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みにくいアヒルの子~マリア無魔力と呼ばれた少女~  作者: 春告草


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第36章 王女の家族会議

翌日の朝、アリアーヌはいつもより早く目を覚まし、そのままの勢いで、皇帝、皇后、皇太子エドワード、第二王子ロベール、老練な宰相、公爵家の嫡男クラウスという、帝国の中枢を担う顔ぶれを急遽呼び集めた。面々は驚きつつも、アリアーヌのただならぬ気迫に押され、重厚な扉のある秘密の会議室へと足を踏み入れた。


「お父様、お母様、お兄様、ロベールお兄様、宰相様、クラウス君。皆さまお集まりいただきありがとうございます。これからお話しすることは、我が国の今後、あのマリア様に関わる非常に重要な極秘のお話です。どうか、他言無用でお願いいたします」


アリアーヌが身を乗り出して切り出すと、一同は緊張感を走らせて身構えた。アリアーヌは昨夜ロベールに話した内容、マリアの過去と隣国カスティリャ王国の裏事情、自分たちの結婚式への招待の件を一つ残らず語っていく。


「マリア様は10歳でカスティリャ王国の侯爵家から禁忌の森へ追放されたそうです。あの国の皇太子レオンの婚約者が義妹だということにも何か深い事情がありそうでした。私は、マリア様があの恐ろしい森へ追いやられた悲劇の裏に、カスティリャ王家の何らかの陰謀が関わっているのではないかと危惧しております」


クラウスは腕を組み、静かに口を開いた。


「カスティリャ王国の皇太子の婚約者といえば、たしか侯爵令嬢でしたね。それがマリア様の義妹だとは驚きました」


宰相も白い髭を撫でながら頷く。


「隣国のきな臭い噂は我が国の耳にも届いております。まさかマリア殿の追放に関わっているとは思いもしませんでしたな」


詳細がアリアーヌの熱を帯びた口調で共有されると、会議室には重い沈黙が落ちた。アリアーヌは息を整え、真剣な瞳で締めくくる。


「最後に、一番大切なお願いがあります。私、どうしてもマリア様に我が家の義姉になってほしいのです」


会議室の空気がその瞬間、凍りついた。


数秒の沈黙が落ちる。皇帝が一番最初に沈黙を破り、お腹を抱えて涙を流すほどの豪快な爆笑を部屋中に響き渡らせた。


「素晴らしい。我が愛娘は実に豪胆だ。世界を救った最強の英雄にして、我が国の大恩人であるマリア殿を、我が家に迎え入れようとはな」


皇后は扇で上品に口元を隠し、楽しそうに微笑む。


「アリアーヌの言う通りになれば、これほど心強いことはありませんね」


宰相も目を細めて面白がっている。


「マリア殿が我が皇族に加わるとなれば、我が国の未来は盤石ですな」


当事者である皇太子エドワードは引きつった笑顔で盛大にツッコミを入れた。


「待て。私にはすでに先日心を通わせた公爵令嬢という素晴らしい婚約者がいる。私の嫁にはできないぞ」

「わかっていますよ。お兄様にはお姉様がいらっしゃるもの」


アリアーヌは言い放った。


「だから、消去法でロベールお兄様しかいないじゃない」


第二王子ロベールは突然再び名指しされ、昨夜に引き続いて冷や汗を流しながら頭を抱えて天を仰いだ。


「なぜ私なんだ。昨夜からずっと冷や汗が止まらないぞ」


クラウスは同情するようにロベールの肩を叩く。


「ロベール殿下、腹をくくってください。アリアーヌ様が一度決めたら後には引かないことはご存知でしょう」


ロベールは深いため息をついた。


「わかっている。だが、相手はあのマリア殿だぞ。私などで釣り合うはずがない」


皇宮の朝の会議は笑いと驚き、そして予測不能な熱気に包まれた。マリアを巡る新たな波乱の予感を乗せ、会議はますます賑やかに盛り上がっていく。会議室の中が盛大な笑い声に包まれる中、皇帝はふっと表情を引き締め、鋭く光る瞳でうなずいた。


「我が最愛の娘の言う通りだ。マリア殿ほどの奇跡の力を持つ少女が、なぜわずか10歳で隣国カスティリャの侯爵家から禁忌の森になど追放されなければならなかったのか。あの荒れ果てたカスティリャの皇太子レオンと義妹の背後にどのような闇があるのか。これは看過できぬ問題だな」


皇帝が厳かに手を挙げると、部屋の隅に控えていた近衛の一人が静かに一礼した。


「我が帝国の影の調査部隊を動かそう。隣国カスティリャ王国の裏の事情、マリア殿の過去に何があったのか、徹底的に洗い出させる。心配いらん、すべて私に任せなさい」


アリアーヌは父である皇帝の力強い言葉にパッと顔を輝かせた。


「お父様、ありがとうございます」


(待っててね、マリア様。あなたの過去にあった理不尽な真実を暴いて、絶対にあなたが心から笑顔で過ごせるようにしてあげるんだから)


帝国の中枢が動き出したいま、カスティリャ王国がひた隠しにしてきた暗部と、マリアを巡るすべての謎が暴かれる日はそう遠くない。表向きの賑やかな笑い声の裏で、事態は静かに、しかし確実に進行し始めていた。

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