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エピローグ1 託されたもの

「よお。終わったか。お疲れさん。」

 すっかり日の暮れた中、ソーレンが今、出入り口から出てきたマリットとスタンを出迎える。

 アレルヤを見送った後、マヤとゲイリーは病院へ運ばれ、スタン達は警察署に居た。

 アレルヤの放送により「調停者」のことが明らかになり、混乱が広がっている。これから政府中枢も決断や情報公開を求められる場面が増えていくだろう。

 いままで「調停者」として働いていた者達を罪に問うのか否か、それ以前に誰が「調停者」だったのか。解決すべき課題は多い。

 とはいえ、スタン達のやったことは国立機関施設への不法侵入及び騒乱なので、警察で取り調べとなっていたのだ。この大きな社会的変化のうねりの中であるし、「調停者」の活動も絡むことなので、スタン達のやったことも、かなりの部分がうやむやにはなりそうではある。

「こうして、何も気にせずに街中で過ごせるようになるのは、やはり嬉しいものだな。」

 マリットがしみじみ言った。数年間、「調停者」から隠れて生活していた鬱憤がやはりあったのだろう。大きくのびをして、開放感を味わっているようだ。

「マヤもゲイリーのおっさんも、命に別状はないって話だ。よかったぜ。」

 スタンとマリットより早く取り調べが終わっていたソーレンが、マヤ達の現状を伝えてくれた。

 マヤについては、所持許可もないのに銃を使用してしまったし、数名の職員に銃を持って走っている姿も目撃されていたので、多少罪に問われることがあるかも知れないらしい。誰も殺していなかったのが救いだった。

 それでも、病院に搬送される前のマヤは、後悔のない、すっきりした顔をしていたのをスタンは思い出していた。


『これから、ソーレンが干されてたのもちょっと状況が改善すんのかな?』

 マリアがソーレンに聞く。

「どうだろうな?まあ、チャンスが来たら作りたい話はあるけどな。」

「ほう、どんな話なんだ?」

 開放感で高揚しているためか、普段ソーレンの仕事に興味のなさそうだったマリットが珍しく食いつく。

「お前らだよ、スタン。」

「へ?」

 急に話を振られてスタンが間の抜けた声を出す。

「俺よ、スタンとマリアちゃん、お前達のことをモデルに映画を作ろうと思うんだよ。タイトルは『マイ・バディ・マリア』。どうだ、気が利いてるだろ?」

 にかっと笑いながらソーレンが言う。

『・・・そのまんまだし、以前の話題作の二番煎じな名前はどうかと思うなー。』

「ちょっ!?おいおい!」

 自身の作品のファンであるはずのマリアから手厳しい意見をもらい、ずっこけるソーレンだった。


「マリットさん?どうかしました?」

 そんなソーレンの様子を笑いつつも、少し考えるような表情のマリットにスタンが聞いた。

「いや、アレルヤのことなんだがな・・・。」

 まだ言葉がまとまらないとでもいうように、ゆっくりマリットは話す。

「アレルヤは・・・希望を語ってはいたが、宇宙に旅立ったという事実だけを見れば、現段階の人類は、まだ対話するに値しないと・・・、諦められたというようにも見れるんじゃないか・・・?」

 寂しそうにマリットは空を見上げる。しかし、スタンは同じく空を見上げていった。

「そうかも知れないです。・・・でも、アレルヤは、俺たちを見捨ててないのもきっと確かなんだ。・・・人間の可能性を、信じてくれてる。信じて託されたなら、応えたほうがいいですよね。」

 マリットがスタンの方を見て、少し驚いたような顔をする。そしてまた空を見上げ、少し笑って言った。

「そうだな・・・。」


「おーい、お待たせ。」

 警察署の駐車場の入り口の方から、今回の作戦で、警察の世話にならずに済んだパトリックが、車から顔を出し声を掛けた。3人を迎えに来たのだ。

「まあ、今日の所はゆっくり休もう。これからの世界を力強く生きていくために。」

 マリットがゆったりと車に近づきながら言う。穏やかではあるが、希望にあふれた声だった。

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