初めてのPVP?
私は怒ってます!
私だって道を間違えたり、変な発言をしてしまいますが、あんなに揶揄わなくても……
なので、ボイコットです。ストライキです。反抗期です。
私は怒りながら歩いてたせいで、ヤラナイト村を抜け、気付けば森の中に迷い込んでしまいました……
「ここは、どこでしょう?」
森の中は薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていて、
周囲には人気もなく、木々のざわめきや鳥の鳴き声などが聞こえ、途端に一人でいることが怖くなってきました。
「お、お化けとか出そうです……」
私は慌ててヤラナイト村に戻ろうとしましたが、怒りながら歩いてきたので戻り道が分かりません。
それに、戻ってもまた迷子になったって皆に揶揄われてしまいます……
そうです、私だって一人で出来るところを見せてやりましょう!
先にラピス岳に到着し、皆に自慢しましょう!
私は恐怖心を抑え込みラピス岳に向かうべく、
まずはマップを開き現在地を確認します。
「現在地は……大蛇の森ですね」
確か、罪禍の古城遺跡に行く前に、師匠が候補の一つとして挙げてた所です。
「ラピス岳に行くには、大蛇の森は通らないのですね……」
「一度大蛇の森を引き返し、ラピス岳を目指しましょう」
方針を決めて、大蛇の森を引き返す為に歩いていると、
先程から胸の辺りがポッカリと空いてしまったように感じます。
原因を考えていると一つの答えが見つかりました。
そう言えば、私、このゲームに来て初めて一人で行動しています。
この気持ちは独りでいることの寂しさなのですね……
寂しい気持ちを払拭するように早足でラピス岳に向かっていると、前方に人影が見えました。
フィルちゃん達かな?と、勝手な期待を寄せていると、
見ず知らずの男性プレイヤーが2人で話している姿でした……
自分から立ち去りながら、勝手に期待してしまった事に、決まりが悪くなりました。
それにフィルちゃん達の事を思い出し、少し涙が出てきそう……
「あれ?君一人?」
先程の人影であった男性プレイヤーの1人が私に話し掛けてきました。
人恋しい気持ちもあり、私は現状について話しました。
「今は仲間と喧嘩して、はぐれてしまったので、
先にラピス岳に到着し、改めて謝罪しようと思っています。」
「へぇー、そうなんだ。大変だったね」
「そうそう、仲直り出来るといいね」
「ありがとうございます。」
「それはそうと、フード被ってるけど、何か意味があるの?」
「師匠から目立たない為に、被っとくようにと言われています」
「でもモンスターが出るフィールド上だと、死角が増えて危なくない?」
「それもそうですね。ご忠告ありがとうございます。
暫くフードは外したままにしときます」
そう言って私がフードを外すと、2人の男性プレイヤーが微動だにしなくなりました……
もしかして……またメデューサ状態ですか……
寂しかったので、いつもよりも怖い顔になってたのでしょうか……
「えっと、大丈夫でしょうか?」
「「…………………………あ、ああ大丈夫」」
石化状態が解けたようで良かったです。
そろそろラピス岳に向かわないといけないので、お別れの挨拶をします。
「つまらない話を聞いて頂いてありがとうございました。では失礼します。」
「いやいや、全然大丈夫」
「そうそう」
「あ、ラピス岳目指してるんでしょ? 案内しようか?」
「そこまでして頂くのは悪いので大丈夫です」
「俺達暇だし、ここら辺詳しいから気にしなくていいよ」
「そうそう、こんなところに女の子独りで残すなんて男として見逃せないよ」
「では、お願いしてもよろしいでしょうか?
もし、途中でご都合が悪くなりましたら言ってくださいね。」
「そうこなくっちゃ」
「こっちや、付いておいで」
私が揶揄いすぎて、シアがどこかへ行ってしまった後、私達はあの子の後を追いかける為に、
メニューのフレンド機能からあの子の場所を割り出します。
すると、想像以上にヤラナイト村と離れていて焦ります。
「あの子、村から出てるじゃない!」
「うわ……フェリシアちゃん歩くの早いな……
ここは大蛇の森やな。フェリシアちゃんぐらい強かったら問題ないとは思うけど……」
「心配なのはモンスターではなく、プレイヤーの方です。
お嬢様の事だから知らない人にホイホイ付いていってそうです……」
「お嬢様はほとんどのプレイヤーは問題なく対処できますが、身の程を弁えない愚物だと危険です。
お嬢様の経験の為にも、少し独りにさせようかと思いましたが、少々遠いので私は今すぐにでも追いかけたいと思います。」
「そうね。すぐに追いかけましょ!」
こうして、私達はシアの後を急いで追いかけます。
シア大丈夫かしら。変な奴に付いて行ってないよね?
合流したらもう一度きちんと謝り、仲直りをしようと決意を胸に今は走ります。
そんなフィルのちゃんの気持ちは露知らず、
私は2人の男性プレイヤーの後を付いていき、ラピス岳を目指していました。
道中、沢山の質問をされましたが、独りで寂しかった私はお喋り出来ることが嬉しく、沢山答えてしまいました。
ですが、ユキナにずっと言われてきた、個人情報は教えてはいけないと言う忠告は守りましたよ。多分……
「どこに住んでるの?」
「個人情報なのでお答え出来ません!」
「じゃあ、君って高校生?」
「4月から高校生です」
「じゃあ今はJC?」
「JC?とは何でしょうか?」
「ああ、女子中学生の略ね」
「そうなんですね! 中学校は先日卒業したばかりです。」
「へぇ、そうなんだ」
「じゃあさ彼氏っているの?」
「いえ、お付き合いしてる方はいらっしゃいません。」
「じゃあ、オレ立候補してもいい?」
「お付き合いは、まずお互いを良く知ってからだと思うので、ごめんなさい」
「あちゃー振られた。じゃあさ、代わりに友達って事で電話番号教えて」
「0……ダメです。個人情報なので教えられません!」
「ちょっと言いかけたから、いいじゃん」
「ダメです!」
「ちぇ…」
質問に答えながら歩いていると、先ほどマップで確認した方向と異なっている気がします。
「あの、この道で合ってますでしょうか?
先ほど地図で確認した時は、東の方向でしたが……」
「ちっ……もう気付かれたぞ」
「どうする。ここでやっちまうか?」
私が方向を尋ねると、2人の雰囲気が一変します
「えっと……どうなさいましたか?」
「ハラスメントコードはどうするよ?」
「本人に切ってもらうしかないな」
「じゃあ、少し痛めつけるか」
私を置いて、二人で話し込んだと思うと、急に武器を取り出し、脅すように私へ突きつけます。
「俺達にキルされるか、ハラスメントコードを解除するか選びな」
「……もしかして、あなた達は悪い人でしょうか?」
「悪い人でしょうか?だってよ。ギャハハ」
「頭お花畑みたいな子だな。そろそろ我慢の限界だ…やるぞ。」
そう言って、男性の1人が私に斬りかかってきます。
私の事を完全に弱者と決めつけていたのか、フェイントも入れない単調な攻撃だったので、男性の剣を軽く躱し、そのまま腕を掴み、地面に叩きつけます。
すると、もう一人の男性が目を見開いた後、
槍で思いっきり突いてきたので、突く勢いを利用し、森の方へ放り投げます。
「ぐはぁ!」「がはぁ!」
現実世界だとこれで制圧出来るのですが……
ゲーム内はある程度の衝撃は受けますが、痛みはないので、男性達はすぐに立ち上がってきました。
「くそっ、舐めやがって」
「コイツ何かの武術使ってるぞ」
「はい。先生から教わった柔術を使わせて頂いてます」
「今の学校って、そんなことまで教えてるのか!?」
「学校ではありませんよ。武術の先生です。」
「ちっ、カモかと思ったらとんだ誤算だ……」
「おい、2人一気に攻めるぞ。どうせ投げられ……」
男性達が攻める相談をしていたその時、
片方の男性の首が無くなってしまいました……
「「えっ!?……」」
「次はもう一つの首を落としましょうか」
「ユキナ!?」
「なんだお前!」
「ユキナさん。もう一匹は私に譲ってくれないかしら?」
「フィル様申し訳ございません。害虫駆除は私の仕事ですので」
ユキナはそう宣言すると、もう一人の男性の首をあっさりと落としてしまいました……
「ユキナさんマジ怖い……」
「目が殺気だってたわね……」
「お嬢様! ご無事ですか?」
一人でいた時間は短いはずなのに、すごく久し振りに会ったように感じ、思わず涙ぐんでしまいます。
「ユキナ! ごめんなさい……」
「いえ、お嬢様がご無事でなによりです」
「シア。私こそごめんなさい。あなたを揶揄いすぎて、拗ねさせてしまったわね……」
「フィルちゃん……私こそ少し揶揄れただけなのに、意固地になって飛び出してごめんなさい」
「フェリシアちゃん無事で良かった。
とりあえず、一旦村に戻ろうか」
「師匠もユーピョンさんも勝手にいなくなり、申し訳ございません。」
「いいわよ、私こそ、少し揶揄ってしまってごめんね」
「気にせんでええよ。」
「そう言えばユキナさんって、2人キルしちゃったけど、大丈夫なの?」
「基本的にPKすると名前の横に髑髏マークが付くんやけど、これも他のゲームとは違いエパクトシステムが判断しよるねん。
エパクトシステムが感情や行動を読み取るから、悪意をもってキルするとNGになるけど、正当防衛とか仕方なくキルした場合は大丈夫になったりするねん」
「あれだけ殺気漏れてても正当防衛になるのね……」
「今回はユキナさんとフェリシアちゃんが同じパーティーやったお陰で、さっきの奴らがフェリシアちゃんに危害を加えようとしたのを守ってると判断されたんちゃう?
ここでユキナさんが害意をもってキルすると多分NGやったな……」
「もし、私が髑髏マーク付いてしまったら、何かデメリットはありましたでしょうか?」
「普通そう言うのは、やる前に聞きましょうよ……」
「髑髏マークが付くと、街に入れなかったり、NPCから冷たくされたり、酷い場合は賞金首になってプレイヤーに狩られるな」
「街に入れなくなるのは困りますね。
お嬢様のお側にいられませんから」
「……相変わらずやな」
「ユキナさんあれだけ殺意増し増しだったのに、害意はなかったのね?」
「あの2匹に殺意はありましたが、害意はなかったので。
皆様も害虫を処分する時、害意を持つ方はいないでしょう?」
「「…………」」
「シアそろそろ離れてくれないかしら」
「嫌です!このままフィルちゃんと引っ付いたままラピス岳に行きます!」
「……ちょっと歩きにくいのだけど……」
「フィルちゃんが転びそうになると私が支えます!」
「え、ええ、ありがとう……」
「何かあっちとこっちで温度差がヤバい……」
「そうね……片方は人間を虫に例えて、処分するって言ってて、もう片方は仲睦まじく、一部の人が拝みたくなる光景ね……まさにカオスね……」
こうして、私の短い一人旅は終わるのでした……




