『空椿』で袴の方が『蒼燕』よ」
「空椿と蒼燕……こんなに素敵なものをありがとうございます。」
「気に入ってもらえて良かったわ。じゃあ次はユーピョンさんね」
ユーピョンさんに渡した、着物は橘の柄が目を引く紺色の着物で、袴の山吹色が明るいユーピョンに凄く似合いそうです。
これを着たユーピョンさんも凄く見てみたいです。
「手元で見ると更に綺麗ね……」
「名は着物の方が『海橘』で袴は『金糸雀』よ」
「海橘に金糸雀か……凄く気に入ったわ。マーガレットさんありがとう」
「ふふ、まだまだいくわよ。次はユキナさんね」
ユキナの着物は白地に大きな牡丹の花が映えるもので、袴も白地でしたが、着物の牡丹の花が凄く目を引く為、上下の色が白でも薄い印象はなく、華がありそうです。
ユキナの銀髪も相まって、凄く似合いそう
「名は着物の方が『霧牡丹』で袴は『白鶴』よ」
「細部までしっかり作り込まれて素晴らしいです。
ありがとうございます。」
「あらやだ、クールな感じも良いけど、笑顔も可愛いわねアナタ。
じゃあ最後にフェリシアちゃんね」
「はい! よろしくお願いします。」
「フェリシアちゃんのはこれね
名は着物が『星桜』で袴が『緋凰』よ」
星桜は名前の通り、桜の花が星のように散りばめられていて、お昼にフィルちゃんが着ていた着物に少し近く、凄く綺麗です。
袴は緋の文字が入るだけあって、まるで炎が固まり色づいたようです。
星桜も緋凰もとても可愛いくて綺麗……今から着るのが凄く楽しみです。
「可愛くて綺麗です。マーガレットさん、ありがとうございます。」
「どういたしまして。じゃあ着る前に性能を少し説明するわね」
「皆それぞれ装備をタッチしてみて」
マーガレットさんに促され、着物と袴をタッチすると、
凄まじい数値が出てきました。
【星桜】(DEF+155)(MID+108)
Skill:ステラベール
【緋凰】(DEF+102)(MID+78)(INT+48)
Skill:韋駄天
「……これ現時点でトップクラスの防具やねんけど」
「す、凄く強いです……」
「凄く強いけど、凄く高そう……」
「ちょっと頑張り過ぎちゃった。それに一人一人性能が違うわよ。」
「いやいや、ちょっとどころやないで!」
「可愛いから良いじゃない。よく言うでしょ、可愛いは正義って」
「…………もうええわ。それでかなり高そうやけど、いくらなん?」
「値段を先に聞くなんて無粋ね。まずは着てみないとね」
「性能知ってから、着るのが怖くなったんだけど……」
「ユーピョンさんの気持ちも分かりますが、私は着てみたいです。」
「そうね。こんなに綺麗なものを着ないなんて勿体ないわ」
「じゃあ、アタシと不死身ちゃんは部屋の外に出とくから可愛く変身してね」
そう言うと、師匠とマーガレットさんは部屋の外に出ていってしまいました。
「着付けが必要かと思いましたが、装備欄をタップするとすぐに出来そうですね」
「あ、ホントだ」
「こう言った所は、ゲームならではね」
「師匠達を待たせてる事ですし、すぐに着替えましょう」
装備を変更が終わり、周りを見てみると、色とりどりの華が視界を埋め尽くします。
「わっ、皆さん凄く綺麗です。」
「フェリシアちゃんも凄く可愛いわ」
「ありがとうございます。」
「これをパンダ君に見せるのは勿体ないわね……」
「それは師匠が可哀想です。お待たせしてるので、そろそろ御披露目しましょう」
「師匠、マーガレットさん、もう入ってきても大丈夫ですよ」
私が呼び掛けると、師匠とマーガレットさんが部屋に入ってきました。
すると2人ともピシリッと固まってしまい、その場から一切動きません……
「あらやだ、想像してたよりも何倍も美しいわ」
すぐにマーガレットさんは復活しましたが、師匠はまだ固まったままで、それを見たユーピョンさんが揶揄います。
「あれ、パンダ君はもしかして私達の着物姿に見惚れちゃった?」
「…………はっ! 正直見惚れてたわ……」
「いや、普段から綺麗やと思ってたけど、服一つでこんなに変わるんやな……
皆ホンマに綺麗や」
「そんなにストレートに褒められると照れるわね……」
師匠の目線が心なしかユキナの方を向いてるような……
フィルちゃんが言ってた事に引っ張られているのかもしれませんが、今のユキナは神秘的な美しさがあるので、多分当たってる気がします
私がじっと見つめたせいか、師匠はわざとらしく話題をそらします。
「これで、公式イベントに向けてかなり強化されたな!」
「そうね。ここまで能力値が高いとは思わなかったわ」
「いやそれもあるけど………………」
師匠が何やらゴニョゴニョと話してますが聞こえません……
師匠をニヤニヤ見てたマーガレットさんが代わりに答えます
「不死身ちゃんは、アナタ達ぐらい可愛いと大半の男性プレイヤーは攻撃出来ないから、有利になるって言いたいのよ」
「お、おまえ……」
「あら間違ってたかしら?」
「いや間違ってないけどさ……」
「へぇ、パンダ君照れてるんだ」
「なっ!……」
「その反応だけで十分よ」
「でも、アナタ達ホントに綺麗ね。
フィルちゃんは袴の深い青がクールな感じを出して、芸術品のような美しさを際立たせているわね。そして着物の赤い椿がアナタの高潔さと愛情を表していて素敵ね。」
「ユーピョンさんは着物が更に大人の魅力を引き上げてるわね。それでいて、袴がアナタの活発さを失わせておらず、躍動的な色気が素晴らしいわ。」
「ユキナさんは、圧巻ね……上下白色ってかなり攻めたのだけど、その綺麗な銀髪も相まって凄く神秘的な感じに仕上がってまるで、女神のようね。」
「フェリシアちゃんは……何て言うかヤバいわね。
着物がアナタの可愛らしさを何倍も引き上げていて、袴の赤が美しさを表現しているわ。まさに可愛いさと美しさの共演ね。」
「「「「……」」」」
「お前よくそんな恥ずかしい事言えるよな……」
「あら、女性が着飾ったら正直に褒めるのは当たり前よ。
それに思ってるだけじゃなく、声に出さないとないとモテないわよ」
「……」
「それでも、マーガレットさんは褒め過ぎ。
普通に照れちゃうわよ」
「もう、それで代金はいくらかしら?」
ユーピョンさんが恥ずかしさを紛らわせる為か、値段について触れます。
「聞きたいの?」
「もう腹は括ったわ!」
「ふふ、逞しいわね。宣伝用のスクショで割引いて、
全員1,000万ルピね」
「1,000万!?……普通に驚いたけど、このスペックでは安すぎない…?」
「ユーピョンさん正解やで。
俺の見立てではスペックだけでも桁1つ増えるな。
しかも、デザインも素晴らしいから更にその倍はいきそうやな……」
「2億ルピですか……確かにこの可愛いさだと納得ですね。」
「いいえ、始めに言った通り1,000万でいいわよ」
「それだとマーガレットさんが赤字なのでは……?」
「普通に赤字ね。でも良いの、アナタ達だからこそこれだけ素晴らしいものが出来たのよ。
金額に納得が出来ないのであれば、今週末の公式イベントで宣伝の為に大暴れしてね。」
「マーガレットさん……分かりました!
私達は公式イベントで優勝します!」
「ふふ、私も応援に行くから頑張ってね」
「フェリシアちゃんよく言った。イベントまで猛特訓やな!」
「はい!」
「でもその前に、お爺様から武器を受け取らないといけません」
「お爺様?」
「ああ、あの神匠アマノや」
「えぇ!?……あのお爺ちゃんに武器作ってもらってるの?
凄いわね……」
「縁があり、作ってもらいました。
あっ、お爺様からメッセージが来ました。昨日の広場で待ってるそうです」
「よっしゃ早速広場へ向かうで。ありがとうなマーガレット」
「マーガレットさん。こんな素敵な着物を作って頂いてありがとうございます。
必ず優勝しますので見ててください!」
「頑張ってね」
私達はマーガレットさんに感謝と代金を支払い広場へ向かうのでした……




