第64話 マリアの本領
『えーーーーーーーい!』
マリアのかけ声と共に、開発センター内に居た全ての転向者の脳チップが焼かれた。開発センターの内部各所で頭を押さえ、倒れる転向者達。
「おし!こいつで最後だ!!」
残った「調停者」の半数以上が昏倒し、最後に残った執行官を殴り倒してゲイリーが言った。言った途端、腹を押さえてうずくまる。
「大丈夫か!?」
ソーレンが心配し駆け寄る。
「ばーか。お前とは鍛え方が違えんだ。心配すんな。」
痛みはありそうだが、精気は十分な答えにソーレンは胸をなで下ろす。そして
「助かったぜ、マリアちゃん!!」
と端末に向かいマリアへの礼を伝えた。
一方、「第2調整室」でも、転向者達が倒れ、マリットとマヤは危機を脱した。盾にしていた卓の裏から這い出したマリットは端末を通しマリアに言った。
「助かった。マリア君。システムからの反抗はあるか?」
『うん、チクチクこっちを削ってくる動きがある・・・。多分、職員の人やセキュリティソフトが動いてる。』
マリアが答える。声には表れないが、システム掌握のために傷ついたマリアには、辛い横やりだろう。
「私の方で対応を引き受ける。今、私が使っているPCに処理を回してくれ。」
『ありがと、マリットさん。助かるよ。』
マリットの申し出にマリアはほっとした様子で返した。
「マリアちゃん、『アレルヤ』本体の場所は確認できた?」
『バッチリ。地下のそれらしい場所を見付けた。今スタンを誘導するところだよ。』
「OK。私にもその誘導の情報を共有して。」
マヤは、スマートグラスを掛けると、弾切れの拳銃を捨て、倒れた転向者からまた銃を拝借した。
「私はスタン君のサポートに向かうわ。気をつけてね、マリット。」
「そっちもな。」
「第2調整室」を出たマヤは、スマートグラスの情報に従い、スタンの元へと走る。
トレイスはロケット発射場からの道のりを走りきり、開発センターにたどり着いていた。入り口の陸軍警備兵に止められるが、隊長への取り次ぎを要請した。
「私は政府の人間だ。ここに入れてほしい。」
トレイスは隊長に向かい調停官皆が持っている超法規的行動を認められたIDを見せた。
いつもなら、それでどんな公的機関だろうと無理を通せるのであるが、このときは違っていた。
「・・・アンタ達は本当に、我々と同じようにこの国の人々を守っているのか?」
隊長の問いはゲイリーの演説を受けてのものだった。トレイスは言葉に詰まる。
「私は・・・。」
自分のしてきたことは本当に正義だったのか。それを疑うことは、トレイスにとって即自己否定につながることだった。しかし、トレイスは隊長の目を見て言った。
「私の行いが、本当に人々を守ることになっていたのか、今は自信がない・・・。ただ、ここを通っていかないと、一人の子どもの命が失われてしまうかも知れないんだ。頼む。」
隊長はしばらくトレイスの目を見つめた後、体を横に退け、言った。
「行ってくれ。俺の良心が、アンタは危険じゃないと言っている。」
トレイスは頭を下げ、開発センターの中へと走って行った。




