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みにくいアヒルの子~マリア無魔力と呼ばれた少女~  作者: 春告草


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第11章 5年が過ぎてマリアとアンネの成長

それから五年という月日が瞬く間に過ぎていった。


マリアとアンナは、カスティリャ王国を追放された当時はそれぞれ10歳と16歳だったが、いまでは15歳と21歳になっていた。二人は、持ち出した粗末な麻布の衣服を幾度も丁寧に繕って着ていたものの、その身にまとう空気はどこまでも清らかだった。そして彼女たちは、日々の穏やかな暮らしと森の豊かな自然の恵みの中で、周囲の精霊たちも目を奪われるほど、驚くほど美しい娘へと成長していた。


簡素な小さなテントは、あの時はただ布をかぶせただけだった。いまやヴァイスの強靭な力や森の動物たちの手伝い、そしてマリアとアンナ自身の知恵と働きによって、雨風を完全にしのげる立派で温かみのある丸太小屋へと生まれ変わった。色鮮やかな実は、広げられた畑で季節を問わずいつでも食べごろを迎え、万が一のための薬草も青々とすくすく育っている。マリアは、かつては無魔力と蔑まれていた。森の精霊たちとの触れ合いを通じて魔法の腕前をめきめきと上達させた。いまではそっと手のひらをかざすだけで枯れかけた草木を癒やし、心地よい風や優しい光を自在に操れるまでになった。


だが、そんな平和で満ち足りた時間は、音もなく破られようとしていた。


この禁忌の森は、かつて人間が足を踏み入れてはならないとされていた通り、実はカスティリャ王国と、隣り合う強大な軍事国家であるカイザーベルク帝国との国境地帯に位置していた。ある日のこと。帝国の第二王子であるロベールは、帝国領内の辺境を騒がせていた凶暴なはぐれ魔獣の討伐と生態調査のため、腹心の従者であるマルコとシモンを引き連れて、薄暗い森の奥深くへと足を踏み入れていた。


ロベールは、鬱蒼とした周囲の木々が急に開けた場所へさしかかったとき、警戒しながら先頭を行く足をピタリと止めた。そして彼は、すぐ後ろを歩くマルコとシモンに手で静止の合図を送ると、息を殺して巨大な樹木の隙間からそっと向こうの景色を覗き見た。


我が目を疑った。


生い茂る黒々とした森の奥にある。光に満ちた小さな開けた広場。見事な丸太小屋と手入れの行き届いた豊かな畑が、誰も住んでいないはずのその場所に似つかわしくなく広がっていた。そして一人の少女が、緑に囲まれた中央で、輝く銀髪を風になびかせながら、透き通るような美しい歌声を響かせていた。


ロベールたちにとっては、信じられない光景だった。


出会えば軍隊すら壊滅すると言われる伝説の魔獣であるはずの白銀のフェンリル、ヴァイスが、少女の足元に穏やかな顔で寄り添うように座り、水の精霊ディーネが、そのふさふさとした頭の上にちょこんと乗って、歌に合わせて楽しげにリズムを取っている。


さらに、本来は人間を恐れて逃げるはずの森の動物たちが、音楽会を楽しむように少女の周りへ行儀よく並び、優しく心地よい歌声にうっとりと聴き惚れていた。色鮮やかな数え切れないほどの小鳥たちが、頭上の太い木の枝に並び、彼女の歌にコーラスを合わせるかのようにさえずっている。

驚くべきことはそれだけではない。少女の周りには、通常は人間の目には見えないはずの無数の光の粒、強い力を持つ高位の精霊たちが、まるで彼女の存在そのものを祝福するかのように、愛おしげにふんわりと漂いながら淡い光を放っていたのだ。


「あれは、いったい誰だ」


完全に言葉を失ったロベールは、頬に一筋の冷や汗を流しながら呆然と呟いた。背後に控えていた従者のマルコとシモンも、目の前で起きているあまりにも神々しく信じがたい光景に震え上がり、主の問いに答えることなど到底できなかった。


一人の美しき少女が、死の領域である禁忌の奥地に、最強の魔獣や高位の精霊たちを従え、降臨した女神のように佇んでいた。この時のロベールたちは、この出会いがもたらした静かで強烈な衝撃が、やがてカスティリャ王国とカイザーベルク帝国を巻き込む大きな歯車を動き出させることになるとは、知る由もなかった。

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