第7章 お家での初めての食事
木の棒を集めていると、ふと甘い香りが風に乗ってきた。
「お姉さん、イチゴのみたいな実があそこの茂みにあるよ」
マリアが指差した先には、大きなシダの葉に隠れて赤く色づいた親指ほどの小さな実がたわわに実っていた。アンナは慎重に近づいて葉の形や実の匂いを確かめると、安全なものだと分かり嬉しそうに目を細める。
「マリア様、野イチゴですね。すごく甘くて美味しいですよ。全部採ってしまうのはやめましょうね。森の獣や動物たちの食べ物かもしれないですし、残しておいたほうがいいと思います。私たちが食べる分だけいただきましょう」
「うん、そうだね」
二人は、指先でそっと柔らかな実を潰さないように、今日食べる分だけを丁寧に摘み取った。そして、先ほどの野草や香りの良いキノコと一緒に木製のカゴの中へ並べていく。赤や緑の鮮やかな彩りに、夕飯のことを思い顔がほころぶ。こうして、新しい暮らしを支える食料も少しずつ豊かに集まっていく。
完成したばかりの小さな家の中に敷いた布の上に並んで座り、マリアは満足そうに居心地の良い周囲を見回した。
「お姉さん、家ができたね。なんだかすごく落ち着く。こうして2人でいれば全然怖くないし、とっても楽しいよ」
アンナは愛おしそうに微笑みながら、マリアの銀色の柔らかな髪を優しくなでる。
「本当ですね。これからの私たちの居場所です。夜になる前に、もう少し中を居心地よく整えましょうか」
日が暮れる前に、アンナはナイフを取り出し、手頃な太さの木材を削って小さなテーブルを作り始めた。マリアも真似をして、手頃な丸い石やザラザラとした葉を使って小さな木の板を熱心に磨き、小物入れの組み立てを手伝う。自分たちの手で素朴な家具が一つずつ増えていく。ただ布を張っただけの簡素なテントが少しずつ、温かみのある本当の家らしくなっていった。
「よし、これでテーブルも小物入れも完成です。夕食の準備をしましょうね」
アンナが額の汗を拭って満足げに笑顔を向けると、マリアはぱっと顔を輝かせた。
「お姉さん、今日の夕食はごちそうだよ。木の実も美味しいキノコもあるし。それに、デザートのイチゴまで付くんだから」
手作りしたばかりの真新しい木製のテーブルの上に、野イチゴを器にきれいに盛り付け、湯気が立っている熱いキノコと野草のスープと一緒に並べる。小鳥たちが置いていってくれた香ばしい木の実も添える。自然の恵みにあふれた彩り豊かな食卓だった。侯爵家の別邸で与えられていた冷えた残飯や硬いパンくずなどとは比べ物にならない。
「お姉さん、いただきます」
「マリア様、いただきます」
二人は満足そうに顔を見合わせながら、手作りの美味しい夕食を平らげていく。出汁の効いた熱いスープで冷えかけた体を芯から温め、食後には甘酸っぱい野イチゴを口いっぱいに頬張る。アンナは、無邪気に笑うマリアの姿を見て、穏やかで幸せな気持ちで胸がいっぱいになった。
静まり返った森の夜、二人は布の上に並んで横になり、静かで深い眠りについた。パチパチとはぜる焚き火の優しい音と、遠くで聞こえる小川のせせらぎが心地よく響いていた。




