お母様は無敵です……
久し振りの現実世界メインのお話です……
香織マザーが大暴れしたせいで、ゲームのお話までいきませんでした……
ラピス岳でルピ稼ぎをした翌日、朝早くに目が覚めてしまいました。
昨日、別れ際に桃花ちゃんからお誘いがあり、久し振りに桃花ちゃんの家に遊びに行くのが楽しみで、早くに目が覚めたのかもしれません……
この事が静華や桃花ちゃんに知られると、子供っぽいとまた揶揄われちゃうので私だけの秘密です
布団の中で暫くじっとしていましたが、目が冴えてしまい諦めて布団から出ます。
着替えを済まして、リビングへ向かう階段を降りてると、静華と鉢合わせしてしまいます。
「おはようございますお嬢様。今日はいつもよりお早いですね」
「お、おはようございます静華。鍛練場でちょっと素振りをしたいと思いまして……」
咄嗟に言い訳を考えましたが、中々上手い言い訳じゃないでしょうか。
心の中で自画自賛をしていると、次の静華の言葉でピシリと固まってしまいます。
「それにしては鍛練に向かない服装ですが?」
「あっ…………そ、そうです! 服装に拘らず体を動かすことで、心身ともに磨かれ武術の真髄が身に付くのです!」
私は何を言ってるのでしょうか……
焦ったあまり、良く分からない事を口走ってしまいます
「服装で武術の真髄が身に付くのですか……?」
ごもっともです……
それでも尚、私は苦しい言い訳を続けます。
「そうです! 服装の乱れは心の乱れです。
心を養う為には服装と言う外面も気を付けなければならないです。」
「えっと……外面に気を付けないといけないのでしたら、
やはり鍛練の時はそれに適した服装じゃないといけないのでは?」
「………………静華。細かい事は気にしてはいけませんよ!」
「これは大変失礼致しました。」
「分かってくれて良かったです。」
ふぅ、何度か危なかったですが、結果的に誤魔化せたのでよしとしましょう!
「では、失礼致します」
この場を切り抜けられて安心していましたが、私の横を通り過ぎる瞬間、静華が耳元で囁きます。
「桃華様と遊ぶのが楽しくて早起きしたのですね。
誤魔化さなくても大丈夫です」
「ッ……」
静華には最初からお見通しだったようです。
私は羞恥のあまり、暫くそこから動けませんでした……
私がリビングに到着すると、弟のかな君以外全員揃っていました。
「おはようございます。あれ?…お兄様、いつもよりお早いですね?」
「おはよう香織。ちょっと生徒会の仕事が立て込んでいてね、最近は早めに学校に行ってるんだ。
それよりも顔が赤いけど大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です……
お兄様が前に生徒会の仕事が忙しいと仰ってましたが、そんなに忙しいのでしょうか?」
「今は入学式とオリエンテーションの準備があるからね。
週末は父さんの仕事場で勉強してるから、学校がある平日の朝か放課後ぐらいしかやる時間がないんだ」
「大変ですね……お兄様、くれぐれもお身体にはお気をつけて下さいね。
私はまだ入学していないので、今は助けられませんが、
入学したら必ずお兄様をお助けします。」
「ありがとう。期待してるよ香織」
「おはよう。香織こそお早いお目覚めだね。
何かあるのかな?」
「お、お父様!……ちょっと鍛練に行こうかと思ってまして……」
「その服装でかい?」
「えぇまあ……女の子には色々あるのです!」
「香織がそう言うならそうなんだろうね……
変な事を聞いてごめんね」
お父様は私に甘々なので、強引にいくと大概上手くいきます。
「またまた、桃花ちゃんの家に行くのが楽しみで、早く起きちゃったのよね?」
「えっ!? な、何の事でしょうか…?」
「隠さなくても大丈夫よ。私も一緒だから♪」
「……どういう事でしょうか?」
「私も英里ちゃんの家にお呼ばれしちゃった♪」
「お母様も桃花ちゃんの家に来られるのですか?」
「そうよ。だから楽しみすぎて早く起きちゃった。
香織もそうでしょ?隠さなくても大丈夫よ」
「はい……」
「そうなんだよ……栞ちゃんに急に起こされてびっくりしたなぁ……」
「だって……一人で寂しかったんだもん」
「それだったら仕方ないね」
「でも伊織さん、お仕事で疲れてるのに申し訳ないとも思ってるの……ごめんなさい」
「栞ちゃんの為だったら、私の事なんか二の次だよ。
逆に栞ちゃんは体調大丈夫かい?」
「今日は絶好調ね!」
「良かった。元気な栞ちゃんを見るのが大好きだからね。
それに、こちらも元気を貰えるから最高の妻だね」
「伊織さん……」
お母様は楽しみで早く起きた事を一切気にする事もなく、さらにお父様を早く起こして寂しさを紛らわせる事までして、
その上、今では夫婦でギュッと抱き合ってます……
私はお母様には一生勝てない気がします……
それから私は服を着替え――静華には微笑ましいものを見る目をされました――薙刀の素振りを行いました。
その後シャワーを浴び、お母様と静華に着せかえ人形にされてから桃花ちゃんの家に向かいます。
車で向かうこと10分、門が立派な和風建築の家に着きます。
静華がインターフォンを鳴らし暫く待っていると、桃花ちゃんに似た濡羽色の髪をした女性が出てきました。
「いらっしゃい。栞、香織ちゃん」
「今日はお世話になるわね。英里ちゃん」
「ご無沙汰しております。英里おば様」
「さぁ、入って。桃花も香織ちゃんが来るのを楽しみにしてるわよ」
桃花ちゃんの家に上がると、玄関に置いてある生け花が目を引きます。
「この生け花、凄く綺麗です!」
「それは桃花が生けたものよ。あの子も中々やるようになってきたから、出来の良いものは飾ってるのよ」
「この生け花は桃花ちゃんの作品なんですね……凄いです。」
「ふふ、あの子に直接言ってあげてね」
「はい!」
英里おば様に和室に案内され、座って待っていると、
「失礼します。」と声が聞こえ、襖が少しだけ開きます。
そこからゆっくりと襖が開き、綺麗な姿勢で正座している桃花ちゃんがお辞儀をします。
桃花ちゃんは淡いピンク色の桜の葉と花弁が描かれた着物を着ていて、そろそろ桜の季節なのと、私達の名字が桜ノ宮なので、二重の意味を込めてくれたのかな?
「ご無沙汰しております。栞おば様」
「いらっしゃい香織。来てくれて嬉しいわ。」
「お邪魔するわね。桃花ちゃん。」
「前の夕食の時も思ったのだけど、着物を着るとより美しく見えるわね」
「お世話になります。桃花ちゃん」
「その着物可愛いですね。桃花ちゃんに凄く似合ってます。」
「恐縮です。栞おば様」
「香織もありがとうね」
私達は暫く雑談に興じていると、また襖の外から
「失礼します」と聞こえ、英里おば様が入ってきます。
「あら、桃花、おもてなししてくれてたのね。ありがとう」
「おもてなしってほどではないけど、招いた側として失礼のないようにしただけよ」
「桃花ちゃんはしっかりやってたわよ。」
「ただ、いつになったらウチの子になってくれるのかしら?」
「ゲホッ!……失礼しました。栞おば様どういう事でしょうか?」
「そのままの意味よ。早く司と結婚してウチにいらっしゃいな」
「……」
お母様の猛攻に珍しく桃花ちゃんが狼狽えています。
真っ赤になって照れてる桃花ちゃんが新鮮で凄く可愛い。
「桃花、顔が真っ赤ね」
「お母様は黙ってて下さい!」
「あらあら、おっかないわね」
「うーん桃花ちゃんに言うより、ウチの司に言うべきなんだけど、あの子、本当に鈍感で女っけがないのよね……
もしかして男の子が好きとかじゃないわよね?」
本人のいないところで勝手に男色扱いされてますよお兄様……
お兄様の名誉の為に私は口を開きます
「お兄様は最近忙しそうなので、あまりそういうのを考えている暇がないと思います。」
「香織ちゃんは司君の事を庇ってあげてるけど、
香織ちゃんにはイイ人はいないの?」
お兄様を庇うとこちらに矛が向いてしまいました……
「そうですね……あまり男性の方と接する機会がないので……」
「そうなのよ! 香織に近付く男性は伊織さんを筆頭に司と静華が全部ブロックしちゃうのよ。
恋バナが出来なくて悲しいわお母さん……」
「そう言われましても……
親しい男性がお父様とお兄様ぐらいで他は……あっ……」
「その反応は!? あの包囲網を突破した仲の良い男性がいるのね?」
「確かに親しい男性ですが、その…恋愛とかではなく、ただ頼りになる方なので違うと思います……」
「男女の出会いはそんなものよ。そこから恋に発展する事も十分考えられるわね!」
師匠とはそういう関係ではないのですが……
お母様は興奮しているのか私の方に詰め寄り、肩を揺さぶってきます。
「栞、少し落ち着こうね」
「英里ちゃんごめんなさい。つい興奮してしまったわ……」
「私から説明しますね。香織が言ってる人は、最近私達がやってるゲームの中で知り合った男性の事です。
その男性は私達の先生みたいな立場なので、その…恋愛とかには発展しないかと」
「分からないわよ。生徒と先生の禁断の恋もあるもの」
「それに、香織の可愛いさは親の贔屓目抜きにしても、ワールドクラスの可愛いさよ。
コロッといかない男性なんていないわ」
「お母様それは言い過ぎですよ……ねぇ桃花ちゃん?」
「そこは否定しませんが、見たところ、その男性は香織よりも静華さんの事を狙ってそうです」
お母様の大言壮語を否定してくれないの?とか思ってましたが、続く桃花ちゃんの言葉が衝撃的過ぎて、そっちに全て持っていかれました……
えっ!? 師匠は静華の事が好きなんでしょうか?
「まぁ! 静華狙いなのね! 静華もワールドクラスに可愛いので納得ね」
「栞……突っ込みどころ満載だけど、あくまで、桃花の主観だからね。
その男性本人に聞いてみないと分からないわよ」
「そうね! 本人に聞かないとね! 」
そう言うとお母様はどこかへ電話し始めます。
「もしもし静華? こっちに来れそう?
うん、うん、分かった。すぐにお願いね」
お母様は電話を切ると満足げな表情で恐るべき事を口にします。
「静華に聞いてみましょ!」
暫くすると、本日三度目の「失礼します」の声がし、静華が入ってきます。
「静華よく来たわね。こちらに座って」
「承知しました。英里様、桃花様。失礼致します。」
「奥様ご用件は何でしょうか?」
「恋バナよこ・い・ば・な♪」
「???……」
「完全に静華ちゃん固まっちゃったわね……」
「お母様! 急に呼んだら静華だって混乱しますよ!」
「静華ごめんなさいね。
あのね、香織達がやってるゲームで一緒に男の子と遊んでるって聞いたのだけど、
静華はその男の子の事をどう思ってるのかな?」
「?……パンダモンさんの事でしょうか?」
「パンダモン……少し変わった名前ね……」
「奥様ゲームではよくあることです。」
「それで、そのパンダモンさん?の事はどう思ってるの?」
「最初はお嬢様に近付く有象無象かと思ってましたが、裏表がなく好感が持てる人物かと」
「静華はその人の事好き?」
「?……それは恋人としてでしょうか?」
「その通り!」
「……ないですね」
「なんで?」
「そこら辺の凡夫と違うのは認めますが、恋愛対象となると……」
「あら残念ね……そう言えば静華ってどんな人が好みなの?」
「………………………特にないですね」
「静華も同性の方が好きなの?」
『も』!?…お兄様の男色疑惑がまだ晴れてません……
「そう言う訳では……でもお嬢様だと全然アリですね」
「「「「えっ……」」」」
お母様のペースに巻き込まれ雑談は、静華の衝撃的な一言で終わりを迎えました……




