物欲センサー?そんなのがあるんですね……
「そう言えば、フェリシアちゃんは目の前であの男性プレイヤーの首が落ちてもあまり動揺してなかったわよね?
普通の女の子だと悲鳴ぐらいあげそうだけど……」
ラピス岳に向かっている道中、ユーピョンさんが先程の出来事を話題にあげます。
「確かに少しビックリしましたが、ゲームだと分かってるのであまり気になりませんでした。
それに、ユキナと会えた嬉しさの方が強かったので……」
「でも、罪禍の古城遺跡でユキナさんの腕が斬られた時、すごく動揺してたよね?」
「うーん、ユキナと初めて会ったプレイヤーでは親密さが違うからでしょうか?
正直、目の前で首が落ちた衝撃よりも、短剣しか持ってないユキナが、どうやって首を落とせたのかが気になりました。」
「あの変態から、首を刎ねる用の武器を貰ったからです。」
「えっ、どうしてお爺様はそんな武器をユキナに渡したのでしょうか?」
「去り際に、『その短剣ではワシの首は落とせんからこれを持っていけ』とか言ってました。」
「よく分かりません……」
「私も分かりません。
むしろ、あの変態の考えなんて分かりたくもありません」
「もしかして、あのお爺さんはユキナさんに首を落としてほしかったかも……?」
「……」
「ここがラピス岳や! 早くモンスター狩りたいな!」
師匠がこの変な空気を払拭する為か、いつもより気合いを入れて周囲のモンスターを探してます……
「おっ、早速ラピス見つけたで!」
そこには大型犬ぐらいのサイズをした、石の塊が動いていました。
「あれがラピスですか?」
「そうや、アイツの赤くなってる部分があるやろ、あれが核や」
師匠が指でさした場所には野球ボールサイズの赤い玉が埋まっていました。
「思ってたよりも大きいです。これなら簡単に倒せそうですね!」
「あのサイズを的確に攻撃するのって結構難しいぞ……
それを簡単って……」
「あっ、近付いて来た! 思ったより速いわ!」
ユーピョンさんが声をあげた通り、ラピスがこちらに向かってきます
「突進食らうと結構ダメージ受けるから注意や!
特にユーピョンさんはもろに受けると、やられるかもしれん!」
「分かったわ! 気を付けるわね」
「シア……そろそろ離して欲しいのだけど……」
「……嫌です。でもわがまま言うとフィルちゃんに迷惑が掛かるので、名残惜しいですが離れます……」
私は仕方なくフィルちゃんから離れると、師匠から預かった木の槍を構えます。
あの突進を槍で受けると、すぐにダメになりそうなので、回避主体で立ち回ります。
「そこです!」
フィルちゃんから離れさせられた恨みを込めながら、核に向かって槍を突き刺します。
すると核が砕け、ラピスが粒子に変わり、ドロップアイテムでラピス石が落ちました。
一撃ですか……
師匠が話してた通り、核は脆そうですね。
「初見なのに一撃で倒すんか……
フェリシアちゃんヒーラーやめて、アタッカーにならへん?」
「いえ、皆を守って癒すのが私のやりたい事なので、
これからもヒーラーをメインで頑張ります!」
「さよか……その戦闘センス分けて欲しいわ……」
「剣は専門ではありませんが、基礎ぐらいでしたら教えられますよ?」
「ホンマかいな! 今度教えてくれへん?」
「分かりました!
でも、師匠が弟子になるのですね……何だか変な感じです」
「俺が教えを請う身になるから、そろそろ師匠呼びをやめへん?」
「それはダメです! 師匠は師匠なので!」
「……」
「前も言いましたが、シアは中々頑固ですから諦めて下さい」
「しょうがないか……
おっと、こんなことしてる場合じゃないで。
ラピス石をゲットしたことで、シーフクロウが寄ってくるから注意や!
シーフクロウにラピス石盗まれるで!」
「えっ!、ラピス石が盗まれるのですか?」
「その通りや。フェリシアちゃんとユキナさんはゲット出来たラピス石は全部ユーピョンさんに預けてくれへんか。
君たちが戦ってる時に盗まれると面倒や。」
「えぇ!? 私に預けるの?」
「そうや。俺達はシーフクロウ担当やから、コイツらに集中してる為、盗まれにくいし、ユーピョンさんは後衛やから狙われにくいねん。
俺とフィルちゃんがカバーするから頼むわ!」
「分かったわよ! 盗られないように気を付けるわ!」
それから私達はラピスを探し、奥の方へ探索していきます。
「前方にラピス3体と、上空にクロウ4体が飛行中です!」
「中々多いわね!」
「これがパーティー5人にした時のデメリットかしら……」
「お喋りしてる場合やないで! 総員戦闘準備や!」
私とユキナはラピスへ突撃し、ユーピョンさんとフィルちゃんはクロウへ魔法を放ちます。
「そこです!」
「ファイアランス」
「マッドネススピア」
私とユキナがラピスを1体ずつ倒し、フィルちゃんとユーピョンさんが魔法でクロウを1体ずつ倒します。
「残りのラピスは私が倒すので、ユキナは周囲の警戒お願いします!」
「かしこまりました」
ユキナにそう言い残して、ラピスの元へ走ります。
私が槍を突き刺そうとすると、なんとラピスは身を捩り核を守ろうとしました。
このまま突いてしまうと木の槍の耐久値が減るので、慌てて突き出した槍を止めます。
ラピスは無理に体を捩ったせいで、無防備になっていたので、このチャンスを逃さず核を目掛け再度槍を突きだします。
今度は上手いこと核に当たり、ラピスを倒すことが出来ました。
「こちらは終わりました!」
「こっちも、もう終わりそうや!」
師匠はそう言うと、ユーピョンさん目掛けて突進してきた2体のクロウを相手取ります。
先に突進してきた1体目のクロウを右手の剣で切り裂き、
右手の剣を振り抜いた勢いを利用し、すぐさま左の剣でもう一体のクロウを両断しました。
「師匠凄いです!」
「まあ、これぐらいやらんと師匠の面目立たんからな」
「全員無傷やな?とりあえずユーピョンさんにラピス石預けといて」
「うーん、ここにしようか……
ここら辺モンスター多そうやから狩り場にするで」
「ここでリポップまで待つのは効率悪くない?」
「そこは問題あらへん。俺がスキル使ってモンスター呼び込むからな」
「へぇ、そんなこと出来るのね」
「ああ、見とき『アトラクトシャウト』!」
師匠がスキルを使うとモンスターが沢山寄ってきました。
「ラピス4体にクロウ5体か、先より1体ずつ多いけど大丈夫やろ」
こうして、私達はモンスターを全滅させては、師匠の『アトラクトシャウト』で呼び込み、全滅させては、呼び込みを繰り返し行っていきました。
「ハァハァ……疲れたわね…」
「ああ、疲れたな……」
「なんで、あの3人は元気なのよ……」
「ユキナあちらの2体お願いします。
私はこちらの2体を担当します!」
「シア。私は上のクロウを始末するわね」
「フィルちゃん。お願いします!」
「若者が頑張ってるから、俺らも頑張らんとな!」
「爺臭いわよ……」
「ほっとけ……」
「さすがに今日はこれぐらいにしとくか」
「そうね。ホントに疲れたし……」
「分かりました。木の槍を師匠にお返ししますね。」
「ええよ。大したもんやないし、そのままあげるわ。
て言うか、木の槍そんな残ってるんか?」
「えっと、残り8本です!」
「核を攻撃しても、少しずつ耐久値減るはずやから、もしかして、一回も核を外してないんちゃう?」
「一度だけ外しちゃいました……
3体同時に突進してきた時、焦ってしっかり狙えなかったです……」
「……ヤバいな。ユキナさんは?」
「私は残り6本です。核を外してはいませんが、突進を受け流す為に使ってしまったので、結構ダメになりました」
「いや十分……」
「それで、ラピス石は結局何個集まったん?」
「ちょっと待ってね……全部で181個……」
「……桁がおかしいな」
「割り切れないけど、配分はどうするの?」
「1人36個ずつ分けて、余りはフェリシアちゃんかユキナさんで良いんちゃう?」
「いえ、師匠から木の槍を頂いているので、師匠がお受け取りください」
「いやいや、元々ラピス石を俺は受けとるつもりはなかったんやけど、フェリシアちゃんが等分でって言うから受け取ってるからな。
だからその余りは受け取られへんよ」
「師匠。お受け取りください」
「は、はい……」
「フェリシアちゃんの圧に負けたわね」
「なんか逆らったらダメな気がしたんや……」
「ラピス石はどこで鑑定していただくのでしょうか?」
ラピス石の鑑定の為に、ヤラナイト村に戻ると、
私は鑑定する場所を師匠に尋ねます
「村の外れに鑑定場があるからそこに向かうで」
鑑定場に辿り着くと、あまり人気がなく、寂れた雰囲気がありました。
「あまり人がいませんね……」
「リリース直後のラピス岳はギャンブル好きで溢れかえってたけど、ラピスの倒しにくさと宝石の出現率の低さのせいで、一気に人が減ったからな……
しかも、あまり稼げないって情報が拡散したのもあって、今でも過疎ってるねん。」
「まあ、一攫千金の可能性もあるから、ギャンブル中毒の奴は未だにおるけどな」
「そんなことはいいから、早く鑑定しましょ」
「せっかちやな。まあ気持ちは分かるわ。」
「こっちや…………ここで鑑定が出来るで」
師匠が案内した先には、銀行のATMみたいな機械が10台ほど置かれてました。
「ここにラピス石を入れて、ルピを支払えば鑑定されるで。
一気に10個までしか出来ひんから4回に分けなアカンけどな」
「なんだか、ソシャゲの10連ガチャみたいね……」
「その通りや、物欲センサーが猛威をふるうから注意やで……」
「物欲センサーとは何でしょうか?」
「ガチャ等でこれが欲しいって思っても、全然手に入らない事よ……まあ、都市伝説みたいなものかな」
「そんなのがあるのですね……」
「早速、鑑定してもよろしいでしょうか?」
「フェリシアちゃんもワクワクやな……」
「よっしゃ、いっちょやるか!」
「結果は後で、見せ合いっこしましょ」
「それ、言い出しっぺが爆死するヤツ……」
「うるさい!」
私達はラピス石を機械にセットし、ルピを支払って鑑定します。
まずは1回目、ラピス石10個の鑑定が終わりました。
結果はダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイア、オパール、ムーンストーン、ガーネット、アメジスト、アクアマリン、トパーズでした。
あれっ? 宝石は出にくいはずでは……
しかも、全部違う種類です。
これ全部誕生石ですよね……
もしかしてラピス石が宝石になる場合、誕生石になるのでしょうか…?
そう思い、2回目も10個入れて鑑定してみます。
すると、結果はクズ石が10個でした……
私は正反対の結果に唖然とします……
こ、これが物欲センサーでしょうか!?
そう思い、3回目も10個を入れて鑑定すると
結果は1回目と同じダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイア、オパール、ムーンストーン、ガーネット、アメジスト、アクアマリン、トパーズでした。
「……」
4回目は残りの6個を入れて鑑定します。
結果は……
「皆どうだった?」
「私は宝石が9個だけで、サファイアが1つとペリドットが4つ、ターコイズが4つね」
「うわっ!サファイア当てたんか、凄いな……」
「高価な宝石だものね、値段はどれぐらいかしら?」
「70万ルピや」
「嘘!?結構するのね……いや、リアル基準で考えると、かなり安いわね…」
「ペリドットが5万でターコイズが1万や」
「まあ、当たりやな。おめでとう」
「ありがとう。」
「ペリドットとターコイズって事はやっぱり誕生石が元になってそうですね」
「俺は詳しくないけど、そうらしいな」
「確かにそうみたいね。
私は宝石が12個で、誕生石全部コンプリートしたわよ」
「マジで!?ダイヤモンド当てたん?」
「ええ、1つだけね」
「1つで500万ルピもする超大当たりやで」
「へぇ、そうなのね」
「もっと喜ばんかいな! ダイヤモンドはホンマに凄いんやで。
確率も0.1%切ってるって話やぞ」
「だって、シアのあの驚いてる顔は多分2個以上入手してそうだもの」
「は……? フェリシアちゃん嘘やろ!?」
「はい……ダイヤモンドは8個あります…」
そう、私が最後に鑑定した6個は全てダイヤモンドだったのです。1回目と3回目に当てたのと合わせて8個になりました……
「は、8個!!?」
「それだけで4000万……凄いわね……」
「シア、他はどうだったの?」
「えっと、宝石は26個で、ダイヤモンドが8個
エメラルド2個、ルビー2個、サファイア2個、オパール2個、ムーンストーン2個、ガーネット2個、アメジスト2個、アクアマリン2個、トパーズ2個でした……」
「確率バグっとるな……」
「さすがお嬢様です。」
「そう言うユキナさんはどうだったの?」
「知りたいですか?」
「もったいぶるわね……
さすがにフェリシアちゃんほど凄くないでしょ?」
「私はルビーが36個でした。」
「は?……」
「えっ……」
「そ、それは……」
「ユキナ凄いです!」
「ルビー36個って……宝くじが当たるより確率低いやろ……」
「ルビーの石言葉は情熱だったわよね?
ユキナさんってそんな情熱的じゃない気が……」
「ルビーの石言葉には純愛もあります。
私のお嬢様へ溢れる愛がこの結果になったのでしょう」
「間違ってない気がするから怖いわね……」
「ちなみにルビーは1個80万するで」
「売らないですよ。
これは私からお嬢様への愛の証なので、全てお嬢様へお渡しします。」
「ユキナの気持ちは嬉しいですが、このルビーはユキナが強くなる為に使ってください。
あっ、決してユキナの愛情を否定してるわけではありませんからね!
私もユキナの事が大好きですから!」
「お、お嬢様!」
「わっ! ちょっとユキナ急に抱きつかれると危ないです」
「そう言えば、師匠はどうだったのですか?」
「聞かんといてくれ……」
物欲センサーはある所にはあるそうです……




